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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1258918
審判番号 不服2009-19294  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-08 
確定日 2012-06-20 
事件の表示 特願2002-586853号「経孔の後腰部生体間融合処置のための脊椎間インプラント」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月14日国際公開、WO02/89712、平成16年10月21日国内公表、特表2004-532075号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成14年5月1日(パリ条約による優先権主張2001年5月3日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成21年6月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年10月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成21年10月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年10月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1および請求項13は、それぞれ、次のように補正された。
(1)「【請求項1】
湾曲された凹形の後面および湾曲された凸状の前面を含み、前記湾曲された凹形の後面および湾曲された凸状の前面はインプラントボディの縦軸に沿って伸びており;
さらに、前記前面及び後面を分離する一対の凸状端部を含んでおり;
さらに、上部及び下部の脊椎終板を接触する上面及び下面を含み、上面及び下面がインプラントの厚さを規定し;
さらに、挿入用具による係合に適するように構成されて、インプラントの一端のねじ山を付けていない第一および第二のチャンネルを含み、前記第一チャンネルは前記湾曲された後面に配置されるとともに、前記第二チャンネルは前記湾曲された前面に配置される、ボディで構成される脊椎間インプラントであって、
前記湾曲された後面および前記湾曲された前面が弧状インプラント構造を形成し、経孔ウインドーを介してインプラントの挿入を容易にして、
インプラントが単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成されることを特徴とする脊椎間インプラント。」
(2)「【請求項13】
二つの狭いインプラント端部により分離された湾曲した、実質的に平行の後面及び前面、上部及び下部の脊椎終板を接触させるための複数の波形表面を有する上面及び下面、並びに挿入用具による係合のための第一端部にある少なくとも一つのくぼみを有するボディ、及び
インプラントを挿入中に保持するための挿入用具
を含む脊椎間インプラントを経孔ウインドーを介して患者の冒された椎間板スペースに移植するためのキットであって、
弧状インプラント形状が経孔ウインドーを介してインプラントの挿入を促進して、
インプラントが単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成されることを特徴とするキット。」(なお、アンダーラインは、補正箇所を明示するために付した。)

2.本件補正の適否についての検討
(1)本件補正の、請求項1についての補正事項は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、前面及び後面を分離する端部について、「湾曲された」との限定事項を「一対の凸状」との限定事項に変更し、ねじ山を付けていない第一およびそ第二のチャンネルについて、「インプラントの一端の」との限定事項を付加するとともに「の少なくとも一部に並行」との限定事項を削除し、インプラントについて「インプラントが単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成される」との限定事項を付加するものであるが、そのうち限定事項の変更及び削除については、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められず、同法第17条の2第4項の各号に掲げるその他のいずれの事項を目的とするものとも認められない。

(2)しかしながら、仮に本件補正の、請求項1についての補正事項が、改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるとした場合についても検討しておく。
この場合、本件補正の、請求項1についての補正事項は、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、米国特許第6174311号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(イ)「Referring now to FIG. 1 through FIG. 6, one embodiment of an implant according to the present invention is illustrated. Implant 10 includes body 11 having a concave surface 14 that defines a recessed area 15 into body 11. Implant 10 further includes a tool attachment end 32 adapted for engagement with an implant holder. Tool attachment end 32 can include a variety of recesses, receptacles, grooves, slots, projections, and other supporting members to engage corresponding surface features on an implant holder. Implant 10 also includes an insertion end 17. On the implant illustrated in FIGS. 1-6, the insertion end is defined by curved surface 18. It is understood that curved surface 18 can also include surfaces having a uniform and non-uniform curvature and tapered ends for increasing the ease of insertion of the implant into the intervertebral space.
Body 11 of implant 10 is substantially elongated and defines a longitudinal axis 19. The length of the implant 11 is sufficient to provide sufficient support and stability to the spinal column. Typically the implant has a length of about 21 mm to about 27 mm, more preferably, about 22 to about 26 mm. When viewed from the side, the height of implant 10 can be substantially uniform for its entire length, which lies parallel to the longitudinal axis.(【0021】図1ないし図6を参照すると、本発明による移植部材の1つの実施形態が示されている。移植部材10は、本体11内に凹所が形成された領域15を規定する凹形状面14を有する本体11を有する。さらに移植部材10は、移植部材ホルダに係合する器具取付端部32を有する。器具取付端部32は、移植部材ホルダの対応する面に係合する種々の凹所、レセプタクル、溝、スロット、突出部及び他の支持部材を含むことができる。また、移植部材10は挿入端部17を含む。図1ないし図6に示す移植部材において、湾曲面18は、椎間板のスペースへの移植部材の挿入を容易にするために均一及び非均一な曲率及びテーパを有する端部を有する面を含む。
【0022】移植部材10の本体11は細長く、長手方向の軸線19を規定する。移植部材11の長さは、脊柱に対して十分な支持体及び安定性を提供するために十分である。通常、移植部材は、約21mmから約27mmの長さを有し、さらに好ましくは、約22mmから約26mmの長さを有する。側面から見るときに移植部材10の高さは、その全長においてほぼ一定であり、これは、長手方向の軸線に平行になっている。(公報11頁18行?12頁5行))」(明細書8欄5?27行、()内は仮訳として、対応する特表2002-528164号公報を援用した。以下同様。)
(ロ)「The outer surface of implant 10 can include surface features such as ridges or teeth to prevent retropulsion of the implant from the intervertebral space. Ridges 12 can be randomly or uniformly distributed about the outer surface of implant 10. The ridges 12 can be distributed on one, two, three, or four sides of the exterior surface of implant 10. Preferably, ridges 12 and 13 are located on the upper surface 40 and lower surface 42, respectively. Ridges 12 and 13 are defined as an equilateral triangle defining an angle of about 50 to about 70.degree. at the apex and having a height of about 1 mm.(【0023】移植部材10の外面は、椎体間のスペースから移植部材が抜けることを防止するために隆起部または歯のような面特徴部を含むことができる。隆起部12は、移植部材10の外面の周りにランダムに均一に配分することができる。隆起部12は、移植部材10の外面の1つ、2つ、3つ又は4つの側面に分配される。隆起部12及び13は、頂点で約50°ないし約70°の角度を規定し約1mmの高さを有する二等辺三角形として定義される。(12頁15?21行))」(明細書8欄43?53行)
(ハ)「Implant body 11 includes a substantially flat side 16 opposite concave surface 14. Flat side 16 adjoins tool engagement end 32 and extends along the length of body 11 to abut insertion end 17. It is understood for the purposes of this invention that flat side 16 is substantially planer. However, it is also within the scope of the present invention that flat side 16 can include a curved surface, if desired.
Tool attachment end 32 can include a variety of recesses, apertures, and other structural features to engage an implant holder. For example, as depicted in FIGS. 4 and 5, tool engagement end can include slots 24, 26, first indent 28 and second indent 30. First indent 28 and second indent 30 can be provided to matingly engage corresponding pins on an implant holder.
Insertion end 17, which includes rounded surface 18 is depicted in FIG. 6. It is desirable, but not necessary, that rounded end 18 defines a uniform curvature as depicted in FIG. 6. It is desirable to round over or streamline the end of implant body 10 to ease the insertion of the implant into a preformed cavity. Therefore, in addition to curved surface 18, the implant also includes incline surfaces 34 and 36. Inclined surfaces 34, 36 and curved surfaces 18 may be provided to facilitate insertion of the implant into the preformed cavity. As explained further herein, such curved end surfaces obviate the necessity to provide a squaring off of the bottom of the channel of the preformed cavity.
It is also provided with the present invention an implant holder for releaseably securing and impacting the implant of FIGS. 1-6 into the preformed cavity.(【0025】移植部材本体11は、凹形状の面14と反対側に平坦な側面16を有する。平坦な側面16は、器具係合端部32に隣接しており、挿入端部17に当接するために本体11の長さに沿って延びている。本発明の目的のために平坦な側面16が平らであることを理解すべきである。しかしながら、平坦な側面16は、所望ならば、湾曲した面を含むことができる。
【0026】器具の取付端部32は、移植部材のホルダに係合するために種々の凹所、開口及び他の構造的な特徴を含むことができる。例えば、図4及び図5に示すように、器具係合端部は、スロット24,26、第1のぎざぎざ部分28と、第2のぎざぎざ部分30とを有する。第1のぎざぎざ部分28と第2のぎざぎざ部分30は、移植部材ホルダの対応するピンに係合するように設けることができる。
【0027】丸い面18を含む挿入端部17は図6に示されている。必ずしも必要でないが、丸い端部18は、図6に示すような均一な湾曲部を規定する。移植部材を呼び成形されたキャビティに挿入することを容易にするために移植部材の本体の端部を丸くするか、または流線形にすることが望ましい。したがって、湾曲面18に加えて、移植部材は、傾斜面34及び36を含む。傾斜面24,36及び湾曲面18は、移植部材を予備成形されたキャビティに容易に挿入するために設けられる。この明細書に説明するように、このような湾曲端部は、揖斐成形されたキャビティの通路の底部のスクエアオフを提供するための必要性をなくす。
【0028】本発明によれば、図1ないし図6の移植部材を予備成形されたキャビティに解放可能に取付け、打ち込むための移植部材ホルダを備えている。(13頁5?28行))」(明細書9欄5?33行)
(ニ)「Implant holder 50 engaged to implant 10 can be used to insert the implant into the intervertebral space as depicted in FIG. 11. (【0031】移植部材10に係合する移植部材ホルダ50は、図11に示すように椎体間のスペースに移植部材を挿入するために使用することができる。(15頁8?10行)」(明細書10欄14?16行)
(ホ)「Yet another embodiment of an implant according to the present invention is depicted in FIG. 22. Implant 210 includes crescent-shaped body 211 having a convex surface 217 and an opposite concave surface 215. Convex surface 217 is disposed between tool-engaging end 222 and opposite insertion end 216. Implant 210 is depicted as having a series of ridges 212 projecting out of upper surface 214 and similar ridges 213 projecting from the lower surface for engaging bone surfaces. (【0042】本発明による移植部材の他の実施形態は図22に示されている。移植部材210は、凸形状面217と、反対側の凹形状面215とを有する三日月形状の本体211を有する。凸形状面217は、器具係合端部222と反対側の挿入端部216との間に配置される。移植部材210は、上面214から突出している一連に隆起部212と、骨の面に係合する下面から突出している同様の隆起部213とを有する。(18頁19?25行)」(明細書12欄3?11行)
(ヘ)「Tool engaging end 222 is opposite of insertion end 216 on crescent shaped body 211. As with other preferred embodiments of the implants for use with the present invention, tool engaging end can include a variety of recesses, receptacles, grooves, slots, projections, and other supporting members to engage corresponding surface features on an implant holder.(【0045】器具係合端部222は、三日月形の本体211の挿入端部と反対側にある。本発明とともに使用する移植部材の他の好ましい実施形態と同じように、器具係合端部は、種々の凹所、レセプタクル、溝、スロット、突出部及び移植部材ホルダの対応する面特徴部に係合する他の支持部材を含むことができる。(19頁18?22行)」(明細書12欄38?43行)
(ト)FIG.3及びFIG.11からみて、移植部材10の本体11において、凹形状面14は、湾曲された形状となっているとともに、椎体間のスペースの内側に向く後面を形成し、側面16は、椎体間のスペースの外側に向く前面を形成しているといえる。
(チ)FIG.1及びFIG.5からみて、スロット24は凹形状面14すなわち後面側に設けられるとともに、スロット26は側面16すなわち前面側に設けられている。

これらの記載事項及び図面の記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「湾曲された後面を形成する凹形状面14および前面を形成する側面16を有し、前記凹形状面14および側面16を有する移植部材10の本体11は長手方向の軸線19を規定し、
さらに、移植部材10は挿入端部17と器具取付端部32を含んでおり、
さらに、椎体間のスペースから移植部材が抜けることを防止する隆起部12および13を含む外面を含み、
さらに、移植部材ホルダ50に係合するように構成されて、移植部材10のスロット24,26を含み、前記スロット24は前記後面側に設けられるとともに、前記スロット26は前記前面側に設けられる、本体11で構成された椎体間に挿入する移植部材10であって、
予備成形されたキャビティに容易に挿入されて、
椎体間に挿入される移植部材10。」

(2-2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、構造または機能からみて、引用発明の「椎体間に挿入する移植部材10」は本願補正発明の「脊椎間インプラント」に相当する。また、引用発明の「湾曲された後面を形成する凹形状面14」は、本願補正発明の「湾曲された凹形の後面」に相当し、「前面を形成する側面16」は、「前面」に相当する。
同様に、「移植部材10の本体11」は「インプラントボディ」に、「長手方向の軸線19を規定し」は「縦軸に沿って伸びており」に、相当する。
そして、引用発明の「挿入端部17」と「器具取付端部32」は、「前面及び後面を分離」しているし、「一対の凸状端部」といえる。
また、「椎体間のスペースから移植部材が抜けることを防止する隆起部12および13を含む外面」は、移植部材が椎体間のスペースにおいて、上部の椎体に上の面である隆起部12を含む外面が接触し、下部の椎体に下の面である隆起部13を含む外面が接触することにより、椎体間のスペースから移植部材が抜けることを防止するものであるから、「上部および下部の脊椎終板を接触する上面および下面」に相当する。
また、「隆起部12および13を含む外面」が「移植部材10」の厚さを規定していることは明らかである。
以下、同様に、「移植部材ホルダ50」は「挿入用具」に、「に係合するように」は、係合に際して係合に適するように構成することは自明であるから、「係合に適するように」に、「スロット24,26」は、引用文献1のFIG.1?5に示されているように移植部材10の一端側にねじ山を付けていない状態に形成されるものであるから、「一端のねじ山を付けていない第一および第二のチャンネル」に、「スロット24」は「第一チャンネル」に、「スロット26」は「第二チャンネル」に、「予備成形されたキャビティに容易に挿入されて」は「経孔ウインドーを介して」「挿入を容易にして」に、相当する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「湾曲された凹形の後面および前面を含み、前記湾曲された凹形の後面および前面はインプラントボディの縦軸に沿って伸びており;
さらに、前記前面及び後面を分離する一対の凸状端部を含んでおり;
さらに、上部及び下部の脊椎終板を接触する上面及び下面を含み、上面及び下面がインプラントの厚さを規定し;
さらに、挿入用具による係合に適するように構成されて、インプラントの一端のねじ山を付けていない第一および第二のチャンネルを含み、前記第一チャンネルは前記湾曲された後面に配置されるとともに、前記第二チャンネルは前記前面に配置される、ボディで構成される脊椎間インプラントであって、
経孔ウインドーを介してインプラントの挿入を容易にした脊椎間インプラント。」
そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明は、「湾曲された凸状の前面」を含み、「湾曲された後面および湾曲された前面が弧状インプラント構造を形成し」ているのに対し、引用発明では、そのような特定はない点。
(相違点2)
インプラントが、本願補正発明では、「単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成される」のに対して、引用発明では、そのような特定はない点。

(2-3)相違点の判断
(相違点1について)
引用文献1には、上記記載事項(ホ)、(ヘ)に示すとおり、他の実施形態としてFIG.22に、凹形状面215と凸形状面217とにより弧状構造である三日月形状の本体211を構成することが開示されているから、引用発明の前面を湾曲された凸状のものとし、湾曲された後面および湾曲された前面が弧状インプラント構造を形成するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
(相違点2について)
平成21年6月10日付け補正の却下の決定において、却下の理由に引用された、国際公開第00/07527号(以下「引用文献2」という)には、その第7図に、複数の相互連結ボディ(top portion 52, bottom portion 54)を組み立てることによって脊椎間インプラントを単一ユニットとして形成する点、すなわち、インプラントを、単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成することが記載されている。
引用発明及び引用文献2に記載された事項は、何れも脊椎間インプラントに関する共通の技術分野に属するものであるから、引用発明に、引用文献2に記載された事項を採用して、本願補正発明のように、インプラントが単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成されるように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願補正発明の効果も、引用文献1および引用文献2に記載された発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用文献1および引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)本件補正の、請求項13についての補正事項のうち、少なくとも、「後面」が「凹形」であるとの事項を削除した点、「前面」が「凸状」であるとの事項を削除した点、「前面」と「後面」とが「インプラント本体の縦軸に沿って伸びて」おり、「弧状インプラント構造を形成し」ているとの事項を削除した点、「チャンネル」に関する構成が削除され、「くぼみ」が追加されている点、「・・・インプラントの挿入を容易にすること」が削除されている点は、明らかに発明を特定するために必要な事項を限定したものでない。
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められず、同法第17条の2第4項の各号に掲げるその他のいずれの事項を目的とするものとも認められない。

(4)以上の点から、本件補正は、改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合しない、又は同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するとともに、同法第17条の2第4項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成20年7月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「湾曲された凹形の後面および湾曲された凸状の前面を含み、前記湾曲された凹形の後面および湾曲された凸状の前面はインプラントボディの縦軸に沿って伸びており;
さらに、前記前面及び後面を分離する湾曲された端部を含んでおり;
さらに、上部及び下部の脊椎終板を接触する上面及び下面を含み、上面及び下面がインプラントの厚さを規定し;
さらに、挿入用具による係合に適するように構成されて、ねじ山を付けていない第一および第二のチャンネルを含み、前記第一チャンネルは前記湾曲された後面の少なくとも一部に並行に配置されるとともに、前記第二チャンネルは前記湾曲された前面の少なくとも一部に並行に配置される、ボディで構成される脊椎間インプラントであって、
前記湾曲された後面および前記湾曲された前面が弧状インプラント構造を形成し、経孔ウインドーを介してインプラントの挿入を容易にすることを特徴とする脊椎間インプラント。」

IV.引用文献の記載事項
引用文献1、及び、その記載事項は、前記II.2.(2-1)に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1.(1)の本願補正発明における、前面及び後面を分離する端部について、「一対の凸状」との限定事項を「湾曲された」との限定事項に変更し、ねじ山を付けていない第一および第二のチャンネルについて、「インプラントの一端の」との限定事項を省くとともに「の少なくとも一部に並行」との限定事項を付加し、「インプラント」について「インプラントが単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成される」との限定事項を省くものである。
そして、前面及び後面を分離する端部が「湾曲された」点、および第一チャンネルは湾曲された後面「の少なくとも一部に並行」に配置されるとともに、第二チャンネルは前面「の少なくとも一部に並行」に配置される点は、引用文献1に記載された発明も備えている(挿入端部17およびスロット24,26)。
そうすると、前記II.2.(2-2)において検討したことから、本願発明と引用文献1に記載された発明とは、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点でのみ相違し、その余の点では一致する。
(相違点)
本願発明は、「湾曲された凸状の前面」を含み、「湾曲された後面および湾曲された前面が弧状インプラント構造を形成し」ているのに対し、引用発明では、そのような特定はない点。
上記相違点は、前記II.2.(2-3)において検討した相違点1と同じであり、同様の理由により、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明の効果も、引用文献1に記載された発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-17 
結審通知日 2011-02-18 
審決日 2011-03-01 
出願番号 特願2002-586853(P2002-586853)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
P 1 8・ 57- Z (A61F)
P 1 8・ 575- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 龍平  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 蓮井 雅之
黒石 孝志
発明の名称 経孔の後腰部生体間融合処置のための脊椎間インプラント  
代理人 浜田 治雄  

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