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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1257230
審判番号 不服2011-8935  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-26 
確定日 2012-05-17 
事件の表示 特願2008-137300「カメラシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月22日出願公開、特開2009- 17539〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年 5月26日(優先権主張平成19年 6月 6日)の出願であって、平成23年 1月25日付けで拒絶査定がされ、それを不服として平成23年 4月26日に審判請求がされたものである。


2.本願発明
本願の請求項8に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年9月16日付けの手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「被写体の光学像を形成する撮像光学系と、
前記光学像を画像信号に変換し前記被写体の画像を取得する撮像部と、
前記撮像部で取得された複数の前記画像を並べて表示可能な表示部と、
前記撮像部により取得された第1画像の一部分を第1表示画像として前記表示部に表示させ、前記第1画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された第2画像の一部分であって前記第2画像における位置が前記第1画像における前記第1表示画像の位置と同じ部分を、第2表示画像として前記第1表示画像と並べて前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記第1表示画像および前記第2表示画像のうち少なくとも一方の画像を他の画像に切り替えるための切替操作部と、を備え、
前記表示制御部は、前記第1画像および前記第2画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された第3画像の一部分であって前記第3画像における位置が前記第1画像における前記第1表示画像の位置と同じ部分を、前記切替操作部の操作に応じて、前記第1表示画像または前記第2表示画像の代わりに前記表示部に表示させる、
カメラシステム。」


3.刊行物1の記載
これに対して、原査定の拒絶の理由(特許法第29条第2項)で引用された、特開2006-5640号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に、次の記載がある。
(刊行物1の記載)

「【0001】
本発明は、撮像装置における画像表示技術に関するものである。

【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デジタルカメラで、例えばブラケット撮影や連写撮影を行った後に、撮影画像を詳細に見比べたいという要求がある。しかし従来のデジタルカメラにおける画像表示方式では複数の画像を拡大したり、拡大画面の表示位置を動かしながら比較することは困難であった。
【0007】
従って、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像部と画像表示部とを有する撮像装置において、撮影した類似画像を詳細に見比べることことができるようにすることである。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わる撮像装置は、被写体像を撮像する撮像手段と、該撮像手段から得られた画像信号を表示する画像表示手段と、該画像表示手段に表示された特定の複数の画像のうち、選択された所定数の画像に対して、少なくとも画像の拡大処理又は画像の移動処理を含む複数の処理の中から選択された処理を同時に行なう表示制御手段と、を具備することを特徴とする。

【0010】
また、この発明に係わる撮像装置において、前記特定の複数の画像とは、ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像、連写撮影時において連続して撮影された複数の画像、最初の撮影時から予め設定された時間内に撮影された複数の画像のうちのいずれかであることを特徴とする。
【0011】
また、この発明に係わる撮像装置において、前記表示制御手段は、前記特定の複数の画像を前記表示手段に表示させるとともに、少なくとも画面中の輝度分布を示すヒストグラム、白飛び範囲のいずれか又は双方を前記表示手段に表示させることを特徴とする。

【0017】
また、この発明に係わる撮像装置において、前記表示制御手段は、前記表示手段に表示されている複数の画像に連続する次画像の表示の指示を受けた場合に、前記表示手段に既に表示されている複数の画像の拡大倍率及び画像位置を保持したまま、前記次画像を前記表示手段に表示させることを特徴とする。

【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置(本実施形態ではデジタルカメラ)の概略構成を示すブロック図である。
【0024】
図1において、100は画像処理装置である。10は撮影レンズ、12は絞り機能を備えるシャッター、14は光学像を電気信号に変換する撮像素子、120は撮像素子14のアナログ信号出力を増幅してカメラの感度を設定するゲインアンプ、16は撮像素子14のアナログ信号出力をデジタル信号に変換するA/D変換器である。
【0025】
18は撮像素子14、A/D変換器16、D/A変換器26にクロック信号や制御信号を供給するタイミング発生回路であり、メモリ制御回路22及びシステム制御回路50により制御される。20は画像処理回路であり、A/D変換器16からのデータ或いはメモリ制御回路22からのデータに対して所定の画素補間処理や色変換処理を行う。また、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行ない、得られた演算結果に基づいてシステム制御回路50が露光制御部40、測距制御部42に対して制御を行なう、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理を行っている。

【0051】
以下に、再生モードにおける本実施形態の特徴的な構成について詳細に説明する。
【0052】
まず、通常の再生モード時における1画像表示状態を図2に示す。ここで、複数表示指示操作を行うと複数表示状態となる。複数表示状態となった表示装置のイメージを図3に示す。この複数表示指示操作は画像処理装置100の操作部70に備えられたある特定のボタンを押下あるいは長押しする操作でもよいし、画像表示部28のメニュー画面から選択する方法でもよい。
【0053】
また、ここでは説明を簡単にするために2画像表示の場合を示すが2画像に限定するものではなく、表示画像数を選択できるようにしてもよい。
【0054】
また、表示部中の下方に、操作対象画像選択のための指示表示を示しているが、操作対象画像選択部をトグルに限定するものではない。例えば十字ボタンで指定してセットボタンで選択/解除してもよく、タッチパネルを備えたシステムであればタッチパネルで選択してもよい。
【0055】
ここでは一例としてセットボタントグルによる操作対象画像選択を行うが、セットボタンを一度押すと図4に示すように選択画像が切り替わって1画像選択状態となり、この状態では全ての画像操作(拡大、移動など)が、選択された画像に対してのみ行われる。もう一度セットボタンを押すと、今度は図5に示す様にもう一方の画像が選択される。この状態も1画像選択状態である。さらにもう一度セットボタンを押すと、二画像選択状態となる。この複数画像選択状態において、拡大、表示位置移動操作を行ったとき、図6に示すように選択された複数画像が同時に操作される(選択された複数画像全てが同時に拡大、表示位置移動操作される)。拡大した状態で再び1画像選択状態にし、次の画像を表示する操作を行うと、拡大倍率および表示位置が保持されたまま次の画像が表示される。言い換えると、次の画像に対しても既に表示中の画像に対する拡大倍率及び表示位置の設定が適用される。

【図面の簡単な説明】
【0072】
… 略 …
【図3】マルチ画像表示(2画像表示)状態において複数画像を選択した状態を示す図である。
【図4】マルチ画像表示(2画像表示)状態において左側の1画像を選択した状態を示す図である。
【図5】マルチ画像表示(2画像表示)状態において右側の1画像を選択した状態を示す図である。
【図6】マルチ画像表示(2画像表示)状態において複数画像を同時に操作(拡大)した状態を示す図である。」
(刊行物1の記載、以上)


4.刊行物1に記載された発明(引用発明)

(1)刊行物1に記載された発明の概要(課題・目的)
上記刊行物1の段落【0006】?【0007】によれば、
「デジタルカメラで、例えばブラケット撮影や連写撮影を行った後に、撮影画像を詳細に見比べたいという要求」があり、「従来のデジタルカメラにおける画像表示方式では複数の画像を拡大したり、拡大画面の表示位置を動かしながら比較することは困難であった」という課題に鑑みて、
「撮像部と画像表示部とを有する撮像装置において、撮影した類似画像を詳細に見比べることことができるようにする」ことを目的としている。

(2)「撮像装置」について

上記刊行物1の段落【0008】に、
「上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わる撮像装置は、被写体像を撮像する撮像手段と、該撮像手段から得られた画像信号を表示する画像表示手段と、該画像表示手段に表示された特定の複数の画像のうち、選択された所定数の画像に対して、少なくとも画像の拡大処理又は画像の移動処理を含む複数の処理の中から選択された処理を同時に行なう表示制御手段と、を具備することを特徴とする。」とあるから、
刊行物1には、前記4.(1)に記載の課題を解決し、目的を達成するための「撮像装置」であって、
「撮像装置は、被写体像を撮像する撮像手段と、該撮像手段から得られた画像信号を表示する画像表示手段と、該画像表示手段に表示された特定の複数の画像のうち、選択された所定数の画像に対して、少なくとも画像の拡大処理又は画像の移動処理を含む複数の処理の中から選択された処理を同時に行なう表示制御手段と、を具備する撮像装置。」が記載されているといえる。

(3)「撮影レンズ10」、「絞り機能を備えるシャッター12」、「撮像素子14」、および、前記撮像素子14にクロック信号や制御信号を供給する「タイミング発生回路18」について

上記刊行物1の図1に示される本発明の撮像装置の構成として、
「図1において、 …略… 10は撮影レンズ、12は絞り機能を備えるシャッター、14は光学像を電気信号に変換する撮像素子」(段落【0024】)とあり、
また、「18は撮像素子14 …略… にクロック信号や制御信号を供給するタイミング発生回路であり」(段落【0025】)とあるから、
前記撮像装置は、「撮影レンズ(10)」、「絞り機能を備えるシャッター(12)」、「撮像素子(14)」、および、前記撮像素子14にクロック信号や制御信号を供給する「タイミング発生回路18」を備えるといえ、これらの構成は上記4.(2)に記載の前記「被写体像を撮像する撮像手段」に含まれる構成であることは明らかである。
よって、刊行物1に記載の前記撮像装置は、(前記「被写体像を撮像する撮像手段」に含まれる構成であるところの)「撮影レンズ10」、「絞り機能を備えるシャッター12」、「撮像素子14」、および、前記撮像素子14にクロック信号や制御信号を供給する「タイミング発生回路18」を備えるといえる。

(4)「特定の複数の画像」について

上記刊行物1の段落【0010】に、「この発明に係わる撮像装置において、前記特定の複数の画像とは、ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像、連写撮影時において連続して撮影された複数の画像、最初の撮影時から予め設定された時間内に撮影された複数の画像のうちのいずれかである」とあるから、
刊行物1に記載の前記撮像装置において、前記「特定の複数の画像」は、「ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像」であるといえる。

(5)「再生モードにおける2画像表示」について

上記刊行物1の段落【0051】に、「再生モードにおける本実施形態の特徴的な構成について詳細に説明する。」とあり、
段落【0052】?【0053】に、「通常の再生モード時における1画像表示状態」(図2)で、「複数表示指示操作を行うと複数表示状態となる」と記載され、
該「複数表示状態」として、図3の記載と共に、2つの画像が左右に並べて表示される「2画像表示」が示されている。
また、上記刊行物1の段落【0011】に、「前記表示制御手段は、前記特定の複数の画像を前記表示手段に表示させる」とあるから、前記「表示制御手段」が前記2つの画像(複数の画像)を左右に並べて表示させるといえる。
よって、上記刊行物1には、「再生モード」において、「通常の再生モード時における1画像表示状態」で、「複数表示指示操作を行う」と、前記「表示制御手段」が2つの画像を左右に並べて表示させる「2画像表示」となることが記載されている。

(6)「拡大、表示位置移動操作」について

上記刊行物1の段落【0054】に、「表示部中の下方に、操作対象画像選択のための指示表示を示しているが、操作対象画像選択部をトグルに限定するものではない。」として、「操作対象画像選択部」としての「トグル」が記載され、
また、段落【0055】に、「セットボタントグルによる操作対象画像選択を行うが、セットボタンを一度押すと図4に示すように選択画像が切り替わって1画像選択状態となり、この状態では全ての画像操作(拡大、移動など)が、選択された画像に対してのみ行われる。もう一度セットボタンを押すと、今度は図5に示す様にもう一方の画像が選択される。この状態も1画像選択状態である。さらにもう一度セットボタンを押すと、二画像選択状態となる。この複数画像選択状態において、拡大、表示位置移動操作を行ったとき、図6に示すように選択された複数画像が同時に操作される(選択された複数画像全てが同時に拡大、表示位置移動操作される)。」とあるから、
前記4.(5)に示した前記「再生モード」において、
前記「操作対象画像選択部」である「トグル」(「セットボタントグル」、「セットボタン」)を、
「一度押す」と「選択画像が切り替わって1画像選択状態となり、この状態では全ての画像操作(拡大、移動など)が、選択された画像に対してのみ行われ」、
「もう一度セットボタンを押す」と、「もう一方の画像」が「1画像選択状態」で「選択され」、
「さらにもう一度セットボタンを押すと、二画像選択状態」となり、
前記「複数画像選択状態(二画像選択状態)において、拡大、表示位置移動操作を行」うと、「選択された複数画像(二画像)が同時に操作され」、前記「選択された複数画像(二画像)全てが同時に拡大、表示位置移動操作される」といえる。

また、上記刊行物1の段落【0076】(【図面の簡単な説明】)には
「【図3】マルチ画像表示(2画像表示)状態において複数画像を選択した状態を示す図である。
【図4】マルチ画像表示(2画像表示)状態において左側の1画像を選択した状態を示す図である。
【図5】マルチ画像表示(2画像表示)状態において右側の1画像を選択した状態を示す図である。
【図6】マルチ画像表示(2画像表示)状態において複数画像を同時に操作(拡大)した状態を示す図である。」とあり、
図3?5(図面)からは、
画面内の上下方向中央付近に2つの画像が左右に並んで表示され、前記2つの画像のそれぞれは、同様の構図で、右上部に2個の雲、中央部左から右にかけて山の稜線、左下部に3本の木、が表示された表示画面が見てとれ、
また、図6(図面)からは、
(図3?5と同様に)画面内の上下方向中央付近に2つの画像が左右に並んで表示され、該2つの画像のそれぞれは、同様の構図で、(図3?5に開示される2つの画像それぞれの左下部に示された3本の木と同様の)3本の木のみが大きく、それぞれの画像の枠いっぱいに表示された表示画面が見てとれ、
前記図3?5は、前記「1画像選択状態」および前記「二画像選択状態(複数画像選択状態)」を示す図であり、
前記図6は、前記「選択された複数画像(二画像)全てが同時に拡大、表示位置移動操作され」た状態を示す図であるから、
前記1画像選択状態および前記二画像選択状態においては、画面内の上下方向中央付近に2つの画像が左右に並んで表示され、前記2つの画像のそれぞれは、同様の構図で、右上部に2個の雲、中央部左から右にかけて山の稜線、左下部に3本の木、が表示された表示画面が見てとれ、
前記選択された二画像(複数画像)全てが同時に拡大、表示位置移動操作された状態においては、画面内の上下方向中央付近に2つの画像が左右に並んで表示され、該2つの画像のそれぞれは、同様の構図で、前記1画像選択状態および前記二画像選択状態における前記2つの画像それぞれの左下部に示された3本の木と同様の3本の木のみが大きく、それぞれの画像の枠いっぱいに表示された表示画面が見てとれる。

(7)「次の画像が表示される」ことについて

上記刊行物1の段落【0055】に、「拡大した状態で再び1画像選択状態にし、次の画像を表示する操作を行うと、拡大倍率および表示位置が保持されたまま次の画像が表示される。言い換えると、次の画像に対しても既に表示中の画像に対する拡大倍率及び表示位置の設定が適用される。」とあり、
上記刊行物1の段落【0017】に、「前記表示制御手段は、前記表示手段に表示されている複数の画像に連続する次画像の表示の指示を受けた場合に、前記表示手段に既に表示されている複数の画像の拡大倍率及び画像位置を保持したまま、前記次画像を前記表示手段に表示させる」とあるから、
前記4.(5)に示した前記「再生モード」において、
前記「拡大した状態で再び1画像選択状態にし、次の画像を表示する操作を行うと」、「既に表示中の画像に対する拡大倍率及び表示位置の設定が適用され」、前記「表示制御手段」は、「拡大倍率および表示位置を保持したまま」「次の画像」を「表示させる」といえる。

(8)まとめ(「引用発明」認定)
上記4.(1)ないし(7)によれば、刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)として、以下のとおりのものを認定することができる。

「デジタルカメラで、例えばブラケット撮影や連写撮影を行った後に、撮影画像を詳細に見比べたいという要求があり、従来のデジタルカメラにおける画像表示方式では複数の画像を拡大したり、拡大画面の表示位置を動かしながら比較することは困難であったという課題を解決し、
撮像部と画像表示部とを有する撮像装置において、撮影した類似画像を詳細に見比べることことができるようにする目的を達成するための撮像装置であって、
前記撮像装置は、被写体像を撮像する撮像手段と、該撮像手段から得られた画像信号を表示する画像表示手段と、該画像表示手段に表示された特定の複数の画像のうち、選択された所定数の画像に対して、少なくとも画像の拡大処理又は画像の移動処理を含む複数の処理の中から選択された処理を同時に行なう表示制御手段と、を具備し、
(前記被写体像を撮像する撮像手段に含まれる構成であるところの)撮影レンズ10、絞り機能を備えるシャッター12、撮像素子14、および、前記撮像素子14にクロック信号や制御信号を供給するタイミング発生回路18を備え、
前記特定の複数の画像は、ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像であり、
再生モードにおいて、通常の再生モード時における1画像表示状態で、複数表示指示操作を行うと、前記表示制御手段が2つの画像を左右に並べて表示させる2画像表示となり、
前記再生モードにおいて、
操作対象画像選択部であるセットボタン(トグル、セットボタントグル)を、
一度押すと選択画像が切り替わって1画像選択状態となり、この状態では全ての画像操作(拡大、移動など)が、選択された画像に対してのみ行われ、
もう一度前記セットボタンを押すと、もう一方の画像が1画像選択状態で選択され、
さらにもう一度前記セットボタンを押すと、二画像選択状態となり、
前記二画像選択状態において、拡大、表示位置移動操作を行うと、選択された二画像が同時に操作され、前記選択された二画像全てが同時に拡大、表示位置移動操作され、
前記1画像選択状態および前記二画像選択状態においては、画面内の上下方向中央付近に2つの画像が左右に並んで表示され、前記2つの画像のそれぞれは、同様の構図で、右上部に2個の雲、中央部左から右にかけて山の稜線、左下部に3本の木、が表示され、
前記選択された二画像全てが同時に拡大、表示位置移動操作された状態においては、画面内の上下方向中央付近に2つの画像が左右に並んで表示され、該2つの画像のそれぞれは、同様の構図で、前記1画像選択状態および前記二画像選択状態における前記2つの画像それぞれの左下部に示された3本の木と同様の3本の木のみが大きく、それぞれの画像の枠いっぱいに表示され、
前記拡大した状態で再び1画像選択状態にし、次の画像を表示する操作を行うと、既に表示中の画像に対する拡大倍率及び表示位置の設定が適用され、前記表示制御手段は、拡大倍率および表示位置を保持したまま次の画像を表示させる
撮像装置。」


5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)「カメラシステム」について

引用発明の「撮像装置」は、撮像手段で被写体像を撮像して、得られた画像信号を画像表示手段に表示する装置であって、本願発明の「カメラシステム」に対応するといえる。

(2)「被写体の光学像を形成する撮像光学系」について

引用発明の「撮像装置」が備える前記撮像手段は、「撮影レンズ10」、「絞り機能を備えるシャッター12」を含むものであって、これらの構成(「撮影レンズ10」、「絞り機能を備えるシャッター12」)は、被写体の光学像を形成するための光学系の構成であることは明らかであるから、本願発明の「被写体の光学像を形成する撮像光学系」と一致する。
よって、引用発明は本願発明と、「被写体の光学像を形成する撮像光学系」を備える点で一致する。

(3)「前記光学像を画像信号に変換し前記被写体の画像を取得する撮像部」について
引用発明の前記「撮像装置」が備える前記撮像手段は、「撮像素子14」および前記撮像素子14にクロック信号や制御信号を供給する「タイミング発生回路18」を含むものであって、
前記「撮像素子14」および前記「タイミング発生回路18」は、前記5.(2)に示した「撮影レンズ10」、前記「絞り機能を備えるシャッター12」を介して得られる被写体の光学像を画像信号に変換して、前記被写体の画像を取得するための構成であることは明らかであるから、
引用発明の前記「撮像装置」は、「前記光学像を画像信号に変換し前記被写体の画像を取得する撮像部」を備えるといえ、この点で本願発明と一致する。

(4)「前記撮像部で取得された複数の前記画像を並べて表示可能な表示部」について

引用発明の前記「撮像装置」は、「撮像手段から得られた画像信号を表示する画像表示手段」を備えており、該「画像表示手段」は「特定の複数の画像」を表示するものであって、「2画像表示」のときに「2つの画像が左右に並べて表示され」るものであるから、
引用発明は、前記撮像部(撮像手段)で取得された複数(2つ)の画像を(左右に)並べて表示可能な表示部(画像表示手段)を備える点で本願発明と一致する。

(5)「前記撮像部により取得された第1画像の一部分を第1表示画像として前記表示部に表示させ、前記第1画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された第2画像の一部分であって前記第2画像における位置が前記第1画像における前記第1表示画像の位置と同じ部分を、第2表示画像として前記第1表示画像と並べて前記表示部に表示させる表示制御部」について

引用発明の前記「撮像装置」は、「画像表示手段に表示された特定の複数の画像のうち、選択された所定数の画像に対して、少なくとも画像の拡大処理又は画像の移動処理を含む複数の処理の中から選択された処理を同時に行なう表示制御手段」を備えており、
引用発明の前記「再生モード」において「複数表示指示操作」を行って、「前記表示制御手段が2つの画像を左右に並べて表示させる2画像表示」とし、さらに「セットボタン」を複数回押すことで「二画像選択状態」として、「拡大、表示位置移動操作を行う」ことによって、「選択された二画像が同時に操作され、前記選択された二画像全てが同時に拡大、表示位置移動操作され」る。

(「拡大、表示位置移動操作を行う」前の)前記「二画像選択状態」においては、画面内の上下方向中央付近に2つの画像が左右に並んで表示され、前記2つの画像のそれぞれは、同様の構図で、右上部に2個の雲、中央部左から右にかけて山の稜線、左下部に3本の木、が表示されており、
前記「選択された二画像全てが同時に拡大、表示位置移動操作され」た状態においては、画面内の上下方向中央付近に2つの画像が左右に並んで表示され、該2つの画像のそれぞれは、同様の構図で、前記「二画像選択状態」における前記2つの画像のそれぞれの左下部に示された3本の木と同様の3本の木のみが大きく、それぞれの画像の枠いっぱいに表示されているから、
前記「拡大、表示位置移動操作され」た状態で、前記画像表示手段に並べて表示される2つの画像は、
前記「拡大、表示位置移動操作を行う」前の2つの画像それぞれの一部分(左下部の3本の木の部分)を拡大したものといえ、
また、前記「拡大、表示位置移動操作を行う」前の2つの画像に対して「同時に拡大、表示位置移動操作され」たものであるから、「拡大、表示位置移動操作を行う」前の画像における同じ位置の同じ部分の画像といえる。

よって、
前記「選択された二画像が同時に操作され、前記選択された二画像全てが同時に拡大、表示位置移動操作され」た状態で、前記画像表示手段に並べて表示される2つの画像は、
前記2つの画像のうちの一方の画像(本願発明でいう第1画像)の(拡大、表示位置移動操作された)一部分(本願発明でいう第1表示画像)と、
前記2つの画像のうちの他方の画像(本願発明でいう第2画像)の一部分であって、前記他方の画像(第2画像)における位置が前記一方の画像(第1画像)の前記一部分(第1表示画像)の位置と同じ部分(本願発明でいう第2表示画像)といい得る。

そして、前記第1画像および前記第2画像は、画像表示手段に表示された「特定の複数の画像」であり、前記5.(4)に示した前記撮像部(撮像手段)で取得された画像であって、かつ、「ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像」といえる。

よって、引用発明は本願発明と、
前記撮像部により取得された第1画像の一部分を第1表示画像として前記表示部に表示させ、前記撮像部により取得された第2画像の一部分であって前記第2画像における位置が前記第1画像における前記第1表示画像の位置と同じ部分を、第2表示画像として前記第1表示画像と並べて前記表示部に表示させる表示制御部
を備える点で一致しているといえる。
しかし、前記第2画像が、
本願発明においては、前記第1画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された画像であるのに対し、
引用発明においては、ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像のうちの前記第1画像とは異なる画像であって、前記第1画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された画像とはしていない点で相違する。

(6)「前記第1表示画像および前記第2表示画像のうち少なくとも一方の画像を他の画像に切り替えるための切替操作部」について

引用発明の前記「撮像装置」においては、「前記拡大した状態で再び1画像選択状態にし、次の画像を表示する操作を行う」ことができるから、前記「1画像選択状態」において、「次の画像を表示する操作」を行うための操作部を備えているといえる。

前記操作部は、拡大した状態で表示されている前記第1表示画像および前記第2表示画像のうちの一方の画像を(引用発明の前記セットボタンにより)「1画像選択」した状態において、「次の画像を表示する」ために操作されるものであって、その操作がされることにより、選択した一方の画像が前記「次の画像」に置き換えられて(切り替えられて)表示されるといえ、
前記操作部は前記「1画像選択」した「一方の画像」を前記「次の画像」(他の画像)に切り替えるための操作部(切替操作部)といえる。

よって、引用発明の前記「撮像装置」は、
前記第1表示画像および前記第2表示画像のうちの少なくとも一方の画像を他の画像(前記第1画像および前記第2画像の次の画像)に切り替えるための切替操作部を備えるといえ、この点で本願発明と一致する。

(7)「前記表示制御部は、前記第1画像および前記第2画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された第3画像の一部分であって前記第3画像における位置が前記第1画像における前記第1表示画像の位置と同じ部分を、前記切替操作部の操作に応じて、前記第1表示画像または前記第2表示画像の代わりに前記表示部に表示させる」について

引用発明の前記「撮像装置」においては、
前記5.(6)に示した「前記拡大した状態で再び1画像選択状態にし、次の画像を表示する操作」を行うと、
「既に表示中の画像に対する拡大倍率及び表示位置の設定が適用され、前記表示制御手段は、拡大倍率および表示位置を保持したまま次の画像を表示させる」ものである。

そして、前記5.(6)に記載した前記「次の画像」は、「ブラケット撮影時において連続して撮影された(撮影部により取得された)複数の画像」のうちの、前記第1画像および前記第2画像とは異なる第3画像に対して、既に表示中の画像に対する拡大倍率及び表示位置の設定が適用された画像(第3表示画像)である。

そして、前記表示制御手段は、拡大した状態で表示されている前記第1表示画像および前記第2表示画像のうちの一方の画像を、前記操作部(切替操作部)の操作に応じて、前記一方の画像の代わりに、前記「次の画像」(第3表示画像)に切り替えて表示させるものである。

そして、前記「次の画像」(第3表示画像)は、
既に表示中の画像に対する拡大倍率及び表示位置の設定が適用された(拡大倍率および表示位置が保持されたままの)画像であるから、前記5.(5)に示した第2表示画像と同様、
前記第3画像の一部分であって、前記第3画像における位置が前記第1画像の一部分(第1表示画像)の位置と同じ部分の画像といえる。

してみると、引用発明は、本願発明と、
前記表示制御手段は、前記撮像部により取得された第3画像の一部分であって前記第3画像における位置が前記第1画像における前記第1表示画像の位置と同じ部分を、前記切替操作部の操作に応じて、前記第1表示画像または前記第2表示画像の代わりに前記表示部に表示させる」
点で一致し、
前記第3画像が、
本願発明においては、前記第1画像および前記第2画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された画像であるのに対し、
引用発明においては、ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像のうちの前記第1の画像および第2の画像とは異なる画像であって、前記第1画像および前記第2画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された画像とはしていない点で相違する。


6.一致点、相違点

以上の対比によれば、本件補正発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

《一致点》
被写体の光学像を形成する撮像光学系と、
前記光学像を画像信号に変換し前記被写体の画像を取得する撮像部と、
前記撮像部で取得された複数の前記画像を並べて表示可能な表示部と、
前記撮像部により取得された第1画像の一部分を第1表示画像として前記表示部に表示させ、前記撮像部により取得された第2画像の一部分であって前記第2画像における位置が前記第1画像における前記第1表示画像の位置と同じ部分を、第2表示画像として前記第1表示画像と並べて前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記第1表示画像および前記第2表示画像のうち少なくとも一方の画像を他の画像に切り替えるための切替操作部と、を備え、
前記表示制御部は、前記撮像部により取得された第3画像の一部分であって前記第3画像における位置が前記第1画像における前記第1表示画像の位置と同じ部分を、前記切替操作部の操作に応じて、前記第1表示画像または前記第2表示画像の代わりに前記表示部に表示させる、
カメラシステム。

《相違点》
相違点1
前記第2画像が、
本願発明においては、前記第1画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された画像であるのに対し、
引用発明においては、ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像のうちの前記第1画像とは異なる画像であって、前記第1画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された画像とはしていない点

相違点2
前記第3画像が、
本願発明においては、前記第1画像および前記第2画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された画像であるのに対し、
引用発明においては、ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像のうちの前記第1の画像および第2の画像とは異なる画像であって、前記第1画像および前記第2画像とは異なる撮影条件で前記撮像部により取得された画像とはしていない点

前記相違点1,2は、要するに、
前記第1画像、前記第2画像、および、前記第3画像が、
本願発明においては、それぞれ異なる撮影条件で前記撮像部により取得された画像であるのに対し、
引用発明では、ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像のうちの、それぞれ異なる画像であって、それぞれ異なる撮影条件で前記撮像部により取得された画像とはしていない点
で相違するといえ、この(要するにとした)相違点について、下記7.判断で検討する。


7.判断
上記(要するにとした)相違点について検討する。

デジタルカメラなどの撮像装置の技術分野において、ブラケット撮影は当業者に広く知られている周知の技術であって、前記周知の技術であるブラケット撮影として、露出や絞り値などの撮影条件を変えて複数枚の画像を撮影する技術もまた、具体例を挙げるまでもなく、当業者に広く知られていて、周知の技術であるから、
引用発明におけるブラケット撮影として、前記周知の技術である、撮影条件を変えて複数枚の画像を撮影する技術を採用し、
引用発明における、ブラケット撮影時において連続して撮影された複数の画像を、
撮影条件を変えて(異なる撮影条件で)撮影された(撮像部により取得された)複数枚の画像とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。


8.効果
以上のように、上記相違点は、刊行物1に記載された発明および周知の技術に基づいて当業者が容易になし得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。


9.まとめ(査定の検討)
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明および周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


10.むすび
以上のとおり、本願の請求項8に係る発明は、刊行物1に記載された発明および周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、残る請求項1ないし7,9ないし14に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-16 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-05 
出願番号 特願2008-137300(P2008-137300)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仲間 晃  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 渡邊 聡
▲徳▼田 賢二
発明の名称 カメラシステム  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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