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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1258899
審判番号 不服2011-2425  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-02 
確定日 2012-06-19 
事件の表示 特願2006-538019「RFIDタグパレット」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日国際公開、WO2005/048167、平成19年 8月23日国内公表、特表2007-524153〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1 手続の経緯

本願は、2004年10月6日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2003年11月4日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年5月24日付けの拒絶理由通知に対して同年8月31日付けで手続補正がなされたが、同年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年2月2日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされた。
その後、平成23年8月29日付けで審尋がなされ、同年12月1日付けで回答書が提出されたものである。

2 本願発明

本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成23年2月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「アンテナと、前記アンテナと電気的に通じるデータ記憶装置と、前記データ記憶装置を包含し、屈曲によって形成されてそれぞれ第1の面及び第2の面を占有する第1の部分及び第2の部分を有する基材とを備え、前記基材の前記第1の部分及び第2の部分は前記アンテナを有することを特徴とする多面無線周波数識別タグ。」


3 引用例及びその記載

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2003-216919号公報(平成15年7月31日公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非接触状態にて情報の書き込み及び読み出しが可能な非接触型ICラベル等のRF-IDメディアに関する。」

(b)「【0021】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】(第1の実施の形態)図1は、本発明のRF-IDメディアの第1の実施の形態である非接触型ICラベルの構造を示す図である。また、図2は、図1に示した非接触型ICラベルの等価回路図である。また、図3は、図1に示した非接触型ICラベルの構成を示すブロック図である。
【0023】本形態は図1に示すように、樹脂シート等のベース基材150が折り曲げ可能な折り線160を介して2つの領域130a,130bに分割され、その一方の領域130aに、外部からの情報の書き込み及び読み出しが可能なICモジュール110が搭載され、また、2つの領域130a,130bそれぞれにて、接点140を介してICモジュール110とそれぞれ接続され、外部に設けられた情報書込/読出装置(不図示)からの電磁誘導によりICモジュール110に電流を供給し、ICモジュール110に対する情報の書き込み及び読み出しを非接触状態にて行うための導電性のアンテナ120a,120bがコイル状に形成されて構成されている。
【0024】また、図1及び図2に示すように、アンテナ120a,120bは、ICモジュール110に対して互いに並列に接続されている。
【0025】また、ICモジュール110は図3に示すように、任意の情報が書き込まれる記憶部111と、アンテナ120a,120bを介して送信される情報を変調し、また、アンテナ120a,120bを介して受信された情報を復調する無線部112と、情報書込/読取装置から送信された要求信号を受信した場合に要求信号に対する応答信号を出力し、また、記憶部111に対する情報の書き込み及び読み出しを制御する制御部113とから構成されている。
【0026】上記のように構成された非接触型ICラベル100においては、外部に設けられた情報書込/読出装置に近接すると、情報書込/読出装置からの電磁誘導によりアンテナ120a,120bに電流が流れ、この電流がICモジュール110に供給され、それにより、非接触状態において、情報書込/読出装置からICモジュール110に情報が書き込まれたり、ICモジュール110に書き込まれた情報が情報書込/読出装置にて読み出されたりする。」

(c)「【0031】これにより、図1に示した非接触型ICラベル100を、例えば、段ボール等の箱型の筐体の2面に跨ぐように貼付する等、図4に示したように折り線160にて折り曲げて使用すれば、情報書込/読出装置と非接触型ICラベル100との間の通信可能距離を2方向において一定とすることができる。」

(d)「【0084】また、上述した3つの実施の形態においては、RF-IDメディアとして非接触型ICラベルを例に挙げて説明したが、本発明は、非接触状態にて情報の書き込み及び読み出しが可能であって、折り線にて折り曲げ可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICカード等についても適用することができる。」

(e)図1には、アンテナ120a,120bを、ベース基材150の折り曲げ可能な折り線160を介して分割された2つの領域130a,130bの、ほぼ全面にわたって設けた点が示されている。

(f)図3には、ICモジュール110を構成する記憶部111が、制御部113、無線部112を介してアンテナ120a、120bに接続されることが示されている。

ア 引用例の「【0001】本発明は、非接触状態にて情報の書き込み及び読み出しが可能な非接触型ICラベル等のRF-IDメディアに関する。」との記載、「【0084】‥‥‥RF-IDメディアとして非接触型ICラベルを例に挙げて説明したが、本発明は、‥‥‥非接触型ICタグ‥‥‥についても適用することができる。」との記載から、引用例に記載のものは、RF-IDメディアを非接触型ICタグについて適用可能であって「RF-IDタグ」であるともいえる。

イ 引用例の「【0023】本形態は図1に示すように、樹脂シート等のベース基材150が折り曲げ可能な折り線160を介して2つの領域130a,130bに分割され、その一方の領域130aに、外部からの情報の書き込み及び読み出しが可能なICモジュール110が搭載され、また、2つの領域130a,130bそれぞれにて、‥‥‥ICモジュール110とそれぞれ接続され、‥‥‥情報の書き込み及び読み出しを非接触状態にて行うための導電性のアンテナ120a,120bがコイル状に形成されて構成されている。」との記載、及び、引用例の図1に、アンテナ120a,120bを、ベース基材150の折り曲げ可能な折り線160を介して分割された2つの領域130a,130bの、ほぼ全面にわたって設けた点が示されていることから、引用例に記載ものは、「アンテナ」、及び「ベース基材が折り曲げ可能な折り線を介して2つの領域に分割され、その一方の領域に、ICモジュールが搭載され、2つの領域のそれぞれのほぼ全面にわたって、アンテナが形成されるベース基材」を有するものである。

ウ 引用例の「【0025】‥‥‥ICモジュール110は図3に示すように、任意の情報が書き込まれる記憶部111と、‥‥‥無線部112と、‥‥‥記憶部111に対する情報の書き込み及び読み出しを制御する制御部113とから構成されている。」との記載から、引用例に記載のICモジュール110は、記憶部と無線部と制御部とから構成されるものであり、また、引用例の図3に、ICモジュール110を構成する記憶部111が、制御部113、無線部112を介してアンテナ120a、120bに接続されることが示されているから、引用例に記載のものは、「アンテナに接続される記憶部を含むICモジュール」を有するものである。


上記引用例に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしウを総合すると、引用例1には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

「アンテナと、ベース基材が折り曲げ可能な折り線を介して2つの領域に分割され、その一方の領域に、アンテナに接続される記憶部を含むICモジュールが搭載され、2つの領域のそれぞれのほぼ全面にわたってアンテナが形成される、RF-IDタグ。」


4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「アンテナ」は、本願発明の「アンテナ」に相当し、また、「アンテナに接続される記憶部を含むICモジュール」は、アンテナとの接続が電気的な接続を意味することが明らかであるから、本願発明の「前記アンテナと電気的に通じるデータ記憶装置」に相当する。

(2)引用発明は「アンテナに接続される記憶部を含むICモジュール」が「ベース基材」に「搭載」されるものであるから、本願発明とは「データ記憶装置を有する基材」を備える点で共通する。

(3)引用発明の「2つの領域」は、「ベース基材が折り曲げ可能な折り線を介して」分割されたものであるから、本願発明の「第1の面及び第2の面」に相当し、また、引用発明の「2つの領域のそれぞれのほぼ全面にわたってアンテナが形成される」部分は、本願発明の「第1の面及び第2の面を占有する第1の部分及び第2の部分」に相当する。
したがって、引用発明の「ベース基材が折り曲げ可能な折り線を介して2つの領域に分割され、」「2つの領域のそれぞれのほぼ全面にわたってアンテナが形成される」ことは、本願発明の「屈曲によって形成されてそれぞれ第1の面及び第2の面を占有する第1の部分及び第2の部分を有する基材とを備え、前記基材の前記第1の部分及び第2の部分は前記アンテナを有する」ことに相当する。

(4)本願発明の「無線周波数識別タグ」において、「無線周波数識別」は、本願明細書の段落【0001】の「本発明は、無線周波数識別(RFID)タグ‥‥‥を対象とする。」との記載から、「RFID」と同義であると解され、また、引用発明の「タグ」は、「ベース基材が折り曲げ可能な折り線」を有することから、多面タグといえるから、引用発明の「RF-IDタグ」は、本願発明の「多面無線周波数識別タグ」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「アンテナと、前記アンテナと電気的に通じるデータ記憶装置と、前記データ記憶装置を有し、屈曲によって形成されてそれぞれ第1の面及び第2の面を占有する第1の部分及び第2の部分を有する基材とを備え、前記基材の前記第1の部分及び第2の部分は前記アンテナを有することを特徴とする多面無線周波数識別タグ。」

<相違点>
データ記憶装置を有する基材について、本願発明が、データ記憶装置を「包含」する基材であるのに対し、引用発明は「搭載」する基材である点。

5 判断

<相違点>について
本願発明の「データ記憶装置を包含」することは、本願明細書の段落【0027】の「一般的には、RFIDタグは、回路カードへ個別の要素を実装することによって製造される。この実装は、基板と一乃至複数の回路要素(データ記憶装置,キャパシタ,ダイオード,アンテナ)との間にショートワイヤボンド接続又は半田付け接続のどちらかを使用して成し遂げられる。回路カードは、例えばガラスエポキシ樹脂又はセラミックなどのある好適な材料から成る。回路カードは、基材内部に取り付ける又は入れてもよい。」との記載から、データ記憶装置を「基材内部に取り付けること、又は入れること」を意味するものと解され、さらに、基材について、本願明細書の段落【0028】に「この基材は、ある好適な単一材料又は複数材料から製造され得る。‥‥‥基材を形成するために使用され得る材料例は、紙,厚紙,エチレンアセテート,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリウレタン,ポリエステル,ポリオレフィン,ポリアミド,ビニール,シリコーン,ゴム系接着剤,アクリル系接着剤,水溶性接着剤,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリエーテルイミド(PEI),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK),ポリスルホン(PS),ポリフェニレンスルホン(PPS)や、ポリエーテルスルホン(PES),ポリ塩化ビニール(PVC),ポリエステル(登録商標MYLAR),ポリイミド(登録商標KAPTON),そしてそれらの合成物を含むが、これらに限定されない。さらに、該基材は同種の構造であってもよく、若しくは、幾層かそうでないものとして与えられた2以上の異なる物質から構成されてもよい。」と記載されていることから、基材を、例えば、紙と接着剤からなるものから構成してもよいものである。
ここで、例えば、紙と接着剤から構成された基材内部に、データ記憶装置を取り付け又は入れることは、特開2003-22426号公報(図1及びその説明参照)等に記載されているように周知技術であるから、引用発明に、前記周知技術を適用して、本願発明のように、データ記憶装置を基材に取り付け又は入れること、すなわち、データ記憶装置を「包含」する基材とすることは、当業者が適宜なし得る事項である。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用例に記載された発明及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

よって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6 むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2012-01-16 
結審通知日 2012-01-23 
審決日 2012-02-03 
出願番号 特願2006-538019(P2006-538019)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 満  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 殿川 雅也
西山 昇
発明の名称 RFIDタグパレット  
代理人 牛木 護  

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