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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1257237
審判番号 不服2011-11787  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-03 
確定日 2012-05-17 
事件の表示 特願2004-245750「タッチパネル及び内視鏡装置のプロセッサ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 9日出願公開、特開2006- 61310〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年8月25日を出願日とする出願であって、平成22年9月10日付けで手続補正がなされ、平成23年3月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けにて手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
さらに、同年9月8日付けで審尋がなされ、回答書が同年10月24日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1は、
「 【請求項1】
所定の操作を実行させるためにユーザが押圧する範囲を示す、複数の表示ボタンと、
前記表示ボタンごとに、前記表示ボタンの全域を含むように設けられ、ユーザによる押圧を検知可能な範囲であるタッチ領域とを備え、
複数の前記表示ボタンのうち関連性のある表示ボタンが互いに接するように設けられていることを特徴とするタッチパネル。」
から
「 【請求項1】
所定の操作を実行させるためにユーザが押圧する範囲を示す、複数の表示ボタンと、
前記表示ボタンごとに、前記表示ボタンの全域を含むように設けられ、ユーザによる押圧を検知可能な範囲であるタッチ領域とを備え、
複数の前記表示ボタンのうち、所定の動作を開始又は終了させる表示ボタンに隣接して、関連性のある表示ボタンが互いに接するように設けられており、 前記関連性のある表示ボタンは、前記所定の動作の設定値を定めるための表示ボタンであり、前記関連性のある表示ボタンは前記所定の動作を開始又は終了させる表示ボタンと縦の長さが同じ長さの縦長の矩形に形成されることを特徴とするタッチパネル。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

上記補正により、請求項1に記載した発明の互いに接するように設けられている関連性のある表示ボタンは、「所定の動作を開始又は終了させる表示ボタンに隣接して」設けられるものに変更されると同時に、「前記関連性のある表示ボタンは、前記所定の動作の設定値を定めるための表示ボタンであり、前記関連性のある表示ボタンは前記所定の動作を開始又は終了させる表示ボタンと縦の長さが同じ長さの縦長の矩形に形成される」ものに限定されるよう変更された。

2 願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)の記載事項
(2-1)「【0031】
タッチパネル40上には、第1?第8表示ボタン52A?Hが表示されている(図5参照)。第1?第8表示ボタン52A?Hは、いずれも矩形状であり、プロセッサ底面30Bに平行な方向に沿って配置されている。そして、第1?第8表示ボタン52A?Hの周囲には、第1?第8タッチ領域54A?Hが設けられている。このうち、第1表示ボタン52Aの周囲にある第1タッチ領域54Aは、先述の第1の例のタッチ領域62に相当し、第5表示ボタン52Eの周囲の第5タッチ領域54Eは、第2の例のタッチ領域64に相当する。
【0032】
第1?第4表示ボタン52A?D(以下、第1グループという)は、いずれも、第1グループ中の他の表示ボタンと互いに接している。同様に、第5、及び第6表示ボタン52E、F(以下、第2グループという)も、互いに接している。第1、及び第2グループは、それぞれ、同一のパラメータを上下させる表示ボタン、あるいは所定の操作を実行させるボタンと取り消すボタンであって、互いに関連性のある表示ボタン群から構成されている。そして、これらの表示ボタン群が、タッチ領域を介さずに直接接していることにより、ユーザは、表示ボタン群が互いに関連性を有するものであることを容易に認識でき、タッチパネル40の操作性が向上する。さらに、複数の表示ボタンを互いに接するように配置することにより、タッチパネル40の限られた表示画面を有効に活用できる。」

(2-2)上記記載に対応した【図5】には、タッチパネル40上の表示ボタンのうち、第1グループの矩形の表示ボタン52Aには「ポンプレベル」、それに順次隣接する3つの矩形表示ボタン52B?52Dには、それぞれ「弱」、「中」、「強」と表記されており、第2グループの表示ボタン52Eには「画像処理」、そして同52Eの下方に隣接して存在する表示ボタン52Fには「画像処理取消」と表記されている。

3 判断
「ポンプレベル」と表記された表示ボタン52Aの機能がどのようなものであるのか、出願当初明細書等には、何ら記載されていないし、「ポンプレベル」というだけの表記のあるボタンが、ポンプの「動作を開始又は終了させる表示ボタン」と一般に認識されているものとも認められない。
そして、上記段落【0032】の「第1、及び第2グループは、それぞれ、同一のパラメータを上下させる表示ボタン、あるいは所定の操作を実行させるボタンと取り消すボタンであって、互いに関連性のある表示ボタン群から構成されている。」という記載のうちの「あるいは所定の操作を実行させるボタンと取り消すボタンであって」という記載も、「第1、及び第2グループは、それぞれ、・・・」という記載からみて、第2グループのそれぞれ、「画像処理」、「画像処理取消」と表記された表示ボタン52E及び52Fについての記載であると認められる。
そうすると、「ポンプレベル」と表記された表示ボタン52Aと「弱」と表記された表示ボタン52Bが互いに接するように設けられたことが記載されているからといって、「所定の動作を開始又は終了させる表示ボタン」と「前記所定の動作の設定値を定めるための表示ボタン」が互いに接するように設けられた構成は、出願当初明細書等に記載されておらず、また、そのような構成が出願当初明細書等の記載から自明な事項ともいえず、新たな技術的意義を追加するものであることは明らかである。

したがって、この補正は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された範囲内においてしたものではなく、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成22年9月10日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「 【請求項1】
所定の操作を実行させるためにユーザが押圧する範囲を示す、複数の表示ボタンと、
前記表示ボタンごとに、前記表示ボタンの全域を含むように設けられ、ユーザによる押圧を検知可能な範囲であるタッチ領域とを備え、
複数の前記表示ボタンのうち関連性のある表示ボタンが互いに接するように設けられていることを特徴とするタッチパネル。」(以下、「本願発明」という)

2 先願の明細書等の記載事項(下線は当審で付与した。)
(1)原査定の拒絶の理由1に引用されている先願:特願2004-193050号(特開2006-17478号公報参照)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面には、次の記載がある。
(1-ア) 「【特許請求の範囲】【請求項1】 画面上に道路地図と各種ボタンが表示されるとともに、押圧された画面上の位置を示す位置信号を出力するタッチパネルと、
前記ボタンに対応するタッチパネル上の有効領域を設定するとともに、前記位置信号がいずれのボタンに対応する有効領域内の信号であるかを判定し、判定結果にしたがって、前記ボタンに割り当てられている機能を実行する制御手段と、
車両の走行/非走行を検出する検出手段と、
前記検出手段が走行を検出しているときは、非走行を検出している場合に比べて、前記有効領域を増大する領域設定手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。」

(1-イ) 「【0024】
図10、11は本発明によるタッチパネル16の他の表示例を示す図である。タッチパネル16に表示されるボタンとして、図10に示されるメニュー画面のように複数のボタンが隣接して並んで表示されるものがある。このメニュー画面は経路探索に関するメニューである。このようなメニュー表示をされたとき、各ボタンのタッチエリアを拡大するとボタン同士のタッチエリアが重なってしまう。このような場合は、次のようにして走行時の指の押圧位置のずれによる誤操作を防止する。車両が停止しているときに、探索経路に関するメニュー表示画面では図10に示すように、ルート探索、迂回路探索、ルート編集、探索条件設定、全ルート表示、ルート消去の各ボタン101?106が表示される。このときの各ボタンのタッチエリアは、タッチエリア同士の重なり合いを防ぐために各ボタン101?106の表示エリアと同じ範囲に設定されている。」

(1-ウ) そして、図10には、ルート探索、迂回路探索、ルート編集、探索条件設定、全ルート表示、ルート消去の各ボタン101?106が、画面の上下方向にその順序で上から互いに接して示されているタッチパネル16の表示例が記載されている。

上記(1-ア)?(1-ウ)の記載と図1?14を参照すると、上記先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、次の発明が記載されていると認められる。
「経路探索に関する操作を実行させるためにユーザが押圧する範囲を示す、複数の表示ボタンと、
前記表示ボタンごとに、前記表示ボタンと同じ範囲に設定されている各ボタンのタッチエリアを備え、
複数の前記表示ボタンのうち、「全ルート表示」と「ルート消去」の表示ボタンが互いに接するように設けられているタッチパネル。」

3 対比・判断
本願発明と先願の当初明細書等に記載された発明とを対比すると、「全ルート表示」と「ルート消去」の表示ボタンは、経路探索に関する操作という「所定の操作」の「関連性のある表示ボタン」に他ならない。また、先願記載のタッチパネルの「前記表示ボタンごとに、前記表示ボタンと同じ範囲に設定されている各ボタンのタッチエリア」は、本願発明の「前記表示ボタンごとに、前記表示ボタンの全域を含むように設けられ、ユーザによる押圧を検知可能な範囲であるタッチ領域」に相当する。
そうすると、本願発明は、先願の当初明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

4 回答書の補正案について
なお、請求人は、平成23年10月24日付けの回答書において、『そこで平成23年6月3日付手続補正書による請求項1において、「複数の前記表示ボタンのうち、所定の動作を開始又は終了させる表示ボタンに隣接して、関連性のある表示ボタンが互いに接するように設けられており、前記関連性のある表示ボタンは、前記所定の動作の設定値を定めるための表示ボタンであり、前記関連性のある表示ボタンは前記所定の動作を開始又は終了させる表示ボタンと縦の長さが同じ長さの縦長の矩形に形成される」の箇所を、「複数の前記表示ボタンは、縦の長さが同じ長さの縦長の矩形に形成され、複数の前記表示ボタンのうち、同一のパラメータを上下させるための、互いに関連性のある表示ボタンが、前記パラメータを下げる方から上げる方に順に並ぶように互いに接するように設けられている」と補正したい』と希望している。
しかしながら、複数の表示ボタンの形状を「複数の前記表示ボタンは、縦の長さが同じ長さの縦長の矩形に形成され」とすることは、タッチパネルの複数の表示ボタンの配列デザインや表示可能な大きさ等に応じて、当業者が適宜設計変更できる範囲内の事項にすぎない。
また、同一のパラメータを上下させるための表示ボタンの配列について、「複数の前記表示ボタンのうち、同一のパラメータを上下させるための、互いに関連性のある表示ボタンが、前記パラメータを下げる方から上げる方に順に並ぶように互いに接するように設けられている」とする点も、例えば、本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平7-230351号公報の図27の複数の変倍設定キーの倍率の並べ方にもみられるように、複数のパラメータ値の異なる選択キーの配列として、誤操作を少なくするためには、順番が乱れている配列より、パラメータを下げる方から上げる方に順に並ぶように互いに接するように設けることは、普通に行われている表示ボタンの配列方法にすぎない。
そして、「所定の操作を実行させるためにユーザが押圧する範囲を示す、複数の表示ボタンと、
前記表示ボタンごとに、前記表示ボタンの全域を含むように設けられ、ユーザによる押圧を検知可能な範囲であるタッチ領域とを備えたタッチパネル」は、例えば、本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2003-296027号公報に記載されているように周知技術である。
したがって、補正案を採用したとしても、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、先願の当初明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-15 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-05 
出願番号 特願2004-245750(P2004-245750)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A61B)
P 1 8・ 561- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋熊 政一  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 田部 元史
信田 昌男
発明の名称 タッチパネル及び内視鏡装置のプロセッサ  
代理人 虎山 滋郎  
代理人 松浦 孝  
代理人 小倉 洋樹  
代理人 藤 拓也  

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