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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1258508
審判番号 不服2010-697  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-13 
確定日 2012-06-14 
事件の表示 特願2005-307643「高脂血症改善剤及び動脈硬化改善剤」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月2日出願公開、特開2006-298896〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年10月21日(優先権主張平成17年3月22日)の出願であって、平成21年6月11日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して、平成21年8月7日付けで手続補正がなされ、その後、平成21年10月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、その後、平成23年10月28日付けで審尋が通知されたものである(なお、審尋に対する回答書は提出されなかった。)。

2.平成22年1月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年1月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正事項
本件補正のうち、特許請求の範囲についての補正は、補正前の
「【請求項1】丹参2.6?6.8重量部、香附子0.6?1.7重量部、木香0.6?1.7重量部、紅花1.1?3.4重量部、芍薬1.1?3.4重量部、センキュウ1.1?3.4重量部を含有する冠元顆粒を有効成分とする高脂血症改善剤であって、
血中の高比重リポ蛋白質コレステロール濃度を増加させる作用を有し、
血中のコレステロールを体外に排出する作用を有し、
血中の総コレステロール濃度、遊離型コレステロール濃度、エステル型コレステロール濃度、低比重リポ蛋白質コレステロール濃度及び超低比重リポ蛋白質コレステロール濃度、チオバルビツール酸反応物濃度及び酸化低比重リポ蛋白質濃度から選ばれる少なくとも一種を低下させる作用を有し、
動脈硬化指数を低下させる作用を有する高脂血症改善剤。
【請求項2】血中のトリグリセライド濃度を低下させる作用を有する請求項1に記載の高脂血症改善剤。
【請求項3】丹参の水抽出物又は冠元顆粒を有効成分とし、
血中のアディポネクチン濃度を増加させる作用を有する動脈硬化改善剤。」
を、補正後の
「【請求項1】丹参の水抽出物又は丹参2.6?6.8重量部、香附子0.6?1.7重量部、木香0.6?1.7重量部、紅花1.1?3.4重量部、芍薬1.1?3.4重量部、センキュウ1.1?3.4重量部を含有する冠元顆粒を有効成分とする血中アディポネクチン濃度増加剤。」
とするものである。
上記補正は、
(a)請求項1、2を削除して、補正前の請求項3を補正後の請求項1に繰り上げ、そして、
(b)補正後の請求項1における「冠元顆粒」を、「丹参2.6?6.8重量部、香附子0.6?1.7重量部、木香0.6?1.7重量部、紅花1.1?3.4重量部、芍薬1.1?3.4重量部、センキュウ1.1?3.4重量部を含有する冠元顆粒」とし、さらに、
(c)補正後の請求項1における「血中のアディポネクチン濃度を増加させる作用を有する動脈硬化改善剤」を、「血中アディポネクチン濃度増加剤」と補正するものである。

(2)補正の適否
上記(a)の補正は、請求項の削除であり、また、上記(b)の補正は、「冠元顆粒」の組成を明らかにするものであるから、それぞれ、平成18年法律改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするもの、及び、第17条の2第4項第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
しかしながら、上記(c)の補正は、以下に述べるように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、さらに、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもない。
「アディポネクチン」は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載事項(【0039】、【0045】、【0049】)によれば、脂肪細胞からの分泌性タンパクで、種々の疾患により減少することが報告されているものであり、そして、血中濃度を高めることで、動脈硬化症、高脂血症、高血圧症等の複合病態であるメタボリックシンドローム等に対する治療効果を期待されているものである。
そうすると、「血中のアディポネクチン濃度を増加させる作用を有する動脈硬化改善剤」の発明を、「血中アディポネクチン濃度増加剤」の発明にする上記(c)の補正は、「剤」の用途を、「動脈硬化改善」から、メタボリックシンドロームといった、動脈硬化改善以外の用途をも含む範囲にまで拡張するものであると認められる。

以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。

審判請求人は、審判請求書において、上記(c)の補正は、請求項の限定的減縮を目的とする補正である旨を主張している。
そこで、上記(c)の補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとし、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについても、以下に検討することとする。

(A)引用例
原査定の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、特開平7-238027号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。
A-1
「丹参の抽出物からなる動脈硬化抑制剤。」(【請求項1】)

A-2
「前記抽出物が水…で抽出されたことを特徴とする請求項1…記載の動脈硬化抑制剤。」(【請求項2】)

A-3
「実施例1.
製造例1.丹参を5?10mmの長さに細切したもの100gに、精製水1000mlを加えて…抽出した。…凍結乾燥し33.2グラムの動脈硬化抑制剤を褐色アモルファスとして得た。」(【0019】)

A-4
「実施例4.
動脈硬化抑制作用の評価1
実施例1…の動脈硬化抑制剤について…評価を行った。…マウスを…予飼育した。その後、ブランク群はそのまま混合固形飼料と水を、コントロール群、実施例1投与群…は…高脂肪混合固形飼料と水を自由摂取させながら、同時にコントロール群とブランク群には1重量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を、実施例1投与群…には…実施例1…の動脈硬化抑制剤を10重量%含有する1重量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を0.5ml/匹/1日の投与量で2週間経口投与した。投与終了後…採血を行った。得られた血液より…総コレステロール量…HDLコレステロール量を測定した。総コレステロール量よりHDLコレステロール量を減じ、これをHDLコレステロール量で除した値を動脈硬化指数とし、この値を用いて動脈硬化抑制作用の指標とした。結果を表1に示す。…**は1%未満の危険率でコントロール群と有意差が有ったことを示す。これより、本発明の動脈硬化抑制剤は優れた動脈硬化抑制作用を有することが判る。」(【0022】)

A-5
「【表1】
動物群 動脈硬化指数 総コレステロール HDLコレステロール
(mg/dl) (mg/dl)
ブランク群 0.51±0.09** 151.2±17.0** 100.2±11.9*
コントロール群 0.98±0.13 224.0±20.3 113.4±10.7
実施例1投与群 0.49±0.12** 211.2±18.2 142.2±10.3** 」
(【0023】)

A-6
「【発明の効果】本発明の動脈効果抑制剤は安全性が高い上に優れた動脈効果抑制作用を有するので、循環器の疾病の予防と治療にたいへん有益である。」(【0031】)

そして、引用例の上記A-1?A-6より、引用例には、
「丹参の水抽出物からなる動脈硬化抑制剤。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(B)対比・判断
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「丹参の水抽出物からなる」は、本願補正発明における「丹参の水抽出物を有効成分とする」に相当する。
そして、審判請求人の審判請求書における主張によれば、本願補正発明における「血中アディポネクチン濃度増加剤」とは、「動脈硬化改善剤」における作用のうち、「血中のアディポネクチン濃度を増加させる作用」に限定したものである以上、動脈硬化改善剤の域を出るものではない。
さらに、引用発明の「動脈硬化抑制剤」は、マウスに高脂肪混合固形飼料を与えた場合の、血中総コレステロール及びHDLコレステロール量に基づいてその効果を評価しており(上記A-4?A-5参照。)、本願発明における「動脈硬化改善剤」に相当する薬剤である。
加えて、本願補正発明における「血中アディポネクチン濃度増加剤」の作用は、丹参の水抽出物によってもたらされる作用であるから、同じ丹参の水抽出物を有効成分として含む引用発明においても、もたらされる作用であるというべきである。
そうすると、本願補正発明における「血中アディポネクチン濃度増加剤」は、引用発明における「動脈硬化抑制剤」と何ら異なるところはない。

したがって、本願補正発明は、その優先権主張日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしておらず、また、上記(c)の補正が、請求項の限定的減縮を目的とするものとしても、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成22年1月13日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1?3に係る発明は、平成21年8月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されるとおりのものであり、そのうち、請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「丹参の水抽出物又は冠元顆粒を有効成分とし、血中のアディポネクチン濃度を増加させる作用を有する動脈硬化改善剤。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例に記載された発明は、上記2.(A)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
上記「2.(B)」で述べたとおり、引用発明の「丹参の水抽出物からなる動脈硬化抑制剤。」は、本願発明の「丹参の水抽出物を有効成分とする動脈硬化改善剤。」に相当する。
そして、本願発明における「血中のアディポネクチン濃度を増加させる作用」は、「丹参の水抽出物」によってもたらされる作用である以上、本願発明は引用発明と何ら異なるところはない。
したがって、本願発明は、その優先権主張日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願請求項3に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-06 
結審通知日 2012-04-10 
審決日 2012-04-23 
出願番号 特願2005-307643(P2005-307643)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 572- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原口 美和佐々木 秀次  
特許庁審判長 横尾 俊一
特許庁審判官 穴吹 智子
平井 裕彰
発明の名称 高脂血症改善剤及び動脈硬化改善剤  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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