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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1257219
審判番号 不服2011-234  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-06 
確定日 2012-05-16 
事件の表示 特願2003-380247「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月10日出願公開、特開2004-163943〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年11月10日(パリ条約による優先権主張2002年11月14日、大韓民国)の出願であって、平成21年10月1日付けで拒絶理由が通知され、同年12月29日付けで手続補正がなされ、平成22年4月16日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月16日付けで手続補正がなされ、同年10月14日付けで前記平成22年7月16日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年1月6日に拒絶査定不服審判請求がなされ、これと同時に手続補正がなされたものである。

そして、本願の請求項に係る発明は、平成23年1月6日付け手続補正による補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりである。

「絶縁基板と、前記絶縁基板上に第1方向に形成されている第1信号線と、前記絶縁基板上に前記第1方向に形成されている維持電極と、前記絶縁基板上に第2方向に形成されて、前記第1信号線と絶縁されて交差している第2信号線と、
前記第1信号線及び前記第2信号線に連結されている第1薄膜トランジスタと、前記第1薄膜トランジスタが連結されている前記第1信号線及び前記第2信号線に連結されている第2薄膜トランジスタと、前記第1薄膜トランジスタに連結されている第1画素電極と、前記第2薄膜トランジスタに連結されている第2画素電極とを含む薄膜トランジスタ基板と、
前記薄膜トランジスタ基板と対向する基準電極基板と、
前記基準電極基板上に形成されている基準電極と、
前記薄膜トランジスタ基板と前記基準電極基板との間に注入されている液晶物質と、を有し、
前記第1薄膜トランジスタの第1ドレーン電極及びゲート電極の間に形成される第1静電容量と、前記第2薄膜トランジスタの第2ドレーン電極及びゲート電極の間に形成される第2静電容量とが互いに異なり、
前記第1画素電極と前記基準電極との間に印加される電圧と、前記第2画素電極と前記基準電極との間に印加される電圧とが互いに異なり、
前記維持電極は、前記第1画素電極及び前記第2画素電極と重なっている、液晶表示装置。」(以下「本願発明」という。)


2 引用刊行物の記載事項
原審における拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7-72509号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薄膜トランジスタを能動素子とするアクティブマトリックス液晶表示素子に関するものである。」

(2)「【0003】図7は薄膜トランジスタを能動素子とするアクティブマトリックス液晶表示素子の断面図である。この液晶表示素子は、液晶層をはさんで対向する一対の透明基板(ガラス基板等)1,2のうち、一方の基板1に透明な画素電極3とこの画素電極3にデータ信号を供給する薄膜トランジスタ10とをマトリックス状に配列形成し、他方の基板2に前記一方の基板1の各画素電極3と対向する透明な対向電極4を形成したもので、両基板1、2は枠状のシール材5を介して接合されており、液晶6は、両基板1、2間の前記シール材5で囲まれた領域に封入されている。」

(3)「【0013】本発明は、コントラストが良好で視野角も広いアクティブマトリックス液晶表示素子を提供することを目的としたものである。」

(4)「【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、液晶層をはさんで対向する一対の透明基板の一方に画素電極とこの画素電極にデータ信号を供給する薄膜トランジスタとをマトリックス状に配列し、他方の基板に前記一方の基板の各画素電極と対向する対向電極を形成したアクティブマトリックス液晶表示素子において、前記各画素電極をそれぞれ複数の電極に分割し、その各分割電極にそれぞれ対応させて、各々のゲート電極に同じゲート信号が供給され各々のドレイン電極に同じデータ信号が供給される薄膜トランジスタを設け、これら薄膜トランジスタのソース電極を前記各分割電極にそれぞれ接続するとともに、前記薄膜トランジスタのゲート電極とソース電極との間の容量を、各薄膜トランジスタごとに異ならせたことを特徴とするものである。
【0015】上記各薄膜トランジスタのゲート電極とソース電極との間の容量を異ならせるには、例えば、各薄膜トランジスタのゲート電極とソース電極との対向面積を互いに異ならせればよく、その例としては、各薄膜トランジスタのゲート電極のソース電極側への張出し幅を互いに異ならせるか、あるいは、各薄膜トランジスタのチャンネル幅を互いに異ならせることが考えられる。
【0016】
【作用】すなわち、本発明のアクティブマトリックス液晶表示素子は、各画素電極をそれぞれ複数の電極に分割することにより、画素電極と対向電極およびその間の液晶とで構成される画素を複数の小画素に分割したものであり、この液晶表示素子は、各分割電極にそれぞれ対応させて設けた各薄膜トランジスタに同じゲート信号と同じデータ信号とを供給することにより、前記各分割電極と対向電極との間に前記データ信号に応じた電圧を同時に印加して表示駆動される。
【0017】そして、この液晶表示素子では、前記各薄膜トランジスタのゲート・ソース電極間容量を互いに異ならせているため、各分割電極に対応する各小画素の電気光学的特性も異なっている。すなわち、各薄膜トランジスタに供給されるデータ信号が同じ信号であっても、各分割電極と対向電極との間には互いに異なる電圧が保持される。
【0018】このため、この液晶表示素子によれば、上記各小画素のうちのある小画素はコントラストが高くなる電気光学的特性をもたせ、他の小画素は視野角が広くなる電気光学的特性をもたせることができ、このようにすれば、各画素の表示がその各小画素の表示を平均化した表示になるため、良好なコントラストの表示が得られるとともに視野角も広くなる。」

(5)「【0019】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1?図5を参照して説明する。
【0020】この実施例のアクティブマトリックス液晶表示素子は、液晶層をはさんで対向する一対の透明基板の一方に画素電極とこの画素電極にデータ信号を供給する薄膜トランジスタとをマトリックス状に配列し、他方の基板に前記一方の基板の各画素電極と対向する対向電極を形成したものであり、概略的には図7に示したような構成となっている。なお、この実施例の液晶表示素子は、TN型のものである。
・・・
【0022】この液晶表示素子は、図1に示すように、その一方の基板1上に形成する各画素電極をそれぞれ複数(この実施例では2つ)の電極3a,3bに分割し、その各分割電極(以下、分割画素電極という)3a,3bにそれぞれ対応させて、各々のゲート電極Ga,Gbに同じゲート信号が供給され各々のドレイン電極Da,Dbに同じデータ信号が供給される薄膜トランジスタ10a,10bを設けたものである。
【0023】上記薄膜トランジスタ10a,10bは、いずれも逆スタガー型と呼ばれる構造のものであり、これら薄膜トランジスタ10a,10bは、図3および図4に示すように、基板1上に形成されたゲート電極Gと、このゲート電極Gを覆うゲート絶縁膜11と、このゲート絶縁膜11の上に前記ゲート電極Gaと対向させて形成されたi型半導体膜12と、このi型半導体膜12の上にn型半導体膜13を介して形成されたソース電極Sおよびドレイン電極Dとで構成されている。なお、これら薄膜トランジスタ10a,10bのゲート絶縁膜11は同じ絶縁膜(例えばSi N膜)とされており、またi型半導体膜12a,12bは同じ半導体(a-Si )で形成され、n型半導体膜13a,13bもn型半導体(不純物をドープしたa-Si )で形成されている。
【0024】一方、基板1上には、ゲート信号を供給するゲートラインGLが各画素電極行ごとにその一側に沿わせて配線されており、上記2つの薄膜トランジスタ10a,10bのゲート電極Gは、同じゲートラインGLに一体に形成されている。
【0025】また、上記薄膜トランジスタ10a,10bのゲート絶縁膜11は、画素電極および薄膜トランジスタの配列領域にその全域にわたって形成されており、上記分割画素電極3a,3bは前記ゲート絶縁膜11の上に形成されている。
【0026】さらに、上記ゲート絶縁膜11の上には、データ信号を供給するデータラインDLが各画素電極列ごとにその一側に沿わせて配線されており、上記2つの薄膜トランジスタ10a,10bのドレイン電極Dは、同じデータラインDLに一体に形成されている。
【0027】なお、このデータラインDLは、薄膜トランジスタ10a,10bを図示しない層間絶縁膜で覆ってその上に配線してもよく、その場合は、データラインDLを、前記層間絶縁膜に設けたコンタクト孔において薄膜トランジスタ10a,10bのドレイン電極Da,Dbに接続すればよい。
【0028】そして、上記2つの薄膜トランジスタ10a,10bのうち、一方の薄膜トランジスタ10aのソース電極Sは、この薄膜トランジスタ10aが対応する第1の分割画素電極3aに接続されており、他方の薄膜トランジスタ10bのソース電極Sは、この薄膜トランジスタ10bが対応する第2の分割画素電極3bに接続されている。
【0029】また、上記一方の薄膜トランジスタ10aは、図1および図3に示したように、そのゲート電極Gのソース電極S側への張出し幅(ソース電極Sとの重なり幅)w1を小さくしたものとされており、他方の薄膜トランジスタ10bは、図1および図4に示したように、そのゲート電極Gのソース電極S側への張出し幅w2を大きくしたものとされている。
【0030】すなわち、上記一方の薄膜トランジスタ10aは、そのゲート電極Gとソース電極Sとの対向面積を小さくしたものとされ、他方の薄膜トランジスタ10bは、そのゲート電極Gとソース電極Sとの対向面積を大きくしたものとされており、したがって、これら薄膜トランジスタ10a,10bのゲート電極Gとソース電極Sとの間の容量は互いに異なっている。
・・・
【0032】また、図2において、C_(GS-a)は、第1の分割画素電極3aに接続した薄膜トランジスタ10aのゲート・ソース電極間容量、C_(GS-b)は、第2の分割画素電極3bに接続した薄膜トランジスタ10bのゲート・ソース電極間容量であり、この実施例では、一方の薄膜トランジスタ10aのゲート電極Gとソース電極Sとの対向面積を小さくし、他方の薄膜トランジスタ10bのゲート電極Gとソース電極Sとの対向面積を大きくしているため、両薄膜トランジスタ10a,10bのゲート・ソース電極間容量C_(GS-a),C_(GS-b)は、C_(GS-a)<C_(GS-b)となっている。
【0033】上記アクティブマトリックス液晶表示素子は、各画素電極をそれぞれ2つの電極3a,3bに分割することにより、画素電極と対向電極およびその間の液晶とで構成される画素を2つの小画素に分割したものであり、この液晶表示素子は、各分割画素電極3a,3bにそれぞれ対応させて設けた各薄膜トランジスタ10a,10bにゲートラインGLおよびデータラインDLから同じゲート信号と同じデータ信号とを供給することにより、前記各分割画素電極3a,3bと対向電極との間に前記データ信号に応じた電圧を同時に印加して表示駆動される。
【0034】そして、この液晶表示素子では、上記各薄膜トランジスタ10a,10bのゲート・ソース電極間容量C_(GS-a),C_(GS-b)を互いに異ならせているため、各薄膜トランジスタ10a,10bに供給されるデータ信号が同じ信号であっても、各分割画素電極3a,3bと対向電極との間には互いに異なる電圧が保持される。
・・・
【0041】したがって、上記液晶表示素子によれば、良好なコントラストの表示が得られるとともに、視野角も広くすることができる。」

よって、これらの記載を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「液晶層をはさんで対向する一対の透明基板の一方に画素電極とこの画素電極にデータ信号を供給する薄膜トランジスタとをマトリックス状に配列し、他方の基板に前記一方の基板の各画素電極と対向する対向電極を形成したアクティブマトリックス液晶表示素子であって、
一方の基板1上に形成する各画素電極をそれぞれ2つの電極3a,3bに分割し、その各分割画素電極3a,3bにそれぞれ対応させて、各々のゲート電極Ga,Gbに同じゲート信号が供給され各々のドレイン電極Da,Dbに同じデータ信号が供給される薄膜トランジスタ10a,10bを設け、
これら薄膜トランジスタ10a,10bは、基板1上に形成されたゲート電極Gと、このゲート電極Gを覆うゲート絶縁膜11と、このゲート絶縁膜11の上に前記ゲート電極Gaと対向させて形成されたi型半導体膜12と、このi型半導体膜12の上にn型半導体膜13を介して形成されたソース電極Sおよびドレイン電極Dとで構成されており、
一方、基板1上には、ゲート信号を供給するゲートラインGLが各画素電極行ごとにその一側に沿わせて配線されており、上記2つの薄膜トランジスタ10a,10bのゲート電極Gは、同じゲートラインGLに一体に形成されており、
また、上記薄膜トランジスタ10a,10bのゲート絶縁膜11は、画素電極および薄膜トランジスタの配列領域にその全域にわたって形成されており、上記分割画素電極3a,3bは前記ゲート絶縁膜11の上に形成されており、
さらに、上記ゲート絶縁膜11の上には、データ信号を供給するデータラインDLが各画素電極列ごとにその一側に沿わせて配線されており、上記2つの薄膜トランジスタ10a,10bのドレイン電極Dは、同じデータラインDLに一体に形成されており、
上記2つの薄膜トランジスタ10a,10bのうち、一方の薄膜トランジスタ10aのソース電極Sは、この薄膜トランジスタ10aが対応する第1の分割画素電極3aに接続されており、他方の薄膜トランジスタ10bのソース電極Sは、この薄膜トランジスタ10bが対応する第2の分割画素電極3bに接続されており、
上記一方の薄膜トランジスタ10aはそのゲート電極Gのソース電極S側への張出し幅(ソース電極Sとの重なり幅)w1を小さくしたものとされており、他方の薄膜トランジスタ10bは、そのゲート電極Gのソース電極S側への張出し幅w2を大きくしたものとされており、すなわち、上記一方の薄膜トランジスタ10aは、そのゲート電極Gとソース電極Sとの対向面積を小さくしたものとされ、他方の薄膜トランジスタ10bは、そのゲート電極Gとソース電極Sとの対向面積を大きくしたものとされており、したがって、これら薄膜トランジスタ10a,10bのゲート電極Gとソース電極Sとの間の容量は互いに異なっており、上記各薄膜トランジスタ10a,10bのゲート・ソース電極間容量C_(GS-a),C_(GS-b)を互いに異ならせているため、各薄膜トランジスタ10a,10bに供給されるデータ信号が同じ信号であっても、各分割画素電極3a,3bと対向電極との間には互いに異なる電圧が保持され、良好なコントラストの表示が得られるとともに、視野角も広くすることができるアクティブマトリックス液晶表示素子。」


3 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「一方の基板1」、「(基板1上に、各画素電極行ごとにその一側に沿わせて配線された)ゲートラインGL」、「(基板1上のゲート電極Gを覆うゲート絶縁膜11の上に、各各画素電極列ごとにその一側を沿わせて配線された)データラインDL」、「(ゲート電極GがゲートラインGLに一体に形成され、ドレイン電極DLがデータラインDLに一体に形成されている)薄膜トランジスタ10a」、「(ゲート電極Gが同じゲートラインGLに一体に形成され、ドレイン電極DLが同じデータラインDLに一体に形成されている)薄膜トランジスタ10b」、「(薄膜トランジスタ10aのソース電極Sと接続されている)第1の分割画素電極3a」及び「(薄膜トランジスタ10bのソース電極Sと接続されている)第2の分割画素電極3b」は、それぞれ、本願発明の「絶縁基板」、「(前記絶縁基板上に第1方向に形成されている)第1信号線」、「(前記絶縁基板上の第2方向に形成されて、前記第1信号線と絶縁されて交差している)第2信号線」、「(前記第1信号線及び前記第2信号線に連結されている)第1薄膜トランジスタ」、「(前記第1薄膜トランジスタが連結されている前記第1信号線及び前記第2信号線に連結されている)第2薄膜トランジスタ」、「(前記第1薄膜トランジスタに連結されている)第1画素電極」及び「(前記第2薄膜トランジスタに連結されている)第2画素電極」に相当する。

(2)引用発明の「(一方の基板1上に、ゲートラインGL、データラインDL、薄膜トランジスタ10a、薄膜トランジスタ10b、第1の分割画素電極3a及び第2の分割画素電極3bを形成した)基板」と、本願発明の「(絶縁基板と、前記絶縁基板上に第1方向に形成されている第1信号線と、前記絶縁基板上に前記第1方向に形成されている維持電極と、前記絶縁基板上に第2方向に形成されて、前記第1信号線と絶縁されて交差している第2信号線と、前記第1信号線及び前記第2信号線に連結されている第1薄膜トランジスタと、前記第1薄膜トランジスタが連結されている前記第1信号線及び前記第2信号線に連結されている第2薄膜トランジスタと、前記第1薄膜トランジスタに連結されている第1画素電極と、前記第2薄膜トランジスタに連結されている第2画素電極とを含む)薄膜トランジスタ基板」とは、「(絶縁基板と、前記絶縁基板上に第1方向に形成されている第1信号線と、前記絶縁基板上に第2方向に形成されて、前記第1信号線と絶縁されて交差している第2信号線と、前記第1信号線及び前記第2信号線に連結されている第1薄膜トランジスタと、前記第1薄膜トランジスタが連結されている前記第1信号線及び前記第2信号線に連結されている第2薄膜トランジスタと、前記第1薄膜トランジスタに連結されている第1画素電極と、前記第2薄膜トランジスタに連結されている第2画素電極とを含む)薄膜トランジスタ基板」である点で一致する。

(3)引用発明の「(液晶層をはさんで一方の基板と対向する)他方の基板」、「(他方の基板に形成された)対向電極」、「液晶層」及び「アクティブマトリックス液晶表示素子」は、それぞれ、本願発明の「(前記薄膜トランジスタ基板と対向する)基準電極基板」、「(前記基準電極基板上に形成されている)基準電極」、「(前記薄膜トランジスタ基板と前記基準電極基板との間に注入されている)液晶物質」及び「液晶表示装置」に相当する。

(4)引用発明は、「一方の薄膜トランジスタ10aのソース電極Sは、この薄膜トランジスタ10aが対応する第1の分割画素電極3aに接続されており、他方の薄膜トランジスタ10bのソース電極Sは、この薄膜トランジスタ10bが対応する第2の分割画素電極3bに接続されており、上記一方の薄膜トランジスタ10aはそのゲート電極Gのソース電極S側への張出し幅(ソース電極Sとの重なり幅)w1を小さくしたものとされており、他方の薄膜トランジスタ10bは、そのゲート電極Gのソース電極S側への張出し幅w2を大きくしたものとされており、すなわち、上記一方の薄膜トランジスタ10aは、そのゲート電極Gとソース電極Sとの対向面積を小さくしたものとされ、他方の薄膜トランジスタ10bは、そのゲート電極Gとソース電極Sとの対向面積を大きくしたものとされており、したがって、これら薄膜トランジスタ10a,10bのゲート電極Gとソース電極Sとの間の容量は互いに異なっており、上記各薄膜トランジスタ10a,10bのゲート・ソース電極間容量C_(GS-a),C_(GS-b)を互いに異ならせているため、各薄膜トランジスタ10a,10bに供給されるデータ信号が同じ信号であっても、各分割画素電極3a,3bと対向電極との間には互いに異なる電圧が保持され」るから、
ア 引用発明の「一方の薄膜トランジスタ10aのソース電極S」、「一方の薄膜トランジスタ10aのゲート電極G」、「薄膜トランジスタ10aのゲート・ソース電極間容量C_(GS-a)」、「他方の薄膜トランジスタ10bのソース電極S」、「他方の薄膜トランジスタ10bのゲート電極G」及び「薄膜トランジスタ10bのゲート・ソース電極間容量C_(GS-b)」は、それぞれ、本願発明の「第1薄膜トランジスタの第1ドレーン電極」、「第1薄膜トランジスタのゲート電極」、「第1薄膜トランジスタの第1ドレーン電極及びゲート電極の間に形成される第1静電容量」、「第2薄膜トランジスタの第2ドレーン電極」、「第2薄膜トランジスタのゲート電極」及び「第2薄膜トランジスタの第2ドレーン電極及びゲート電極の間に形成される第1静電容量」に相当し、
イ 引用発明は、本願発明の「前記第1薄膜トランジスタの第1ドレーン電極及びゲート電極の間に形成される第1静電容量と、前記第2薄膜トランジスタの第2ドレーン電極及びゲート電極の間に形成される第2静電容量とが互いに異なり、前記第1画素電極と前記基準電極との間に印加される電圧と、前記第2画素電極と前記基準電極との間に印加される電圧とが互いに異なり」との事項を備える。

よって、本願発明と引用発明とは、
「絶縁基板と、前記絶縁基板上に第1方向に形成されている第1信号線と、前記絶縁基板上に第2方向に形成されて、前記第1信号線と絶縁されて交差している第2信号線と、
前記第1信号線及び前記第2信号線に連結されている第1薄膜トランジスタと、前記第1薄膜トランジスタが連結されている前記第1信号線及び前記第2信号線に連結されている第2薄膜トランジスタと、前記第1薄膜トランジスタに連結されている第1画素電極と、前記第2薄膜トランジスタに連結されている第2画素電極とを含む薄膜トランジスタ基板と、
前記薄膜トランジスタ基板と対向する基準電極基板と、
前記基準電極基板上に形成されている基準電極と、
前記薄膜トランジスタ基板と前記基準電極基板との間に注入されている液晶物質と、を有し、
前記第1薄膜トランジスタの第1ドレーン電極及びゲート電極の間に形成される第1静電容量と、前記第2薄膜トランジスタの第2ドレーン電極及びゲート電極の間に形成される第2静電容量とが互いに異なり、
前記第1画素電極と前記基準電極との間に印加される電圧と、前記第2画素電極と前記基準電極との間に印加される電圧とが互いに異なる、液晶表示装置。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

本願発明では、薄膜トランジスタ基板が、絶縁基板上に第1方向に形成されている維持電極を有し、前記維持電極は、第1画素電極及び第2画素電極と重なっているのに対し、引用発明では、薄膜トランジスタ基板が、絶縁基板上にそのような維持電極を有していない点(以下「相違点」という。)。


4 判断
上記相違点につき検討する。
同じゲート線及びデータ線に第1薄膜トランジスタ及び第2薄膜トランジスタを連結し、前記第1薄膜トランジスタに第1画素電極、前記第2薄膜トランジスタに第2画素電極をそれぞれ連結した、液晶表示装置の薄膜トランジスタ基板において、前記ゲート線と同じ方向に維持電極を形成し、該維持電極が前記第1画素電極及び第2画素電極と重なるようにしたものは、本願の優先日時点で周知であるから(必要なら、特開平10-268349号公報(【0014】?【0017】、図1)、特開平9-43610号公報(【0021】、【0022】、図3)、特開平9-179141号公報(【0022】、図1)、特開平4-75030号公報(3頁右下欄9行?4頁右上欄13行、第1図)参照。)、引用発明において、「一方の基板1」上に「ゲートラインGL」と同じ方向の維持電極を形成し、該維持電極が「第1の分割画素電極3a」及び「第2の分割画素電極3b」と重なるようになして、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易になし得ることである。

なお、請求人は、平成23年1月6日付け審判請求書(3.(2))及び同年8月12日付け回答書(1.(2))等において、「引用文献1には、・・・キックバック電圧を利用して反転時と非反転時とで画素の光透過特性を異ならせることは、全く記載されておりません。」、「引用文献1には、キックバック現象による電圧降下を考慮にいれて各サブ画素電極でのキックバック現象後の電圧をそれぞれ異ならせることについては記載も示唆もありません。」等と主張する。
しかしながら、本願明細書(【0019】)には、「このようなキックバック現象は、ゲート電極123と第1、2ドレーン電極175a、175bとの間に形成された寄生容量によって発生する。」と記載され、「キックバック現象」は、「ゲート電極」と「第1、2ドレーン電極」との間に形成された寄生容量により発生するものと認められるところ、引用発明も、「各薄膜トランジスタ10a,10bのゲート・ソース電極間容量C_(GS-a),C_(GS-b)を互いに異ならせ」て「良好なコントラストの表示が得られるとともに、視野角も広くする」ものであるから、結果として、上記キックバック現象による電圧降下を利用するものといえ、上記の点は実質的な相違点となるものではない。

また、本願発明の奏する効果が、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測困難な程の格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-14 
結審通知日 2011-12-20 
審決日 2012-01-05 
出願番号 特願2003-380247(P2003-380247)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 江成 克己
松川 直樹
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 稲積 朋子  
代理人 小野 由己男  
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