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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1257211
審判番号 不服2010-24955  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-05 
確定日 2012-05-17 
事件の表示 特願2009-133289「半導体情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月27日出願公開、特開2009-193604〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成11年5月20日に出願した特願平11-140411号の一部を、平成21年6月2日に新たな特許出願としたものであって、同日付けで審査請求がなされ、平成22年5月31日付けで拒絶理由通知(同年6月8日発送)がなされ、同年7月16日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、同年8月24日付けで拒絶査定(同年8月31日謄本送達)がなされ、これに対して、同年11月5日付けで審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。そして、平成23年1月13日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年4月22日付けで当審より審尋(同年4月26日発送)がなされたが、これに対して、出願人からの応答がなかったものである。

2.本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成22年11月5日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
内部バスと、
前記内部バスに接続される中央処理装置およびバスマスタ装置とを有し、
前記中央処理装置の命令実行に応じて出力されるCPU動作トレース情報と、前記バスマスタ装置のメモリアクセスに応じて出力されるバスアクセス情報とを、外部から供給されるデバッグ指示信号に応じて選択的に外部へ出力する制御を行うデバッグ支援機能を有する、半導体情報処理装置。」

3.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原審が拒絶理由通知において引用した特開平6-214819号公報(平成6年8月5日出願公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

A 「【0025】図1は請求項1記載の発明の一実施例に係わる情報処理装置のマイクロコンピュータの構成を示す図である。
【0026】図1において、マイクロコンピュータ1はMPU112、DMAC113、RAM114、ROM115、I/Oコントローラ116,117、ビット演算器118、内部信号出力回路(ISO)2を有している。また、これらの間で信号を伝達する共通アドレスバス119、内部アドレスバス120、データバス121、共通コントロールバス122、内部コントロールバス123を有している。したがって、マイクロコンピュータ1の構成は、図7に示すマイクロコンピュータ111にISO2を加えたものである。
【0027】ISO2は内部アドレスバス120及び内部コントロールバス123の一部を外部に出力するための回路で、内部アドレスバス120及び内部コントロールバス123に接続されている。ISO2はこれら内部信号24本のうち3本を選択して外部に出力する。いずれの3本を出力するのかは、選択信号SEL0?SEL2を外部から入力するかによって決められる。」

B 「【0031】以上のようにして、内部信号の24本のうちの一部の3本を外部に取り出すことができる。このマイクロコンピュータ1を、請求項2又は3記載の発明の一実施例を示す図3に示すように8つ配置し、それぞれのコンピュータに対して、選択信号SEL0?SEL2の値を全て異なるように設定すると、リアルタイムで内部信号を全て観測することができる。これを図6に示すエバチップ104の代わりに用いれば、マイクロコンピュータ1内部の信号をすべて観測できるので、マイクロコンピュータ1の内部信号のリアルタイムトレース、実行ブレークを行なうことが可能となる。」

C 「【0036】図5は請求項4記載の発明の一実施例を示す図である。
【0037】図5に示す実施例はMPU12内部のプログラムカウンタ(PC)19の値をマイクロコンピュータ18外部に出力するようにしたものである。
【0038】マイクロコンピュータ18はMPU112、DMAC113、RAM114、ROM115、I/Oコントローラ116,117、ビット演算器118、ISO20を有している。また、マイクロコンピュータ18の内部及び外部で共通に用いるアドレスバス14、データバス15、コントロールバス16を有している。
【0039】マイクロコンピュータシステムの開発時において、MPU112内部のPC19の値を外部から観測することは開発効率向上のために非常に有益である。しかし、例えば32ビットのPC19の値をそのまま外部に取り出そうとすると32本の信号が余計に必要となる。また、システムが完成して実際に動作するようになれば、PC19の値を観測する必要はないのでこの信号は無駄となる。そのため、実チップとは別の評価用のPCの値を出力するエバチップを開発する。
【0040】これに対して、この実施例では、実チップに8:1のセレクタを4つ有するISO20を組み込むことにより内部出力信号4本、選択信号3本の計7本の信号を加えるだけで済む。したがって、このマイクロコンピュータ18を8個用いれば、PC19の32ビットの値をリアルタイムで観測することができ、エミュレータによりPC19のリアルタイムトレース、PC19により実行ブレークを行なうことができる。」

(ア)上記Aの「マイクロコンピュータ1はMPU112、DMAC113、RAM114、ROM115、I/Oコントローラ116…(中略)…、内部信号出力回路(ISO)2を有している。また、これらの間で信号を伝達する…(中略)…内部アドレスバス120、…(中略)…、内部コントロールバス123を有している。…(中略)…ISO2は内部アドレスバス120及び内部コントロールバス123の一部を外部に出力するための回路で、内部アドレスバス120及び内部コントロールバス123に接続されている。ISO2はこれら内部信号…(中略)…を選択して外部に出力する。いずれ…(中略)…を出力するのかは、選択信号SEL0?SEL2を外部から入力するかによって決められる。」、及び上記Bの「マイクロコンピュータ1内部の信号をすべて観測できるので、マイクロコンピュータ1の内部信号のリアルタイムトレース、実行ブレークを行なうことが可能となる。」との記載からすると、引用文献には、
内部アドレスバスと内部コントロールバス(以下、これらをまとめて「内部バス」という。)と、
前記内部バスに接続されるMPUおよびDMACとを有し、
マイクロコンピュータの内部信号を、外部から供給される選択信号に応じて、選択的に外部へ出力する制御を行うISOを有する、マイクロコンピュータ
が記載されている。

よって、(ア)における記載及びその関連する図面から総合的に勘案すると、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

内部バスと、
前記内部バスに接続されるMPUおよびDMACとを有し、
マイクロコンピュータの内部信号を、外部から供給される選択信号に応じて、選択的に外部へ出力する制御を行うISOを有する、マイクロコンピュータ。

4.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「MPU」、「DMAC」、及び「マイクロコンピュータ」は、それぞれ、本願発明の「中央処理装置」、「バスマスタ装置」、及び「半導体情報処理装置」に相当する。

引用発明の「マイクロコンピュータの内部信号」と本願発明の「前記中央処理装置の命令実行に応じて出力されるCPU動作トレース情報と、前記バスマスタ装置のメモリアクセスに応じて出力されるバスアクセス情報」とは、ともに、“半導体情報処理装置の内部情報”である点で共通する。

引用発明の「選択信号」と本願発明の「デバッグ指示信号」とは、ともに、半導体情報処理装置の内部情報を選択的に外部へ出力する指示を与える“指示信号”である点で共通する。

引用発明の「ISO」と本願発明の「デバッグ支援機能」とは、ともに、外部から供給される指示信号に応じて、選択的に半導体情報処理装置の内部情報を出力する“入出力制御機能”である点で共通する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

内部バスと、
前記内部バスに接続される中央処理装置およびバスマスタ装置とを有し、
半導体情報処理装置の内部情報を、外部から供給される指示信号に応じて、選択的に外部へ出力する制御を行う入出力制御機能を有する、半導体情報処理装置。

(相違点1)

指示信号に応じて選択的に外部へ出力する内部情報において、本願発明が「前記中央処理装置の命令実行に応じて出力されるCPU動作トレース情報と、前記バスマスタ装置のメモリアクセスに応じて出力されるバスアクセス情報」であるのに対して、引用発明が「マイクロコンピュータの内部信号」である点。

(相違点2)

外部から供給される指示信号において、本願発明が「デバッグ指示信号」であるのに対して、引用発明が「選択信号」である点。

(相違点3)

外部から供給される指示信号に応じて選択的に外部へ出力する制御を行う入出力制御機能において、本願発明が「デバッグ支援機能」であるのに対して、引用発明が「ISO」である点。

5.当審の判断

相違点1ないし相違点3について検討する。

(1)相違点1について

上記「3.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」の、Bに「マイクロコンピュータ1内部の信号をすべて観測できるので、マイクロコンピュータ1の内部信号のリアルタイムトレース、実行ブレークを行なうことが可能となる。」と記載され、Cに「MPU12内部のプログラムカウンタ(PC)19の値をマイクロコンピュータ18外部に出力するようにしたものである。…(中略)…マイクロコンピュータシステムの開発時において、MPU112内部のPC19の値を外部から観測することは開発効率向上のために非常に有益である。…(中略)…。PC19のリアルタイムトレース…(中略)…を行なうことができる。」と記載されるように、引用文献には、マイクロコンピュータ内部の信号をすべて観測できる態様(すなわち、ISOが内部アドレスバスを経由してDMACに接続されていることから、引用発明における「マイクロコンピュータの内部信号」が“DMACに対するバスアクセス情報”をも観測できる態様)が記載されている。また、開発効率向上のために、MPU内部のプログラムカウンタの値(本願発明における「中央処理装置の命令実行に応じて出力されるCPU動作トレース情報」に相当)を外部に出力してトレースを行う技術についても開示されている。
してみれば、引用発明が選択的に外部へ出力する「マイクロコンピュータの内部信号」として、“MPU内部のプログラムカウンタの値と、DMACに対するバスアクセス情報”とすることは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。

よって、相違点1は格別のものではない。

(2)相違点2及び相違点3について

外部装置からCPU内蔵のDSUに対して通信しながらデバッグを行う技術については、引用文献等を示すまでもなく、当該技術分野における周知技術に過ぎない。そして、引用文献においても、上記「(1)相違点1について」で検討したように、MPU内部のプログラムカウンタの値を外部に出力してトレースを行っているのだから、選択信号を、デバッグの指示を与える“デバッグ指示信号”として、ISOがデバッグ支援機能を有するように構成することは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。

よって、相違点2及び相違点3は格別なものではない。

上記で検討したごとく、相違点1ないし相違点3は格別のものではなく、そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、容易に発明できたものである。

6.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-14 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-03 
出願番号 特願2009-133289(P2009-133289)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂庭 剛史  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 清木 泰
田中 秀人
発明の名称 半導体情報処理装置  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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