• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1256779
審判番号 不服2010-22330  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-04 
確定日 2012-05-07 
事件の表示 特願2004-271008「アプリケーションプログラムおよび情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月30日出願公開、特開2006- 85529〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年9月17日の出願であって,平成19年8月6日付けで手続補正がなされ,平成22年1月12日付けの拒絶理由の通知に対し,同年3月16日付けで手続補正がなされ,同年4月7日付けの拒絶理由の通知に対し,同年6月11日付けで手続補正がなされたが,同年6月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年10月4日付けで審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成23年4月22日付けの審尋に対し,同年6月23日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成22年10月4日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年10月4日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正により,特許請求の範囲の請求項8の記載は次のとおり補正された。
「複数のデータ編集機能のそれぞれに対応する複数のプログラムモジュールを呼び出して該複数のデータ編集機能を実行させるアプリケーションプログラムを実行する情報処理装置であって,
前記アプリケーションプログラムと前記複数のプログラムモジュールとを記憶する記憶装置と,
前記アプリケーションプログラムを実行する制御装置と
を備え,
前記記憶装置は,前記複数のプログラムモジュールのそれぞれに対して割り当てられた固定の値である処理順序を示す処理順序情報を記憶しており,かつ,一定個数の複数のプログラムモジュールに対しては前記処理順序情報としてそれぞれ飛び飛びの値が割り当てられ,新規なプログラムモジュールを前記アプリケーションプログラムに対して追加する際は,当該新規なプログラムモジュールの処理順序に応じて前記飛び飛びの値の間の値が前記処理順序情報として割り当てられたプログラムモジュールを前記記憶装置に追加記憶させ,
前記制御装置は,前記アプリケーションプログラムを実行することで,
前記記憶装置に記憶されている前記プログラムモジュールのそれぞれについて割り当てられた処理順序情報を前記記憶装置から読み出す手段と,
複数の前記プログラムモジュールのそれぞれについて読み出された前記処理順序情報が表す値の大小関係に従って,複数の該プログラムモジュールの処理順序を決定する決定手段と,
前記決定手段により決定された処理順序にしたがって前記複数のプログラムモジュールを呼び出し,呼び出したプログラムモジュールにしたがって前記複数のデータ編集機能を実行する実行手段として機能することを特徴とする情報処理装置。」

(2)本件補正前の,平成22年6月11日付けの手続補正による特許請求の範囲の請求項8の記載は次のとおりである。
「複数のデータ編集機能のそれぞれに対応する複数のプログラムモジュールを呼び出して該複数のデータ編集機能を実行させるアプリケーションプログラムを実行する情報処理装置であって,
前記アプリケーションプログラムと前記複数のプログラムモジュールとを記憶する記憶装置と,
前記アプリケーションプログラムを実行する制御装置と
を備え,
前記記憶装置は,前記複数のプログラムモジュールのそれぞれに対して割り当てられた固定の値である処理順序を示す処理順序情報を記憶しており,
前記制御装置は,前記アプリケーションプログラムを実行することで,
前記記憶装置に記憶されている前記プログラムモジュールのそれぞれについて割り当てられた処理順序情報を前記記憶装置から読み出す手段と,複数の前記プログラムモジュールのそれぞれについて読み出された前記処理順序情報が表す値の大小関係に従って,複数の該プログラムモジュールの処理順序を決定する決定手段と,前記決定手段により決定された処理順序にしたがって前記複数のプログラムモジュールを呼び出し,呼び出したプログラムモジュールにしたがって前記複数のデータ編集機能を実行する実行手段として機能することを特徴とする情報処理装置。」

(3)上記補正は,補正前の請求項8に記載した発明を特定するために必要な事項である「プログラムモジュール」について,「かつ,一定個数の複数のプログラムモジュールに対しては前記処理順序情報としてそれぞれ飛び飛びの値が割り当てられ,新規なプログラムモジュールを前記アプリケーションプログラムに対して追加する際は,当該新規なプログラムモジュールの処理順序に応じて前記飛び飛びの値の間の値が前記処理順序情報として割り当てられたプログラムモジュールを前記記憶装置に追加記憶させ」との限定を付加する補正を含むものであって,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 補正の適否
そこで,補正後の請求項8に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)刊行物の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願日前の平成13年2月27日に頒布された刊行物である特開2001-56867号公報(以下,「引用例」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。

[発明の属する技術分野]
「【0001】・・・本発明は,画像データを適宜修整して利用可能な画像データ処理装置,画像データセットを記録した媒体,画像データ処理プログラムを記録した媒体および画像データ処理方法に関する。」

[画像データ処理装置の構成]
「【0027】・・・図1は,本発明の一実施形態にかかる画像データ処理装置を対応概略構成図により示している。デジタルスチルカメラなどで撮影した画像データは,コンピュータなどの外部記憶装置などを利用して管理することになる。かかる外部記憶装置などに該当するデータ保存手段A1はこれらの複数の画像データとともにそれぞれに対応するパラメータを関連づけて記憶し,コンピュータによるデータベース管理などによって適宜変更,追加,削除などといった管理が行われる。」
「【0028】このような管理を行うため,データ保存手段A1には,画像データ記憶領域A11とパラメータ記憶領域A12と関連付け情報記憶領域A13が確保されている。・・・」
「【0030】このようにして上記データ保存手段A1には,画像データとそれに実施すべき画像処理の内容を表すパラメータが関連付け情報によって関連づけがなされて保存されることになる。そして,データ取得手段A4は,このデータ保存手段A1は関連付け情報記憶領域A13の情報に基づいて対応する画像データとパラメータとを画像データ記憶領域A11とパラメータ記憶領域A12とから取得し,画像処理再現手段A3に出力する。・・・」
「【0031】画像処理再現手段A3はパラメータに対応した修整処理を実現するものであり,複数の修整エンジンA31?A3nを備える。各修整エンジンA3xは画像データとパラメータが与えられたときに同パラメータが表す各修整エンジンA3xに応じた修整を同画像データに施して新たに修整画像データを生成し,これを出力する。・・・また,修整エンジンA31?A3nはアプリケーション自体が内部に備えるものに限らず,外部に存在する修整エンジンA31?A3nを選択するものであっても良い。」
「【0033】本実施形態においてはこのような画像データ処理装置を実現するハードウェアの一例としてコンピュータシステム10を採用している。図2は,同コンピュータシステム10をブロック図により示している。・・・」
「【0034】コンピュータ本体12には,外部補助記憶装置としてのフロッピーディスクドライブ13aとハードディスク13bとCD-ROMドライブ13cとが接続されており,ハードディスク13bにはシステム関連の主要プログラムが記録されており,フロッピーディスクやCD-ROMなどから適宜必要なプログラムなどを読み込み可能となっている。また,コンピュータ本体12を外部のネットワークなどに接続するための通信デバイスとしてモデム14aが接続されており,外部のネットワークに同公衆通信回線を介して接続し,ソフトウェアやデータをダウンロードして導入可能となっている。・・・」
「【0035】・・・なお,ネットワークにアクセスするのは,データを取得する場合に限らず,プログラムの一部や,外部的に起動可能な別プログラムを取得する場合もある。これにより,修整エンジンの一部あるいは全部を外部から取得したり,外部にあるものに実行を委ねるということも可能である。」
「【0038】一方,このような画像入力デバイスを使用して画像を入力しつつ,画像出力デバイスに表示あるいは出力するため,コンピュータ本体12内では所定のプログラムが実行されることになる。・・・」
「【0040】この基本プログラムとしてのオペレーティングシステム12a上でアプリケーション12dが実行される。・・・」
「【0042】・・・このようにして,画像データの管理と画像の修整を行なう画像データ処理装置の必要性が生じ,アプリケーション12dとコンピュータシステム10とが有機一体化して画像データ処理装置を実現することになる。」
「【0043】この意味で,画像データ処理ソフトであるアプリケーション12dは,デジタルスチルカメラ11bで撮影された画像データをハードディスク13bに記憶して管理したり,CD-ROMドライブ13cを介してCD-ROMによって供給される画像データを適宜入力できるようにして管理しつつ,後述するようにパラメータも併せて管理する。従って,この意味で関連するソフトウェアとハードウェアとによってデータ保存手段A1を構成する。」
「【0044】また,このようにして記憶されている画像データについては,アプリケーション12dによって処理対象を特定した上で上述したような対応するパラメータと共に内部の画像処理ルーチンによって画像処理することになり,この意味で関連するソフトウェアとハードウェアとによって画像処理再現手段A3を構成する。・・・」
「【0045】・・・図3は上記画像データ処理ソフトによる制御内容をブロック化して表しており,各種の総合的な制御を行うメイン制御部60と,各種の共通的な制御を行う共通機能部20と,画像データの管理を行うフィルムデータ管理部30と,各画像データについて画像修整を実行する画像修整制御部40と,一連の印刷処理を実行するDPE印刷制御部50から構成されている。」
「【0054】さらに,写真データ30bは修整情報と特徴情報と色合せ情報も備えている。上述したように本画像データ処理ソフトでは画像データの管理と画像の修整を行なうが,画像の修整によって元の画像データを直に変更してしまうのではなく,これらのパラメータによって修整する指針だけを修整情報として管理し,これに併せて特徴情報や色合わせ情報を管理できるようにしている。・・・」

[画像処理の順序を任意に変更可能とする処理]
「【0148】次に,画像処理の順序を任意に変更可能とする処理について説明する。図53はこの場合の写真データ30bにおける修整情報の内容を示している。処理の内容は,最左欄に示すように「自動画像修整」,「明るさ」,「コントラスト」,「赤(強調)」,「緑(強調)」,「青(強調)」である。また,各各処理ごとに,設定すべき個別の指定情報は最上覧に示すように「修整エンジンのバージョン」,「順番(実行順序情報)」,「処理強さ」となっている。」
「【0149】ここで,「自動画像修整」は各処理内容の実行順序が固定であるので,選択しない場合にのみ他の処理同士の間で順番が有効となる。同図(a)は自動画像修整の順番に「1」を設定してあり,他の処理は「0」であって選択していないことを意味する。これに対して同図(b)は自動画像修整の順番は「0」であって選択されていない。そして,他の処理は「1」?「5」という順番が設定されている。」
「【0150】図54はこのような処理の順番が付されている場合に画像の修整処理を実行させるフローチャートを示している。まず,ステップ760では処理順序別のソートを実行する。・・・例えば,図53(a)に示すものであれば自動画像処理だけが残るし,同図(b)に示すものであれば自動画像処理だけが排除され,処理対象のものとして赤強調,緑強調,青強調,明るさ,コントラストの順に並ぶ。」
「【0151】ステップ770はループの終了判断であって処理すべきものがなくなったらこの修整処理を終了させ,処理すべきものがあればステップ775とステップ780にて処理を実行させる。ステップ775は最優先の処理の処理エンジンに画像データと処理強さのパラメータを引き渡して修整処理を実行させる。・・・」
「【0152】この処理の後,ステップ780では未処理のものを繰り上げる。最初,赤強調の処理が最優先の処理であり,その処理を終了したら赤強調の処理を排除して二番目の青強調を最優先の処理とし,以下同様に繰り上げる。このような繰り上げの処理によって最後の処理が終了するまで順番通りに処理が実行され,最後に実行すべき処理がなくなってループ処理を終了する。・・・」
「【0153】すなわち,同画像修整制御部40ではパラメータの内容に応じた修整エンジン41?45…が選択され,これにパラメータを与えて画像修整を実行する。むろん,画像修整制御部40自体は多数のモジュールの集合体のように構成され,分岐処理を経て特定の修整エンジンのモジュールが実行される。このように修整情報の一つのパラメータとして順番の要素を設定しておき,ソートを実行させることによって不要な処理を実行することなく,望むとおりの順番で修整処理を実行させることができる。」

イ 上記記載から,引用例には,以下の技術的事項が記載されている。
(ア)引用例に記載された画像データ処理装置は,画像データとともにそれぞれに対応するパラメータを関連付けてデータ保存手段A1に記憶し,コンピュータにより管理するものであって(【0027】),画像データ処理ソフトであるアプリケーション12dとコンピュータシステム10とを含み,コンピュータ本体12のハードディスク13bにはシステム関連の主要プログラムが記録されており,また,フロッピーディスクやCD-ROMなどから適宜必要なプログラムなどを読み込み可能となっていることから(【0034】【0040】?【0043】),引用例には,「画像データ処理ソフトであるアプリケーションが記録された記憶装置を備え,画像データとともにそれぞれに対応するパラメータを関連付けて記憶し,コンピュータにより管理する画像データ処理装置」が記載されているということができる。
(イ)引用例には,画像データ処理ソフトは,画像修整制御部40を備え,画像修整制御部40は,パラメータの内容に応じた修整エンジン41?45を選択し,これにパラメータを与えて画像データの画像修整を実行するものであり,修整エンジンのモジュールの集合体として構成されており(【0045】【0153】),修整エンジンは,その一部を外部から取得することができる(【0034】【0035】)ことが記載されている。
(ウ)画像データは,パラメータによって修整する指針を管理する修整情報を備え(【0054】),修整情報には,「自動画像修整」,「明るさ」,「コントラスト」,「赤(強調)」,「緑(強調)」,「青(強調)」の各処理ごとに,「修整エンジンのバージョン」,「順番(実行順序情報)」,「処理強さ」が設定されており(【0148】【0149】,図53),画像処理の順序を変更する場合,「順番(実行順序情報)」として,「1」?「5」という順番が設定され,画像の修整処理は,まず,処理順序別のソートを実行し,次に最優先の処理の処理エンジンに画像データとパラメータを引き渡して修整処理を実行させ,処理が終了すると次の処理を繰り上げて最優先の処理として同様に修整処理を実行させ,以下同様に,設定された順番に,最後の修整処理が終了するまで処理を実行することにより行われる(【0150】?【0152】,図54)。ここで,「処理エンジン」は「修整エンジン」にほかならないから,引用例には,「画像データは,パラメータによって修整する指針を管理する修整情報を備え,修整情報に各修整処理ごとの順番(実行順序情報)が設定されている場合,修整エンジンによる画像の修整処理は,修整情報に設定された順番に従って実行される」ことが記載されているということができる。

ウ これらのことから,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「画像データ処理ソフトであるアプリケーションが記録された記憶装置を備え,画像データとともにそれぞれに対応するパラメータを関連付けて記憶し,コンピュータにより管理する画像データ処理装置であって,
画像データ処理ソフトは,画像修整制御部を備え,画像修整制御部は,パラメータの内容に応じた修整エンジンを選択し,これにパラメータを与えて画像データの画像修整を実行するものであり,修整エンジンのモジュールの集合体として構成されており,修整エンジンは,その一部を外部から取得することができ,
画像データは,パラメータによって修整する指針を管理する修整情報を備え,修整情報に各修整処理ごとの順番(実行順序情報)が設定されている場合,修整エンジンによる画像の修整処理は,修整情報に設定された順番に従って実行される,
画像データ処理装置。」

(3)引用発明との対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「画像データ処理装置」は,「画像データ処理ソフト」(アプリケーション)を実行するものであり,「画像データ処理ソフト」は,画像修整制御部を備え,画像修整制御部は,パラメータの内容に応じた修整エンジンを選択し,これにパラメータを与えて画像データの画像修整を実行するものであって,修整エンジンのモジュールの集合体として構成されている。これらのことから,「修整エンジン」は,本願補正発明の「プログラムモジュール」に相当し,本願補正発明と引用発明とは,「複数のデータ編集機能のそれぞれに対応する複数のプログラムモジュールを呼び出して該複数のデータ編集機能を実行させるアプリケーションプログラムを実行する情報処理装置」である点で一致する。
(イ)引用発明において,「画像データ処理ソフト」と「修整エンジン」が記憶装置に記憶されていること,及びコンピュータにより「画像データ処理ソフト」を実行することは自明であるから,本願補正発明と引用発明とは,「アプリケーションプログラムと複数のプログラムモジュールとを記憶する記憶装置と,前記アプリケーションプログラムを実行する制御装置とを備える」点で一致する。
(ウ)引用発明の「修整エンジン」は,その一部を外部から取得することができるものであり,これは,本願発明における「新規なプログラムモジュールをアプリケーションプログラムに対して追加する」ことに相当するから,本願補正発明と引用発明とは,「記憶装置は,新規なプログラムモジュールをアプリケーションプログラムに対して追加して記憶することができる」点で共通する。
(エ)引用発明は,画像データが備える修整情報に,各修整処理ごとに順番(実行順序情報)が設定されていることから,本願補正発明と引用発明とは,「記憶装置は,複数のプログラムモジュールのそれぞれに対して割り当てられた処理順序を示す処理順序情報を記憶」している点で共通する。
(オ)さらに,引用発明における画像修整は,画像データ処理ソフトが備える画像修整制御部が,パラメータの内容に応じた修整エンジンを選択し,これにパラメータを与えて画像データの画像修整を実行するものであり,修整エンジンによる画像の修整処理は,修整情報として設定された順番に従って実行されることから,各修整処理ごとに設定された順番(実行順序情報)が記憶装置から読み出されること,修整情報に各修整処理ごとの順番(実行順序情報)が設定されている場合,複数の修整エンジンのそれぞれについて順番(実行順序情報)の大小関係に従って,複数の修整エンジンの処理順序が決定されること,及び,決定された処理順序にしたがって複数の修整エンジンを呼び出し,呼び出した修整エンジンに従って,対応する画像修整を実行するものであること,は自明である。
そうすると,画像データ処理ソフトが実行する上記処理は,それぞれ「手段」として表現できることを考慮すれば,本願補正発明と引用発明とは,「制御装置は,アプリケーションプログラムを実行することで,記憶装置に記憶されているプログラムモジュールのそれぞれについて割り当てられた処理順序情報を記憶装置から読み出す手段と,複数のプログラムモジュールのそれぞれについて読み出された処理順序情報が表す値の大小関係に従って,複数の該プログラムモジュールの処理順序を決定する決定手段と,決定手段により決定された処理順序にしたがって複数のプログラムモジュールを呼び出し,呼び出したプログラムモジュールにしたがって複数のデータ編集機能を実行する実行手段として機能する」点で一致する。

イ 以上のことから,本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
【一致点】
「複数のデータ編集機能のそれぞれに対応する複数のプログラムモジュールを呼び出して該複数のデータ編集機能を実行させるアプリケーションプログラムを実行する情報処理装置であって,
前記アプリケーションプログラムと前記複数のプログラムモジュールとを記憶する記憶装置と,
前記アプリケーションプログラムを実行する制御装置と
を備え,
前記記憶装置は,前記複数のプログラムモジュールのそれぞれに対して割り当てられた処理順序を示す処理順序情報を記憶しており,新規なプログラムモジュールをアプリケーションプログラムに対して追加して記憶することができ,
前記制御装置は,前記アプリケーションプログラムを実行することで,
前記記憶装置に記憶されている前記プログラムモジュールのそれぞれについて割り当てられた処理順序情報を前記記憶装置から読み出す手段と,
複数の前記プログラムモジュールのそれぞれについて読み出された前記処理順序情報が表す値の大小関係に従って,複数の該プログラムモジュールの処理順序を決定する決定手段と,
前記決定手段により決定された処理順序にしたがって前記複数のプログラムモジュールを呼び出し,呼び出したプログラムモジュールにしたがって前記複数のデータ編集機能を実行する実行手段として機能する情報処理装置。」
【相違点】
本願補正発明は,「処理順序情報」の処理順序が,複数のプログラムモジュールのそれぞれに対して割り当てられた「固定の値」であって,「一定個数の複数のプログラムモジュールに対しては処理順序情報としてそれぞれ飛び飛びの値が割り当てられ,新規なプログラムモジュールをアプリケーションプログラムに対して追加する際は,当該新規なプログラムモジュールの処理順序に応じて前記飛び飛びの値の間の値が前記処理順序情報として割り当てられたプログラムモジュールを前記記憶装置に追加記憶させ」るのに対し,引用発明は,新規なプログラムモジュールをアプリケーションプログラムに対して追加して記憶することができるものの,「処理順序情報」の処理順序が「固定の値」であること,及び処理順序情報の値の割り当てについては特定されていない点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 処理順序を特定するための処理順序情報として,飛び飛びの値を固定の値として割当て,処理順序を変更する場合や新規な処理を追加する場合に,その処理順序に応じて,既に設定された飛び飛びの値の間の値を処理順序情報として割り当てることは,例えば,特開昭62-52636号公報に,「このプログラムを,第3図に例示するようなプログラムに変更するものとする。すなわち,元のプログラムの行番号20から70まで10飛びの行番号が付された6ステップの命令群に,行番号201から206まで1飛びの行番号を付したうえで元の行番号200と210の間に追加するものとする。」(2頁左下欄6行?12行)と記載されているように常とう手段であり,これにより,既に設定された処理順序を変更する必要がなくなるという作用効果を奏することは,当業者にとって自明である。

イ 引用発明は,修整エンジンによる修整処理ごとに順番(実行順序情報)を設定し,設定された順番に従って修整処理を実行するものであるから,その一部を外部から取得した場合,取得した新規の修整エンジンについても,当然,順番(実行順序情報)を設定する必要があるところ,上記常とう手段に鑑みれば,修整エンジンによる修整処理の実行順序情報として,飛び飛びの固定の値を割り当て,追加する修整エンジンによる修整処理には,その処理順序に応じて,前記飛び飛びの値の間の値を割り当てる構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,本願補正発明の奏する作用効果は,引用例に記載された発明及び上記常とう手段の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願補正発明は,引用例に記載された発明及び常とう手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反してなされたものであるから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年10月4日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし8に係る発明は,平成22年6月11日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項8に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成22年6月11日付け手続補正書によって補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その請求項8に記載された事項により特定される,前記第2(補正却下の決定)の[理由]1(2)のとおりのものである。

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から,前記第2の[理由]1(3)の限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用例に記載された発明及び常とう手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願の請求項8に係る発明は,引用例に記載された発明及び常とう手段に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-13 
結審通知日 2012-03-16 
審決日 2012-03-27 
出願番号 特願2004-271008(P2004-271008)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 毅  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 酒井 伸芳
殿川 雅也
発明の名称 アプリケーションプログラムおよび情報処理装置  
代理人 高柳 司郎  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康弘  
代理人 下山 治  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ