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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B21D
管理番号 1258728
審判番号 不服2011-8137  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-18 
確定日 2012-06-15 
事件の表示 特願2006- 6693「金属管の加工方法及び加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月26日出願公開、特開2007-185697〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成18年1月13日の特許出願であって、平成22年9月2日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月24日付けで拒絶の査定がなされた。
そして、上記拒絶査定を不服として平成23年4月18日に審判の請求がなされ、同日付けで手続補正書が提出され、その後、当審の平成23年12月7日付けの拒絶の理由の通知に対して、平成24年2月10日付けで、特許請求の範囲及び明細書を補正対象書類とする手続補正書及び意見書が提出されたものである。
本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、平成24年2月10日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書、出願当初の図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は、次のとおりである。(以下「本願発明」という。)
「 【請求項1】
第1工程で,分割した金型に金属管を挿入して型締めした後,前記金属管に内圧と管軸方向押し込み力を負荷するハイドロフォーム加工で,該金属管側面に1方向または相対する2方向に膨出部を成形し,第2工程で,当該金属管の内部に,マンドレルロッド端部に固定したマンドレル砲弾及び折り曲げ自在に接続された複数のマンドレル玉からなるマンドレルを挿入し,前記第1工程におけるハイドロフォーム加工後の前記膨出部の形状と合う形状の空洞部を設けた,回転曲げ型,締め付けダイ,またはプレッシャーダイの3種うち1種以上を用い,前記膨出部を回転引き曲げ円周方向または当該接線方向であって,当該回転引き曲げの順方向に,当該金属管を回転引き曲げ工法で曲げることを特徴とする金属管の加工方法。」

2 引用刊行物記載の発明・事項
これに対して、当審での平成23年12月7日付けの拒絶の理由に引用された、本件出願前である平成4年1月22日に頒布された特開平4-17923号公報(以下「刊行物」という。)には、以下の記載がある。
ア 第1ページ右下欄第16行?第18行
「[産業上の利用分野]
この発明は、流体配管の接続に用いられる配管用ひじ継手の製造方法に関するものである。」
イ 第3ページ左上欄第10行?第19行
「[実施例]
第1図に示す配管用ひじ継手(10)は、曲り管部(12)の両端にさし込み式の継手部(11)を形成した90°エルボで、被接続管を、その端部を継手部(11)内に挿入して接続するものである。以下に、この発明による製造過程を説明する。
最初に、製造する配管用ひじ継手(10)に適合した管径、全長の直管(20)を用い(第2図参照)、当該直管(20)の両端に、継手部(11)を所定の膨出形状に予め形成する(第3図参照)。」
ウ 第3ページ左上欄第20行?右下欄第16行
「次に、当該継手部(11)を形成した直管(20)を曲げ加工するためにパイプベンダーにセットする。
パイプベンダーは、被加工管の前端部を曲げ型(30)とクランプ型(35)とで把持し、後方を押え型(40)と受け型(45)とで保持し、曲げ型(30)の円弧部の中心を回転の中心とし、曲げ型(30)及びこれに連動してクランプ型(35)を回転させ、所定の角度の曲げ加工を行う一般的な構成である。曲げ型(30)の周側面(31)は直管(20)の外形に一致する半円状に形成され、前方に、継手部(11)の膨出形状に適合した凹部形状の把持面(32)が形成され、当該把持面(32)に対向して、クランプ型(35)の内側面も同様の凹部形状の把持面(36)が形成されている。同じく、押え型(40)の内側面(41)は直管(20)の外形に一致する半円状に形成され、後方に、継手部(11)の外形形状に適合した凹部形状の保持面(42)が形成され、当該保持面(42)に対向して、受け型(45)の内側面も同様の凹部形状の保持面(46)が形成されている。
直管(20)は、曲げ内周側を把持面(32)に当接し、クランプ型(35)が閉成されて曲げ外周側を把持面(36)に当接し、前端の継手部(11)を曲げ型(30)とクランプ型(35)とで把持してパイプベンダーにセットされる。一方、曲げ外周側後方を内側面(41)に当接し、曲げ内周側後端部を保持面(46)に当接し、直管(20)は、押え型(40)と受け型(45)とで保持される。直管(20)の前端開口からは中芯部材(50)が挿入され、前端の継手部(11)の内周面に当接し、加工の際に変形を防止し、同じく変形防止のために、後端の継手部(11)の内周面に当接するカラ一部材(51)が予め設けられ、直管(20)の後端開口からボール芯金(52)が挿入され、しわ抑えのボール(53)が直管(20)の曲げ予定位置に設けられる(第5図参照)。
次に、曲げ型(30)及びクランプ型(35)を回転させて曲げ加工を行う。曲げ型(30)の回転に連動し、押え型(40)及び受け型(45)が送り方向に移動するように構成され、曲げ型(30)の周側面(31)に添って直管(20)が曲げられ、曲り管部(12)が形成される。この曲げ加工は、曲げ型(30)及びクランプ型(35)を最初の行程で曲げ方向に所定の角度回転させ、次の行程で弱冠の角度逆方向に回転させ、正逆2行程で行うように設定する。本実施例では、最初の行程で曲げ方向に90+α゜回転させ、次の行程でα°逆方向に回転させるように設定し、αは5?6°と設定されている(第4図参照)。したがって、α°の回転量に応じた分だけ、最初の曲げ方向の回転の行程で曲り管部(12)の曲り量が弱冠大きく設定され、次の逆回転の行程で、曲り管部(12)の内周側が曲げ型(30)の周側面(31)から離接し、平面断面で周側面(31)と弱冠の間隙(13)を生じて曲り角90°の曲げ加工が行われ、配管用ひじ継手(10)が形成される(第6図参照)。」
以上ア乃至ウの記載事項から、刊行物には、以下の発明が記載されていると認められる。
「最初に、製造する配管用ひじ継手(10)に適合した管径、全長の直管(20)を用い、当該直管(20)の両端に、継手部(11)を所定の膨出形状に予め形成し、次に、当該継手部(11)を形成した直管(20)の前端開口からは、直管(20)の前端の継手部(11)の内周面に当接して加工の際の変形を防止する中芯部材(50)が挿入され、直管(20)の後端の継手部(11)の内周面に当接するカラー部材(51)が予め設けられ、直管(20)の後端開口からボール芯金(52)が挿入され、しわ抑えのボール(53)が直管(20)の曲げ予定位置に設けられ、直管(20)の外径に一致する半円状に形成され、前方に、継手部(11)の膨出形状に適合した凹部形状の把持面(32)が形成された曲げ型(30)と、当該把持面(32)に対向して同様の凹部形状の把持面(36)が形成されたクランプ型(35)と、内側面(40)が直管(20)の外径に一致する半円状に形成され、後方に、継手部(11)の外形形状に適合した凹部形状の保持面(42)が形成された押え型(40)と、当該保持面(42)に対向して内側面に同様の凹部形状の保持面(46)を有する受け型(45)を用い、継手部(11)を設けた当該直管(20)を、曲げ型(30)及びクランプ型(35)を回転させて曲げ加工を行う配管用ひじ継手の製造方法。」(以下、「引用発明」という。)

3 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「最初に」、「次に」は、配管用ひじ継手の製造方法であるので、それぞれ、本願発明の「第1工程」、「第2工程」に相当する。
引用発明の「直管(20)」は、本願発明の「金属管」に相当する。そして、引用発明の「継手部(11)」は、膨出形状であるので、本願発明の「膨出部」に相当する。また、引用発明の「形成」することは、本願発明の「成形」することに相当する。
引用発明の「継手部(11)を形成した直管(20)の前端開口からは、直管(20)の前端の継手部(11)の内周面に当接して加工の際の変形を防止する中芯部材(50)が挿入され、直管(20)の後端の継手部(11)の内周面に当接するカラー部材(51)が予め設けられ、直管(20)の後端開口からボール芯金(52)が挿入され、しわ抑えのボール(53)が直管(20)の曲げ予定位置に設けられ」ることは、「金属管の内部にマンドレルを挿入」するという限りで、本願発明の「金属管の内部に,マンドレルロッド端部に固定したマンドレル砲弾及び折り曲げ自在に接続された複数のマンドレル玉からなるマンドレルを挿入」することと共通する。
引用発明の「曲げ型(30)」、「クランプ型(35)」、「押え型(40)」は、これらにより回転曲げ加工を行うものであるので、それぞれ、本願発明の「回転曲げ型」、「締め付けダイ」、「プレッシャーダイ」に相当する。そして、引用発明の「凹部形状の把持面(32)、(36)、保持面(42)、(46)」は、凹部形状が膨出形状の継手部(11)の外形形状に適合しているので、「第1工程における加工後の膨出部の形状と合う形状の空洞部を設けた」ということができるものである。
引用発明の「継手部(11)を設けた当該直管(20)を、曲げ型(30)及びクランプ型(35)を回転させて曲げ加工を行う」ことは、本願発明の「金属管を回転引き曲げ工法で曲げる」ことに相当する。
引用発明の「配管用ひじ継手の製造方法」は、「金属管の加工方法」と言えるものである。
以上の点から、両者は以下の点で一致し、また、以下の点で相違している。
<一致点>
「第1工程で、金属管に膨出部を成形し、第2工程で、当該金属管の内部にマンドレルを挿入し、前記第1工程における加工後の前記膨出部の形状と合う形状の空洞部を設けた、回転曲げ型、締め付けダイ、またはプレッシャーダイの3種うち1種以上を用い、当該金属管を回転引き曲げ工法で曲げる金属管の加工方法。」
<相違点1>
第1工程における膨出部の成形に関して、本願発明では、「分割した金型に金属管を挿入して型締めした後、前記金属管に内圧と管軸方向押し込み力を負荷するハイドロフォーム加工で、該金属管側面に1方向または相対する2方向に膨出部を成形」するものであるのに対して、引用発明では、膨出形状の継手部(11)をどのように形成するのか不明な点。
<相違点2>
回転引き曲げ工法で曲げる際のマンドレルに関して、本願発明では、「マンドレルロッド端部に固定したマンドレル砲弾及び折り曲げ自在に接続された複数のマンドレル玉からなる」ものを用いているのに対して、引用発明では、継手部(11)を形成した直管(20)の前端開口からは、直管(20)の前端の継手部(11)の内周面に当接して加工の際の変形を防止する中芯部材(50)が挿入され、直管(20)の後端の継手部(11)の内周面に当接するカラー部材(51)が予め設けられ、直管(20)の後端開口からボール芯金(52)が挿入され、しわ抑えのボール(53)が直管(20)の曲げ予定位置に設けられたものである点。
<相違点3>
金属管を回転引き曲げ工法で曲げるに際し、本願発明では、「膨出部を回転引き曲げ円周方向または当該接線方向であって、当該回転引き曲げの順方向に」曲げるのに対して、引用発明では、膨出部である継手部(11)の位置と回転引き曲げの方向にそのような配慮をしていない点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
(1) <相違点1>について
分割した金型に金属管を挿入して型締めした後、前記金属管に内圧と管軸方向押し込み力を負荷し、該金属管側面に1方向または相対する2方向に膨出部を成形するハイドロフォーム加工は、例えば、特公昭52-40913号公報(第2欄第13行?第3欄第20行、及び第1図参照。)や特公昭53-34800号公報(第1欄第24行?第35行、及び第1図、第2図参照。)に記載されているように、従来周知の事項であり、引用発明における直管(20)に膨出部となる継手部(11)の成形を従来周知のハイドロフォーム加工を適用できないとする阻害要因も格別見当たらないことからすれば、引用発明において、直管(20)の継手部(11)の形成に際し、上記ハイドロフォーム加工を用いて成形することは、当業者にとって格別の困難性を有するものではない。
(2) <相違点2>について
回転引き曲げ工法で金属管を曲げる場合、マンドレルロッド端部に固定したマンドレル砲弾及び折り曲げ自在に接続された複数のマンドレル玉からなるものを用いることは、拒絶理由で引用した特開2001-105034号公報(「芯金5」が「マンドレル砲弾」、「芯金駒13」が「マンドレル玉」に相当。)、特開2005-7438号公報(「シャンク14」が「マンドレル砲弾」、「プラグ12」が「マンドレル玉」に相当。)に記載されているように従来周知の事項であり、当該マンドレルを同じ回転引き曲げ工法で曲げられる引用発明の「直管(20)」の回転引き曲げの際のマンドレルとして用いることは、金属管を曲げ加工する際の用いるマンドレルの変更であって、当業者にとって格別の困難性を有するものではない。
ここで、請求人は、平成24年2月10日付け意見書において、「刊行物1(当審注:刊行物である特開平4-17923号公報)に記載された発明に接した当業者であれば、前後端に形成された、膨出形状の継手部の、曲げ加工における変形を防ぐために、曲げ加工前に継手部に中芯部材または、ポール芯金を挿入することが必要であると認識するところ、本願発明における膨出部では、膨出部内側から芯金等で押えて、そのような変形防止をはかることができないため、本願発明のような膨出部内側から芯金等で押えない加工をしようとはしない、『阻害要因』があると言えます。」(5.の5-1.の(5-1-1)参照。)と主張している。
しかしながら、引用発明においては、膨出部である継手部(11)が管の端部にあるため、回転引き曲げ加工の際に膨出部である継手部(11)を補強するのであって、継手部(11)は管の直接曲げられる部分ではないものであるから、継手部(11)内にカラー部材等の膨出部の変形を防止する部材を配しないことは容易に想到し得るものであることからすれば、引用発明において膨出部内に補強芯金を有することをもって、マンドレル砲弾及びマンドレル玉を引用発明に適用できないとする阻害要因となるものではない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(3) <相違点3>について
金属管を回転引き曲げ工法で曲げるに際し、「膨出部を回転引き曲げ円周方向または当該接線方向であって、当該回転引き曲げの順方向に」曲げると特定しても、そのことによる特別な作用ないし効果が格別見当たらないことからすれば、当該特定は、単なる設計的事項と考えざるを得ない。
(4)作用・効果について
請求人は、平成24年2月10日付け意見書において、「本願発明は、従来は曲げ形状があるが故にハイドロフォーム加工時に材料流入が妨げられて加工できなかった形状の部品の加工が可能になることで、従来は複数部品となっていた箇所を一体加工することが可能になり、コスト削減に貢献でき、溶接部が削減できるため、軽量化にも貢献できる効果を奏します」(5.の5-1.の(5-1-0)参照。)と主張している。
しかしながら、金属管に膨出部を形成後、回転引き曲げ加工することが刊行物に記載されているところ、前述のとおり、ハイドロフォーム加工後回転引き曲げ加工することは容易になし得たものであることからすれば、上記効果をもって格別の効果とすることはできない。
その他の作用ないし効果についても、引用発明及び従来周知の事項から予想し得る範囲のものでしかない。

5 むすび
したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、請求項2ないし3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-02 
結審通知日 2012-04-10 
審決日 2012-04-23 
出願番号 特願2006-6693(P2006-6693)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 菅澤 洋二
長屋 陽二郎
発明の名称 金属管の加工方法及び加工装置  
代理人 萩原 康司  
代理人 金本 哲男  
代理人 亀谷 美明  

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