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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1257665
審判番号 不服2010-19992  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-06 
確定日 2012-05-31 
事件の表示 特願2004-273646「コンテンツのコピーコントロール装置及びそのプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月 6日出願公開、特開2006- 93849〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、
平成16年9月21日付けの出願であって、
平成17年9月9日付けで審査請求がなされ、
平成20年11月12日付けで拒絶理由通知(同年同月14日発送)がなされ、
平成21年1月13日付けで意見書が提出されると共に、
同日付けで手続補正書が提出され、
平成21年7月29日付けで拒絶理由通知(同年8月3日発送)がなされ、
同年10月2日付けで意見書が提出され、
平成22年6月3日付けで拒絶査定(同年同月8日発送)がなされ、
同年9月6日付けで審判請求がなされると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
同年10月1日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
平成23年4月22日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(同年同月26日発送)がなされ、これに対して
同年6月23日付けで回答書が提出され、
同年12月22日付けで上記平成22年9月6日付けの手続補正に対する補正の却下の決定(平成24年1月10日発送)がなされるとともに、拒絶理由通知(平成23年12月27日発送)(以下「当審拒絶理由通知」と記す。)がなされ、
平成24年2月27日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」と言う。)は、上記平成24年2月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「暗号鍵を再生側中間鍵の初期値としてコピーする手段と、
現在の前記再生側中間鍵を更新後の新たな再生側中間鍵が更新前の再生側中間鍵に依存するようにして不可逆に更新することにより新たな再生側中間鍵を生成する再生側中間鍵更新手段と、を有しており、前記暗号鍵を基に前記再生側中間鍵を生成する再生側中間鍵生成手段と、
前記再生側中間鍵を用いてコンテンツを暗号解読するコンテンツ暗号解読手段と、
所定のタイミングで、前記暗号鍵を所定の値に不可逆に更新する暗号鍵更新手段と、
を備えるコンテンツのコピーコントロール装置であって、
前記暗号鍵更新手段は、暗号鍵に基づき暗号鍵を更新し、前記再生側中間鍵更新手段は再生側中間鍵に基づき再生側中間鍵を更新し、
前記暗号鍵更新手段及び前記再生側中間鍵更新手段による更新は、同一のアルゴリズムを用いて同一のタイミングで行われることを特徴とするコンテンツのコピーコントロール装置。」


3.先行技術

(1)引用文献
本願の出願より前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、上記当審拒絶理由通知の理由3.において引用された、下記引用文献には下記引用文献記載事項が記載されている。

<引用文献>
特開2003-101529号公報(平成15年4月4日出願公開)

<引用文献記載事項1>
「【請求項1】 コンテンツ暗号化・復号化のためのタイトル鍵を記録するタイトル鍵記録手段と、前記タイトル鍵記録手段に記録された鍵を用いて前記コンテンツをブロック単位に復号化する復号化手段と、前記復号化手段により前記コンテンツ中の各ブロックが復号化される際に生成される時変鍵を抽出する時変鍵抽出手段と、前記タイトル鍵記録手段が記録するタイトル鍵を前記時変鍵抽出手段により抽出された時変鍵で更新する鍵更新手段、を有することを特徴とするコンテンツ管理装置。」

<引用文献記載事項2>
「【0025】図3は著作権保護のかかったコンテンツに対するMOVE・PAUSE処理の概要を示す図である。
【0026】PVR(Personal Video Recorder)31はコンテンツ管理装置30を具備する装置の一具体例であり、HDDを内蔵しコンテンツを記録あるいは一時蓄積する機能を持つ。表示装置32はテレビジョンなどに代表される機器で、デジタルもしはくアナログ映像を画面に表示する機能を持つ。記録装置33はDVHSやAV-HDD,DVDなどに代表される機器で、映像の記録機能を持つ。PVR31は必要に応じてMOVE処理もしくはPAUSE処理を行う。
【0027】MOVE処理は、Copy Onceコンテンツに対するコンテンツ移動処理であるため、他の記録媒体へのコピー(ダビング)は許可されていない。しかしコンテンツをコンテンツ記録部11のような受信器の記録媒体に記録した後、該コンテンツの削除を条件に、他の記録先機器へ移動することが許されている。MOVE処理は、このようなコンテンツ移動処理を示す。
【0028】MOVE処理では著作権保護に関する規定上、コンテンツの移動途中に障害が発生したとしても、送信元であるPVRと受信先である記録装置に同一コンテンツが重複して存在することのないよう適切に制御されなければならない。また、1台のPVR31の出力を複数台の記録機器で記録する操作は、コンテンツの複製を作成する操作となるためMOVE処理では許可されていない。
【0029】Copy Neverコンテンツは記録媒体への記録は許可されていないが、PAUSE処理では記録時間に制限を設けることにより、コンテンツ記録部11のような記録媒体への一時蓄積を許可し、一時停止やプレイバック再生を可能としている。制限時間の具体例としては、90分や1日あるいは1週間などがある。一時蓄積したコンテンツは制限時間経過後削除する必要がある。
【0030】PAUSE処理は、DTCP規格ではRETENSION処理とも呼ばれており、処理に関する名称は本発明の限りではない。また、PAUSE処理を、Copy Onceコンテンツに対して適用することも可能である。」

<引用文献記載事項3>
「【0043】図10はコンテンツ暗号化方式の一例を示す。ここでは暗号化方式としてC-CBC(Converted Cipher Block Chaining)を用いた暗号化処理について示す。C-CBCでコンテンツを暗号化する際、暗号化に用いる暗号鍵の推定を困難にし暗号強度を高めるため、処理途中で暗号鍵を変更する時変鍵方式という処理方式を用いる。ここで暗号鍵はタイトル鍵と同義である。この時変鍵は元の暗号鍵と平文コンテンツから計算により求めることができる。計算には逆演算の困難な一方向性関数を用いる。これにより暗号化コンテンツから平文コンテンツや暗号鍵を推定することを困難とし暗号強度を高めている。
【0044】図10では、コンテンツをブロック単位に分割した上で、まずタイトル鍵と最初のブロックを暗号化する。この暗号化の際導出された時変鍵を用いて第2のブロックを暗号化する。以下当該処理を各ブロックに順次適用することでコンテンツを暗号化する。
【0045】図11は図10で示した暗号化方式により暗号化されたコンテンツを復号化する処理を示した図である。この復号化処理は、図10で説明した暗号化処理とは逆の手順となり、タイトル鍵もしくはその時変鍵と暗号化コンテンツから平文コンテンツへの復号化を順次行っていく。」

<引用文献記載事項4>
「【0046】以下、本発明におけるMOVE・PAUSE処理におけるコンテンツ削除方法について詳細に示す。
【0047】図12は本発明に係るコンテンツ復号化の際に行われるコンテンツ削除処理の第1の実施形態について示した図である。本方式では、コンテンツ復号化の際導出された時変鍵を抽出し、抽出された時変鍵で元のタイトル鍵を更新する処理を追加したことに特徴がある。
【0048】記録用暗号化・復号化部12は先ずブロックB1をタイトル鍵を用いて復号化する。このタイトル鍵はPVR31が各コンテンツ毎に予め持っている値であり、タイトル鍵記録部14内のタイトル鍵領域14aに記録されている。時変鍵抽出更新部15は最初のブロックB1の復号化の際に時変鍵1を抽出する。また時変鍵抽出更新部15は時点t1において、タイトル鍵領域14aに格納されているタイトル鍵を時変鍵1で上書き、すなわち書き換える。
【0049】次に記録用暗号化・復号化部12は時変鍵1を用いてブロックB2を復号化する。時変鍵抽出更新部15は2番目のブロックB2の復号化の際に時変鍵2を抽出し、時点t2において時変鍵1を時変鍵2で上書きする。以後、時変鍵3、時変鍵4…という手順で、時変鍵抽出更新部15はタイトル鍵領域14aの鍵を順次上書きしていく。
【0050】このようにブロック単位の復号化の際得られた時変鍵でタイトル鍵領域14aを順次上書きしていくことで、上書きした時変鍵を用いて復号化されるブロックより前のブロックの復号化が不可能となり、コンテンツそのものを削除した場合と同一の結果が得られる。」

<引用文献記載事項5>
「【0051】図13は本方式におけるコンテンツ削除方式を適用した場合のMOVE処理において、処理中に障害が発生した場合の動作を示した図である。
【0052】図13では、ブロックB3を時変鍵Jk2で復号後、得られた時変鍵Jk3でタイトル鍵領域14aを上書きした後、障害が発生した場合を想定している。障害の具体例としては、停電による電源クラッシュや故障または不注意により伝送ケーブル抜き等が考えられる。この時すでに転送済みのコンテンツ(ブロックB1からB3)は消去済みもしくは2度と復号化できない状態でなければならない。
【0053】本方式によるコンテンツ削除方法を適用したMOVE処理では、障害発生時点でタイトル鍵領域14aはJk3に書き換えられており、元のタイトル鍵Tkとそこから導出される時変鍵Jk1およびJk2は2度と得ることができない。このためブロックB1?B3のコンテンツは復号化不可能となり、事実上コンテンツが削除されたと同様の結果が得られる。
【0054】障害発生後、処理を再開する場合、タイトル鍵領域14aのJk3を用いてブロックB4を復号化し、該復号化の際に導出されるJk4を用いてブロックB5を復号化し、以後同様に残りのコンテンツを復号化して伝送することが出来る。


(2)参考文献
本願の出願より前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記参考文献には、下記参考文献記載事項が記載されている。

<参考文献1>
特開2000-183867号公報(平成12年6月30日出願公開)

<参考文献記載事項1-1>
「【0002】
【従来の技術】従来、暗号処理装置に格納する暗号鍵は、不揮発性記憶媒体に格納し、この不揮発性記憶媒体に格納された鍵をそのまま読み込み使用するか又は一旦揮発性記憶媒体に移し使用していた。」


<参考文献2>
特開平11-203002号公報(平成11年7月30日出願公開)

<参考文献記載事項2-1>
「【0005】つまり、メモリ上の作業データがユーザの操作に従ってリアルタイムに更新されていくのに反して、外部記憶装置に記録される作業データは比較的大きな時間間隔で更新されるという、更新時間のずれが存在する。上記の原因のため従来のコンピュータでは、突然にコンピュータが異常となった場合(いわゆるコンピュータが“落ちた”場合等)に、メモリ上の作業データが失われユーザの作業が無駄になる問題等が起こりうる。この問題に対する従来の技術には、定期的(例えば10分毎)にメモリ上の作業データを外部記憶装置に自動的に記録する方法、複数のコンピュータで同じ処理を同時に行い常にバックアップする方法等がある。」


4.引用発明の認定

(1)上記引用文献には、上記引用文献記載事項1のとおりの、
「コンテンツ暗号化・復号化のためのタイトル鍵を記録するタイトル鍵記録手段と、
前記タイトル鍵記録手段に記録された鍵を用いて前記コンテンツをブロック単位に復号化する復号化手段と、
前記復号化手段により前記コンテンツ中の各ブロックが復号化される際に生成される時変鍵を抽出する時変鍵抽出手段と、
前記タイトル鍵記録手段が記録するタイトル鍵を前記時変鍵抽出手段により抽出された時変鍵で更新する鍵更新手段、を有する」「コンテンツ管理装置」が記載されている。

(2)該「コンテンツ管理装置」は、上記引用文献記載事項2等から明らかなように、「Copy Onceコンテンツ」に対する「MOVE処理」や「PAUSE処理」を前提とする処理であって、引用文献記載事項4の段落【0050】記載の如き「コンテンツそのものを削除した場合と同一の結果が得られる」処理を行うものである。
したがって、上記「コンテンツ管理装置」は
「Copy Onceコンテンツに対するMOVE処理やPAUSE処理におけるコンテンツそのものを削除した場合と同一の結果を得るための処理を行うもの」
であると言える。

(3)そして、この処理は、上記引用文献記載事項4の段落【0048】?【0049】記載のとおり、「記録用暗号化・復号化部12は先ずブロックB1をタイトル鍵を用いて復号化する。このタイトル鍵はPVR31が各コンテンツ毎に予め持っている値であり、タイトル鍵記録部14内のタイトル鍵領域14aに記録されている。時変鍵抽出更新部15は最初のブロックB1の復号化の際に時変鍵1を抽出する。また時変鍵抽出更新部15は時点t1において、タイトル鍵領域14aに格納されているタイトル鍵を時変鍵1で上書き、すなわち書き換える。」「次に記録用暗号化・復号化部12は時変鍵1を用いてブロックB2を復号化する。時変鍵抽出更新部15は2番目のブロックB2の復号化の際に時変鍵2を抽出し、時点t2において時変鍵1を時変鍵2で上書きする。以後、時変鍵3、時変鍵4…という手順で、時変鍵抽出更新部15はタイトル鍵領域14aの鍵を順次上書きしていく。」との手順でなされるものであるところ、この処理は上記引用文献記載事項3のタイトル鍵を更新する処理をせずに時変鍵を導出する処理方式に対して、引用文献記載事項4の段落【0047】記載の如く「コンテンツ復号化の際導出された時変鍵を抽出し、抽出された時変鍵で元のタイトル鍵を更新する処理を追加した」ものであるから、2番目以降のブロックの復号化の際には、「タイトル鍵領域14a」に記録されている鍵を用いているのではなく、前の復号化の際に抽出された時変鍵を用いていることが明らかである。
したがって、上記処理は
「前記復号化手段が、先ず最初のブロックを前記タイトル鍵記録手段に記録されているタイトル鍵を用いて復号化し、
前記時変鍵抽出手段が最初のブロックの復号化の際に時変鍵を抽出し、
前記鍵更新手段が前記タイトル鍵記録手段に格納されているタイトル鍵を該時変鍵で上書きし、
次に復号化手段が前の復号化の際に抽出された前記時変鍵を用いて次のブロックを復号化し、
前記時変鍵抽出手段が該次のブロックの復号化の際に次の時変鍵を抽出し、
前記鍵更新手段が前記タイトル鍵記録手段に記録されている鍵を該次の時変鍵で上書きし、
以後、同様の手順を繰り返し実行するもの」
であると言える。

(4)そして、上記処理においても、上記引用文献記載事項3の段落【0043】の「この時変鍵は元の暗号鍵と平文コンテンツから計算により求めることができる。計算には逆演算の困難な一方向性関数を用いる。」との記載と同様の時変鍵の計算をしていることは明らかであるから、
「前記時変鍵は元の暗号鍵と平文コンテンツから逆演算の困難な一方向性関数を用いる計算により求めるもの」
であると言える。

(5)さらに、上記「コンテンツ管理装置」は、上記引用文献記載事項5の段落【0054】に記載のとおり、「障害発生後、処理を再開する場合、タイトル鍵領域14aのJk3を用いてブロックB4を復号化し、該復号化の際に導出されるJk4を用いてブロックB5を復号化し、以後同様に残りのコンテンツを復号化して伝送することが出来る」ものであるところ、この「障害」の具体例として、同記載事項の段落【0052】に「停電による電源クラッシュや故障または不注意により伝送ケーブル抜き等」がなされることがあげられている。
したがって、上記「コンテンツ管理装置」は
「停電による電源クラッシュや故障または不注意による伝送ケーブル抜き等の障害発生後、処理を再開する場合、前記タイトル鍵記録手段の鍵を用いてブロックを復号化できるもの」
であると言える。

(6)よって、引用文献には下記の引用発明が記載されていると認められる。
<引用発明>
「コンテンツ暗号化・復号化のためのタイトル鍵を記録するタイトル鍵記録手段と、
前記タイトル鍵記録手段に記録された鍵を用いて前記コンテンツをブロック単位に復号化する復号化手段と、
前記復号化手段により前記コンテンツ中の各ブロックが復号化される際に生成される時変鍵を抽出する時変鍵抽出手段と、
前記タイトル鍵記録手段が記録するタイトル鍵を前記時変鍵抽出手段により抽出された時変鍵で更新する鍵更新手段、
を有するコンテンツ管理装置であって、
該コンテンツ管理装置は、
Copy Onceコンテンツに対するMOVE処理やPAUSE処理におけるコンテンツそのものを削除した場合と同一の結果を得るための処理を行うものであり、
該処理は、
前記復号化手段が、先ず最初のブロックを前記タイトル鍵記録手段に記録されているタイトル鍵を用いて復号化し、
前記時変鍵抽出手段が最初のブロックの復号化の際に時変鍵を抽出し、
前記鍵更新手段が前記タイトル鍵記録手段に格納されているタイトル鍵を該時変鍵で上書きし、
次に復号化手段が前の復号化の際に抽出された前記時変鍵を用いて次のブロックを復号化し、
前記時変鍵抽出手段が該次のブロックの復号化の際に次の時変鍵を抽出し、
前記鍵更新手段が前記タイトル鍵記録手段に記録されている鍵を該次の時変鍵で上書きし、
以後、同様の手順を繰り返し実行するものであり、
前記時変鍵は元の暗号鍵と平文コンテンツから逆演算の困難な一方向性関数を用いる計算により求めるものであり、
停電による電源クラッシュや故障または不注意による伝送ケーブル抜き等の障害発生後、処理を再開する場合、前記タイトル鍵記録手段の鍵を用いてブロックを復号化できるものである
コンテンツ管理装置」


5.対比
以下に、本願発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明は「コンテンツ管理装置」であり、これは「Copy Onceコンテンツに対するMOVE処理やPAUSE処理におけるコンテンツそのものを削除した場合と同一の結果を得るための処理を行う」ものであるから、本願発明と同様に「コンテンツのコピーコントロール装置」とも言えるものである。

(2)引用発明において、「タイトル鍵記録手段」に記録されている「タイトル鍵」は、本願発明における「暗号鍵」に対応付けられるものであるところ、前者は「コンテンツ暗号化・復号化のためのタイトル鍵」であるから、後者と同様に「暗号鍵」と言えるものである。

(3)引用発明における「時変鍵」は、本願発明における「再生側中間鍵」に対応付けられるものであるところ、前者はこれを用いて「復号化」がなされるものであるから「再生側」の鍵であり、また、「元の暗号鍵」から「計算」されるとともに、次の「時変鍵」を「計算」するための「元の暗号鍵」ともなるのであるから「中間鍵」とも言えるものである。すなわち前者も後者と同様に「再生側中間鍵」と言えるものである。

(4)引用発明においては「先ず最初のブロックを前記タイトル鍵記録手段に記録されているタイトル鍵を用いて復号化し」、それ以降は「時変鍵」を用いて「次のブロックを復号化」することを「繰り返し実行する」のであるから、引用発明における「タイトル鍵」は「時変鍵」の初期値とも言えるものであり、引用発明は「タイトル鍵記録手段に記録されているタイトル鍵」を「時変鍵」の初期値とする手段を有しているとも言える。そして、上記(2)(3)を考慮すれば、該手段と本願発明における「コピーする手段」とは、「暗号鍵を再生側中間鍵の初期値とする手段」である点で共通すると言える。

(5)引用発明における「時変鍵抽出手段」は、本願発明における「再生側中間鍵更新手段」に対応付けられるものであるところ、前者における「時変鍵」は「元の暗号鍵と平文コンテンツから逆演算の困難な一方向性関数を用いる計算により求めるもの」であり、この「元の暗号鍵」とは「時変鍵」の「初期値」である「タイトル鍵」や前の「復号化」で用いられた「時変鍵」にほかならないのであるから、前者も後者と同様に「現在の前記再生側中間鍵を更新後の新たな再生側中間鍵が更新前の再生側中間鍵に依存するようにして不可逆に更新することにより新たな再生側中間鍵を生成する再生側中間鍵更新手段」と言えるものである。

(6)そして、上記(4)(5)で言及した引用発明における『「タイトル鍵記録手段に記録されているタイトル鍵」を「時変鍵」の初期値とする手段』及び「時変鍵抽出手段」は、「タイトル鍵記録手段」に記録されている「タイトル鍵」を基に「時変鍵」を生成する手段を構成しているととらえることもできる。
したがって、引用発明も本願発明も「暗号鍵を再生側中間鍵の初期値とする手段と、
現在の前記再生側中間鍵を更新後の新たな再生側中間鍵が更新前の再生側中間鍵に依存するようにして不可逆に更新することにより新たな再生側中間鍵を生成する再生側中間鍵更新手段と、を有しており、前記暗号鍵を基に前記再生側中間鍵を生成する再生側中間鍵生成手段」を有している点で共通すると言える。

(7)引用発明における「復号化手段」は、本願発明における「コンテンツ暗号解読手段」に対応付けられるものであるところ、前者は「時変鍵」を用いて「コンテンツ」を「復号化」するのであるから、後者と同様に「前記再生側中間鍵を用いてコンテンツを暗号解読するコンテンツ暗号解読手段」と言えるものである。

(8)引用発明における「鍵更新手段」は「暗号鍵更新手段」に対応付けられるものであるところ、前者における「タイトル鍵記録手段が記録するタイトル鍵」の更新は「元の暗号鍵と平文コンテンツから逆演算の困難な一方向性関数を用いる計算により求め」られる「時変鍵」で「上書き」することでなされるのであり、これが「所定のタイミング」で行われることは明らかであるから、引用発明における「鍵更新手段」は本願発明における「暗号鍵更新手段」と同様に「所定のタイミングで、前記暗号鍵を所定の値に不可逆に更新する暗号鍵更新手段」と言えるものである。

(9)引用発明における「タイトル鍵記録手段に記録されている鍵」の更新は、該鍵を「時変鍵で上書き」することでなされるものであるところ、該「時変鍵」は「タイトル鍵記録手段」に記憶される鍵に基づいて計算されるものにほかならないのであるから、「タイトル鍵記録手段に記録されている鍵」に基づいて「タイトル鍵記録手段に記録されている鍵」を更新していると言える。
したがって、引用発明と本願発明とは、「暗号鍵に基づき暗号鍵を更新」するものである点で共通すると言える。

(10)引用発明における「時変鍵抽出手段」による「次の時変鍵」の抽出は「次のブロックの復号化の際に」なされるものであるところ、該「次のブロックの復号化」は「前の復号化の際に抽出された前記時変鍵を用いて」なされるのであるから、「時変鍵抽出手段」においては該「時変鍵抽出手段」が抽出した「時変鍵」に基づいて「次の時変鍵」が計算されていることは明らかである。
したがって、引用発明においても本願発明においても「前記再生側中間鍵更新手段は再生側中間鍵に基づき再生側中間鍵を更新」するものであると言える。

(11)よって、本願発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「暗号鍵を再生側中間鍵の初期値とする手段と、
現在の前記再生側中間鍵を更新後の新たな再生側中間鍵が更新前の再生側中間鍵に依存するようにして不可逆に更新することにより新たな再生側中間鍵を生成する再生側中間鍵更新手段と、を有しており、前記暗号鍵を基に前記再生側中間鍵を生成する再生側中間鍵生成手段と、
前記再生側中間鍵を用いてコンテンツを暗号解読するコンテンツ暗号解読手段と、
所定のタイミングで、前記暗号鍵を所定の値に不可逆に更新する暗号鍵更新手段と、
を備えるコンテンツのコピーコントロール装置であって、
暗号鍵に基づき暗号鍵を更新し、前記再生側中間鍵更新手段は再生側中間鍵に基づき再生側中間鍵を更新する
コンテンツのコピーコントロール装置。」

<相違点1>
本願発明における、暗号鍵を再生側中間鍵の初期値とする手段は暗号鍵を「コピーする」ことで再生側中間鍵の初期値とする手段である。
(これに対し、引用文献にはタイトル鍵を時変鍵の初期値として「コピーする」旨の記載はない。)

<相違点2>
本願発明は、「前記暗号鍵更新手段」が暗号鍵に基づき暗号鍵を更新するもであり、「前記暗号鍵更新手段及び前記再生側中間鍵更新手段による更新は、同一のアルゴリズムを用いて同一のタイミングで行われる」ものである。
(これに対し、引用発明における「鍵更新手段」は、「時変鍵抽出手段」が抽出した「時変鍵」を利用して、これを「タイトル鍵記録手段の鍵」に「上書き」するものであるため、「タイトル鍵記録手段の鍵」に基づいてこれを更新するものとは言えず、さらに、このため、「タイトル鍵記録手段の鍵」の更新と「時変鍵」の更新とが「同一のアルゴリズムを用いて同一のタイミングで行われる」ものとも言えない。)


6.判断
以下に、上記相違点について検討する。

<相違点1について>
記憶手段に記憶された情報の利用に際して、これをそのまま利用するか、他の記憶手段に移してから利用するかは、利用する記憶手段の特性や情報の利用形態等に応じて、適宜に選択される設計的事項に過ぎないものであり(必要があれば上記参考文献1(特に参考文献記載事項1-1)等参照。)、引用文献記載の「タイトル鍵」を用いた復号に際して、「タイトル鍵」を「時変鍵」としてコピーしてから復号するような構成とすること、すなわち、上記相違点1に係る構成を採用することも、当業者が適宜に採用し得た設計的事項にほかならない。

<相違点2について>
引用発明における「タイトル鍵記録手段」は「停電による電源クラッシュや故障または不注意による伝送ケーブル抜き等の障害発生後、処理を再開する場合、前記タイトル鍵記録手段の鍵を用いてブロックを復号化できる」と言う障害対策としてのバックアップ手段となるものであるところ、バックアップの手法としては、一方を他方に複写する手法と並んで、二つの系で同時に同一の処理を行う構成も当業者にとっては周知の手法である(必要があれば上記参考文献2(参考文献記載事項2-1)等参照。)から、引用発明における「鍵更新手段」を、「タイトル鍵記録手段の鍵」を「時変鍵」で「上書き」する構成に代えて、「タイトル鍵記録手段の鍵」を「タイトル鍵記録手段の鍵」を基にして更新する構成とし、「時変鍵抽出手段」と同時に同一の処理を行うようにすること、すなわち、上記相違点2に係る構成を採用することも、当業者が適宜になし得た設計変更に過ぎないものである。

してみると、本願発明の構成は引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
また、本願発明の効果は、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


7.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-30 
結審通知日 2012-04-03 
審決日 2012-04-17 
出願番号 特願2004-273646(P2004-273646)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
清木 泰
発明の名称 コンテンツのコピーコントロール装置及びそのプログラム  
代理人 丸山 隆夫  

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