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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1258810
審判番号 不服2008-15532  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-19 
確定日 2012-06-21 
事件の表示 特願2006-553852「発光装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年7月27日国際公開、WO2006/077740〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2005年12月28日を国際出願日とする出願であって(優先権主張 2004年12月28日、2005年2月16日、2005年3月14日(日本国))、以降の手続の経緯は以下のとおりである。

平成19年11月 1日付け 拒絶理由通知
平成20年 1月 7日 意見書・手続補正書
平成20年 2月 6日付け 拒絶理由通知(最後)
平成20年 4月14日 意見書・手続補正書
平成20年 5月13日付け 補正の却下の決定・拒絶査定
平成20年 6月19日 審判請求
平成20年 7月22日 手続補正書
平成22年 9月24日付け 審尋(前置報告書による)
平成22年11月29日 回答書
平成23年 8月17日付け 審尋(当審の合議体による)
平成23年10月24日 回答書

第2 平成20年7月22日付けの手続補正の却下の決定

[補正の却下の結論]
平成20年7月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成20年7月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。また、本件補正によって補正された本願の明細書を「本件補正明細書」という。)は、その補正前の特許請求の範囲の請求項1である
「近紫外線乃至青色光を発する第1の発光スペクトルを有する励起光源と、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する1種または2種以上の蛍光体と、
を有する発光装置であって、
前記蛍光体は、ユーロピウムで賦活された近紫外線乃至青色光を吸収して赤色に発光する窒化物蛍光体であって、
以下の一般式で示され、w、x、y、zを以下の範囲とし、
前記発光装置の特殊演色評価数R9が30以上であることを特徴とする発光装置。
M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+ )MはMg、Ca、Sr、Baの群から選ばれる少なくとも一
0.05≦w≦3、x=1、0.167≦y≦8.7、0.0005≦z≦0.3」を、
「近紫外線乃至青色光を発する第1の発光スペクトルを有する励起光源と、
第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する3種以上の蛍光体と、
を有する発光装置であって、
前記3種以上の蛍光体は、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu又はBaSi_(2)O_(2)N_(2)と、ユーロピウムで賦活された近紫外線乃至青色光を吸収して赤色に発光する窒化物蛍光体であって、
以下の一般式で示され、w、x、y、zを以下の範囲とする窒化物蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+ )MはMg、Ca、Sr、Baの群から選ばれる少なくとも一
0.20≦w≦1.32、x=1、0.27≦y≦5.33、0.0009≦z≦0.1」とする補正を含むものである。

2.補正の適否
上記補正は、
・「2種以上の蛍光体」、「前記蛍光体」との記載をそれぞれ、「3種以上の蛍光体」、「前記3種以上の蛍光体」とする補正(補正事項1)
・使用する蛍光体の種類について、「Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu又はBaSi_(2)O_(2)N_(2)」との記載を加える補正(補正事項2)
・M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+)の一般式で示される蛍光体におけるw、y、zの範囲を「0.05≦w≦3、0.167≦y≦8.7、0.0005≦z≦0.3」から「0.20≦w≦1.32、0.27≦y≦5.33、0.0009≦z≦0.1」へと変更する補正(補正事項3)
・「発光装置の特殊演色評価数R9が30以上であること」との事項を削除する補正(補正事項4)
からなるものである。

(1)新規事項
上記補正事項のうち、補正事項2は、「BaSi_(2)O_(2)N_(2)」との事項を含むものであるが、出願当初の本願明細書には、「BaSi_(2)O_(2)N_(2):Eu」についての記載はあるが(【表1】、【表2】、【表7】、【図8】等参照。)、Euを含まない化合物である「BaSi_(2)O_(2)N_(2)」については何ら記載されておらず、当業者にとって自明であったとも言えない。
よって、補正事項2は、「BaSi_(2)O_(2)N_(2)」という当初明細書に記載されていなかった化合物を蛍光体として使用するという新たな技術的事項を本願の特許請求の範囲に導入するものであるから、本願の出願当初の明細書に記載された事項の範囲内でするものとはいえず、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(2)目的要件
上記補正事項のうち、補正事項1は、使用される蛍光体の種類を「2種以上」から「3種以上」と狭い範囲に限定するものであり、補正事項3は、前記一般式で示される蛍光体におけるw、y、zの数値範囲を狭い範囲に限定するものである。そして、これらの補正事項はいずれも、その補正前と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
一方、補正事項4は、「発光装置の特殊演色評価数R9が30以上であること」との事項を削除する補正であり、それによって、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特殊演色評価数R9の数値範囲による限定のあるものから、そのような限定のないものへと拡張したことになる。
よって、補正事項4は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、「発光装置の特殊演色評価数R9が30以上であること」との記載の意味する内容は不明瞭とはいえないから、補正事項4は、同項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明に該当するとはいえない。そして、同項第1、3号に規定する請求項の削除、誤記の訂正に該当しないことは明らかである。
してみれば、補正事項4は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

なお、上記の補正事項4が、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、以下の理由で本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものとはいえない。

(3)独立特許要件
<理由>本件補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものでない。

ア.明細書のサポート要件について
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(平成17年(行ケ)第10042号判決参照)。そこで、以下、この観点に立って、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かについて検討する。

イ.本件補正による特許請求の範囲の請求項1に記載された発明
本件補正による特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、次のとおりのものである(以下、「本件補正発明」という。)。
「近紫外線乃至青色光を発する第1の発光スペクトルを有する励起光源と、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する3種以上の蛍光体と、
を有する発光装置であって、
前記3種以上の蛍光体は、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu又はBaSi_(2)O_(2)N_(2)と、ユーロピウムで賦活された近紫外線乃至青色光を吸収して赤色に発光する窒化物蛍光体であって、
以下の一般式で示され、w、x、y、zを以下の範囲とする窒化物蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+ )MはMg、Ca、Sr、Baの群から選ばれる少なくとも一
0.20≦w≦1.32、x=1、0.27≦y≦5.33、0.0009≦z≦0.1」

ウ.本件補正発明の課題について
本件補正明細書の発明の詳細な説明の「【発明が解決しようとする課題】…本発明の第一の目的は、希土類元素であるユーロピウムの賦活量を少なくしながら、発光のピーク波長を長くして、より深い赤色に発光でき、さらに、発光素子に接近して配設されて、極めて寿命を長くできる発光装置…を提供することにある。…本発明の他の目的は、高い発光輝度を持つ、広い色度範囲に渡る所望の色調を有する発光装置を提供することにある。また、演色性の高い発光装置を提供することも目的とする。」(段落【0005】?【0013】)の記載よりみて、本件補正発明の解決しようとする課題は、「ユーロピウムの賦活量を少なくしながら、より深い赤色に発光でき、極めて寿命を長くでき、高い発光輝度を持つ、広い色度範囲に渡る所望の色調を有する発光装置を提供すること」を含むものと認められる。

エ.発明の詳細な説明の記載について
本件補正明細書の発明の詳細な説明、並びに、図面には以下の記載がある。

a.「本発明の窒化物蛍光体は、含有するAlとBによってピーク波長をより長波長にできるので、高価な希土類元素であるユーロピウムの賦活量を少なくしても、より深い赤色に発光できる。また、CaSiN_(3):Eu窒化物蛍光体の組成に、AlとBを導入することで高温における劣化を著しく少なくできる。このため、窒化物蛍光体およびこれを用いた発光装置は、発光素子に極めて接近して配設されても、極めて寿命を長くできる特徴がある。また、窒化物蛍光体及び発光装置はY_(2)O_(2)S:Euと比較して、実用に耐え得る十分な発光特性を有する。さらに、励起光源と窒化物蛍光体とを組み合わせることにより発光輝度の高い演色性の優れた発光装置を提供することができる。」(段落【0024】)

b.「さらにまた本発明は、250nmから420nmまでに主発光ピークを持つ励起光源からの光により、実質的に直接励起される蛍光物質を少なくとも2種以上用いて発光させ、該2種以上の蛍光物質の光が混合して各種の発光色を実現する発光装置であって…これにより、高い発光効率を持つ蛍光物質を有する発光装置を提供することができる。また、2種以上の蛍光物質を組み合わせることにより、広い色調範囲を有する発光装置を提供することができる。さらに、視認し難い励起光源を用いるため、励起光源の色ズレを感じることがなく、色ズレのない発光装置を提供することができる。この窒化物蛍光体を用いることにより、更に色調範囲を広くし、発光輝度の高い発光装置を提供することができる。特に、紫外線領域の励起光源を用いて窒化物蛍光体を励起させた場合、赤色領域に発光ピーク波長を有し高輝度であるため、発光輝度の高い発光装置を提供することができる。また、演色性の高い発光装置を提供することができる。特に、この窒化物蛍光体は、紫外線領域から可視光の短波長領域の光を吸収することで励起し、赤色領域に発光するため、赤色成分を補足し、赤色成分の高い、演色性の高い発光装置を提供することができる。」(段落【0028】)

c.「本発明の実施の形態に係る窒化物蛍光体と組み合わせて用いられる蛍光体は、イットリウム・アルミニウム酸化物蛍光体等に限定されるものではなく、該蛍光体と同様の目的を有する青色領域から、緑色領域、黄色領域、赤色領域までに第2の発光スペクトルを少なくとも一以上有する蛍光体も、窒化物蛍光体と組み合わせて使用することができる。これにより、光の混色の原理による白色に発光する発光装置を提供することができる。窒化物蛍光体と組み合わせて用いられる蛍光体は、緑色系発光蛍光体SrAl_(2)O_(4):Eu、Y_(2)SiO_(5):Ce,Tb、MgAl_(11)O_(19):Ce,Tb、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも一以上)Ga_(2)S_(4):Eu、青色系発光蛍光体Sr_(5)(PO_(4))_(3)Cl:Eu、(SrCaBa)_(5)(PO_(4))_(3)Cl:Eu、(BaCa)_(5)(PO_(4))_(3)Cl:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも一以上)_(2)B_(5)O_(9)Cl:Eu,Mn、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも一以上)_(5)(PO_(4))_(3)Cl:Eu,Mn、赤色系発光蛍光体Y_(2)O_(2)S:Eu、La_(2)O_(2)S:Eu、Y_(2)O_(3):Eu、Gd_(2)O_(2)S:Euなどをドープすることにより、所望の発光スペクトルを得ることができる。但し、緑色、青色、赤色等の発光蛍光体は、上記の蛍光体に限定されず、種々の蛍光体を使用することができる。」(段落【0158】)

d.「…実施例に使用する蛍光体の発光スペクトルを示す。図8は、400nmの励起光源を用いて各種の蛍光体を励起したときの蛍光体の規格化した発光スペクトルを示す図である。使用する蛍光体は、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Eu…図9は、460nmの励起光源を用いて各種の蛍光体を励起したときの蛍光体の規格化した発光スペクトルを示す図である。使用する蛍光体は、…CaAlSiN_(3):Eu、CaAlB_(0.005)SiN_(3.005):Euである。発光スペクトルにおける発光強度は、蛍光体毎の発光ピーク波長を100として表している。



」(段落【0187】、【図8】、【図9】)

e.「…MAlB_(x)SiN_(3+x):Eu、MAlSiN_(3):Euの窒化物蛍光体は、酸化物蛍光体と比べて、比較的長波長の励起光源を効率よく波長変換することができる。…ここで、MAlB_(x)SiN_(3+x):Eu、MAlSiN_(3):Euの窒化物蛍光体は、250nmから500nmまでに主発光ピークを持つ励起光源による発光効率が全波長域での最大発光効率の60%以上であるため、実質的に直接励起される蛍光体である。…
表1は、主発光ピークが約400nmの励起光源を用いたときの代表的な蛍光体の色調を示す。
【表1】

…表2は、主発光ピークが約460nmの励起光源を用いたときの蛍光体の
色度を示す。
【表2】

」(段落【0192】?【0197】)

f.「<実施例30乃至34並びに比較例1>
…表7は、実施例30乃至実施例34の発光装置に使用する蛍光体及びその配合比(質量比)を示す。
【表7】



上記実施例30乃至実施例34並びに比較例1の発光装置に所定量の電流を投入することにより表8に示すような色調、色温度及び演色性評価数を示した。
【表8】

…実施例30乃至実施例33では色度座標において発光素子101からの光とCaAlSiN_(3):Euを必須とする3種類の蛍光体の光との範囲内において色調を調整することができ、広い色調範囲に発光する発光装置を実現することができる。…実施例30乃至34では30以上、特に実施例30乃至33では50以上と極めて高い演色性を示した。この特殊演色評価数(R9)が改善することにより、照明された赤い物体色の見え方が自然光で照明された場合に近くなる。」(段落【0252】?【0266】)

オ.検討
上記した本件補正明細書の発明の詳細な説明並びに、図面の記載に照らせば、発明の詳細な説明には、AlとBを導入した窒化物蛍光体(M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+)に相当する。)によって、ユーロピウムの賦活量を少なくしながら、より深い赤色に発光でき、極めて寿命を長くでき、高い発光輝度を持つ、演色性に優れた発光装置を提供することができること(摘示事項a)、M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+)と組み合わせて2種以上の蛍光物質を使用することにより広い色調範囲を有する発光装置を提供することができること(摘示事項b)が記載されている。
そこで、窒化物蛍光体と組み合わせて使用される2種以上の蛍光物質について記載されている事項をみると、列記された蛍光体の例示の1つとして、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Euが記載され(摘示事項c)、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Euの400nmの励起光源を用いて励起したときの発光スペクトル(摘示事項d)、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Euの400nm、460nmの励起光源を用いて励起したときの色調のデータ(摘示事項e)は記載されているが、ホウ素(B)を含む蛍光体であるM_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+)と組み合わせて、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、乃至、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Euを使用した例は何ら具体的に記載されていない。

なお、請求人は、発明の詳細な説明に、ホウ素(B)を含まない蛍光体であるMAlB_(x)SiN_(3+x):Euと組み合わせて、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、乃至、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Euを使用した実施例が記載されており(摘示事項f)、460nmの励起光源を用いて励起したときのCaAlSiN_(3):Eu、CaAlB_(0.005)SiN_(3.005):Euの発光スペクトル(摘示事項dの【図9】)がほぼ同じであることからみて、MAlSiN_(3):Euと組み合わせて、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、乃至、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Euを使用した実施例によって、MAlB_(x)SiN_(3+x):Euと組み合わせて、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、乃至、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Euを使用した場合についても、発明の詳細な説明において裏付けがされていることを主張している(平成24年10月24日付け回答書等参照。)。
しかしながら、摘示事項dの【図9】に記載されているMAlB_(x)SiN_(3+x):Euは、MがCaで、ホウ素(B)の含有量が0.005モルの場合(x=0.001)の一例のみであって、MがCa以外の場合や、ホウ素(B)の含有量が0.005モル以外の場合についても、同様であることが明らかとはいえない(ホウ素(B)の含有量についていえば、「窒化物蛍光体は、含有するBによってピーク波長をより長波長にできる」(摘記事項a)ことを考慮すると、ホウ素(B)の含有量がさらに増加するにしたがって、MAlB_(x)SiN_(3+x):Euの発光スペクトルは長波長側へシフトして、ホウ素(B)を含まない蛍光体の発光スペクトルとの相違が拡大する可能性があるものと推認される。)。
それゆえ、M=Ca、x=0.005の一例をもって、MがCa以外の場合や、より多量にホウ素(B)を含む場合を包含する0.0009≦x≦0.1の場合について、MAlB_(x)SiN_(3+x):Euの発光スペクトルがMAlSiN_(3):Euと、必ず同じであるとはいえないものと認められる。
よって、仮に、請求人の主張するように、M=Ca、x=0.005の場合に、460nmの励起光源を用いて励起したときのCaAlSiN_(3):EuとCaAlB_(0.005)SiN_(3.005):Euの発光スペクトルがほぼ同じであるとしても、そのことをもって、MがCa以外の場合や、0.0009≦x≦0.1の範囲において、両者が同じであるとはいえない(なお、摘示事項dの【図9】をみると、CaAlSiN_(3):Eu、CaAlB_(0.005)SiN_(3.005):Euの発光スペクトルは、波長が約530?630nmの範囲では、完全には一致していないから、他の蛍光体(すなわち、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Eu)と組み合わせた場合に、同じ白色光が得られるかについては、十分明らかとはいえないものと推認される。)。
そうすると、M=Ca、x=0.005におけるCaAlB_(0.005)SiN_(3.005):Euの発光スペクトルが、CaAlSiN_(3):Euとほぼ同じであることを根拠にして、MAlSiN_(3):Euと組み合わせて、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、乃至、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Euを使用した実施例によって、0.0009≦x≦0.1の範囲で、MAlB_(x)SiN_(3+x):Euと組み合わせて、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、乃至、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Euを使用した場合について、発明の詳細な説明において裏付けがされているとする請求人の主張は認められない。

そして、ホウ素(B)を含む蛍光体とホウ素(B)を含まない蛍光体とが、ホウ素(B)の含有量(x)が0.0009≦x≦0.1の範囲で、他の蛍光体と組み合わせた場合に、同様に機能して、同様に置換できるものであるとすべき技術常識が存在するとも認められない。

してみれば、技術常識に照らしても、ホウ素(B)を含まない蛍光体であるMAlSiN_(3):Euと組み合わせて、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、乃至、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Euを使用した実施例によって、ホウ素(B)を含む蛍光体であるMAlB_(x)SiN_(3+x):Euと組み合わせて、Sr_(4)Al_(14)O_(25):Eu、乃至、BaSi_(2)O_(2)N_(2):Euを使用することが、技術的な裏付けをもって発明の詳細な説明に記載されていたとはいえないから、本願補正明細書は、技術常識に照らしても、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえない。

カ.まとめ
以上のとおり、本件補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3.むすび
したがって、請求項1についての補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、仮に、それらの規定に違反しないとしても、同条第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。
よって、その余の点について検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、[補正の却下の結論]のとおり決定する。

第3 本願に係る発明について
上記のとおり、平成20年7月22日付け手続補正は、却下された。
また、平成20年4月14日付け手続補正は、平成20年5月13日付け拒絶査定と同時に却下された。
よって、本願に係る発明は、平成20年1月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)
「近紫外線乃至青色光を発する第1の発光スペクトルを有する励起光源と、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する1種または2種以上の蛍光体と、
を有する発光装置であって、
前記蛍光体は、ユーロピウムで賦活された近紫外線乃至青色光を吸収して赤色に発光する窒化物蛍光体であって、
以下の一般式で示され、w、x、y、zを以下の範囲とし、
前記発光装置の特殊演色評価数R9が30以上であることを特徴とする発光装置。
M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+ )MはMg、Ca、Sr、Baの群から選ばれる少なくとも一
0.05≦w≦3、x=1、0.167≦y≦8.7、0.0005≦z≦0.3」

第4 拒絶査定
平成20年5月13日付け拒絶査定は、「この出願については、平成20年2月6日付け拒絶理由通知書に記載した理由1?4によって、拒絶をすべきものです。… 」というものであり、平成20年2月6日付け拒絶理由通知書によると、以下の理由を拒絶査定の理由として含むものである。
「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特願2004-248405号(特開2006-63214号)
…」

第5 当審の判断
1.特許法第29条の2について
(1)引用先願
先願A:特願2004-248405号(特開2006-63214号)

(2)先願Aの願書に最初に添付された明細書に記載された事項
A1.「【請求項1】
組成式M_(m)A_(a)B_(b)O_(o)N_(n):Z(但し、M元素はII価の価数をとる1種以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとるAl、Ga、In、Tl、Y、Sc、P、As、Sb、Biのうちの1種以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は希土類元素または遷移金属元素から選択される少なくとも1つ以上の元素であり、m > 0、a > 0、b > 0、n=2/3m+a+4/3b-2/3o、o ≧ 0である。)で表記され、更にホウ素及び
/またはフッ素を含有することを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
上記ホウ素の含有量が 0.001重量%以上、3.0 重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。

【請求項13】
請求項1乃至8のいずれかに記載の蛍光体と、発光部とを有することを特徴とする光源。
【請求項14】
上記発光部が発する光の波長が250nm? 550nmであることを特徴とする請求項13に記載の光源。
…」(【特許請求の範囲】)

A2.「上述のように本実施の形態における蛍光体は、紫外?可視光(波長域250nm?550nm)の広い範囲に良好な励起帯を有すると伴に、当該蛍光体の発光強度が高いことから、上述の紫外?可視の光を発する発光部(後述のLED発光素子、放電灯など)と組合わせることにより、高出力の光源、更にはこの光源を含む照明ユニットを得ることができる。…製造された照明ユニット等は、黄色から赤色(580nm? 680nm)の範囲にブロードなピークを持ち、励起光である近紫外・紫外から可視光(250nm?550nm)という長波長側に良好な励起帯を持つとともに、高い発光強度を有していた。」(段落【0073】?【0074】)

A3.「つまり、実施例1ではCa_(0.985)AlSiN_(3):Eu_(0.015)の混合原料(焼成前)中にBN粉末を0.1重量%添加し、同じように実施例2では0.5重量%、実施例3では1.0重量%、実施例4では2.0重量%、BN粉末をそれぞれ添加した。…
実施例1から実施例4のそれぞれBN粉末を添加した場合には、ホウ素含有量が増加し、BN粉末添加量が0.1重量%のときホウ素含有量は0.063重量%となり、BN粉末添加量が0.5重量%ではホウ素含有量は0.170重量%、BN粉末添加量が1.0重量%ではホウ素含有量は0.310重量%、BN粉末添加量が2.0重量%ではホウ素含有量は0.640重量%と増加していった。

」(【0078】?【0080】、【図1】)

(3)検討
ア.先願Aに記載された発明
先願Aには、摘記事項A1?A3からみて、Ca_(0.985)AlSiN_(3):Eu_(0.015)の混合原料にBN粉末を添加してホウ素含有量を0.063?0.640重量%にした蛍光体が記載されており、この蛍光体は、ホウ素(B)、窒素(N)の原子量がそれぞれ、10.816、14.018であることから換算すると、BN粉末の添加によって、Ca_(0.985)AlSiN_(3):Eu_(0.015) に0.0058?0.059モルのB及びNを加算した組成式の蛍光体、すなわち、Ca_(0.985)AlSiB_(x)N_(3+x):Eu_(0.015)(x=0.0058?0.059)の組成式で表される、黄色から赤色(580nm?680nm)に発光するものと認められる。
また、先願Aには、摘記事項A1、A2からみて、上記の蛍光体と紫外?可視光(波長域250nm?550nm)の発光部とを有する光源が記載されている。そして、上記の蛍光体が紫外?可視光(波長域250nm?550nm)の発光部からの発光を吸収して発光することは明らかである。
以上を総合して本願発明にならい記載すると、先願Aには、次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明」という。)。
「紫外?可視光(波長域250nm?550nm)の発光部と、発光部からの発光を吸収して発光する蛍光体と、を有する光源であって、前記蛍光体は、紫外?可視光(波長域250nm?550nm)を吸収して黄色から赤色(580nm?680nm)に発光する窒化物蛍光体であって、以下の一般式で示されるものである光源。
Ca_(0.985)AlSiB_(x)N_(3+x):Eu_(0.015)(x=0.0058?0.059)」

イ.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「紫外?可視光(波長域250nm?550nm)の発光部」、「発光部からの発光を吸収して発光する蛍光体」、「…を有する光源であって…光源」は、順に、本願発明の「近紫外線乃至青色光を発する第1の発光スペクトルを有する励起光源」、「第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する1種または2種以上の蛍光体」、「有する発光装置であって…発光装置」に相当する。
また、引用発明の蛍光体「Ca_(0.985)AlSiB_(x)N_(3+x):Eu_(0.015)(x=0.0058?0.059)」は、本願発明の蛍光体の一般式「M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+)」において、MがCaであり、w=0.985、x=1、y=1、z=0.0058?0.059である場合のものであるから、蛍光体の組成において本願発明と重複する場合を包含する。
そして、引用発明の蛍光体は、微量の「ユーロピウムで賦活された」ものであることは明らか(「…:Eu_(0.015)」)であり、「黄色から赤色(580nm?680nm)に発光する」は、赤色の発光の場合を含むから、本願発明の「赤色に発光する」に相当する。
よって、両者は、
「近紫外線乃至青色光を発する第1の発光スペクトルを有する励起光源と、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する1種または2種以上の蛍光体と、を有する発光装置であって、
前記蛍光体は、ユーロピウムで賦活された近紫外線乃至青色光を吸収して赤色に発光する窒化物蛍光体であって、以下の一般式で示される発光装置。
M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+ )MはCa、
w=0.985、x=1、y=1、0.0058≦z≦0.059」
の点で一致し、次の点で一応相違する。

相違点:本願発明は、特殊演色評価指数R9が30以上であるのに対して、引用発明は、特殊演色評価指数R9について規定されないものである点。

ウ.相違点についての判断
イ.において上記したとおり、引用発明の蛍光体は、本願発明と赤色に発光する窒化物蛍光体の組成が重複している(M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+)MはCa、w=0.985、x=1、y=1、0.0058≦z≦0.059)。
そして、演色評価指数は、発光スペクトルの形状が同様であれば同様の値となるものと認められるから(平成23年10月24日付け回答書も参照のこと。)、引用発明のうち、本願発明と重複する組成の赤色に発光する窒化物蛍光体を使用する場合の発明については、本願発明と同様にR9が30以上の発光装置と認められる。
よって、上記相違点は、実質的に相違点とはいえない。

そして、本願発明は、引用発明と発明特定事項において差異がない以上、効果についても実質的に同様のものと推認される。

エ.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一の発明と認められる(当該特許出願と、発明者、出願人は同一でない。)。

2.特許法第36条第6項第1号について
(1)本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は「第3」に記載された次のとおりのものである。
「近紫外線乃至青色光を発する第1の発光スペクトルを有する励起光源と、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する1種または2種以上の蛍光体と、
を有する発光装置であって、
前記蛍光体は、ユーロピウムで賦活された近紫外線乃至青色光を吸収して赤色に発光する窒化物蛍光体であって、
以下の一般式で示され、w、x、y、zを以下の範囲とし、
前記発光装置の特殊演色評価数R9が30以上であることを特徴とする発光装置。
M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+ )MはMg、Ca、Sr、Baの群から選ばれる少なくとも一
0.05≦w≦3、x=1、0.167≦y≦8.7、0.0005≦z≦0.3」

(2)本願発明の課題について
本願発明の解決しようとする課題は、「第2 2.(3)ウ.」に記載されたとおり「ユーロピウムの賦活量を少なくしながら、より深い赤色に発光でき、極めて寿命を長くでき、高い発光輝度を持つ、広い色度範囲に渡る所望の色調を有する発光装置を提供すること」を含むものと認められる。

(3)発明の詳細な説明の記載について
本願明細書の発明の詳細な説明には、次のとおりの記載がある。

a’(「第2 2.(3)エ.」の摘記事項aと同じ。)
「省略(「第2 2.(3)エ.」の摘記事項aを参照のこと。)」(段落【0056】)

b’「さらに一方、本発明の他の側面に係る発光装置は、近紫外線乃至青色光を発する第1の発光スペクトルを有する励起光源と、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する1種または2種以上の蛍光体と、を有する発光装置であって、前記蛍光体は、ユーロピウムで賦活された近紫外線乃至青色光を吸収して赤色に発光する窒化物蛍光体であって、前記蛍光体の一般式がMAlSiN_(3):Eu^(2+)(MはMg、Ca、Sr、Baの群から選ばれる少なくとも1つである。)で示され、MとAlとSiの少なくともいずれかの一部をBで置換してなり、前記発光装置の特殊演色評価数R9が30以上である。」(段落【0042】)

c’「…特に、特殊演色評価数(R9)が30以上であることが好ましい。これにより、広い色調範囲を有する発光装置を提供することができると共に、演色性に優れた発光装置を提供することもできる。」(段落【0074】)

d’(「第2 2.(3)エ.」の摘記事項dと同じ)
「省略(「第2 2.(3)エ.」の摘記事項dを参照のこと。)」(段落【0219】、【図8】、【図9】)

e’(「第2 2.(3)エ.」の摘記事項fと同じ)
「省略(「第2 2.(3)エ.」の摘記事項fを参照のこと。)」(段落【0284】?【0298】)

(4)検討
本願明細書の発明の詳細な説明の記載に照らせば、発明の詳細な説明には、AlとBを導入した窒化物蛍光体M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+)によって、ユーロピウムの賦活量を少なくしながら、より深い赤色に発光でき、極めて寿命を長くでき、高い発光輝度を持つ、演色性に優れた発光装置を提供することができること(摘記事項a’)、M_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+)と組み合わせて2種以上の蛍光物質を使用して、発光装置の特殊演色評価数R9が30以上であることにより、広い色調範囲を有する発光装置を提供することができること(摘記事項b’、c’)が記載されていると認められる。
そこで、2種以上の蛍光物質を使用して、R9を30以上とした発光装置について、記載されている事項をみると、ホウ素(B)を含む蛍光体であるM_(w)Al_(x)Si_(y)B_(z)N_(((2/3)w+x+(4/3)y+z)):Eu^(2+)と2種以上の蛍光物質を組み合わせてR9を30以上とした例は、何ら記載されていない。

なお、発明の詳細な説明には、ホウ素(B)を含まない蛍光体であるMAlSiN_(3):Eu(CaAlSiN_(3):Eu)と2種以上の蛍光物質を使用してR9を30以上とした発光装置の実施例が記載されている(摘記事項e’)が、「第2 2.(3)オ.」で述べたのと同様の理由によって、 M=Ca、x=0.005の場合のCaAlB_(0.005)SiN_(3.005):Euの発光スペクトルが、CaAlSiN_(3):Euとほぼ同じであること(摘記事項d’)を根拠にして、ホウ素(B)を含まない蛍光体であるMAlSiN_(3):Euと2種以上の蛍光物質を組み合わせてR9を30以上とした実施例によって、ホウ素(B)を含む蛍光体であるMAlB_(x)SiN_(3+x):Euと2種以上の蛍光物質を組み合わせてR9を30以上とすることが、技術的な裏付けをもって発明の詳細な説明に記載されていたとは、技術常識に照らしても、認められない。
そうすると、本願は、技術常識に照らしても、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。

(5)まとめ
よって、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、また、本願の特許請求の範囲の記載は、同法第36条第6項第1号の規定に適合するものではないから、その余の点について検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-23 
結審通知日 2012-04-24 
審決日 2012-05-09 
出願番号 特願2006-553852(P2006-553852)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (C09K)
P 1 8・ 16- Z (C09K)
P 1 8・ 537- Z (C09K)
P 1 8・ 57- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 浩子  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 木村 敏康
小出 直也
発明の名称 発光装置及びその製造方法  
代理人 豊栖 康弘  
代理人 豊栖 康司  
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