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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1257560
審判番号 不服2007-9027  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-29 
確定日 2012-06-19 
事件の表示 特願2004-182595「インターネット情報通信システムを介した画像伝達における色変化情報伝達方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-350309〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願(以下、「本願」という。)は、平成14年2月5日に出願した特願2002-28622号の一部を平成16年6月21日に新たに特許出願したものであって、平成19年2月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年4月27日付けで手続補正がなされ、平成20年12月25日付けの審判合議体による拒絶理由通知に対して平成21年3月9日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、同年11月20日付けの審判合議体による最後の拒絶理由通知に対して平成22年1月25日付けで意見書が提出され、さらに同年2月8日付けで上申書が提出されたものである。

2.当審拒絶理由の内容
上記平成21年11月20日付けの審判合議体による最後の拒絶理由通知は、以下の理由第1及び第2を含むものである。

理由第1:平成21年3月9日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

そして、上記拒絶理由通知書には、下記の指摘がなされている。



(1)本件補正前及び本件補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲の請求項1及び2については、本件補正前に、
「【請求項1】
少なくとも一つの彩色商品の見本画像と、印刷されたRGB基準色画像またはJIS規格基準色画像のいずれかから選択された印刷基準色画像を組込んで彩色商品カタログとして印刷し、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、
情報の送信元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログとしてインターネット情報通信システムを介して情報の受信側に送信し、
情報の受信側がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像としてモニタに表示し、その画像中のデジタル化されている前記基準色画像部分と、情報の受信側にある、情報の送信元と同等の印刷基準色画像を受信者が対比することによって、インターネット情報通信システムを介した画像伝達によって発生する画像色の変化を受信者が把握することを特徴とする、彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の伝達方法。
【請求項2】
情報の受信側がモニタ表示のデジタル画像を対象としてデジタル基準色画像部分の色を受信者が画像のカラーマッチング処理によって、情報の受信側にある、情報の送信元と同等の印刷基準色画像の色に合致させることにより、前記基準色画像部分以外の部分の画像の色も同時に色補正し、この色補正処理によって得られた明度、コントラスト、彩度、色バランスの調整値(カラーマッチング調整値)を受信者が把握することを特徴とする、請求項1に記載の彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の伝達方法。」
とあったものを、本件補正後に、
「【請求項1】
少なくとも一つの彩色商品の見本画像と、基準色画像αを組込んで彩色商品カタログとし、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、
情報の送信元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログXとしてインターネット情報通信システムを介して不特定多数の潜在消費者である情報の受信者に送信し、
デジタル商品カタログXを受信した前記受信者がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像X‘として自己が所有する画像システムのモニタに表示し、
自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正することを特徴とする、彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の伝達方法。
【請求項2】
前記基準色画像がRGB基準色であることを特徴とする、請求項1に記載の彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の伝達方法。」
と補正しようとするものである。

(2)補正の適否
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載と本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載とをそれぞれ対比すると、本件補正には、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に関して、以下の補正事項(ア)ないし(キ)が含まれる。

(ア)本件補正前の請求項1における「印刷されたRGB基準色画像またはJIS規格基準色画像のいずれかから選択された印刷基準色画像」を本件補正後の請求項1において「基準色画像α」とし、本件補正後の請求項2において「前記基準色画像がRGB基準色である」とする補正。

(イ)本件補正前の請求項1における「彩色商品カタログとして印刷し、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し」を本件補正後の請求項1において「彩色商品カタログとし、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し」とする補正。

(ウ)本件補正前の請求項1における「情報の送信元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログとしてインターネット情報通信システムを介して情報の受信側に送信し」を本件補正後の請求項1において「情報の送信元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログXとしてインターネット情報通信システムを介して不特定多数の潜在消費者である情報の受信者に送信し」とする補正。

(エ)本件補正前の請求項1における「情報の受信側がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像としてモニタに表示し」を本件補正後の請求項1において「デジタル商品カタログXを受信した前記受信者がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像X‘として自己が所有する画像システムのモニタに表示し」とする補正。

(オ)本件補正前の請求項1における「その画像中のデジタル化されている前記基準色画像部分と、情報の受信側にある、情報の送信元と同等の印刷基準色画像を受信者が対比することによって、インターネット情報通信システムを介した画像伝達によって発生する画像色の変化を受信者が把握する」を削除する補正。

(カ)本件補正前の請求項2における「情報の受信側がモニタ表示のデジタル画像を対象としてデジタル基準色画像部分の色を受信者が画像のカラーマッチング処理によって、情報の受信側にある、情報の送信元と同等の印刷基準色画像の色に合致させることにより、前記基準色画像部分以外の部分の画像の色も同時に色補正し」を本件補正後の請求項1において「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」とする補正。

(キ)本件補正前の請求項2における「この色補正処理によって得られた明度、コントラスト、彩度、色バランスの調整値(カラーマッチング調整値)を受信者が把握する」を削除する補正。

また、上記補正の根拠について、請求人は、平成21年3月9日付け意見書において、次の(ク)のように主張している。

(ク)「(2)請求項1に関する補正事項について
本願の請求項1に係る発明は、基本的には当初請求項1、4および6に係る発明を基礎としています。
(イ)補正前の請求項1中の「少なくとも一つの彩色商品の見本画像と、印刷されたRGB基準色画像またはJIS規格基準色画像のいずれかから選択された印刷基準色画像を組込んで彩色商品カタログとして印刷し、この商品カタログを組込んで彩色商品カタログとして印刷し、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、情報の送信元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログとしてインターネット情報通信システムを介して情報の受信側に送信し、」を、『少なくとも一つの彩色商品の見本画像と、基準色画像αを組込んで彩色商品カタログとし、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、情報の送信元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログXとしてインターネット情報通信システムを介して不特定多数の潜在消費者である情報の受信者に送信し、』と補正しました。
(イ-1)まず、「基準色画像」についての補正根拠について説明すると、「基準色画像」は、出願当初特許請求の範囲の請求項1及び当初明細書の段落0020、0021、0024、0025、0058及び0059の記載によれば、「基準色画像」は、格別限定された「印刷されたRGB基準色画像またはJIS規格基準色画像のいずれかから選択された印刷基準色画像」に限らないのであります。そこで、これらの記載を根拠として、上記のとおり、『少なくとも一つの彩色商品の見本画像と、基準色画像αを組込んで彩色商品カタログとし、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、』と補正しました。
(イ-2)ついで、補正前の「彩色商品カタログとして印刷し、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、」を、『彩色商品カタログとし、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、』と補正することの根拠は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1(具体的には、「基準色を組込んだ商品カタログを作成し、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、」と記載されています。)及び当初明細書の段落0020及び0029に同趣旨の記載があることに基づきます。この記載によれば、「商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納」するには、「彩色商品カタログとして印刷」する工程は一態様として記載されているのでありまして、必ずしも、「彩色商品カタログとして印刷」する工程は必要でないことは明白であります。
そこで、これらの記載を根拠として、上記のとおり、「彩色商品カタログとして印刷し、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、」を、『彩色商品カタログとし、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、』と補正しました。
(イ-3)そして、「基準色画像」を、『基準色画像α』と補正する根拠は、単に記号を付して構成をより明瞭とすることにあります。
(イ-4)又、「デジタル商品カタログ」を、『デジタル商品カタログX』と補正する根拠は、単に記号を付して構成をより明瞭とすることにあります。
(イ-5)さらに、「情報の受信側に送信し」を、『不特定多数の潜在消費者である情報の受信者に送信し』と補正する根拠は、当初請求項1には、この構成に関して「消費者に送信し」と記載され、当該請求項1及び当初明細書の段落0001には、本願発明が「インターネット情報通信システムを介した」方法であることが記載されており、更に当初明細書の段落0002及び0009には、「不特定多数の一般消費者に」と記載されており、消費者が『潜在消費者』であることは、当初明細書の段落0002、0022、0037(ここでは、「潜在購入者」と記載されています。)、0043、0044、0052、0055、及び0058に記載されています。これらの記載に基づいて、「情報の受信側に送信し」を、『不特定多数の潜在消費者である情報の受信者に送信し』と補正しました。
(ロ)補正前の請求項1中の「情報の受信側がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像としてモニタに表示し、その画像中のデジタル化されている前記基準色画像部分と、情報の受信側にある、情報の送信元と同等の印刷基準色画像を受信者が対比することによって、インターネット情報通信システムを介した画像伝達によって発生する画像色の変化を受信者が把握すること」を、『デジタル商品カタログXを受信した前記受信者がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像X‘として自己が所有する画像システムのモニタに表示し、
自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正すること』と補正しました。
(ロ-1)まず、「情報の受信側がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像としてモニタに表示し、」を、『デジタル商品カタログXを受信した前記受信者がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像X‘として自己が所有する画像システムのモニタに表示し、』とする補正は、構成をより明瞭にするための表現上の補正であり、この内「受信側」が、『デジタル商品カタログXを受信した前記受信者』であることは既述の項目(1)の説明から明らかであり、又『デジタル商品カタログの受信データをデジタル画像X‘として自己が所有する画像システムのモニタに表示』すること関して、「デジタル画像」を、『デジタル画像X‘』と補正することは単に記号を付して構成をより明瞭とすることにあり、又、「モニタ」を、『自己が所有する画像システムのモニタ』とすることについては、当初明細書の段落0022の記載に基づいています。
(ロ-2)「その画像中のデジタル化されている前記基準色画像部分と、情報の受信側にある、情報の送信元と同等の印刷基準色画像を受信者が対比することによって、インターネット情報通信システムを介した画像伝達によって発生する画像色の変化を受信者が把握すること」を、『自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正すること』についての補正根拠は、以下のとおりであります。
(i)補正後請求項1の構成中に『自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、』との構成を限定する補正は、以下の各事項を根拠としています。
(a)当初請求項6に「カラーマッチング処理操作によって、モニター表示の基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致さることによって同時に色調整された彩色商品カタログ画像(モニター表示)」と記載されていること。
(b)当初明細書の段落0024には「本願発明の場合でも、自己の所有するパソコンのモニタに表示された基準色のデジタル画像の色を自己が所有するこの基準色画像の色(印刷された基準色画像の色)と比較して目視で両者間の相違が明瞭に認識された場合に、例えば公知のコンピューター画像処理手法(例えばAdobe社 Photoshop LE-J(登録商標))を用いた色補正処理によって、モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正すれば、前記デジタル基準色画像と共に表示されている商品のデジタル画像の色も補正されるので」と記載されていること。
(c)明細書の段落0034には「カラーマッチング処理操作によってモニタ表示のデジタル基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致させることによってその結果同時に色調整されたデジタル商品カタログのデジタル画像(モニタ表示)」と記載されていること。
(d)これらの記載から見て、同時に色調整することは、より明瞭に表現すると『自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、』色調整することであることは自明であること。(この点に関して、参考情報として、本願明細書中にも記載しています、Adobe社の「Adobe Photoshop LE-J:ユーザーズガイド(第3章 選択範囲の操作)」に記載されています色調整に関する方法について記載した文献を参考資料1として提示します。ここでは、色調整に当たっては、色調整が必要な部分を選択範囲として指定することが前提となっています。つまり、選択機能を機能させることが所定部分の色調整には必須であることが記載されています。これに対して、色変化した基準色画像の色とその他の部分を同時に色変化させるには、『自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、』色調整することが必須であることは上記の開示技術からも自明のことであります。)
以上のとおり、『自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、』色調整するとしたことは、上記の当初特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて、本願発明の構成をより明瞭にするためのものであります。
(ii)補正後請求項1において、上記補正事項中、『送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正すること』とすることの補正根拠は、以下のとおりであります。
当初請求項4に「消費者がモニタ表示のデジタル基準色画像の色を画像のカラーマッチング処理操作によって自己所有の印刷基準色画像の色と実質的に合致させ」と記載され、当初請求項6に「更に、カラーマッチング処理操作によって、モニター表示の基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致さることによって同時に色調整された彩色商品カタログ画像(モニター表示)の中から所望の商品を選択する」と記載され、当初明細書の段落0024に「例えば公知のコンピューター画像処理手法(例えばAdobe社 Photoshop LE-J(登録商標))を用いた色補正処理によって、モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正すれば、前記デジタル基準色画像と共に表示されている商品のデジタル画像の色も補正される」と記載され、更に、同段落0029及び0034には、それぞれ上記請求項4及び請求項6と同趣旨の記載があり、更に、同段落0029及び0034には、同時に色補正がされることが記載されていることに基づきます。
(3)請求項2に関する補正事項について
(イ)補正前の請求項2を以下のとおり補正しました。
[請求項2]
前記基準色画像がRGB基準色であることを特徴とする、請求項1に記載の彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の伝達方法。
『前記基準色画像がRGB基準色であること』との補正は、当初請求項2、当初明細書の段落当初明細書の段落0019、0021、042、0044,0045及び図1の記載に基づきます。」

上記補正事項(ア)ないし(キ)の補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件(新規事項の追加)を満たしているか否かについて検討する。

上記補正事項(ア)ないし(エ)の補正については、上記(ク)に記載した請求人の意見書における主張のとおりであるため、新規事項の追加はない。

上記補正事項(オ)及び(キ)の補正は、発明特定事項を削除した補正であるため、新規事項の追加はない。

しかし、上記補正事項(カ)の補正については、以下のように特許法第17条の2第3項の規定を満たしていない。

上記補正事項(カ)の補正に関して、当初明細書等には、以下の(a)ないし(e)が記載されている。

(a)「【請求項1】
彩色商品カタログのインターネット情報通信システムを介した商品の宣伝活動において、
先ず販売元が、少なくとも一つの彩色商品の見本画像と基準色画像を組込んだ商品カタログを作成し、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、
販売元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログとしてインターネット情報通信システムを介して消費者に送信し、
消費者がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像としてモニタに表示することによって、インターネット情報通信システムを介した画像伝達によって発生する画像色の変化を表示することを
特徴とする、彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の提供方法。
(?中略?)
【請求項4】
請求項3の彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の提供方法であって、消費者がモニタ表示のデジタル基準色画像の色を画像のカラーマッチング処理操作によって自己所有の印刷基準色画像の色と実質的に合致させ、明度、コントラスト、彩度、色バランスの調整値(カラーマッチング調整値)を把握することを特徴とする彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の提供方法。
(?中略?)
【請求項6】
請求項4の彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の提供方法を利用する商品選択方法であって、更に、カラーマッチング処理操作によって、モニター表示の基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致さることによって同時に色調整された彩色商品カタログ画像(モニター表示)の中から所望の商品を選択することを特徴とする商品選択方法。」

(b)「【0024】
最近コンピューター画像処理技術が急速に発展し、自己の所有するパソコンのモニタに表示されたデジタル画像色の単純な補正が一般家庭でも容易に出来るようになった。従って、本願発明の場合でも、自己の所有するパソコンのモニタに表示された基準色のデジタル画像の色を自己が所有するこの基準色画像の色(印刷された基準色画像の色)と比較して目視で両者間の相違が明瞭に認識された場合に、例えば公知のコンピューター画像処理手法(例えばAdobe社 Photoshop LE-J(登録商標))を用いた色補正処理によって、モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正すれば、前記デジタル基準色画像と共に表示されている商品のデジタル画像の色も補正されるので、色品質を重視した商品の選択が効率的に高い精度で可能となる。」

(c)「【0029】
第一に、本願発明は、彩色商品カタログのインターネット情報通信システムを介した商品の宣伝活動において、
先ず販売元が、少なくとも一つの彩色商品の見本画像と基準色画像を組込んだ商品カタログを作成し、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、販売元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログとしてインターネット情報通信システムを介して消費者に送信し、消費者がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像としてモニタに表示することによって、インターネット情報通信システムを介した画像伝達によって発生する画像色の変化を表示することを特徴とする、彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の提供方法である。
(?中略?)
【0032】
第四に、本願発明は、第三の態様の彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の提供方法であって、消費者がモニタ表示のデジタル基準色画像の色を画像のカラーマッチング処理操作によって自己所有の印刷基準色画像の色と実質的に合致させ、明度、コントラスト、彩度、色バランスの調整値(カラーマッチング値)を把握することを特徴とする彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の提供方法である。
(?中略?)
【0034】
第六に、本願発明は、第四の実施態様において、カラーマッチング処理操作によってモニタ表示のデジタル基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致させることによってその結果同時に色調整されたデジタル商品カタログのデジタル画像(モニタ表示)の中から所望の商品を選択することを特徴とする商品選択方法である。」

(d)「【0045】
更なる具体的発明の態様としては、色化けがある程度存在する場合には、この表示デジタルRGB画像の色が自己の所有するRGB基準色画像(印刷RGB基準色画像)の色と目視によって実質的に合致するように前述の公知の手法〔0024〕で色補正し、この色補正によって同時に色補正されたデジタル画像(商品カタログの婦人服)の中から特定の商品を選択し、商品を発注した。」

(e)「【0057】
前述婦人服の通信販売の実施例1の説明の場合のように、色化けがある程度存在する場合には、消費者のパソコンのモニタに表示された商品カタログのデジタル画像に組込まれたRGB基準色画像の色を印刷RGB基準色画像の色と実質的に合致するように、前述の公知の手法〔0024〕で色補正し、この色補正によって同時に色補正されたデジタル画像(商品カタログの婦人靴)の中から所望の商品を選択して、販売元に発注する事によって、前述の色化けによる問題を解消することが出来る。」

上記(d)及び(e)については、色補正に関して上記(b)の記載を引用しており、また、上記(c)は、実質的に上記(a)の請求項の記載をコピーした記載で、請求項に記載された色補正(請求項6では「色調整」と記載)に関して根拠となる発明の詳細な説明における記載は、上記(b)の記載であるから、上記補正事項(カ)について新規事項の追加であるか否かを検討することとは、上記(b)について検討することであるため、上記(b)について以下に検討する。

上記(b)には、「例えば公知のコンピューター画像処理手法(例えばAdobe社 Photoshop LE-J(登録商標))を用いた色補正処理によって、モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正」すると記載されており、請求人が平成21年3月9日付け意見書に添付した上記「Adobe社 Photoshop LE-J」のユーザガイドによれば、「画像のある範囲の色を変更したい場合は、その部分を選択してから塗りつぶしを適用します。」(第37ページ左欄第6行ないし第7行)と記載され、その選択のためには、「選択ツール」や「なげなわツール」を使用することが記載されていることから、本件補正後の請求項1における「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正する」場合には、「自己のシステムにおける選択機能を機能」させていることは明らかである。
また、上記(b)には、「モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正すれば、前記デジタル基準色画像と共に表示されている商品のデジタル画像の色も補正される」とは記載されているが、商品のデジタル画像の色を補正する際に、本件補正後の請求項1に記載されているような「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、(?中略?)この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」ということは記載されていない。
加えて、上記のように「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用した場合、色補正を行うためには、「自己のシステムにおける選択機能を機能」させることが必要であるし、上記「Adobe社 Photoshop LE-J」以外のいかなる公知のコンピューター画像処理手法を用いた色補正処理を行うと、上記本件補正後の請求項1に記載されているような「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、(?中略?)この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」ことができるのかも当初明細書等には記載されておらず不明であるから、当初明細書等の記載から上記本件補正後の請求項1に記載されているような「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、(?中略?)この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」ことが自明な事項であるともいえない。
なお、上記「Adobe社 Photoshop LE-J」のユーザガイドには、「画像全体をカット、コピー、または塗りつぶしなどの編集操作の対象としたい場合は、選択範囲メニューから全てを選択を選択します。」(第39ページ左欄第12行ないし第14行)と記載されており、「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用した場合、本件補正後の請求項1における「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」こととは、情報の受信者が、自己が所有する基準色画像αと基準色画像部分α‘とを対比しながら(見比べながら)手動で両者の色調が合致するように基準色画像部分α‘を含むモニタ表示画像X‘全体の色調を一度に補正することであると考えることが自然であるが、この場合においても、選択範囲メニューから全てを選択を選択するという操作を行うことから「自己のシステムにおける選択機能」は機能している。

したがって、上記補正事項(カ)の補正における「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに」という事項を加えた点は、新規事項を追加する補正であり、また、上記補正事項(カ)と同一の記載を含む明細書段落【0029】における補正も新規事項を追加する補正であり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

理由第2:本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号又は第2号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

そして、上記拒絶理由通知書には、下記の指摘がなされている。



(1)請求項1における「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」という記載において「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」は、その後の「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正する」と「この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」との両方にかかるのか、どちらか一方にかかるのか不明である。

(2)「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」が「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正する」にかかるとした場合、発明の詳細な説明には、上記2.において検討したように、「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正する」際には、「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用することしか例示されておらず(以下、明細書段落【0029】には、本件補正によって請求項1と実質的に同一の記載が存在するが、当該記載は、単に請求項1の記載をコピーしたものであるから、検討の対象外とする。)、「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用する場合には、必ず「自己のシステムにおける選択機能を機能」するから、本件補正後の請求項1及び請求項1の従属請求項である請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、上記「Adobe社 Photoshop LE-J」以外のいかなる公知のコンピューター画像処理手法を用いた色補正処理を行うと、自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正できるのか不明であるため、本件補正後の請求項1及び請求項1の従属請求項である請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないし、発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1及び請求項1の従属請求項である請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

(3)「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」が「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正する」にかからず、「この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」にのみかかるとした場合、前項においても指摘したように、発明の詳細な説明には、上記2.において検討したように、色補正処理を行う「公知のコンピューター画像処理」として「Adobe社 Photoshop LE-J」しか例示されておらず、「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用する場合には、必ず「自己のシステムにおける選択機能を機能」するから、本件補正後の請求項1及び請求項1の従属請求項である請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないし、発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1及び請求項1の従属請求項である請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
また、上記「Adobe社 Photoshop LE-J」以外のいかなる公知のコンピューター画像処理手法を用いた色補正処理を行うと、自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正することができるのか不明であるため、本件補正後の請求項1及び請求項1の従属請求項である請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないし、発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1及び請求項1の従属請求項である請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

3.判断
上記平成21年11月20日付けの審判合議体による最後の拒絶理由通知に対しては、手続補正は行われなかったが、平成22年1月25日付け意見書において、請求人は上記最後の拒絶理由通知に対する主張を行っているため、当該主張について検討する。
なお、同年2月8日付け上申書については、本願の技術内容の説明をしているだけであり、本願の技術内容については、合議体は十分に理解しているため、ここでの判断には影響を及ぼすものではない。

(1)理由第1(特許法第17条の2第3項)について
ア.請求人は、平成22年1月25日付け意見書において、以下のように主張している。
「(i)上記(b)には、「モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正すれば、前記デジタル基準色画像と共に表示されている商品のデジタル画像の色も補正される」とは記載されているが、商品のデジタル画像の色を補正する際に、本件補正後の請求項1に記載されているような「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、(?中略?)この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」ということは記載されていない。」という上記最後の拒絶理由通知に対し、
「審判官殿は、上記項目(i)の判断の前提として、「上記(d)及び(e)については、色補正に関して上記(b)の記載を引用しており、また、上記(c)は、実質的に上記(a)の請求項の記載をコピーした記載で、請求項に記載された色補正(請求項6では「色調整」と記載)に関して根拠となる発明の詳細な説明における記載は、上記(b)の記載であるから、上記補正事項(カ)について新規事項の追加であるか否かを検討することとは、上記(b)について検討することであるため、上記(b)について以下に検討する。」と述べておられますが、この前提は誤りであります。
つまり、補正事項(カ)の補正根拠は、出願人が述べ、審判官殿が確認されておられますとおり、当初明細書の記載事項(b)(当初明細書の段落0024の記載)のならず、記載事項(a)(当初請求項6の記載)、(c)(当初明細書の段落0034の記載)および(d)(前記各記載事項に基づく、補正事項(カ)の開示の認定)にあります。また、段落0034に記載された、いわゆる「同時に色補正される」点は、当初明細書の段落0045に記載されていることを補足させて頂きたくお願い致します。したがって、出願人の補正根拠として挙げた(a)?(c)とそれに基づく認定事項(d)の内、記載事項(b)のみを取上げることとした前提は妥当でないと考えます。
そして、今一度、補正事項(カ)の補正根拠について意見を述べさせて頂きます。
補正事項(カ)の補正根拠に関しては、出願人は、審判官殿の判断根拠となった本願の当初明細書の段落0024の記載のみならず、本願の当初の請求項6中に、「カラーマッチング処理操作によって、モニター表示の基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致さることによって同時に色調整された彩色商品カタログ画像(モニター表示)」(記載事項(a)に関します。)に記載されていること、および本願の当初明細書の段落0034中に「カラーマッチング処理操作によってモニタ表示のデジタル基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致させることによってその結果同時に色調整されたデジタル商品カタログのデジタル画像(モニタ表示)」(記載事項(c)に関します。)と記載されていること(同趣旨の記載は当初明細書の段落0045にもあります。)を挙げています(下線は出願人が付記しました。)。
上記記載の下線部に示されるとおり、本願発明の上記カラーマッチング処理操作に当たって「同時に色調整され」ることは、色調整の指標とする「基準色画像部分」のみを画像処理対象(色補正対象)として選択していないからこそ実現できるのであります。
ここで、審判官殿の誤解を解消するために、説明を加えますと、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」との意味は、「色調整の指標とする「基準色画像部分」のみを画像処理(色補正)対象として選択しないこと」(つまり、商品カタログに組み込まれてデジタル化されて消費者に送信され、モニタに表示された商品カタログの「基準色画像(部分)」は、消費者の手元にある基準色画像、例えば印刷された基準色画像と対比するための比較対象部分とするのでありますが、その基準色部分のみを画像処理(色補正)対象として選択しないこと)を意味するのであります。
そして、記載事項(b)に摘記したとおり、当初明細書の段落0024には、その本願発明の画像処理(色補正)の具体的手法として、「本願発明の場合でも、自己の所有するパソコンのモニタに表示された基準色のデジタル画像の色を自己が所有するこの基準色画像の色(印刷された基準色画像の色)と比較して目視で両者間の相違が明瞭に認識された場合に、例えば公知のコンピューター画像処理手法(例えばAdobe社 Photoshop LE-J(登録商標))を用いた色補正処理によって、モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正すれば、前記デジタル基準色画像と共に表示されている商品のデジタル画像の色も補正されるので」と記載し、本願発明の具体的画像処理(色補正)手順の態様においては、「色調整の指標とする「基準色画像」を画像処理(色補正)対象として選択する」工程が何ら記載していません。
本願発明において、その選択機能を機能させることがないことは、上記段落0024に関する本願発明の画像処理(色補正)の具体的手段の態様において、自己システムにおける選択機能を機能させる手順が含まれていないこと、および、記載事項(a)および(c)、ならびに当初明細書の段落0045には、上記のとおり、本願発明の上記カラーマッチング処理操作に当たって「同時に色調整されること」が明記されていることから、明白であります。
よって、補正後請求項1の構成中に『自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、』との構成を限定する補正は、当初明細書に記載された事項の範囲内においてなされた補正事項であることは明白であります。
本願発明のより理解して頂くために、以下の事項を注として付記させて頂きます。
注:AdobephtoshopLE-Jの画像処理の特徴
Adobe PhotoshopLE-J]によって公知となった画像処理では、その開示内容、たとえば、「選択範囲の追加と部分範囲」、「選択範囲の追加」、「選択範囲の縮小」(39頁)などの記載から明白なように、「選択範囲」で特定された画像部分以外のモニタ表示画像部分には「選択範囲で特定した画像部分」に対して行われた画像処理が何らの影響も与えないことは「公知の画像処理システムについて通常の知識を有する者」にとっては常識となっていること、このシステムでは、仮にモニタ表示画像の一部画像部分の色調整結果が良いのでその部分以外の部分を含めてモニタ表示画像全体の色を補正したい場合は、従来の方法では、一部画像の色補正に適用した補正値βを適用して、モニタ表示画像全体の色補正をする所謂2段階作業ステップを適用するのが、通常の画像処理システムでありますので、本願発明の基本的技術思想は明らかに新規であることが明白であります。」

上記請求人の主張のように、上記項目(i)の判断の前提として、記載事項(b)のみを取上げず、記載事項(a)、(c)及び(d)についても前提として考えたとした場合について検討すると、本願の当初の請求項6中には、「カラーマッチング処理操作によって、モニター表示の基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致さることによって同時に色調整された彩色商品カタログ画像(モニター表示)」と記載され、本願の当初明細書の段落【0034】には、「カラーマッチング処理操作によってモニタ表示のデジタル基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致させることによってその結果同時に色調整されたデジタル商品カタログのデジタル画像(モニタ表示)」と記載されているが(同趣旨の記載は当初明細書の段落【0045】及び【0057】にもある。)、これらの記載は、カラーマッチング処理操作によって、モニターに表示されている基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致させることによって、モニターに表示されている彩色されたデジタルの商品カタログ画像が同時に色調整されるということが記載されているのみであり、当該記載からでは、本願発明の上記カラーマッチング処理に際して、「選択機能」を機能させるのか否か不明である。そのため、本願発明の上記カラーマッチング処理操作に当たって「同時に色調整され」ることは、色調整の指標とする「基準色画像部分」のみを画像処理対象(色補正対象)として選択していないからこそ実現できること、及び、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」との意味は、「色調整の指標とする「基準色画像部分」のみを画像処理(色補正)対象として選択しないこと」(つまり、商品カタログに組み込まれてデジタル化されて消費者に送信され、モニタに表示された商品カタログの「基準色画像(部分)」は、消費者の手元にある基準色画像、例えば印刷された基準色画像と対比するための比較対象部分とするのでありますが、その基準色部分のみを画像処理(色補正)対象として選択しないこと)を意味することという請求人の主張は、採用することができない。
ここで、「選択機能」に関して請求人は、当初明細書の段落【0024】に記載された本願発明の具体的画像処理(色補正)手順の態様においては、「色調整の指標とする「基準色画像」を画像処理(色補正)対象として選択する」工程が何ら記載されていないこと、及び、記載事項(a)および(c)、ならびに当初明細書の段落0045には、本願発明の上記カラーマッチング処理操作に当たって「同時に色調整されること」が明記されていることを根拠として、その選択機能を機能させることがないと主張しているが、これらの事項から一義的に、自己のシステムにおける選択機能を機能させることがないとはいえない。
この点については、本願の当初明細書中には「選択機能」という文言は全く記載されていないため、「選択機能」に関係すると考えられる記載を当初明細書中から探すと、「本願発明の場合でも、自己の所有するパソコンのモニタに表示された基準色のデジタル画像の色を自己が所有するこの基準色画像の色(印刷された基準色画像の色)と比較して目視で両者間の相違が明瞭に認識された場合に、例えば公知のコンピューター画像処理手法(例えばAdobe社 Photoshop LE-J(登録商標))を用いた色補正処理によって、モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正すれば、前記デジタル基準色画像と共に表示されている商品のデジタル画像の色も補正される」(段落【0024】)と記載され、本願発明の実施形態について、【実施例1】において「色化けがある程度存在する場合には、この表示デジタルRGB画像の色が自己の所有するRGB基準色画像(印刷RGB基準色画像)の色と目視によって実質的に合致するように前述の公知の手法〔0024〕で色補正し、この色補正によって同時に色補正されたデジタル画像(商品カタログの婦人服)の中から特定の商品を選択し」(段落【0045】)と記載され、【実施例2】において「前述婦人服の通信販売の実施例1の説明の場合のように、色化けがある程度存在する場合には、消費者のパソコンのモニタに表示された商品カタログのデジタル画像に組込まれたRGB基準色画像の色を印刷RGB基準色画像の色と実質的に合致するように、前述の公知の手法〔0024〕で色補正し、この色補正によって同時に色補正されたデジタル画像(商品カタログの婦人靴)の中から所望の商品を選択し」(段落【0057】)と記載されている。
そして、上記段落【0045】及び【0057】に記載されているように、【実施例1】及び【実施例2】では、色補正は、上記段落【0024】に記載された公知の手法を使用しており、当該段落【0024】に記載された公知の手法としては、例として「Adobe社 Photoshop LE-J」が記載されているが、それ以外の手法については、何ら記載されていない。
「Adobe社 Photoshop LE-J」における色補正については、上記最後の拒絶理由通知で指摘したように、「請求人が平成21年3月9日付け意見書に添付した上記「Adobe社 Photoshop LE-J」のユーザガイドによれば、「画像のある範囲の色を変更したい場合は、その部分を選択してから塗りつぶしを適用します。」(第37ページ左欄第6行ないし第7行)と記載され、その選択のためには、「選択ツール」や「なげなわツール」を使用」することから、この場合には、「選択機能」を機能させるし、また、「上記「Adobe社 Photoshop LE-J」のユーザガイドには、「画像全体をカット、コピー、または塗りつぶしなどの編集操作の対象としたい場合は、選択範囲メニューから全てを選択を選択します。」(第39ページ左欄第12行ないし第14行)と記載されており」とも指摘しており、色補正も編集操作の一種であるから、色補正に関しても同様に選択範囲メニューから全てを選択を選択することによって、画面全体を色補正することが可能であることは明らかであって、この場合においても、「選択機能」を機能させることから、「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用して色補正を行う場合には、必ず「選択機能」を機能させている。
してみると、本願の当初明細書中には、「選択機能」を機能させて色補正を行うことは、公知の手法として、例として「Adobe社 Photoshop LE-J」を記載することによって実質的に開示されているが、「Adobe社 Photoshop LE-J」以外の公知の手法について当初明細書中には何ら記載されていないことから、「選択機能」を機能させないで色補正を行うことは、当初明細書中には何ら開示されていないといわざるを得ない。
なお、請求人は、「Adobe社 Photoshop LE-J」の画像処理の特徴について注として付記しているが、本願の当初明細書中には、「Adobe社 Photoshop LE-J」による色補正しか実質的に開示されていないことから、上記注として付記された「Adobe社 Photoshop LE-J」の画像処理の特徴事項は、本願発明においても該当することである。
また、上記請求人の「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」との意味は、「色調整の指標とする「基準色画像部分」のみを画像処理(色補正)対象として選択しないこと」(つまり、商品カタログに組み込まれてデジタル化されて消費者に送信され、モニタに表示された商品カタログの「基準色画像(部分)」は、消費者の手元にある基準色画像、例えば印刷された基準色画像と対比するための比較対象部分とするのでありますが、その基準色部分のみを画像処理(色補正)対象として選択しないこと)を意味する」という主張を仮に採用した場合、具体的に、モニタに表示された商品カタログの「基準色画像部分」とそれ以外の部分とに対する色補正をどのようにして行うのか不明であるが、この点については、特許法第36条及び第29条第2項に関連して後述する。

イ.請求人は、平成22年1月25日付け意見書において、以下のようにも主張している。
「審判官殿は、項目(ii)において、「加えて、上記のように「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用した場合、色補正を行うためには、「自己のシステムにおける選択機能を機能」させることが必要であるし、上記「Adobe社 Photoshop LE-J」以外のいかなる公知のコンピューター画像処理手法を用いた色補正処理を行うと、上記本件補正後の請求項1に記載されているような「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、(?中略?)この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」ことができるのかも当初明細書等には記載されておらず不明である」ことを、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」との構成が新規事項の追加に当たる理由に挙げています。
しかしながら、まず、「加えて、上記のように「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用した場合、色補正を行うためには、「自己のシステムにおける選択機能を機能」させることが必要である」とする点に関しては、ます、前項で説明したとおり、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」との意味は、「色調整の指標とする「基準色画像」を画像処理(色補正)対象として選択しないこと」を意味することであることをご理解頂きたいのであり、また、前項で説明のとおり、本願明細書の段落0024には、本願発明の画像処理(色補正)手段において、自己システムにおける選択機能を機能させる手順が含まれていないこと、および、記載事項(a)および(c)ならびに当初明細書の段落0045には、上記のとおり、本願発明の上記カラーマッチング処理操作に当たって「同時に色調整されること」が明記されているところ、「色調整の指標とする「基準色画像」を画像処理(色補正)対象として選択しない」で、つまり、本願発明は、「自己のシステムにおける選択機能を機能」させることを必要とせず、実施するものであることは明確に理解できるので、審判官殿のこの点に関する認定は妥当でありません。」

上記請求人の主張には、「前項で説明したとおり、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」との意味は、「色調整の指標とする「基準色画像」を画像処理(色補正)対象として選択しないこと」を意味すること」とあるが、上記「前項」では、上記a.に記載したように「「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」との意味は、「色調整の指標とする「基準色画像部分」のみを画像処理(色補正)対象として選択しないこと」(つまり、商品カタログに組み込まれてデジタル化されて消費者に送信され、モニタに表示された商品カタログの「基準色画像(部分)」は、消費者の手元にある基準色画像、例えば印刷された基準色画像と対比するための比較対象部分とするのでありますが、その基準色部分のみを画像処理(色補正)対象として選択しないこと)を意味する」と説明しており、「のみ」の有無で両者は異なる技術を表現し、どちらが正しいのか不明であるが、上記「前項」の場合である「のみ」が有る場合が正しいのであれば、上記ア.で検討したように、請求人の主張を採用することはできず、上記「のみ」が無い場合が正しいのであれば、「基準色画像」が画像処理を行われないこととなり、そのようなことは、当初明細書中には開示されていないため、両者のどちらであっても、そのようなことは当初明細書中には開示されておらず、請求人の主張を採用することはできない。
また、「前項で説明のとおり、本願明細書の段落0024には、本願発明の画像処理(色補正)手段において、自己システムにおける選択機能を機能させる手順が含まれていないこと、および、記載事項(a)および(c)ならびに当初明細書の段落0045には、上記のとおり、本願発明の上記カラーマッチング処理操作に当たって「同時に色調整されること」が明記されているところ、「色調整の指標とする「基準色画像」を画像処理(色補正)対象として選択しない」で、つまり、本願発明は、「自己のシステムにおける選択機能を機能」させることを必要とせず、実施するものである」という主張についても同様に、「基準色画像」が画像処理を行われないこととなり、そのようなことは、当初明細書中には開示されていないため、採用することはできない。

ウ.請求人は、平成22年1月25日付け意見書において、以下のようにも主張している。
「審査官殿は、また、項目(iii)において、「なお、上記「Adobe社 Photoshop LE-J」のユーザガイドには、「画像全体をカット、コピー、または塗りつぶしなどの編集操作の対象としたい場合は、選択範囲メニューから全てを選択を選択します。」(第39ページ左欄第12行ないし第14行)と記載されており、「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用した場合、本件補正後の請求項1における「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」こととは、情報の受信者が、自己が所有する基準色画像αと基準色画像部分α‘とを対比しながら(見比べながら)手動で両者の色調が合致するように基準色画像部分α‘を含むモニタ表示画像X‘全体の色調を一度に補正することであると考えることが自然であるが、この場合においても、選択範囲メニューから全てを選択を選択するという操作を行うことから「自己のシステムにおける選択機能」は機能している。」と認定されておられます。
しかしながら、前記のとおり、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」との意味は、「色調整の指標とする「基準色画像」を画像処理(色補正)対象として選択しないこと」を意味するのであります。
以上のとおり、上記審査官殿の「Adobe社 Photoshop LE-J」のユーザガイドには、「画像全体をカット、コピー、または塗りつぶしなどの編集操作の対象としたい場合は、選択範囲メニューから全てを選択を選択します。」との記載に基づく認定は、審判官殿の「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」の意味の誤解に基づくものであります。審査官殿の指摘された当該箇所は、画像全体をカット、コピー、または塗りつぶしなどの編集操作の対象としたい場合には、全てを選択することがなされることが記載されているに過ぎません。
本願発明においては、画像の色補正の基準とする基準色画像を色補正の基準とすること(その基準色画像が組み込まれた商品画像を、その基準色画像を色変化の物指しとして同時に色調整すること)に発明のポイントがあります。
そして、画像処理(色補正)技術の公知の手法である全画面の一部分の修正の場合は、その部分を選定して必要な修正を加えて、切り取られている元の画像の切り取り跡に戻して修正画像とすることは良く知られたことでありますが、もし、その公知の一部分の修正方法に従って、その一部分に対応する基準色画像のみを処理した場合には、モニタ表示の商品画像全体の色補正はできないことになります。
換言すれば、従来の画像補正は、全体を処理対象としないで、画像の一部を処理対象とする場合、その画像の一部を選択して(選択機能を働かせて)、その一部分の画像のみを対象として画像処理(色補正)をします。それは画像の処理結果は、その選択された部分のみに及び、選定されない部分には及びません。
上記のように、審判官殿が指摘するように、処理画像全体を何の色補正の基準を採用することなく、画像全体をカット、コピー、または塗りつぶしなどの編集操作する場合、本願発明の上記着想は実現できないのであります。
したがって、「なお、上記「Adobe社 Photoshop LE-J」のユーザガイドには、「画像全体をカット、コピー、または塗りつぶしなどの編集操作の対象としたい場合は、選択範囲メニューから全てを選択を選択します。」との記載を根拠とした審判官殿に認定は妥当でないと考えます。」

請求人の「しかしながら、前記のとおり、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」との意味は、「色調整の指標とする「基準色画像」を画像処理(色補正)対象として選択しないこと」を意味するのであります。」という主張は、上記ア.及びイ.において検討したように、採用することはできない。
また、「「Adobe社 Photoshop LE-J」のユーザガイドには、「画像全体をカット、コピー、または塗りつぶしなどの編集操作の対象としたい場合は、選択範囲メニューから全てを選択を選択します。」との記載に基づく認定が、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」の意味の誤解に基づくものではなく、文言どおりに正しく解釈した結果の認定である。
さらに、請求人は、「全体を処理対象としないで、画像の一部を処理対象とする場合」について主張しているが、本願発明は、画像の一部を処理対象としておらず、全体を処理対象としているため、当該主張も採用することはできない。
そして、当初明細書等には、色補正の具体的な公知の手法として「Adobe社 Photoshop LE-J」しか記載されておらず、「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用して、本件補正後の請求項1における「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」ためには、上記最後の拒絶理由通知で指摘したように、情報の受信者が、自己が所有する基準色画像αと基準色画像部分α‘とを対比しながら(見比べながら)手動で両者の色調が合致するように基準色画像部分α‘を含むモニタ表示画像X‘全体の色調を一度に補正することであると考えることが自然であり、これ以外の手法で上記本件補正の請求項1に記載された色補正を行うことはできないと考えられ、この場合においても、選択範囲メニューから全てを選択を選択するという操作を行うことから「自己のシステムにおける選択機能」は機能している。すなわち、「自己のシステムにおける選択機能」を機能させないで色補正を行うことは、当初明細書等には開示されていない。

エ.請求人は、平成22年1月25日付け意見書において、以下のようにも主張している。
「最後に、審判官殿は、前記項目(i)?(iii)の検討結果を踏まえて、(iv)「したがって、上記補正事項(カ)の補正における「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに」という事項を加えた点は、新規事項を追加する補正であり、また、上記補正事項(カ)と同一の記載を含む明細書段落[0029]における補正も新規事項を追加する補正であり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。」と結論付けておられますが、それぞれの項目に記載された審判官殿の認定・判断は前記出願人の説明からお解かり頂けたとおり、妥当のものではありません。
以上のように、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに」と補正したことは、先の意見書の第3頁の下から8行?第4頁第21行に補正根拠を具体的に説明したところ、そして、上記の意見においても述べたところ、その根拠は、要するに、「モニター表示の基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致さることによって同時に色調整された彩色商品カタログ画像(モニター表示)」と記載されているとおり、同時に色調整されるということにあり、その「同時に色調整されるということ」は、その基準色画像部分を選定しないで、即ち、基準色画像部分の色を補正しますが、直接的には、「選択機能を機能させない」で、この部分の色を調整するので、この調整は基準色画像部分以外の商品画像部分にも効果が及ぶ現象が生れるのであります。
「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに」と規定することは、前述の本願発明の新規な着想を実現する場合に、同時色調整される場合の手順をより明瞭に記載したものに過ぎません。」

請求人の上記「「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに」と補正したことは、(?中略?)その根拠は、要するに、「モニター表示の基準色画像の色を印刷基準色画像の色と実質的に合致さることによって同時に色調整された彩色商品カタログ画像(モニター表示)」と記載されているとおり、同時に色調整されるということにあり、その「同時に色調整されるということ」は、その基準色画像部分を選定しないで、即ち、基準色画像部分の色を補正しますが、直接的には、「選択機能を機能させない」で、この部分の色を調整するので、この調整は基準色画像部分以外の商品画像部分にも効果が及ぶ現象が生れるのであります。」という主張は、上記ア.ないしウ.において検討したように、「自己のシステムにおける選択機能」を機能させないで色補正を行うことが、当初明細書等に開示されていないことから、当初明細書等に基づく主張ではなく、採用することはできない。
また、上記「「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに」と規定することは、前述の本願発明の新規な着想を実現する場合に、同時色調整される場合の手順をより明瞭に記載したものに過ぎません。」という主張も、同時色調整される場合の手順として「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに」という手順が当初明細書等に開示されていないことから、採用することはできない。

オ.理由第1に対するむすび
上記ア.ないしエ.において検討したように、請求人の平成22年1月25日付け意見書における理由第1に対する主張は、すべて採用することはできず、また、上記最後の拒絶理由通知における理由第1の結論を覆すべき理由も認められないから、平成21年3月9日付けでした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
よって、理由第1は、妥当である。

以上のとおり、本件出願は、平成21年11月20日付け拒絶理由通知における拒絶理由により、特許法第49条第1号の規定に基づき拒絶査定すべきものである。

(2)理由第2(特許法第36条第6項第1号又は第2号、第36条第4項)について
ア.上記最後の拒絶理由通知における理由第2の(1)の指摘に対して、請求人は、平成22年1月25日付け意見書において、「「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」は、「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正する」と「この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」との両方にかかる」と説明しており、当該説明により、上記理由第2の(1)の指摘については、解消し、これによって、特許法第36条第6項第2項の規定については、違反していないと認められる。

イ.上記最後の拒絶理由通知における理由第2の(2)の指摘に対して、請求人は、平成22年1月25日付け意見書において、以下のように主張している。
「「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」の意味が本願発明の画像処理(色補正)を実施するに当たって、モニタに表示されている商品画像と一体になっている基準色画像部分を選択することなく(つまり、基準色画像部分のみを画像処理(色補正)対象として選択することなく)の意味であることは、既に説明したところであり、このための本願発明の画像処理(色補正)手順は、請求項1において明確に規定されており、また、その構成について、本願の当初明細書の段落0034および0045に、基準色画像が一体にされた商品カタログの画像の基準色画像部分を色調整した場合に、その基準色画像は「同時に色調整されること」が画像処理(色補正)技術としての手順として当業者が理解できる程度に記載されており、それをより具体的に実現する手段として、本願明細書の段落0024に「Adobe社のPhotoshop LE-J(登録商標)」を用いる事例が記載されているのであります。
上記明細書の記載に基づけば、本願発明に規定されたデジタル商品カタログの一部に組み込まれている基準色画像部分を画像処理(色補正)対象として選定してすることなく、その基準色画像部分の色にのみに着目して、受信者(消費者)の手元にある基準色画像と対比してモニタ表示の画像に対して画像処理(色補正)をした場合に、「同時に色調整される」ものであれば、「Adobe社のPhotoshop LE-J(登録商標)」に限られることなく、他の画像処理(色補正)手段によっても当業者が容易に実施できることは、容易に理解できるものと考えます。
以上により、「本件補正後の請求項1及び請求項1の従属請求項である請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないし、発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1及び請求項1の従属請求項である請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。」との審判殿の認定は妥当でないと考えます。」

上記主張のうち「基準色画像が一体にされた商品カタログの画像の基準色画像部分を色調整した場合に、その基準色画像は「同時に色調整されること」が画像処理(色補正)技術としての手順として当業者が理解できる程度に記載されており、」という主張は、発明の詳細な説明に基づくと、「同時に色調整される」のは、基準色画像以外の部分であるから、発明の詳細な説明に基づく主張ではなく、採用することはできない。
また、「Adobe社 Photoshop LE-J」を使用した場合には、上記(1)において検討したように、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」色補正を行うことはないため、この点においても、上記請求人の主張を採用することはできない。
さらに、上記主張のうち「上記明細書の記載に基づけば、本願発明に規定されたデジタル商品カタログの一部に組み込まれている基準色画像部分を画像処理(色補正)対象として選定してすることなく、その基準色画像部分の色にのみに着目して、受信者(消費者)の手元にある基準色画像と対比してモニタ表示の画像に対して画像処理(色補正)をした場合に、「同時に色調整される」ものであれば、「Adobe社のPhotoshop LE-J(登録商標)」に限られることなく、他の画像処理(色補正)手段によっても当業者が容易に実施できる」という主張は、そのような他の画像処理(色補正)が、発明の詳細な説明に何ら開示されていないため、発明の詳細な説明に基づく主張ではない。また、そもそも、デジタル商品カタログの一部に組み込まれている基準色画像部分を画像処理(色補正)対象として選定しないのに、なぜ基準色画像部分を画像処理(色補正)ができるのか不明であるから、上記請求人の主張を採用することはできない。

ウ.上記最後の拒絶理由通知における理由第2の(3)の指摘に対しては、上記ア.において記載した、請求人による「「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、」は、「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正する」と「この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正する」との両方にかかる」という説明によって解消した。

エ.理由第2に対するむすび
上記ア.ないしウ.において検討したように、上記最後の拒絶理由通知における理由第2のうち、(1)及び(3)に対する主張は採用することができるが、(2)に対する主張は採用することはできず、また、上記最後の拒絶理由通知における理由第2(2)の結論を覆すべき理由も認められないから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
よって、理由第2は、妥当である。

以上のとおり、本件出願は、平成21年11月20日付け拒絶理由通知における拒絶理由により、特許法第49条第4号の規定に基づき拒絶査定すべきものである。

4.付記(特許法第29条第2項について)
上記3.において検討したように、平成21年3月9日付けでした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、さらに、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものであるが、もし仮に平成21年3月9日付けでした手続補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしており、さらに、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしており、また、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていたとする場合について以下に、検討する。

(1)本願発明
平成21年3月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のものを「本願発明」とする。

「【請求項1】
少なくとも一つの彩色商品の見本画像と、基準色画像αを組込んで彩色商品カタログとし、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、
情報の送信元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログXとしてインターネット情報通信システムを介して不特定多数の潜在消費者である情報の受信者に送信し、
デジタル商品カタログXを受信した前記受信者がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像X‘として自己が所有する画像システムのモニタに表示し、
自己のシステムにおける選択機能を機能させずに、その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件で且つ同時にモニタ表示画像X‘のα‘以外の他の部分の色調も補正することを特徴とする、彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の伝達方法。」

(2)刊行物の記載事項
<刊行物1>
当審における平成20年12月25日付け拒絶理由通知書で引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-160527号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに以下のア.ないしカ.の技術事項が記載されている。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーのイメージデータを表示することが可能な表示装置において、特に、イメージデータの色調や濃淡を補正する機構を備えたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、CD-ROM等に格納されたイメージデータをパーソナルコンピュータ(PC)等の表示装置に表示することが行われている。
しかし、ディスプレイの特性により、イメージデータの色調や濃淡が正しく表示されないことがある。PC等の表示装置においては、調整つまみの操作により表示画面の輝度とコントラストを調整することはできるが、赤、緑、青の三原色のそれぞれの構成、すなわち、表示色の色調を調整することはできないのが通常である。また、カラーテレビの受像機のように色調を調整できる表示装置を使用した場合であっても、表示したイメージデータを見て、正しい色調に調整することが必要となる場合が多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このため、従来の表示装置では、利用の形態によっては、以下のような解決すべき課題があった。
例えば、業者から受け取ったCD-ROM化した商品カタログに格納されたイメージデータを消費者が自宅のPC等の表示装置に表示して商品の選択を行う商品取引システムが普及しつつある。
【0004】
こうしたシステムを利用して商品を注文した場合、商品選択の際にPC等の表示装置に表示された商品イメージと、実際に配送されてきた商品の間で、色彩や質感が異なったものと感じられることがあり、注文した消費者に不満を抱かせることが多かった。」

イ.「【0006】
【発明の実施の形態】
図1は商品取引システムを構成する操作端末の一例を示すブロック図である。操作端末21は、様々な処理を行うプロセッサ(CPU)1、処理する情報を一時的に格納するためのメモリ(MEM)2、情報を表示する表示装置(DSP)3、音声を出力する音声出力装置(SND)4、実行するプログラムや処理に必要な情報を記憶するための外部記憶装置(DSK)5、利用者が操作を指示するための制御用コントローラ(CTL)6、電源を落としても記憶内容を保持する不揮発性メモリ(NVRAM)7、時刻を管理する時計(TIMER)8、公衆網等と接続する通信装置(MODEM)9等で構成されている。
【0007】
ここで、前記表示装置3としてはコンピュータ用のディスプレイや一般のテレビ等が利用され、外部記憶装置5としてはハードディスクやCD-ROM等が利用され、制御用コントローラ6としてはコンピュータのキーボードやマウス、コンピュータゲーム機のコントロールパッド等が利用されるもので、上記構成は、一般的なパーソナルコンピュータやコンピュータゲーム機等と同等のハードウエア構成となっている。
【0008】
図2は商品取引システムを構成するホストコンピュータの一例を示すブロック図で、ホストコンピュータ22は、様々な処理を行うプロセッサ(CPU)11、処理する情報を一時的に格納するためのメモリ(MEM)12、実行するプログラムや処理に必要な情報を記憶するための外部記憶装置(DSK)13、公衆網等と接続する通信装置(MODEM)14等で構成されている。
【0009】
図3は商品取引システムの全体構成を示すブロック図である。商品取引システムは、利用者の操作する操作端末21と、複数の操作端末21と公衆網23等を経由して接続されるホストコンピュータ23から構成される。次に、上述した商品取引システムにおける取引の概要を説明する。商品情報は、CD-ROMで提供されるものを用いたり、公衆網を経由して送信されてきたものをハードディスクに格納して用いるものである。
【0010】
商品情報は、文字、イメージ、音声、ビデオ等の情報で構成されており、あらかじめデジタル化された特定の形式のデータファイルとして格納されている。なお、ファイルの形式は、SGML等に代表される標準フォーマットでもかまわないし、商品情報を参照する操作端末で処理可能な専用のフォーマットでもかまわない。
【0011】
ここでは、商品情報がCD-ROMで提供されているとすると、商品情報はCD-ROMから読み出され、プロセッサ1により格納されているフォーマットに従い情報を再生し、表示装置3に表示したり、音声として音声出力装置4に出力される。通常、商品情報はCD-ROMに複数件分格納されており、利用者による制御用コントローラ6の操作やあらかじめ決められている順番に従って切り替え表示される。
【0012】
そして、利用者は商品情報を参照しているときに、購入したい商品があった場合には、制御用コントローラ6を操作してその商品を選択し購入する。プロセッサ1は、利用者の選択操作に従い商品発注用の電文を作成し、通信装置9を経由してホストコンピュータ22に送信する。送信された電文は、ホストコンピュータ22側の通信装置14を経由して通知され、通知された電文はプロセッサ11により処理され、外部記憶装置13等に格納され、発注が完了したことになる。」

ウ.「【0013】
ここで、商品情報の中のイメージは、表示装置3の特性や調整により、現物の色調や濃淡が正しく表示されないことがある。そこで、図1で説明した操作端末に色調・濃淡の補正表示機能を搭載することで、表示装置3の調整つまみ等を操作せずに色調や濃淡の調整を行えるようにする。
(?中略?)
【0016】
上述したように、各ピクセルのRGBの値を変化させることでイメージの色調や濃淡を調整できることを利用して、標準となるイメージに対して色調や濃淡を段階的に少しずつ変化させたイメージを作成するため、図1で説明したプロセッサ1は、サンプル作成用パラメータを用いて、標準イメージを構成する各ピクセルのRGBの各値を演算して変化させる。そして、表示装置3に、標準イメージと、この標準イメージに対して色調や濃淡を段階的に少しずつ変化させたイメージを並べて表示する。
【0017】
図5は色調・濃淡選択イメージの一例を示す説明図である。なお図5においては、RGBの各値を同じ値だけ変化させたもの、すなわち濃淡を変化させたイメージを用い、図面上ではハッチングの間隔で濃淡の変化を表すものとする。また、太線で描かれている枠を選択枠として、この選択枠内のイメージが現在選択されているイメージであるとする。
【0018】
利用者は、この表示を見ながら、標準として別途用意された写真等と見比べて、最も適切なものを選択する。選択には、制御用コントローラ6を使用して行う。図6は制御用コントローラ6の機能の一例を示す説明図で、ここでは、ゲーム機のコントロールパッドを例に説明する。
【0019】
例えば、「左矢印」ボタンを押すと左に選択枠が移動し、「右矢印」ボタンを押すと右に選択枠が移動するようにする。また、「決定」に割当てられたボタンを押すと、このとき選択枠で囲われているイメージが選択されたことになる。ここで、図5に示す状態で「決定」ボタンが押されると、「-1」のイメージが選択されることになる。なお、この制御用コントローラ6の機能は、パーソナルコンピュータのキーボードやマウス等でも実現可能である。
【0020】
そして、プロセッサ1はこの選択された-1の値を不揮発性メモリ7に格納する。この値が表示する表示装置3と取り込んだ時のイメージの差であり、その差を補正するパラメータとなる。以降、イメージを表示するときに、プロセッサ1はこの値を不揮発性メモリ7から読み出して、この値をパラメータとして表示しようとしているイメージの色調や濃淡を補正する演算を行い、表示装置3に色調や濃淡を補正したイメージを表示する。なお、図5では濃淡を変化させたイメージを表示することとしたが、同様の機能で色調を補正するための値を決定することもできる。色調の調整であれば、例えば赤に対してのみ演算をすることにより、「赤っぽい」イメージを生成し、赤に関する色調整を行うことができる。」

エ.「【0022】
図8は上述した第1の実施の形態の色調・濃淡補正表示機能の論理ブロック図である。 商品情報がCD-ROMに格納されているものとすると、プロセッサ1は、セットされたCD-ROMからまず標準イメージを取り込む。この標準イメージに対して、プロセッサ1は、イメージ演算部1aでサンプル作成用のパラメータを用いて色調や濃淡を補正する演算を行い、表示装置3に標準イメージに対して色調や濃淡を段階的に少しずつ変化させたイメージを並べて表示する。ここでの演算および表示は、図5で説明した1つのパラメータを求めるためのもの、あるいは図7で説明した複数のパラメータを求めるためのもののどちらでも可能である。
【0023】
利用者はこの表示を見て、制御用コントローラ6を操作して最適と思うイメージを選択する。そして、プロセッサ1は選択されたイメージの色調や濃淡を決める補正値を不揮発性メモリ7に格納する。以降、このCD-ROM内のイメージを表示するときには、CD-ROMから商品情報の中のイメージを取り込むと、プロセッサ1は不揮発性メモリ7から補正値を読み出し、イメージ演算部1aでこの補正値をパラメータとして表示しようとしているイメージの色調や濃淡を補正する演算を行い、表示装置3に色調や濃淡を補正したイメージを表示する。
【0024】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態の色調・濃淡補正表示機能によれば、標準イメージに対して色調や濃淡を段階的に少しずつ異ならせたイメージを並べて表示して、この中から最適と思われるイメージを選択させることで、色調や濃淡の補正値を得ることとしたので、表示装置の特性や調整に影響されず、正しい色調や濃淡で商品情報を表示することができる。」

オ.「【0034】
なお、上述した各実施の形態では、商品情報がCD-ROMに格納されて提供されるものとしたが、公衆網を経由して提供されるものであってもよい。この場合は標準イメージのデータを公衆網を経由して提供し、操作端末側でこの標準イメージからサンプル作成用のパラメータを用いて色調や濃淡を段階的に少しずつ異ならせたイメージを作成してこれらを並べて表示し、これらの中から最適と思われるイメージを選択させることで補正値を得て、これを不揮発性メモリに格納しておくことで、以降公衆網を経由して送られてくる商品情報のイメージを表示する際には、この記憶した補正値をパラメータとして色調および濃淡を補正したイメージを表示することが可能である。」

カ.「【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、標準イメージと、この標準イメージに対して色調や濃淡を段階的に少しずつ異ならせたイメージとを並べて表示し、これらの中から最適と思われるイメージを選択させることで補正値を得て、この補正値を記憶しておくことで、以降商品情報のイメージを表示する際には、この記憶した補正値をパラメータとして色調および濃淡を補正したイメージを表示することができ、表示装置の特性や調整に影響されず、正しい色調や濃淡で商品情報を表示することができる。」

上記ア.ないしカ.の記載事項及び図面を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「文字、イメージ、音声、ビデオ等の情報で構成された複数件分の商品情報と、標準イメージとをCD-ROMに格納し、
業者がこの商品情報と、標準イメージとを公衆網を介して利用者に送信し、
商品情報と、標準イメージとを受信した利用者が受信した商品情報の中のイメージと標準イメージとを画像として操作端末の表示装置であるコンピュータ用のディスプレイに表示し、
その画像中の表示装置の特性や調整により現物の色調や濃淡が正しく表示されない前記標準イメージ及びこの標準イメージに対して色調や濃淡を段階的に少しずつ変化させたイメージと、利用者側にある、標準として別途用意された写真とを利用者が見比べて最も適切なイメージを選択することによって色調や濃淡の補正値を得て、この補正値をパラメータとして色調や濃淡を補正した商品情報のイメージを表示する文字、イメージ、音声、ビデオ等の情報で構成された複数件分の商品情報と標準イメージとの送信方法。」

<刊行物2>
当審における平成20年12月25日付け拒絶理由通知書で引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-19050号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに以下のキ.ないしス.の技術事項が記載されている。

キ.「【0004】
【発明が解決すべき課題】
しかしながら、上記のような通信装置では、患者を撮像するためのカラー撮像装置、そのカラー撮像装置から出力された画像信号を通信回線を介して受信し、カラー画像表示装置の画面に表示させることが行われるが、患者の実際の皮膚の色が医療従事者側のカラー画像表示装置の画面上に必ずしも正確に再現されないので、医療従事者による医療判断、診察或いは診断を支援することができなかった。たとえば、患者に対する照明、カラー撮像装置における色感度のばらつきやその経時変化、カラー撮像装置の色調整装置の設定、カラー画像表示装置の蛍光体の発色のばらつきやその経時変化、カラー画像表示装置の色調整装置の設定などによって表示色が影響されるので、患者の実際の皮膚の色に対してカラー画像表示装置に表示される患者の皮膚の色がずれてしまう場合が多いのである。このような課題は、たとえば手術室内の作業を監視者或いは学習者が遠隔的にモニタする場合も同様に存在する。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、患者の実際の皮膚の色などをカラー画像表示装置の画面上に精度よく表示させることができる医療用画像伝送装置を提供することにある。」

ク.「【0017】
図1は、患者18の居宅などに配置される患者側装置10と、病院、医院などなどの医療機関に配置される医療従事者側装置12とから成る対話型在宅医療支援装置14を示しており、本実施例では、その対話型在宅医療支援装置14が在宅医療用画像伝送装置として機能している。上記の患者側装置10と医療従事者側装置12とは公衆電話回線などの通信回線16を介して相互に接続されている。」

ケ.「【0021】
また、前記医療従事者側装置12は、前記通信回線16に接続された制御装置42、医療従事者50の音声を入力するための音声入力装置として機能するマイクロホン44、医療従事者50へ音声を出力するための音声出力装置として機能するスピーカ46、医療従事者50へ画像を出力するためにカラーブラウン管或いはカラー液晶板などから構成されるカラー画像表示装置48、医療従事者50を撮像するためのカラー撮像装置52、そのカラー画像表示装置48における表示色を調整するために手動操作される操作体54_(Y) 、54_(Q) 、54_(I) を備え、そのカラー画像表示装置48にカラー画像を表示させるための色信号を調整するためにその操作体54_(Y) 、54_(Q) 、54_(I) の操作にしたがって明度(Y信号)調整値、色度(Q信号)調整値および色度(I信号)調整値を出力する表示画像色調整装置56、そのカラー画像表示装置48における表示色を調整するために手動操作される操作体58_(Y) 、58_(Q) 、58_(I) を備え、患者側のカラー撮像装置28において撮像された画像を構成する色信号を調整するためにその操作体58_(Y) 、58_(Q) 、58I の操作にしたがって明度(Y信号)調整値、色度(Q信号)調整値および色度(I信号)調整値を出力する送信画像色調整装置60、上記制御装置42の電源投入、電話器62の切り換え、生体情報測定開始、色ずれ自動補正モード或いは手動補正モードを選択するための切り換えなどの操作を行うための操作釦を備えた操作箱64、上記患者側の制御装置20から送信された情報などを記憶するための記憶装置66を備えている。」

コ.「0024】
また、患者18側のカラー撮像装置28の撮像範囲内のうち予め定められた一定の位置には、カメラ(患者)側の基準色見本部材68が配置されている。たとえば、その基準色見本部材68はカラー撮像装置28の撮像範囲すなわちカラー画像表示装置48の表示範囲(画面)の右下位置に基準色見本画像70bとして表示されるように配置される。また、そのカラー画像表示装置48の前面ケースの右下位置には、その表示画面のうちの予め定められた一定の場所に表示される基準色見本画像70aおよび70bと対比可能な程度の近傍位置となるように、モニタ(医療従事者)側の基準色見本部材72が設けられている。
【0025】
さらに、本実施例の対話型在宅医療支援装置14の医療従事者側装置12には、上記基準色見本画像70aおよび70bと基準色見本部材72との間の色ずれを検出するために、それら基準色見本画像70aおよび70bと基準色見本部材72とを同時に撮像し、色補正用映像信号を出力する色補正用撮像装置74が設けられている。」

サ.「【0033】
(中略)
従って、上記色ずれ表示が出力された場合には、その色ずれ表示が解消されるまで表示画像色調整装置56の操作体54_(Y) 、54_(Q) 、54_(I) の手動操作を行うことにより、基準色見本画像70aおよび70bと基準色見本部材72との間の色ずれが解消される。なお、基準色見本画像70aと70bとの間の色ずれは、送信画像色調整装置60の操作体58_(Y) 、58_(Q) 、58_(I) の手動操作により修正される。」

シ.「【0037】
また、本実施例によれば、操作箱64により色ずれ手動補正モードが選択されている場合には、色ずれ判定手段114により、色補正用撮像装置74により撮像された基準色見本画像70a、70と前記基準色見本部材72との色の差が予め設定された判断基準値を超えたという色ずれ出力が行われなくなるまで、表示画像色調整装置56の操作体54_(Y) 、54_(Q) 、54_(I) 或いは送信画像色調整装置の60操作体58Y 、58Q 、58I が手動操作されることにより、カラー画像表示装置48において表示される基準色見本画像70a、70bの色が、基準色見本部材72により表される基準色見本と略一致させられる。」

ス.「【0043】
たとえば、前述の実施例では、カラー画像表示装置48の画面の右下に、カラー撮像装置28から伝送された基準色見本を表す基準色見本画像70aと、カラー撮像装置28の撮像範囲内に配置された基準色見本部材68を表す基準色見本画像70bとが表示されるように構成されたいたが、いずれか一方が表示されるものであっても差し支えない。」

そして、本願の原出願である特願2002ー28622号の裁判である平成19年(行ケ)第10327号 審決取消請求事件判決(平成20年8月28日判決言渡)(以下、「原出願判決」という。)第36ページ第8行ないし第37ページ第8行において、上記刊行物2に関して以下の記載がある。なお、原出願判決における「周知例1」は、上記刊行物2と同一のものである。

セ.「周知例1(甲9)の各記載(図面を含む。)によれば,周知例1記載の技術は,患者を撮像し,その映像を遠隔地のカラー画像表示装置に表示させる場合に,患者に対する照明,カラー撮像装置の側の色感度のばらつきやその経時変化,色調節装置の設定,カラー画像表示装置の側の発色のばらつきやその経時変化,色調整装置の設定などにより,表示色が影響される結果,カラー画像表示装置に表示される患者の皮膚の色がずれてしまい,正確に再現されないという問題意識の下,カラー映像表示装置48に基準色見本画像70a,70bを表示させ,少なくともこれらのいずれか一方と,比較のために用意した基準色見本部材72とを対比し,カラー画像表示装置の表示画像色調性装置56あるいは60を手動で操作して,基準色見本部材72の基準色見本と略一致させることにより,色ずれを解消するものであることが理解できる。
そして,患者側に配置する基準色見本部材68は,カラー画像表示装置48の表示範囲(画像)の右下位置に基準色見本画像70bとして表示されるように配置されるものである(段落【0024】参照)。
このように,カラー画像表示装置上の表示位置がちょうどよい位置になるように,患者の横に配置する基準色見本部材68の位置が調整されるのであるから,患者と基準色見本部材68は,一体のものとして撮像・表示されるものと考えるのが,自然かつ合理的である。
したがって,周知例1の色補正装置においても,患者の画像と同時表示された状態で,基準色見本画像70bと基準色見本部材72を手動で色合わせすることにより,同時に色補正がされるものということができる。」

上記キ.ないしセ.の記載事項及び図面を総合勘案すると、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。

「患者を撮像し、その映像を遠隔地のカラー画像表示装置に表示させる場合に、患者に対する照明、カラー撮像装置の側の色感度のばらつきやその経時変化、色調節装置の設定、カラー画像表示装置の側の発色のばらつきやその経時変化、色調整装置の設定などにより、表示色が影響される結果、カラー画像表示装置に表示される患者の皮膚の色がずれてしまい、正確に再現されないという問題意識の下、カラー映像表示装置48に基準色見本画像70a、70bを表示させ、少なくともこれらのいずれか一方と、比較のために用意した基準色見本部材72とを対比し、カラー画像表示装置の表示画像色調性装置56あるいは60を手動で操作して、基準色見本部材72の基準色見本と略一致させることにより、色ずれを解消する際に、患者の画像と同時表示された状態で、基準色見本画像70bと基準色見本部材72を手動で色合わせすることにより、同時に色補正を行う色補正方法。」

(3)対比
本願発明と引用例1発明とを比較する。

ア.刊行物1発明における「業者」、「利用者」及び「表示装置であるコンピュータ用のディスプレイ」、は、それぞれ本願発明における「情報の送信元」、「情報の受信者」及び「モニタ」に相当する。

イ.刊行物1発明における「文字、イメージ、音声、ビデオ等の情報で構成された複数件分の商品情報」の中の「イメージ」は、利用者が当該「イメージ」をディスプレイに表示した画像を見て購入する商品を選択することから、当該「イメージ」は、本願発明における「見本画像」に相当する。
また、当該表示した画像の色調を補正することができることから、当該「イメージ」で表現される商品が彩色されていることは明らかである。
してみると、刊行物1発明における「文字、イメージ、音声、ビデオ等の情報で構成された複数件分の商品情報」には、本願発明における「少なくとも一つの彩色商品の見本画像」に相当する画像が含まれている。

ウ.刊行物1発明における「標準イメージ」は、利用者側においてディスプレイに表示し、利用者が色調を対比する対象であり、一方、本願発明における「基準色画像α」も、「モニタに表示し」、「情報の受信者が(画像色を)対比する」対象であるから、刊行物1発明における「標準イメージ」と本願発明における「基準色画像α」とは、「色調対比用画像」である点で共通する。

エ.上記摘記事項「4.(2)ア.」の記載によれば、業者から受け取ったCD-ROM化した商品カタログに格納されたイメージデータを消費者が自宅のPC等の表示装置に表示して商品の選択を行う商品取引システムを利用して商品を注文した場合、商品選択の際にPC等の表示装置に表示された商品イメージと、実際に配送されてきた商品との間で、色彩や質感が異なったものと感じられることがあり、注文した消費者に不満を抱かせることが多かったことが刊行物1発明が解決しようとする課題であるから、当該課題を解決するためになされた刊行物1発明の構成の一つであるCD-ROMに格納された「文字、イメージ、音声、ビデオ等の情報で構成された複数件分の商品情報と、標準イメージ」も「商品カタログ」を構成するといえる。
そして、上記「4.(3)イ.」に記載しているように、「イメージ」で表現される商品が彩色されていることも考慮すると、当該「商品カタログ」は、「彩色商品カタログ」を構成しているといえる。
また、刊行物1発明における「文字、イメージ、音声、ビデオ等の情報で構成された複数件分の商品情報と、標準イメージと」は、CD-ROMに格納されたり、公衆網を介して利用者に送信されてハードディスクに格納されたりすることから、「デジタル・データ」であることは明らかである。
さらに、刊行物1発明における「文字、イメージ、音声、ビデオ等の情報で構成された複数件分の商品情報と、標準イメージと」が、公衆網を介して利用者に送信されてハードディスクに格納される場合には、当該「文字、イメージ、音声、ビデオ等の情報で構成された複数件分の商品情報と、標準イメージと」は、業者側にあるコンピューターの記憶装置に一旦格納された後に公衆網を介して利用者に送信されることは明らかである。
してみると、刊行物1発明には、「彩色商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納する」ことが含まれているとみなすことができる。

オ.前項に記載したように、刊行物1発明には、「彩色商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納する」ことが含まれているとみなすことができ、このデジタル・データである「彩色商品カタログ」を公衆網を介して利用者に送信することから、公衆網を介して送信される当該「彩色商品カタログ」と「デジタル商品カタログX」とは、単なる呼称の違いである。
また、刊行物1発明における「公衆網を介して利用者に送信」することと、本願発明における「インターネット情報通信システムを介して不特定多数の潜在消費者である情報の受信者に送信」することとは、「通信手段を介して」送信することで共通する。
してみると、刊行物1発明と本願発明とは、上記「4.(3)ア.」における「情報の送信元」及び「情報の受信者」に関する記載も考慮すると、「情報の送信元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログとして通信手段を介して情報の受信者に送信する」点で共通する。

カ.刊行物1発明における「コンピュータ用のディスプレイ」が、デジタル・データを表示することは明らかであり、また、刊行物1発明における「操作端末」は、上記摘記事項「4.(2)イ.」によれば「一般的なパーソナルコンピュータやコンピュータゲーム機等と同等のハードウエア構成」であって、本願発明における「自己が所有する画像システム」に相当することは明らかであるから、上記「4.(3)ア.」における「情報の受信者」及び「モニタ」に関する記載及び前項の「デジタル商品カタログ」に関する記載も考慮すると、刊行物1発明における「商品情報と、標準イメージとを受信した利用者が受信した商品情報の中のイメージと標準イメージとを画像として操作端末の表示装置であるコンピュータ用のディスプレイに表示」することは、本願発明における「デジタル商品カタログXを受信した前記受信者がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像X‘として自己が所有する画像システムのモニタに表示」することに相当する。

キ.刊行物1発明において、「その画像中の表示装置の特性や調整により現物の色調や濃淡が正しく表示されない前記標準イメージ」は、コンピュータ用のディスプレイに表示されることから、前項に記載しているように「コンピュータ用のディスプレイ」が、デジタル・データを表示することは明らかであることを考慮すると、当該「その画像中の表示装置の特性や調整により現物の色調や濃淡が正しく表示されない前記標準イメージ」もデジタル化されていることは明らかである。
さらに、刊行物1発明における「表示装置の特性や調整により現物の色調や濃淡が正しく表示されない」ことのうち、「色調」が正しく表示されないこととは、換言すれば、「色変わりしている」ことであるといえる。
してみると、上記「4.(3)ウ.」における「色調対比用画像」に関する記載も考慮すると、刊行物1発明における「その画像中の表示装置の特性や調整により現物の色調や濃淡が正しく表示されない前記標準イメージ」と本願発明における「その画像中のデジタル化されており、送信に伴い色変わりしている前記基準色画像部分α‘」とは「その画像中のデジタル化されており色変わりしている色調対比用画像部分」という点で共通する。

ク.刊行物1発明における「標準として別途用意された写真」は、標準イメージ及びこの標準イメージに対して色調や濃淡を段階的に少しずつ変化させたイメージと対比して最適なイメージを選択する基準となるものであって、利用者が所有しているものであることは明らかであるから、上記「4.(3)ア.」における「情報の受信者」に関する記載を考慮すると、刊行物1発明における「標準として別途用意された写真」と本願発明における「情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像α」とは、「情報の受信者が自己が所有する色調対比用基準画像」である点で共通する。

ケ.刊行物1発明では、「その画像中の表示装置の特性や調整により現物の色調や濃淡が正しく表示されない前記標準イメージ及びこの標準イメージに対して色調や濃淡を段階的に少しずつ変化させたイメージと、利用者側にある、標準として別途用意された写真とを利用者が見比べて最も適切なイメージを選択することによって色調や濃淡の補正値を得」るが、ここで得られる補正値によって、標準イメージに対して、標準として別途用意された写真と色調や濃淡が合致した補正が行えることは明らかであり、色調に関して注目し、上記「4.(3)ア.」における「情報の受信者」に関する記載、上記「4.(3)キ.」における「色調対比用画像部分」に関する記載及び前項における「色調対比用基準画像」に関する記載を考慮すると、刊行物1発明には、本願発明における“「その画像中のデジタル化されており、」「色変わりしている前記基準色画像部分α‘の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像αの色調に合致した色調に色補正する」”ことに相当する構成が存在しているといえる。
そして、刊行物1発明では、「この補正値をパラメータとして色調や濃淡を補正した商品情報のイメージを表示する」ことから、上記標準イメージに対する補正と同1条件で補正した商品情報のイメージを表示するが、当該「商品情報のイメージ」は、ディスプレイに表示された時に、標準イメージとは異なる部分の表示部分であるから、上記「4.(3)ア.」における「モニタ」に関する記載も考慮すると、刊行物1発明には、本願発明における「この補正と同1条件でモニタ表示画像X‘以外の他の部分の色調も補正する」ことに相当する構成が存在しているといえる。

コ.刊行物1発明は「文字、イメージ、音声、ビデオ等の情報で構成された複数件分の商品情報と標準イメージとの送信方法」に関する発明であるが、標準イメージを送信する目的は、当該標準イメージを使用して、送信元から受信者に送信した画像が色変わりした場合に画像の色補正を行うためであるから、上記「4.(3)エ.」における「彩色商品カタログ」に関する記載も考慮すると、刊行物1発明は、「彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の伝達方法」に関する発明であるともいえる。

すると、本願発明と刊行物1発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
少なくとも一つの彩色商品の見本画像と、色調対比用画像とを彩色商品カタログとし、この商品カタログをデジタル・データとしてコンピューターの記憶装置に格納し、
情報の送信元がこのデジタル・データをデジタル商品カタログXとして通信手段を介して情報の受信者に送信し、
デジタル商品カタログXを受信した前記受信者がデジタル商品カタログの受信データをデジタル画像X‘として自己が所有する画像システムのモニタに表示し、
その画像中のデジタル化されており、色変わりしている前記色調対比用画像部分の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記色調対比用基準画像の色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件でモニタ表示画像X‘の前記色調対比用画像部分以外の他の部分の色調も補正する、彩色商品カタログの画像伝達における色変化情報の伝達方法。

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
色調対比用画像が、本願発明では、「基準色画像α」であるのに対し、刊行物1発明では、「標準イメージ」である点。

<相違点2>
彩色商品カタログが、本願発明では、「少なくとも一つの彩色商品の見本画像」と色調対比用画像である「基準色画像α」とを「組込ん」だものであるのに対し、刊行物1発明では、「少なくとも一つの彩色商品の見本画像」と色調対比用画像である「標準イメージ」とを彩色商品カタログとするが、この彩色商品カタログが「少なくとも一つの彩色商品の見本画像」と色調対比用画像である「標準イメージ」とを「組込ん」だものであるか否か明確でない点。

<相違点3>
デジタル商品カタログを送信する通信手段が、本願発明では、「インターネット情報通信システム」であり、そのため、情報の受信者が、「不特定多数の潜在消費者」であるのに対し、刊行物1発明では、「公衆網」であり、そのため、情報の受信者は、「不特定多数の潜在消費者」であるか否か明確でない点。

<相違点4>
色補正を、本願発明では、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに」行うのに対し、刊行物1発明では、「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに」行うのか否か明確でない点。

<相違点5>
色調対比用画像部分の色が、本願発明では、「送信に伴い」変わっているのに対し、刊行物1発明では、「表示装置の特性や調整により」変わっているが、「送信に伴い」変わっているのか否か明確でない点。

<相違点6>
色調対比用画像部分が、本願発明では、「基準色画像部分α‘」であるのに対し、刊行物1発明では、「標準イメージ」部分である点。

<相違点7>
色調対比用基準画像が、本願発明では、「前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像α」であるのに対し、刊行物1発明では、「標準として別途用意された写真」である点。

<相違点8>
その画像中のデジタル化されており、色変わりしている前記色調対比用画像部分の色調を、前記情報の受信者が自己が所有する前記色調対比用基準画像の色調に合致した色調に色補正することによって、この補正と同1条件でモニタ表示画像X‘の前記色調対比用画像部分以外の他の部分の色調も補正する際に、本願発明では、上記両補正を「同時に」行うのに対し、刊行物1発明では、「同時に」行うのか否か明確でない点。

(4)判断
上記相違点1ないし8について検討する。

ア.相違点1及び6について
刊行物1発明における「標準イメージ」は、色調を変えることができる画像であり、当該「標準イメージ」から色調を段階的に少しずつ異なるイメージを作成することができることから、当該「標準イメージ」は、「基準」となる色の画像といえる。
また、利用者側で、色調を対比する場合には、モニタに表示した画像のうち色調対比のために上記「標準イメージ」部分を注目すれば十分であることは明らかである。
してみると、刊行物1発明における「標準イメージ」と本願発明における「基準色画像α」との相違及び刊行物1発明におけるモニタに表示した画像のうち色調対比のために注目する色調対比用画像部分である「前記標準イメージ」部分と本願発明における「基準色画像部分α‘」との相違は、ともに単なる呼称の相違であって、実質的な相違ではない。

イ.相違点2について
「少なくとも一つの彩色商品の見本画像」に「色調対比用画像」を組み込んだものを1つのデータとして利用者に提供するかどうかは、単なるサービスの仕方の問題であって、当業者が適宜行うことができる設計的事項である(原出願判決第44ページ第1行ないし第5行参照)。
してみると、刊行物1発明において、「彩色商品カタログ」として、「少なくとも一つの彩色商品の見本画像と、基準色画像αを組込ん」だものとすることは、当業者が適宜なしえることである。

ウ.相違点3について
通信手段として「インターネット情報通信システム」は、周知の通信手段であり、インターネットを利用した通信販売システムも周知であるから(原出願判決第44ページ第13行及び第14行参照)、刊行物1発明において、デジタル商品カタログを送信する通信手段として「公衆網」に代えて「インターネット情報通信システム」を使用することは、当業者が適宜なし得ることである。
また、通信販売に「インターネット情報通信システム」を使用した場合には、情報の受信者が「不特定多数の潜在消費者」となることは当然のことである。

エ.相違点5について
刊行物1発明では、利用者側で表示された標準イメージ及びこの標準イメージに対して色調や濃淡を段階的に少しずつ変化させたイメージから利用者が最も適切なイメージを選択しており、この利用者側で表示された標準イメージには、表示装置の特性や調整による色変わりだけでなく、送信に伴って生じる色変わりも含まれていることは明らかである。
してみると、刊行物1発明においても、色調対比用画像部分の色は、送信に伴い変わっているとみなすこともできるため、上記相違点5は、実質的な相違点ではない。
なお、本願発明においても、刊行物1発明と同様に、色調対比用画像部分には、表示装置の特性や調整による色変わりが含まれていることは明らかであるから、この観点から見ても、上記相違点5は、実質的な相違点ではない。

オ.相違点7について
刊行物1発明における「別途用意された写真」は、利用者側で色変わりをしているか否かを判断するための基準となる「標準」の写真であるから、当然業者側にある「標準イメージ」と同じものであって、利用者が所有するものである。
そして、上記「4.(4)ア.」に記載したように、上記「標準イメージ」は、実質的に「基準色画像α」と相違しない。
してみると、刊行物1発明において、色調対比用基準画像として「標準として別途用意された写真」に代えて、「前記情報の受信者が自己が所有する前記基準色画像α」とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

カ.相違点4及び8について
本願発明について、上記「3.(1)ア.」に記載したように、請求人は、選択機能を機能させないことに関して、
「本願発明において、その選択機能を機能させることがないことは、上記段落0024に関する本願発明の画像処理(色補正)の具体的手段の態様において、自己システムにおける選択機能を機能させる手順が含まれていないこと、および、記載事項(a)および(c)、ならびに当初明細書の段落0045には、上記のとおり、本願発明の上記カラーマッチング処理操作に当たって「同時に色調整されること」が明記されていることから、明白であります。」と主張している。
ここで、刊行物2発明では、「選択機能を機能させる手順」は存在しないことから、この点においては、刊行物2発明と本願発明における上記請求人の主張との間に差異はない。
また、カラーマッチング処理操作に当たって「同時に色調整されること」は、刊行物2発明の構成として存在していることから、この点においても、刊行物2発明と本願発明における上記請求人の主張との間に差異はない。
してみると、刊行物1発明における色補正において、刊行物2発明のように「自己のシステムにおける選択機能を機能させずに」色補正を行い、また、上記<相違点8>に記載した両色補正を刊行物2発明のように「同時に」行うことは、当業者が適宜なし得ることである。

そして、通信手段やモニタの特性等により生じる色変わりを受信側で色補正する方法という同一技術分野に属する上記刊行物1発明及び刊行物2発明を組み合わせることにより、本願発明を構成することは、当業者が容易に想到し得ることであり、その作用効果も当業者が予測し得るものにすぎない。

(5)特許法第29条第2項についてのむすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び刊行物2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであって、本件出願は、平成20年12月25日付け拒絶理由通知における拒絶理由により、特許法第49条第2号の規定に基づき拒絶査定すべきものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、原査定を取り消す、本願は特許すべきであるとの審決を求めるとした審判請求は、これを認めることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-30 
結審通知日 2010-10-05 
審決日 2010-10-18 
出願番号 特願2004-182595(P2004-182595)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04N)
P 1 8・ 537- Z (H04N)
P 1 8・ 536- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仲間 晃  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 加藤 恵一
畑中 高行
発明の名称 インターネット情報通信システムを介した画像伝達における色変化情報伝達方法  
代理人 樋口 外治  
代理人 永坂 友康  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
代理人 樋口 外治  
代理人 西山 雅也  
代理人 永坂 友康  
代理人 石田 敬  

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