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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1256684 |
審判番号 | 不服2011-1392 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-01-20 |
確定日 | 2012-05-10 |
事件の表示 | 特願2003-388414「データ保存装置およびデータ保存方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日出願公開、特開2005-151358〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
その1.手続の経緯 本願は、平成15年11月18日の出願であって、 平成18年6月7日付けで審査請求がなされ、平成19年1月23日付けで手続補正がなされ、平成21年11月9日付けで審査官により最初の拒絶理由が通知され、これに対して平成22年1月18日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ、平成22年7月21日付けで審査官により最後の拒絶理由が通知され、これに対して同年9月27日付けで意見書が提出されたが、同年10月12日付けで審査官により拒絶査定がなされ、これに対して平成23年1月20日付けで審判請求がなされたものである。 その2.本願発明について 本願の請求項1に係る発明は、平成22年1月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、これを「本願発明」という)。 「編集可能なデータを保存可能なデータ保存装置であって、 ユーザの指示を情報処理装置から受け付ける受信手段と、 前記受信手段により受け付ける指示に従って、前記編集可能なデータの中から選択されたデータの時刻認証を要求し、前記時刻認証の結果として時刻情報を取得する時刻認証要求手段と、 前記時刻認証要求手段により取得した時刻情報を前記選択されたデータに付加して、前記時刻情報が埋め込まれている編集不可能なデータを作成する作成手段と、 前記作成手段により作成した編集不可能なデータを保存する保存手段とを備えたことを特徴とするデータ保存装置。」 その3.引用刊行物に記載の発明 一方、原審が拒絶理由に引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2001-142398号公報(平成13年5月25日公開、以下、「引用刊行物1」という)には、関連する図面と共に次の事項が記載されている。 A.「【請求項1】 クライアント装置とサーバ装置からなる時刻認証システムであって、クライアント装置は、 複数のデジタル文書に対する複数のダイジェストを作成するダイジェスト作成手段と、 このダイジェスト作成手段により作成された複数のダイジェストを結合するダイジェスト結合手段と、 このダイジェスト結合手段により結合された複数のダイジェストから統合ダイジェストを作成する統合ダイジェスト作成手段と、 この統合ダイジェスト作成手段により作成された統合ダイジェストを含んだ時刻認証要求をサーバ装置に送付する送付手段と、 サーバ装置から前記複数のデジタル文書に対する時刻認証証明書を受け取る受取手段とを有し、 サーバ装置は、時刻認証要求に応じて取得された時刻情報と統合ダイジェストを結合して求められた時刻印付きデジタル文書と、時刻印付きデジタル文書に対するデジタル署名とを含んだ時刻認証証明書を作成することを特徴とする時刻認証システム。 【請求項2】 クライアント装置は更に、パソコンまたはネットワーク上のデジタル文書から前記複数のデジタル文書を、ファイルまたはフォルダ単位で指定するデジタル文書指定手段を有することを特徴とする請求項1記載の時刻認証システム。」 B.「【0013】本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、例えばパソコン上のデジタル文書に対して定期的に信頼のおける第三者機関から存在証明のための時刻認証証明書を取得しておくことにより、パソコン上のデジタル文書を研究ノートや家計簿と同様な日常的に履歴の残る記録とし、しかもその変更作成記録を第三者に証明することが可能な記録媒体として活用することができるフォルダ型時刻認証システムを提供することを目的とする。」 C.「【0026】ここで、ダイジェスト作成手段11と、ダイジェスト結合手段13と、統合ダイジェスト作成手段15と、送付手段17と、受取手段25がクライアント部100を構成し、デジタル署名作成手段19と時刻認証手段21と時刻取得手段23がサーバ部200を構成する。」 D.「【0028】著作者により作成されたテキスト情報、画像情報、音声情報、バイナリ情報あるいはそれらの組み合わせからなる対象デジタル文書Gは、フォルダ型時刻認証システム1内のダイジェスト作成手段11により、処理の高速化を計るとともに、サーバ部200に元の文書を送付せずに済むようにし、しかも異なる文書に対して非常に高い確率で異なる値が得られるようにするために、各デジタル文書毎にハッシュ関数(例えばSHA-1やMD5)を用いてダイジェストが作成される。 【0029】具体的には、ハッシュ関数をh、対象デジタル文書Gを構成する複数のデジタル文書g_(1) ,g_(2) ,…,g_(n) とすると、ダイジェスト作成手段11によりダイジェストh(g_(1) ),h(g_(2) ),…,h(g_(n) )が作成される。 【0030】次に、ダイジェスト結合手段13により、例えば、各ダイジェストh(g_(1)),h(g_(2) ),…,h(g_(n) )を連接により結合した結果としてh(g_(1))・h (g_(2) )…h(g_(n) )を得る。この結合結果から統合ダイジェスト作成手段15により統合ダイジェストを作成する。 【0031】ここで統合ダイジェスト作成手段15で用いるハッシュ関数をiとすると、i(h(g_(1) )・h(g_(2) )…h(g_(n) ))が統合ダイジェストとなる。統合ダイジェストi(h(g_(1) )・h(g_(2) )…h(g_(n) ))を送付手段17により時刻認証手段21を介してデジタル署名作成手段19に送付する。 【0032】デジタル署名作成手段19は、統合ダイジェストi(h(g_(1) )・h(g_(2))…h(g_(n) ))と時刻取得手段23により取得した時刻tを含むデジタルデータに対してデジタル署名sを作成し、このデジタル署名sを時刻認証手段21に送出する。 【0033】続いて、時刻認証手段21では、このデジタル署名sと、統合ダイジェストi(h(g_(1) )・h(g_(2) )…h(g_(n) ))および時刻tを含む時刻認証証明書を発行し受取手段25に送出する。」 E.「【0036】これにより、複数のデジタル文書が時刻印を押された時点以降において変更されてなく、かつ確かに時刻印が押された時点でこれら複数のデジタル文書が同時に存在していたことを証明することが可能となる。しかも、各デジタル文書毎に時刻認証証明書の要否を判定する必要がなく、複数のデジタル文書に対してまとめて一つの時刻認証証明書を取得すればよくなるため、時刻認証サービスを低コストで活用することが可能となる。」 (あ)上記Bの「例えばパソコン上のデジタル文書に対して定期的に信頼のおける第三者機関から存在証明のための時刻認証証明書を取得」という記載から、引用刊行物1には、 “パソコン上のデジタル文書に対して時刻認証証明書を取得する”技術が記載されていることが読み取れる。 (い)上記Aの「クライアント装置は、複数のデジタル文書に対する・・・・(中略)・・・・時刻認証要求をサーバ装置に送付する送付手段」という記載、及び、上記(あ)で指摘の事項から、引用刊行物1には、 “クライアント装置は、パソコン上の複数のデジタル文書に対する時刻認証要求をサーバ装置に送付する送付手段”が記載されていることが、また、同じく上記Aの「サーバ装置から前記複数のデジタル文書に対する時刻認証証明書を受け取る受取手段」という記載から、引用刊行物1には、 “クライアント装置が、サーバ装置からの、複数のデジタル文書に対する時刻認証証明書を受け取る受取手段”を有することが記載されていることが読み取れる。 (う)同じく上記Aの「サーバ装置は、時刻認証要求に応じて取得された時刻情報と統合ダイジェストを結合して求められた時刻印付きデジタル文書と、時刻印付きデジタル文書に対するデジタル署名とを含んだ時刻認証証明書を作成する」という記載から、引用刊行物1には、 “サーバ装置が、クライアント装置からの、時刻認証要求に応じて、時刻認証証明書を作成する”ことが記載されていることが読み取れる。 (え)上記Aに、「クライアント装置は更に、パソコンまたはネットワーク上のデジタル文書から前記複数のデジタル文書を、ファイルまたはフォルダ単位で指定するデジタル文書指定手段」との記載があり、上記引用記載中の「パソコン」には、同記載中の「クライアント装置」が含まれることは、当業者にとって自明の事項であるから、同引用記載の内容から、引用刊行物1には、 “クライアント装置が、クライアント装置上のデジタル文書から、複数のデジタル文書をファイルまたはフォルダ単位で指定するデジタル文書指定手段”を有することが記載されていることが読み取れる。 (お)上記(え)で指摘の点、及び、上記Dに記載の「著作者により作成されたテキスト情報、画像情報、音声情報、バイナリ情報あるいはそれらの組み合わせからなる対象デジタル文書G」から、「クライアント装置」上の「デジタル文書」とは、「著作者により作成されたテキスト情報、画像情報、音声情報、バイナリ情報あるいはそれらの組み合わせからなる対象デジタル文書G」であることが、引用刊行物1に記載の内容から読み取れる。 (か)上記Cの「デジタル署名作成手段19と時刻認証手段21と時刻取得手段23がサーバ部200を構成する」という記載、及び、上記Dの「デジタル署名作成手段19は、統合ダイジェストi(h(g_(1) )・h(g_(2))…h(g_(n) ))と時刻取得手段23により取得した時刻tを含むデジタルデータに対してデジタル署名sを作成し、このデジタル署名sを時刻認証手段21に送出する」、並びに、「時刻認証手段21では、このデジタル署名sと、統合ダイジェストi(h(g_(1) )・h(g_(2) )…h(g_(n) ))および時刻tを含む時刻認証証明書を発行し受取手段25に送出する」との記載から、 “時刻認証証明書は、サーバ装置において、デジタル文書の統合ダイジェストと時刻tを組み合わせたデジタルデータに対して署名を施すことで発行され、クライアント装置の受取手段に送出される”ことが、引用刊行物1に記載の内容から読み取れる。 (き)上記Eの「複数のデジタル文書が時刻印を押された時点以降において変更されてなく」から、引用刊行物1に記載の「時刻認証証明書」は、該「証明書」に対応する「デジタル文書」が、該「証明書」に含まれる「時刻t」以降変更されていないことを証明するものであることは明らかであるから、該「証明書」を発行された「デジタル文書」は、それ以降変更されることなく、また、変更されると、該「証明書」を用いて、変更されたことが検出可能であることは明らかである。 以上、上記A?Eで引用した記載、及び、上記(あ)?(き)で検討した事項から、引用刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認める。 著作者により作成されたテキスト情報、画像情報、音声情報、バイナリ情報あるいはそれらの組み合わせからなる対象デジタル文書を有するクライアント装置であって、 クライアント装置上の前記デジタル文書から、複数のデジタル文書をファイルまたはフォルダ単位で指定するデジタル文書指定手段と、 前記デジタル文書に対する時刻認証要求をサーバ装置に送付する送付手段と、 サーバ装置において、デジタル文書の統合ダイジェストと時刻tを組み合わせたデジタルデータに対して署名を施すことで発行され、クライアント装置に送出される、前記デジタル文書が前記時刻t以降に変更されていないことを証明する時刻認証証明書を受け取る受取手段とを有するクライアント装置 その4.本願発明と引用発明との対比 ここで、本願発明と引用発明とを対比すると、 (イ)引用発明における「著作者により作成されたテキスト情報」が、タイムスタンプ認証を受けるまでは、該「テキスト情報」の作成者である「著作者」によって“編集可能”であることは、当業者にとって自明の事項であり、また、引用発明における「クライアント装置」は、「クライアント装置上にデジタル文書」を有していることから、該「デジタル文書」を“記憶可能な手段”を有することも明らかである。 よって、引用発明における「著作者により作成されたテキスト情報、画像情報、音声情報、バイナリ情報あるいはそれらの組み合わせからなる対象デジタル文書を有するクライアント装置」と、 本願発明における「編集可能なデータを保存可能なデータ保存装置」とは、 “編集可能なデジタルデータを保存可能なデジタル装置”である点で共通する。 (ロ)引用発明における「クライアント装置上の前記デジタル文書から、複数のデジタル文書をファイルまたはフォルダ単位で指定するデジタル文書指定手段」は、どの「デジタル文書」を指定するかという「クライアント装置」のユーザからの指示に基づいて、「複数のデジタル文書をファイルまたはフォルダ単位で指定する」構成を含むことは明らかであり、その場合には、「クライアント装置」がユーザからの指示を受け付ける入力手段を有することも明らかであるから、 引用発明における「クライアント装置上の前記デジタル文書から、複数のデジタル文書をファイルまたはフォルダ単位で指定するデジタル文書指定手段」と、 本願発明における「ユーザの指示を情報処理装置から受け付ける受信手段」とは、 “ユーザの指示を受け付ける受け付け手段を有する”点で共通する。 (ハ)引用発明における「時刻認証証明書」は、「デジタル文書の統合ダイジェストと時刻tを組み合わせたデジタルデータに対して署名を施」したものであって、該「ダイジェスト」は、上記Dの記載から、「クライアント装置」にて、「デジタル文書」から「ハッシュ関数」を用いて作成されたものであるから、「時刻t」を含んでいることは明らかであり、当該「時刻t」は、上記したように、「サーバ装置」で認証されたものであり、「時刻認証証明書」に含まされて「クライアント装置」に送られるものであるから、 引用発明における「時刻t」は、本願発明における「時刻情報」に相当する。 仮に、本願発明における「時刻情報」が、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0022】に、 「保存サーバ105は、ハッシュ値を生成した後、生成したハッシュ値をネットワーク101経由で時刻認証サーバ104に送信し、時刻認証を要求する。時刻認証サーバ104は、正確な時刻を刻む時計を有しており、そこから正確な時刻を取得する。また、時刻認証サーバ104は、保存サーバ105から送信されたハッシュ値を受信すると、その時刻情報と送られたハッシュ値に対し、時刻認証サーバ104が持つ秘密鍵で持って電子署名を生成し、それをタイムスタンプとして保存サーバ105に返信する。」 との記載があるように、「データ保存装置」に「保存」されている「編集可能なデータ」の「ハッシュ値」と、「時刻認証サーバ」において取得された「正確な時刻」とを、「時刻認証サーバ」の「秘密鍵」を用いて「電子署名」した「タイムスタンプ」を指すものであるとしても、 引用発明における「時刻認証証明書」は、「デジタル文書の統合ダイジェストと時刻tを組み合わせたデジタルデータに対して署名を施」したものであって、該「ダイジェスト」は、上記Dの記載から、「クライアント装置」にて、「デジタル文書」から「ハッシュ関数」を用いて作成されたものであるから、 引用発明における「時刻認証証明書」と、 本願発明における「時刻認証の結果として」の「時刻情報」とは、文言の相違こそあれ、実質的には同一のものを意味しているから、 上記のように解釈した場合は、 引用発明における「時刻認証証明書」が、 本願発明における「時間認証の結果として」の「時刻情報」に相当する。 そして、引用発明における「デジタル文書に対する時刻認証要求をサーバ装置に送付する送付手段」は、「サーバ装置」に対して「デジタル文書に対する時刻認証」を「要求」し、引用発明における「時刻認証証明書を受け取る受取手段」は、前記「要求」した結果である「時刻認証証明書」を受け取っているのであるから、 引用発明における「デジタル文書に対する時刻認証要求をサーバ装置に送付する送付手段」、及び、「時刻認証証明書を受け取る受取手段」は、 本願発明における「編集可能なデータの中から選択されたデータの時刻認証を要求し、前記時刻認証の結果として時刻情報を取得する時刻認証要求手段」に相当する。 (ニ)引用発明においても、「時刻認証証明書」を取得した以降は、前記「時刻認証証明書」に対応する「デジタル文書」は、変更されると、前記「時刻認証証明」によって、変更したことが明らかになるので、前記「時刻認証証明書」に対応する「デジタル文書」はが、改竄できないことは明らかであり、前記「デジタル文書」は、「クライアント装置上」にあるものであって、「クライアント装置」が、そのための記憶部を有することは明らかであるから、 引用発明における“「時刻認証証明書」に対応する「デジタル文書」を記憶する記憶部”と、 本願発明における「編集不可能なデータを保存する保存手段」とは、 “時刻認証のための情報に基づく改竄不可能なデータを保存する記憶手段”である点で共通する。 以上(イ)?(ニ)で検討したことから、本願発明と引用発明との一致点、及び、相違点は次のとおりである。 [一致点] 編集可能なデジタルデータを保存可能なデジタル装置であって、 ユーザの指示を受け付ける受け付け手段と、 編集可能なデータの中から選択されたデータの時刻認証を要求し、前記時刻認証の結果として時刻情報を取得する時刻認証要求手段と、 時刻認証のための情報に基づく改竄不可能なデータを保存する記憶手段とを備えたデジタル装置 [相違点1] 編集可能なデジタルデータを保存可能なデジタル装置が、 本願発明においては、「データ保存装置」であるのに対して、 引用発明においては、「クライアント装置」である点、 [相違点2] ユーザの指示を受け付ける受け付け手段が、 本願発明においては、 「ユーザの指示を情報処理装置から受け付ける受信手段」であるのに対して、 引用発明においては、 「クライアント装置」が、「デジタル文書」の指定を何処から受けるかについては 明記されていない点、 [相違点3] 本願発明においては、 “時刻認証要求手段により取得した時刻情報を選択されたデータに付加して、時刻情報が埋め込まれている編集不可能なデータを作成する作成手段”を「データ保存装置」が有しているのに対して、 引用発明においては、「クライアント装置」側に、「時刻t」、或いは、「時刻認証証明書」を、該「時刻t」、或いは、「時刻認証証明書」に対応する「デジタル文書」に埋め込むための「作成手段」に相当する構成が存在しない点、 [相違点4] 記憶手段が保存する改竄不可能なデータが、 本願発明においては、 「時刻情報が埋め込まれている」のに対して、 引用発明においては、 「時刻認証証明書」が、「デジタル文書」に埋め込まれてはいない点、 その5.当審の判断 上記[相違点]に関して検討する。 [相違点1]について 引用発明において、「時刻認証証明書」を発行する「サーバ装置」に対する「クライアント装置」として、例えば、「ストレージサーバ」を選択することは、当業者が適宜なし得る事項である。 よって、相違点1は、格別なものでない。 [相違点2]について 上記Aで引用した「クライアント装置は更に、パソコンまたはネットワーク上のデジタル文書から前記複数のデジタル文書を、ファイルまたはフォルダ単位で指定する」記載から、引用発明における「クライアント装置」は、「サーバ装置」、或いは、他の「パソコン」等と共にネットワークに接続された態様をとっていることは明らかであり、このような態様を採用している場合に、該「クライアント装置」に対して、他のネットワーク上の装置から指示を出し得ること、該「クライアント装置」はそのための“受信部”を有するよう構成可能であることは、当業者にとって自明の事項である。 したがって、引用発明において、該「クライアント装置」に対して、他の「装置」からの指示を受け付ける“受信部”を設けることは、当業者が適宜なし得る事項である。 よって、相違点2は、格別のものでない。 [相違点3]、及び、「相違点4」について 原審の拒絶理由に引用された、本願の出願前に既に公知である、特開平10-290359号公報(平成10年10月27日公開、以下、「引用刊行物2」という)に、 F.「【0004】また、例えば特開平2-301267号公報に、画像を光電変換する撮像素子から得られた画像信号をディジタル信号に変換する電子スチルカメラにおいて、このディジタル画像信号に日付情報を付加する方法が提案されているが、画像信号とは全く別の情報として付加されるため、特別なメモリを要するばかりでなく、画像信号との分離が容易で削除や変更がし易く、正しい情報かどうか分からないという問題があった。 ・・・・(中略)・・・・ 【0006】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明では、アナログ原画像をディジタル画像信号に変換する画像変換部と、アナログ原画像に関わる所定の日付情報を設定する日付情報設定部と、前記ディジタル画像信号中にディジタル透かし技術により前記所定の日付情報を埋め込む透かし埋め込み部とを備えたタイムスタンプ装置を提案する。 【0007】前記構成によれば、日付情報をディジタル透かし技術を用いてディジタル画像信号中に埋め込むようにしたため、削除や変更が困難な日付情報を、画像を損なうことなく画像信号に付加することができる。 ・・・・(中略)・・・・ 【0010】また、アナログ原画像が被写体像である場合の画像変換部としては、被写体像を光学系を介して取り込み、対応する画像信号を出力する撮像部と、前記画像信号をディジタル画像信号に変換するアナログ・ディジタル変換部とを用いることができる。(以下、略)」(下線は、当審にて説明の都合上附加したものである。以下同じ。) と記載されているように、デジタル化したデータと日付情報とを一体化したデジタル情報を作成することが記載され、 また、本願の出願前に既に公知である、特開2003-244139号公報(平成15年8月29日公開、以下、これを「周知文献」という)に、 G.「【0034】 上述の実施例による電子文書に対するタイムスタンプ押印システムによれば、ドキュメント作成用のアプリケーションソフトのアドオンソフトとしてタイムスタンプ機能を実装したので、タイムスタンプしたいドキユメントをオープンし、アドオンソフトのメニューでタイムスタンプ処理をすれば済むことになる。また、タイムスタンプがドキュメント内に組み込まれるようになっているので、対象ファイルとタイムスタンプ証明書を別々に管理しなくても済むことになる。更に、タイムスタンプと対象ドキュメントの改ざんに対するセキュリティを多重化して、検証の段階を複数持つことにより、そのドキユメントの重要性に応じた検証の方法をユーザーが選択することができる。また、電子署名の生成、検証をセンターが行うようにし、且つ、署名検証鍵を非公開にしたことにより、電子署名の有効期限(タイムスタンプの有効期限)を延ばすことができる。」 と記載され、引用刊行物2に記載の「埋め込む」と、周知文献に記載の「組み込まれる」とは、同様の処理であることから、本願出願前に、“デジタル情報”に、「日付情報」、或いは、「タイムスタンプ」を埋め込んで保持することが、当業者には既に周知の技術事項(以下、「周知技術」という)であることは明らかであり、周知技術における「日付情報」、或いは、「タイムスタンプ」が、引用発明における「時刻t」、或いは、該「時刻t」を含む「時刻認証証明書」に相当するものであるから、 引用発明においても、「クライアント装置」側で、「デジタル情報」と「時刻認証証明書」とを、埋め込むよう構成すること、及び、埋め込まれたデータを記憶することは、当業者が適宜なし得る事項である。 よって、相違点3、及び、相違点4は、格別のものでない。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明、及び、周知技術とから当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、及び、周知技術とから、当業者が容易になし得たものである。 その6.むすび したがって、本願発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-08 |
結審通知日 | 2012-03-13 |
審決日 | 2012-03-26 |
出願番号 | 特願2003-388414(P2003-388414) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 重徳 |
特許庁審判長 |
赤川 誠一 |
特許庁審判官 |
清木 泰 石井 茂和 |
発明の名称 | データ保存装置およびデータ保存方法 |
代理人 | 別役 重尚 |