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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1258061
審判番号 不服2010-28088  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-13 
確定日 2012-06-06 
事件の表示 特願2004-202387「振動発生用デバイスの取付用ホルダー」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月26日出願公開、特開2006- 25555〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年7月8日の出願であって、平成22年9月7日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成22年9月13日)、これに対し、平成22年12月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により、平成23年10月14日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成23年10月17日)、これに対し、平成23年12月13日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.当審の拒絶の理由II(2)
当審で平成23年10月14日付で通知した拒絶の理由II(2)の概要は以下のとおりである。

『II この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)・・・・・・・・・・・・・・略・・・・・・・・・・・・・・
(2)請求項1に「任意の高さで前記空間に位置決め固定するための取付手段」とあるが、ホルダーにどのような取付手段を設ければ、ホルダーを任意の高さで空間に位置決め固定できるのか、明細書及び図面を参照しても全く不明(請求項末尾にホルダーとあるから、ホルダー単体で、任意の高さで空間に位置決め固定できなければならない。ホルダーを複数用意して、各ホルダー毎に空間での高さが異なるのであれば、位置決め固定方法ではないか。)である。請求項2、5も同様である。』


3.当審の判断
任意とは、「論理学・数学などで無作為に選ばせること」であるから、請求項1の「任意の高さで前記空間に位置決め固定するための取付手段」は、取付用ホルダーを位置決め固定する高さは無作為に選ばせなければならない。
しかし、図1記載のものは、(a)の取付用ホルダーも、(b)の取付用ホルダーも、(c)の取付用ホルダーも、何れの取付用ホルダーも1つの高さしか選択できないものであり、仮に、(a)?(c)3つ全部揃って取付用ホルダーであると請求人が意図しているとしても、高さの選択は特定の3種類に限られ、任意の高さにはならない。請求項2も同様である。
また、図5記載のものは、平成23年12月13日付意見書に示されたように、上下を逆転して取り付けたとしても、高さの選択は特定の2種類に限られ、任意の高さにはならない。請求項5も同様である。
上記のとおりであるので、取付用ホルダーにどのような取付手段を設ければ、取付用ホルダーを任意の高さで空間に位置決め固定できるのか全く不明である。

したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載したものであるとはいえず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
同様に、取付用ホルダーにどのような取付手段を設けることにより取付用ホルダーを任意の高さで空間に位置決め固定できるのか何ら開示が無く、当業者が、出願時の技術常識を考慮しても、具体的にどの様な取付手段を設けるのか不明であるから、請求項1、2、5に係る発明は明確ではなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


4.拒絶の理由Iに対する当審の判断
上記のとおり、本願は、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないが、更に、本願の発明の進歩性について検討する。

(1)本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年12月13日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】振動発生用デバイスの少なくとも外周の一部を保持又は内包する取付用ホルダーであり、前記ホルダーにより支持された前記振動発生用デバイスを、機器筐体内に搭載する回路基板の凹部型に切り欠いた空間位置に、前記回路基板表面からの任意の高さで前記空間に位置決め固定するための取付手段を備えたことを特徴とする振動発生用デバイスの取付用ホルダー。」


(2)引用例
これに対して、当審の拒絶の理由で引用された、特開平6-253486号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

1-a「支持体に形成した支持穴内に挿着されて外周面の被係止突起を該支持穴周縁に係止することによって該支持穴に位置決めされる円筒状本体を備えた円筒状部品において、該被係止突起は該円筒状本体の外周面にその軸方向に沿って複数段配置されており、各段のうちの何れかを該支持穴の周縁に係止することにより支持体に対する円筒状部品の取付け位置を調整可能にしたことを特徴とする円筒状部品の取付け構造。」(【請求項1】)

1-b「本発明は円筒状の部品を取付ける為の構造の改良に関し、詳細には例えば振動によって信号の着信を携帯者に報知する為の振動モータを備えた受信機等における振動モータの取付け構造に関する。」(【0001】)

1-c「上記受信機が備える振動モータは、受信機筐体内のプリント基板上に固定され、モータが発する振動を筐体に伝えるものである。図10(a) 及び(b) は従来の扁平円筒状の振動モータの構成及びプリント基板等の支持体に対する取付け構造を示しており、この振動モータ1は円筒状本体1aの外周面から一体的にフランジ(被係止突起)2を突出した構成を有し、プリント基板或はシャーシ等の支持体3の適所に形成した円形の支持穴4内に円筒状本体1aを挿着してフランジ2を支持穴4周縁に係止することにより位置決めされていた。」(【0003】)

1-d「この円筒状部品、例えば上記振動モータ10は、円筒状本体11の外周面に複数段の被係止突起A1?A3、B1?B3、C1?C3を有しており、この実施例では各被係止突起A1?A3、B1?B3、C1?C3は平面方向から見た場合に互いに周方向に重なり合わない様に周方向位置をずらして配置されている。」(【0007】)

1-e「また、この円筒状部品10の円筒状本体11を支持するプリント基板、シャーシ等の支持体12側の支持穴(或は凹所)13はその内周縁に夫々周方向間隔α、β、γをおいて3つの同一形状の係止突起Z1、Z2、Z3を有しており、」(【0008】)

上記記載事項及び図面を参照すると、円筒状本体は振動モータ自体を支持している。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「振動モータの円筒状本体であり、前記円筒状本体により支持された前記振動モータを、受信機筐体内のプリント基板の凹所に、前記プリント基板に対する円筒状本体の取付け位置を調整可能にした被係止突起を備えた振動モータの円筒状本体。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。


(3)対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「振動モータ」、「受信機筐体内」、「プリント基板」、「被係止突起」は、それぞれ本願発明の「振動発生用デバイス」、「機器筐体内」、「回路基板」、「取付手段」に相当する。

本願発明の「任意の高さ」は、実施例を参照すると、高さ調整が複数段可能であれば該当するから、引用発明の「プリント基板に対する円筒状部品の取付け位置を調整可能にした被係止突起」は、本願発明の「回路基板表面からの任意の高さで空間に位置決め固定するための取付手段」に相当する。

引用発明の「振動モータの円筒状本体」と、本願発明の「振動発生用デバイスの少なくとも外周の一部を保持又は内包する取付用ホルダー」又は「振動発生用デバイスの取付用ホルダー」は、「振動発生用デバイスの取付構造体」との概念で共通し、引用発明の「受信機筐体内のプリント基板の凹所」と、本願発明の「機器筐体内に搭載する回路基板の凹部型に切り欠いた空間位置」は、「機器筐体内に搭載する回路基板の切り欠いた空間位置」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「振動発生用デバイスの取付構造体であり、前記取付構造体により支持された前記振動発生用デバイスを、機器筐体内に搭載する回路基板の切り欠いた空間位置に、前記回路基板表面からの任意の高さで前記空間に位置決め固定するための取付手段を備えた振動発生用デバイスの取付構造体。」の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
振動発生用デバイスの取付構造体に関し、本願発明は、振動発生用デバイスの少なくとも外周の一部を保持又は内包する取付用ホルダーであり、前記振動発生用デバイスは前記ホルダーにより支持されるのに対し、引用発明は、振動モータの円筒状本体であり、前記振動モータは前記円筒状本体により支持される点。
〔相違点2〕
回路基板の切り欠いた空間位置に関し、本願発明は、回路基板を凹部型に切り欠いているのに対し、引用発明は、回路基板の凹所である点。


(4)判断
相違点1について
振動発生用デバイスにおいて、当該デバイスの少なくとも外周の一部を保持又は内包して支持する取付用ホルダーは、当審の拒絶の理由で引用された特開平9-290214号公報、特開2001-62399号公報、特開2003-133652号公報等にもみられるように周知の事項であるから、引用発明においても、振動発生用デバイスの支持に上記周知の事項である取付用ホルダーを採用することは当業者が適宜採用し得ることと認められる。

相違点2について
「回路基板の凹部型に切り欠いた空間位置」は、(イ)回路基板に切り欠きを設ければ、当該形状を問わず凹部型に切り欠いた空間位置と解釈でき、また、(ロ)本願図2のような回路基板の切り欠き部を凹部型に切り欠いた空間位置とも解釈できる。
(イ)のように解釈した場合、引用発明は回路基板に凹所を設けているから、当該凹所が「回路基板の凹部型に切り欠いた空間位置」となり、相違点2に関し、引用発明と本願発明は一致し、相違点は認められない。
(ロ)のように解釈した場合、回路基板の凹部型に切り欠いた空間位置は、例えば特開平7-211408号公報(図面参照)にもみられるように周知の事項であり、切り欠いた空間位置をどの様な形態とするかは、当該空間位置に配置する電気部品の形状等を考慮して当業者が適宜選択し得るものと認められるから、引用発明においても回路基板の切り欠いた空間位置を、上記周知の事項のように凹部型に切り欠いた空間位置とすることは当業者が容易に考えられることと認められる。
なお、請求人は、平成23年12月13日付意見書において、
「また、新規に引用された引用文献1について、引用文献1記載の構造に於ける部品の取付方法は貫通孔に対する縦方向の差込固定のみとなっています。これに対して本願記載の構造では、横方向からの差込による固定や縦方向の載置による固定といった複数の取付方法から使用者が最適な取付方法を選択することが可能となっています。」と主張するが、
図1に示される実施例1のものでは、取付用ホルダーは横方向からの差込による固定しかできないように、横方向からの差込による固定や縦方向の載置による固定といった複数の取付方法は、請求項の記載に基づかない主張であり、原告の主張は採用できない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び上記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(5)むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-27 
結審通知日 2012-04-02 
審決日 2012-04-13 
出願番号 特願2004-202387(P2004-202387)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02K)
P 1 8・ 537- WZ (H02K)
P 1 8・ 536- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 倉橋 紀夫
大河原 裕
発明の名称 振動発生用デバイスの取付用ホルダー  

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