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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1258722
審判番号 不服2010-18634  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-18 
確定日 2012-06-15 
事件の表示 特願2008-250777「多層プリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月19日出願公開、特開2009- 38390〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本件発明
本件出願は、平成10年2月26日に出願した特願平10-45398号の一部を平成14年10月28日に新たな特許出願とした特願2002-312632号の一部をさらに平成20年9月29日に新たな特許出願としたものであって、平成21年12月24日付けで拒絶理由が通知され、平成22年3月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月18日に拒絶査定に対する審判が請求されると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成23年4月26日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、同年7月8日付けで回答書が提出され、同年9月27日付けで前記平成22年8月18日付けの手続補正書による手続補正を却下する補正の却下の決定がなされ、同年10月25日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであって、その請求項1ないし7に係る発明は、平成23年12月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
導体回路と層間樹脂絶縁層とが交互に積層され、下層の導体回路と上層の導体回路とが充填バイアホールを介して接続されている多層プリント配線板を製造するに当たり、その製造工程の中に少なくとも下記(1)?(7)の工程すなわち、
(1)基板上に下層の導体回路を形成する工程と、
(2)前記下層の導体回路を被覆する層間樹脂絶縁層を形成し、その層間樹脂絶縁層に前記下層の導体回路に到達する開口部を形成する工程と、
(3)前記開口部を含む前記層間樹脂絶縁層の表面に無電解めっき膜を形成する工程と、
(4)前記無電解めっき膜上にめっきレジストを形成する工程と、
(5)前記めっきレジストの非形成部分に電解めっきを施して、導体層を形成する工程と、
(6)前記めっきレジストを除去するとともに、そのめっきレジスト下にある前記無電解めっき膜を除去することにより、各々無電解めっき膜とその上に形成された電解めっき膜とからなる上層の導体回路および充填バイアホールを形成する工程と、
(7)前記充填バイアホールを被覆して他の層間樹脂絶縁層を形成し、その層間樹脂絶縁層に前記充填バイアホールに到達する開口部を形成し、その開口部内に前記(3)?(6)の工程の繰返しにより、前記充填バイアホールの直上に位置してその充填バイアホールに接続される他の充填バイアホールを積層形成する工程と、を含み、
前記上層の導体回路の厚さは、前記充填バイアホールの直径の1/2未満でかつ25μm未満であるように形成されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。」


2.引用文献記載の発明
(1)当審の拒絶理由に引用された刊行物である特開平7-147483号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、当審において付したものである。

(ア)「【請求項3】樹脂製の層間絶縁層と金属製の導体パターンとを基板上に交互に積層形成するプリント配線板の製造方法において、少なくとも下記(a)?(d)の工程を含んで成ることを特徴とするプリント配線板の製造方法;(a)前記基板上に感光性樹脂を塗布した後に露光・現像を行い層間接続用の凹部を形成する工程、(b)前記層間絶縁層上に銅めっき層用の密着向上層を形成する工程、(c)前記密着向上層の所定部分に銅めっき層を形成する工程、(d)前記銅めっき層上に、ニッケル、クロム、モリブデン、チタン、タングステンから選ばれる少なくとも一種の金属からなる密着層を形成する工程。
【請求項4】前記密着向上層はニッケル、クロム、モリブデン、チタン、タングステンから選ばれる少なくとも一種の金属をスパッタリングして形成し、かつ、前記密着層はニッケルめっきであることを特徴とする請求項3に記載のプリント配線板の製造方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項3】及び【請求項4】)

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリント配線板及びその製造方法に関し、特には、導体パターンとその導体パターンを被覆して形成される層間絶縁層との密着性に優れたプリント配線板及びその製造方法に関するものである。
」(段落【0001】)

(ウ)「【0002】
【従来の技術】近年、電子工業の進歩に伴い、電子機器の小型化や高速化が求められ、この要求に答えるためにプリント配線板に複数個のICやLSI等を直接実装する技術(所謂MCM技術)が注目されてきている。従って、この様なプリント配線板に対して、導体パターンのファイン化等といった高密度化が要求されている。プリント配線板を製造するときのファインな導体パターンの形成方法の一つとしては、例えば以下に述べるようなセミアディティブ法が知られている。このプロセスでは、まずスパッタリング等によって、層間絶縁層上に下地層としての極薄い導体層が形成される。次いでこの下地層上にはめっきレジストが形成される。次いでこのめっきレジストによってマスキングされていない部分には銅めっきが施される。この後、めっきレジストの剥離及び下地層のエッチングを経ることによって、所望のファインな導体パターンが形成されるのである。」(段落【0002】)

(エ)「【0007】本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、導体パターンを構成している銅めっき層の上面と層間絶縁層の下面との間の密着性に優れたプリント配線板を提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、導体パターンを構成している銅めっき層の上面と層間絶縁層の下面との間の密着性を向上させると共に、高速信号処理のために充分な性能をもった、外観に優れたプリント配線板の製造方法を提供することにある。」(段落【0007】)

(オ)「【0016】銅めっき層の下地層を形成する方法は、上記の薄膜法に限るものではなく、第1層目の層間絶縁層表面に無電解めっき用接着剤を形成し、その表面を酸によって粗化するか、或いは層間絶縁層表面を化学的手段や機械的手段によって粗化し、次いで無電解めっき触媒(パラジウムなど)を付加した後に、無電解めっき処理を施す方法であってもかまわないが、無電解めっきの密着性や緻密性を考慮するとスパッタリングが好ましい。」(段落【0016】)

(カ)「【0020】
【実施例】
〔実施例1〕まず、実施例1のプリント配線板を製造方法を図1(a)?図1(f)に基づき詳細に説明する。
工程(1):本実施例では、図1(a)に示されるように、第1層目の導体パターンC_(1)(厚さ18μm)が形成された厚さ1.0mmの銅張ガラスエポキシ基板1を出発材料とした。そして、スピンコータを用いることによって、層間絶縁層I_(1 )となる感光性エポキシ樹脂(イビデン株式会社製)を基板1に厚さが26μmになるように塗布した。
工程(2):前記感光性エポキシ樹脂を75℃で30分間プリベークした後、露光・現像を行い、更に150℃で60分間の硬化処理を行った。以上の処理によって、図1(b)に示されるように、層間接続用の凹部である直径30μmのバイアホール形成用穴2を備える第1層目の層間絶縁層(厚さ20μm)I_(1)を得た。
【0021】工程(3):真空スパッタ装置(徳田製作所製:CFS-8EP)を用い、層間絶縁層I_(1) に対するCr,Cuのスパッタリングを行った。このスパッタリングにより、図1(c)に示されるように、第1層目の金属薄層である0.1μmのCr薄層L_(1)と、第2層目の金属薄層である0.2μmのCu薄層L_(2)とからなる下地層ULを形成した。また、本実施例において、第1回目のCrのRFスパッタリングではアルゴンのガス圧を0.8Paとし、スパッタリング時間を10分とした。CuのDCスパッタリングでは前記ガス圧を0.8Paとし、スパッタリング時間を10分とした。
【0022】工程(4):スピンコータによってCu薄層L_(2)上にネガ型の液状フォトレジスト(東京応化株式会社製:OMR83)を塗布した後、その乾燥を行った。この後、プリベーク、露光・現像及びポストベークを行うことによって、図1(d)に示されるように、チャンネル状のめっきレジスト(厚さ4μm,L/S=20μm/20μm)3を形成した。
工程(5):光学顕微鏡下でめっきレジスト3の検査を行った後、基板1を10%硫酸水溶液に2分間浸漬することによって、Cu薄層L_(2)の表面を活性化させた。
【0023】工程(6):基板1を水洗した後、下記の硫酸銅電解めっき浴による電解銅めっきを実施した。そして、めっきレジスト3から部分的に露出しているCu薄層L_(2)上に、図1(e)に示されるような厚さ3.0μmのCuめっき層L_(3)を析出させた。
硫酸:160g/l ?200g/l , 硫酸銅:50g/l ?70g/l ,塩素イオン:30mg/l?60mg/l, 光沢剤:4ml/l?10ml/l,カソード電流密度:2.0A/dm^(2), 浴温:24℃?26℃,めっき時間:6分間, 空気攪拌.
【0024】工程(7):基板1を水洗した後、下記の硫酸ニッケル電解めっき浴による電解ニッケルめっきを実施した。そして、Cuめっき層L_(3)上に、密着層としての厚さ1.0μmのNiめっき層L_(4)を析出させた。
硫酸ニッケル:130g/l ?150g/l , ほう酸:30g/l ,塩化ニッケル25g/l ?40g/l , pH=4.0?4.5/l,カソード電流密度:2.0A/dm^(2), 浴温:35℃?40℃,めっき時間:2.5分間, 空気攪拌.
【0025】工程(8):専用のレジスト剥離液(東京応化株式会社製)を用いて、基板1からめっきレジスト3を剥離した。この後、Cuを溶解し得るエッチャントとしてNH_(3)(4.5N)+CuCl_(2)(150g/l)を用いて、Cu薄層L_(2)をエッチングした。処理時における温度は25℃とし、時間は15秒とした。更に、Crを溶解し得るエッチャントとして50%のHCl水溶液を用いて、Cr薄層L_(1)をエッチングした。処理時における温度は25℃とし、時間は25秒とした。その結果、図1(f)に示されるように、Cr薄層L_(1),Cu薄層L_(2),Cuめっき層L_(3)及Niめっき層L_(4)の合計4層からなる導体パターンC_(2)を得た。
工程(9):前記工程(2)から工程(8)を繰り返し行い、最終的に図2に示されるような、基板1上に6層の導体パターンC_(1)?C_(6)と5層の層間絶縁層I_(1)?I_(5)とを持つ多層構造のプリント配線板4を得た。」(段落【0020】ないし【0025】)

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(カ)並びに図面の記載からみて、次のことがわかる。

(キ)上記(1)の(ア)及び(カ)並びに図1及び2からみて、多層構造のプリント配線板4及びその製造方法は、導体パターンC_(1)?C_(6)と層間絶縁層I_(1)?I_(5)とが交互に積層され、下層の導体パターンC_(1)と上層の導体パターンC_(2)とが充填バイアホールとしての「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分」を介して接続されているようにするものといえる。

(ク)上記(1)の(ア)及び(カ)並びに図1(a)及び図2からみて、多層構造のプリント配線板4を製造するに当たり、基板1上に下層の導体パターンC_(1)を形成する工程があることがわかる。

(ケ)上記(1)の(ア)及び(カ)並びに図1(a)、図1(b)及び図2からみて、多層構造のプリント配線板4を製造するに当たり、下層の導体パターンC_(1)を被覆する層間絶縁層I_(1)を形成し、その層間絶縁層I_(1)に前記下層の導体パターンC_(1)に到達するバイアホール形成用穴2を形成する工程があることがわかる。

(コ)上記(1)の(ア)、(オ)及び(カ)並びに図1(c)及び図2からみて、多層構造のプリント配線板4を製造するに当たり、バイアホール形成用穴2を含む層間絶縁層I_(1)の表面にスパッタリングによるCr薄層L_(1)及びCu薄層L_(2)から成る下地層ULを形成する工程があることがわかる。

(サ)上記(1)の(ア)、(カ)及び上記(コ)並びに図1(d)及び図2からみて、多層構造のプリント配線板4を製造するに当たり、スパッタリングによるCr薄層L_(1)及びCu薄層L_(2)から成る下地層UL上にめっきレジスト3を形成する工程があることがわかる。

(シ)上記(1)の(ア)、(カ)及び上記(サ)並びに図1(e)及び図2からみて、多層構造のプリント配線板4を製造するに当たり、めっきレジスト3の非形成部分に電解めっきを施して、導体パターンC_(2)を形成する工程があることがわかる。

(ス)上記(1)の(ア)、(カ)、上記(サ)及び(シ)並びに図1(d)、図1(e)、図1(f)及び図2からみて、多層構造のプリント配線板4を製造するに当たり、めっきレジスト3を除去するとともに、そのめっきレジスト3下にある「スパッタリングによるCr薄層L_(1)及びCu薄層L_(2)から成る下地層UL」を除去することにより、各々「スパッタリングによるCr薄層L_(1)及びCu薄層L_(2)から成る下地層UL」とその上に形成された「電解めっきによるCuめっき層L_(3)及びNiめっき層L_(4)」とからなる上層の導体パターンC_(2)および「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分」を形成する工程があることがわかる。

(セ)上記(1)の(ア)、(カ)、上記(サ)及び(シ)並びに図2からみて、多層構造のプリント配線板4を製造するに当たり、「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分」を被覆して他の層間絶縁層I_(2)を形成し、他の層間絶縁層I_(2)に前記「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分」に一体となっている他の導体パターンC_(2)部分に到達するバイアホール形成用穴2を形成し、そのバイアホール形成用穴2内に上記(コ)ないし(ス)の工程の繰返しにより、前記「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分」に一体となっている他の導体パターンC_(2)部分の直上に位置してその「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分」に接続される他の上層の「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(3)部分」を積層形成する工程があるといえる。

(ソ)上記(1)の(ア)、(カ)、上記(サ)及び(シ)並びに図1及び図2からみて、バイアホール形成用穴2の直径は、30μmであり(上記(1)の(カ)の段落【0020】参照。)、0.1μmのCr薄層L1(上記(1)の(カ)の段落【0021】参照。)、0.2μmのCu薄層L2(上記(1)の(カ)の段落【0021】参照。)、3.0μmのCuめっき層L3(上記(1)の(カ)の段落【0023】参照。)及び1.0μmのNiめっき層L4(上記(1)の(カ)の段落【0024】参照。)の合計4層からなる上層の導体パターンC_(2)は、各層の厚さを合計すると4.3μmとなり、当該上層の導体パターンC_(2)の厚さとバイアホール径との比率は0.143となるから、当該上層の導体パターンC_(2)の厚さは、バイアホール径の1/2未満でかつ25μm未満となることがわかる。

(3)上記(1)及び上記(2)並びに図面の記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「導体パターンC_(1)?C_(6)と層間絶縁層I_(1)?I_(5)とが交互に積層され、下層の導体パターンC_(1)と上層の導体パターンC_(2)とがバイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分を介して接続されている多層構造のプリント配線板4を製造するに当たり、その製造工程の中に少なくとも下記(1)?(7)の工程すなわち、
(1)基板1上に下層の導体パターンC_(1)を形成する工程と、
(2)前記下層の導体パターンC_(1)を被覆する層間絶縁層I_(1)を形成し、その層間絶縁層I_(1)に前記下層の導体パターンC_(1)に到達するバイアホール形成用穴2を形成する工程と、
(3)前記バイアホール形成用穴2を含む前記層間絶縁層I_(1)の表面にスパッタリングによるCr薄層L_(1)及びCu薄層L_(2)から成る下地層ULを形成する工程と、
(4)前記スパッタリングによるCr薄層L_(1)及びCu薄層L_(2)から成る下地層UL上にめっきレジスト3を形成する工程と、
(5)前記めっきレジスト3の非形成部分に電解めっきを施して、導体パターンC_(2)を形成する工程と、
(6)前記めっきレジスト3を除去するとともに、そのめっきレジスト3下にある前記スパッタリングによるCr薄層L_(1)及びCu薄層L_(2)から成る下地層ULを除去することにより、各々スパッタリングによるCr薄層L_(1)及びCu薄層L_(2)から成る下地層ULとその上に形成された電解めっきによるCuめっき層L_(3)及びNiめっき層L_(4)とからなる上層の導体パターンC_(2)およびバイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分を形成する工程と、
(7)前記バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分を被覆して他の層間絶縁層I_(2)を形成し、他の層間絶縁層I_(2)に前記バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分に一体となっている他の導体パターンC_(2)部分に到達するバイアホール形成用穴2を形成し、そのバイアホール形成用穴2内に前記(3)?(6)の工程の繰返しにより、前記バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分に一体となっている他の導体パターンC_(2)部分の直上に位置してそのバイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分に接続される他の上層のバイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(3)部分を積層形成する工程と、を含み、
前記上層の導体パターンC_(2)の厚さは、前記バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分の直径の0.143でかつ4.3μmであるように形成される多層構造のプリント配線板4の製造方法。」


3.対比
本件発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「導体パターンC_(1)?C_(6)」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件発明における「導体回路」に相当し、以下同様に、「層間絶縁層I_(1)?I_(5)」は「層間樹脂絶縁層」に、「下層の導体パターンC_(1)」は「下層の導体回路」に、「上層の導体パターンC_(2)」は「上層の導体回路」に、「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分」は「充填バイアホール」に、「多層構造のプリント配線板4」は「多層プリント配線板」に、「基板1」は「基板」に、「下層の導体パターンC_(1)を被覆する層間絶縁層I_(1)」は「下層の導体回路を被覆する層間樹脂絶縁層」に、「バイアホール形成用穴2」は「開口部」に、「めっきレジスト3」は「めっきレジスト」に、「電解めっき」は「電解めっき」に、「導体パターンC_(2)」は「導体層」に、「電解めっきによるCuめっき層L_(3)及びNiめっき層L_(4)」は「電解めっき膜」に、「他の層間絶縁層I_(2)」は「他の層間樹脂絶縁層」及び「その層間樹脂絶縁層」のそれぞれに、「他の上層のバイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(3)部分」は「他の充填バイアホール」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「0.143」は、本件発明における「1/2未満」に包含され、同様に、「4.3μm」は「25μm未満」に包含される。
さらに、引用文献記載の発明における「スパッタリングによるCr薄層L_(1)及びCu薄層L_(2)から成る下地層UL」は、「金属膜」という限りにおいて、本件発明における「無電解めっき膜」に相当し、以下同様に、「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分に一体となっている他の導体パターンC_(2)部分に到達する」は「充填バイアホール又は当該充填バイアホールと一体となっている上層の導体回路に到達する」という限りにおいて「充填バイアホールに到達する」に、「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分に一体となっている他の導体パターンC_(2)部分の直上」は「充填バイアホール又は当該充填バイアホールと一体となっている上層の導体回路の直上」という限りにおいて「充填バイアホールの直上」に、それぞれ相当する。

したがって、本件発明と引用文献記載の発明は、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
「導体回路と層間樹脂絶縁層とが交互に積層され、下層の導体回路と上層の導体回路とが充填バイアホールを介して接続されている多層プリント配線板を製造するに当たり、その製造工程の中に少なくとも下記(1)?(7)の工程すなわち、
(1)基板上に下層の導体回路を形成する工程と、
(2)前記下層の導体回路を被覆する層間樹脂絶縁層を形成し、その層間樹脂絶縁層に前記下層の導体回路に到達する開口部を形成する工程と、
(3)前記開口部を含む前記層間樹脂絶縁層の表面に金属膜を形成する工程と、
(4)前記金属膜上にめっきレジストを形成する工程と、
(5)前記めっきレジストの非形成部分に電解めっきを施して、導体層を形成する工程と、
(6)前記めっきレジストを除去するとともに、そのめっきレジスト下にある前記金属膜を除去することにより、各々金属膜とその上に形成された電解めっき膜とからなる上層の導体回路および充填バイアホールを形成する工程と、
(7)前記充填バイアホールを被覆して他の層間樹脂絶縁層を形成し、その層間樹脂絶縁層に前記充填バイアホール又は当該充填バイアホールと一体となっている上層の導体回路に到達する開口部を形成し、その開口部内に前記(3)?(6)の工程の繰返しにより、前記充填バイアホール又は当該充填バイアホールと一体となっている上層の導体回路の直上に位置してその充填バイアホールに接続される他の充填バイアホールを積層形成する工程と、を含み、
前記上層の導体回路の厚さは、前記充填バイアホールの直径の1/2未満でかつ25μm未満であるように形成される多層プリント配線板の製造方法。」

<相違点>
なお、〈 〉内に、本件発明において相当する発明特定事項を示す。
(1)相違点1
開口部を含む層間樹脂絶縁層の表面に形成する金属膜に関し、
本件発明においては、「無電解めっき膜」であるのに対し、引用文献記載の発明においては、「スパッタリングによるCr薄層L_(1)及びCu薄層L_(2)から成る下地層UL」である点(以下、「相違点1」という。)。

(2)相違点2
充填バイアホールと他の充填バイアホールとの配置に関し、
本件発明においては、他の充填バイアホールの開口部が「充填バイアホールに到達」して、他の充填バイアホールが「充填バイアホールの直上に位置」するのに対し、引用文献記載の発明においては、他の充填バイアホールの開口部が「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分〈充填バイアホール〉に一体となっている他の導体パターンC_(2)部分に到達」して、他の充填バイアホールが「バイアホール形成用穴2内に充填された導体パターンC_(2)部分〈充填バイアホール〉に一体となっている他の導体パターンC_(2)部分の直上に位置」するが、他の充填バイアホールの開口部が「充填バイアホールに到達」して他の充填バイアホールが「充填バイアホールの直上に位置」するものであるのか不明である点(以下、「相違点2」という。)。

4.当審の判断
上記各相違点について以下に検討する。
(1)相違点1について
前記2.(1)(オ)で摘記したように、引用文献の段落【0016】には、「銅めっき層の下地層を形成する方法は、上記の薄膜法に限るものではなく、第1層目の層間絶縁層表面に無電解めっき用接着剤を形成し、その表面を酸によって粗化するか、或いは層間絶縁層表面を化学的手段や機械的手段によって粗化し、次いで無電解めっき触媒(パラジウムなど)を付加した後に、無電解めっき処理を施す方法であってもかまわない」と記載されている。
そうすると、引用文献記載の発明において、金属膜として無電解めっき膜を採用し、当該相違点1に係る本件発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
多層プリント配線板の製造方法において、電解めっきにより充填された充填バイアホールの上層のものと下層のものとの配置に際し、上層の他の充填バイアホールの開口部が下層の充填バイアホールに到達して、上層の他の充填バイアホールが下層の充填バイアホールの直上に位置させることは、従来周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開平5-218645号公報の特に、段落【0007】及び【0008】並びに図1及び2、特開平7-79078号公報の特に、段落【0011】ないし【0013】及び図1参照。)である。
そうすると、引用文献記載の発明において、電解めっきにより充填された充填バイアホールの上層のものと下層のものとの配置に際し、上記周知技術を採用し、当該相違点2に係る本件発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本件発明を全体として検討しても、本件発明の奏する効果は引用文献記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。


5.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-05 
結審通知日 2012-04-10 
審決日 2012-04-23 
出願番号 特願2008-250777(P2008-250777)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 秀明藤田 和英  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 柳田 利夫
中川 隆司
発明の名称 多層プリント配線板の製造方法  
代理人 小川 順三  
代理人 藤谷 史朗  

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