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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1258516
審判番号 不服2010-27636  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-07 
確定日 2012-06-14 
事件の表示 特願2004-220593「送信装置およびピーク低減方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 9日出願公開、特開2006- 42050〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年7月28日の出願であって、平成22年9月1日付けで拒絶査定され、これに対し、同年12月7日に拒絶査定に対する審判請求されるとともに同日付けで手続補正されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年12月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「送信符号系列中に存在する特定のパターンを検出して検出結果を出力するパターン検出部と、
前記送信符号系列に対して所定の周波数特性の帯域制限を施して送信信号として出力すると共に、前記検出結果に基づいて前記送信信号中の所定のピーク値を低減するように前記周波数特性を変化させるフィルタ部と、
を備えることを特徴とする送信装置。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「送信符号系列中に存在する特定のパターンを検出して検出結果を出力するパターン検出部と、
前記送信符号系列に対して所定の周波数特性の帯域制限を施して送信信号として出力すると共に、前記検出結果に基づいて前記送信信号中の所定のピーク値を低減するように前記周波数特性を、前記送信信号の送信タイミング毎に変化させ得るように構成されるフィルタ部と、
を備えることを特徴とする送信装置。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正するものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、「前記周波数特性を変化させるフィルタ部」を「前記周波数特性を、前記送信信号の送信タイミング毎に変化させ得るように構成されるフィルタ部」と限定して特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-1) 補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。

(2-2) 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-271072号公報(以下「引用例」という。)には、「ピーク低減装置及び該装置を用いた送信装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。

(引用例)
イ.「【要約】
【課題】 送信符号系列の符号振幅を低減するピーク低減装置及びこの装置を用いた送信装置に関し、帯域の広がりを抑圧する。」(1頁【要約】欄)

ロ.「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のピーク低減装置は、(1)入力された送信符号系列と、この送信符号系列が送信フィルタ6により帯域制限された時に振幅が大きくなるパターンの所定長の符号系列とを比較する比較部2と、この比較部2の比較一致信号により、送信符号系列の所定長の中心の少なくとも1個の符号の振幅を低減する符号振幅低減部3とを備えている。それによって、符号間干渉に相当して生じるピークファクタを低減する。」(2頁2欄?3頁3欄)

ハ.「【0008】又(3)本発明の送信装置は、送信符号系列が送信フィルタにより帯域制限された時に振幅が大きくなるパターンの所定長の符号系列と前記送信符号系列とを比較する比較部2と、この比較部2の比較一致信号により送信符号系列の所定長の中心の少なくとも1個の符号の振幅を低減する符号振幅低減部3とを有するピーク低減装置1と、このピーク低減装置1の出力信号を入力して帯域制限を行う前記送信フィルタ6と、この送信フィルタ6の出力信号を入力して変調する変調部7と、この変調部7の出力信号を入力して増幅する送信増幅部8とを備えている。」(3頁3欄)

ニ.「【0011】
【発明の実施の形態】図1は本発明の第1の実施の形態の説明図であり、送信装置の要部を示し、1はピーク低減装置、2は比較部、3は符号振幅低減部、4はシフトレジスタ、5はレジスタ、6は送信フィルタ、7は変調部、8は送信増幅部、9はアンテナ、10は符号処理部である。
【0012】ピーク低減装置1は、比較部2と、符号振幅低減部3と、シフトレジスタ4と、レジスタ5とを含む構成を有し、シフトレジスタ4は、符号処理部10で処理された送信符号系列を順次シフトし、符号振幅低減部3に入力するものであり、又レジスタ5には、送信フィルタ6によって帯域制限されることにより振幅が大きくなる符号系列のパターンを格納している。
【0013】比較部2は、レジスタ5に設定された所定長の符号系列と、シフトレジスタ4にシフトされる所定長の送信符号系列とを比較し、比較一致信号を符号振幅低減部3に加える。符号振幅低減部3は、比較一致信号が入力されない時は、シフトレジスタ4から出力される送信符号系列をそのまま送信フィルタ6に入力し、比較一致信号が入力された時は、レジスタ5に設定された符号系列の長さの中心の少なくとも1個の符号の振幅を低減させる。」(3頁4欄)

上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
まず、引用例の「送信装置」は、上記イ.によれば、「送信符号系列の符号振幅を低減する」とともに、「帯域の拡がりを制限」すなわち、帯域制限を行うものである。

引用例の「ピーク低減装置1」は、上記引用例のニ.及び図1にあるように、「比較部2と、符号振幅低減部3と、シフトレジスタ4と、レジスタ5」を含み、
符号処理部10で処理された「送信符号系列」は前記シフトレジスタ4を介して、前記「比較部2」及び前記「符号振幅低減部3」に入力されている。
当該「比較部2」は、レジスタ5に設定された「所定長の符号系列」と、前記「送信符号系列」とを比較し、「比較一致信号」を符号振幅低減部3に加え」るように出力するものであるから、引用例には、
『送信符号系列と所定長の符号系列を比較して、比較一致信号を出力する比較部』が記載されている。

また、引用例の「符号振幅低減部3」は、上記ロ.、ハ.及び図1によれば、「比較一致信号」に基づいて、送信符号系列の所定長の中心の少なくとも1個の符号の振幅を低減、すなわち、変化させることによって、ピークファクタ、すわなち、ピーク値を低減するから、引用例には、
『前記比較一致信号に基づいて、送信符号系列のピーク値を低減するよう、振幅を変化させる符号振幅低減部』が記載されている。

また、引用例の「送信フィルタ6」は上記ハ.、上記ニ.及び図1によれば、
「ピーク低減装置1の出力信号」である「送信符号系列」を「入力して帯域制限を行」い、「送信フィルタ6の出力信号」を「変調部7」、「送信増幅部8」を介して送信信号として出力するから、引用例には、
『ピーク値が低減された送信符号系列に対して帯域制限を行い送信信号として出力する送信フィルタ』が記載されている。

したがって、上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
「送信符号系列と所定長の符号系列を比較して、比較一致信号を出力する比較部と、
前記比較一致信号に基づいて、送信符号系列のピーク値を低減するよう、振幅を変化させる符号振幅低減部と、
ピーク値が低減された送信符号系列に対して帯域制限を行い送信信号として出力する送信フィルタ
を備える送信装置。」

(2-3) 対比・判断
[対比]
補正後の発明と引用発明を対比する。

まず、引用発明の「所定長の符号系列」は、送信フィルタの帯域制限により「振幅が大きくなる符号系列のパターン」であり、『特定のパターン』ということができる。
さらに、引用発明の「比較部」に関し、上記ニ.によれば、上記「所定長の送信符号系列」と上記「所定長の符号系列」とを比較して両者が一致した場合、すなわち、所定長の送信符号系列に存在する、特定のパターンを検出した場合、比較一致信号を出力するから、
引用発明の「所定長の符号系列を比較して、比較一致信号を出力する比較部」は
補正後の発明の「送信符号系列中に存在する特定のパターンを検出して検出結果を出力するパターン検出部」に相当する。

また、引用発明の「符号振幅低減部」は、前記「比較一致信号」(検出結果)に基づいて、送信信号系列のピーク値を低減するよう振幅を変化させるとともに、引用発明の「送信フィルタ」は、ピーク値が低減された送信符号系列に対して帯域制限して送信信号として出力しており、信号周波数に対する振幅変化を周波数特性の変化と称することは当業者にとって自明であるから、
引用発明の「符号振幅低減部」及び「送信フィルタ」は、送信信号系列に対し、検出結果に基づいてピーク値が低減されるように周波数特性を変化させ、帯域制限を行っている。
したがって、引用発明の「符号振幅低減部」及び「送信フィルタ」と、補正後の発明の「フィルタ部」は、
『送信符号系列に対し、周波数特性の帯域制限、及び、検出結果に基づいて、ピーク値を低減するように周波数特性を変化させ、送信信号として出力する構成』として一致する。

したがって、両者は以下の点で一致し、また相違している。

(一致点)
「送信符号系列中に存在する特定のパターンを検出して検出結果を出力するパターン検出部と、
前記送信符号系列に対し、周波数特性の帯域制限、及び、前記検出結果に基づいて、ピーク値を低減するように周波数特性を変化させ、送信信号として出力する構成と
を備える送信装置。」

(相違点)
(1)「所定のピーク値を低減する」タイミングに関し、補正後の発明では、送信信号の送信タイミング毎に変化させ得るのに対し、引用発明では不明である点。
(2)「前記送信符号系列に対し、周波数特性の帯域制限、及び、前記検出結果に基づいて、ピーク値を低減するように周波数特性を変化させ、送信信号として出力する構成」に関し、補正後の発明では、フィルタ部であり、帯域制限した後ピーク値を低減するのに対し、引用発明では、送信フィルタと符号振幅低減部であり、ピーク値を低減した後帯域制限する点。

[判断]
上記相違点(1)について検討する。
引用発明が送信信号系列毎に送信することは当業者に自明であり、また、摘記はしていないが引用例の【0024】には、送信符号系列が二重に振幅低減の処理を受けることはない旨記載されているから、
引用発明において、送信符号系列の特性を送信信号の送信タイミング毎に変化させ得るよう構成することは、当業者が容易に想到し得たものであり、格別のものでない。

次に、相違点(2)について検討する。
引用発明の「送信フィルタ」と「符号振幅低減部」を、前記送信符号系列に対し、周波数特性の帯域制限、及び、前記検出結果に基づいて、ピーク値を低減するように周波数特性を変化させ、送信信号として出力する一の構成として認識、呼称(例えば、「フィルタ部」)することに何ら困難性はなく、また阻害要因も認められないから、
引用発明の「送信フィルタ」と「符号振幅低減部」とを、「フィルタ部」として認識することは、当業者が適宜為すべきことであり、格別のものではない。
また、送信信号として出力される信号に関し、引用発明においても補正の後の発明においても、送信符号系列に対し、周波数特性の帯域制限、及び、特定パターンの検出結果に基づいて、ピーク値を低減するように周波数特性を変化させたものとして一致しており、いずれを先に送信符号系列に対し作用させるかによる違いも格別認められないから、
送信符号系列に対し、周波数特性の帯域制限及びピーク値を低減するよう周波数特性を変化させることのいずれを先に行うかは、当業者が適宜選択すべき設計的事項にすぎない。
そして、補正後の発明の作用効果も、引用例に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、補正後の発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3. むすび
以上のとおり、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定で準用する同法第126条第5項〔独立特許要件〕の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項〔補正却下〕の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の「(2-2) 引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加又は限定した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の「(2-3)対比・判断」の項に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-11 
結審通知日 2012-04-17 
審決日 2012-05-02 
出願番号 特願2004-220593(P2004-220593)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
P 1 8・ 575- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橘 均憲太田 龍一菊地 陽一  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 遠山 敬彦
新川 圭二
発明の名称 送信装置およびピーク低減方法  
代理人 加藤 朝道  

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