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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1259356 |
審判番号 | 不服2009-6451 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-03-26 |
確定日 | 2012-07-05 |
事件の表示 | 特願2004-366418「メイクアップ用化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月29日出願公開、特開2006-169195〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成16年12月17日を出願日とする出願であって,平成19年3月15日付けで拒絶理由通知書が出され,同年5月21日付けで手続補正がなされたが,平成21年2月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年3月26日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに,同年4月24日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成21年4月24日付けの手続補正の補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年4月24日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正後の本願発明 平成21年4月24日付けの手続補正は特許請求の範囲を補正するものであって,平成19年5月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に 「(A)一部が塩を形成していてもよい総炭素数23?100のカルボン酸1?40質量%,(B)樹脂エマルジョンを固形分換算で1?30質量%,(C)水30?70質量%,及び(E)総炭素数10?22の飽和あるいは不飽和のカルボン酸又は該カルボン酸の一部又は全部が中和されている塩1?20質量%含む水中油型メイクアップ用化粧料。」とあったのを, 「(A)一部が塩を形成していてもよい総炭素数23?100のカルボン酸1?40質量%,(B)樹脂エマルジョンを固形分換算で1?30質量%,(C)水30?70質量%,及び(E)総炭素数10?22の飽和あるいは不飽和のカルボン酸又は該カルボン酸の一部又は全部が,アルカリ金属,有機アミン又は塩基性アミノ酸にて中和されている塩1?20質量%含む水中油型マスカラ。」(以下,「本願補正発明」という。)と補正することを含むものである。 上記補正は,補正前の請求項1に記載された(E)成分のカルボン酸を塩にする中和剤の種類を「アルカリ金属,有機アミン又は塩基性アミノ酸」に限定し,さらに「メイクアップ用化粧料」を「マスカラ」に限縮するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 引用刊行物およびその記載事項 原査定で引用され,本願出願前に頒布された刊行物である刊行物1には,以下の事項が記載されている。(刊行物1の訳文は審判請求人が平成23年5月2日付け回答書に添付資料として提出した翻訳文を参考にした。) 刊行物1:欧州特許出願公開第974338号明細書(原査定の引用文献1) そして,本願出願前に頒布された刊行物である刊行物2?4には,以下の事項が記載されている。 刊行物2:Fragrance Journal編集部編,「香粧品製造学 技術と実際」,フレグランスジャーナル社発行,平成13年8月25日,第1版第1刷,第222?224頁 刊行物3:鈴木正人監修,「機能性化粧品III」,株式会社シーエムシー発行,2000年1月1日,第1刷,第178?179頁 刊行物4:特許庁,「周知・慣用技術集(化粧料及び類似品)」,昭和59年8月21日発行,第63頁 (1)刊行物1に記載された事項 [1a]「特許請求の範囲 1. C_(22)からC_(60)の鎖長を有する非分岐鎖,飽和および/または不飽和の脂肪族脂肪酸含分を有し,前記脂肪酸が単独でも混合物でも存在してよい化粧品用または皮膚用組成物。 2. 追加的に化粧品用または皮膚用助剤,添加剤および/または作用物質を含有していることを特徴とする,請求項1に記載の化粧品用または皮膚用組成物。 3. 前記脂肪酸または前記脂肪酸混合物が,昆虫ワックスから得られていることを特徴とする,請求項1または2のいずれか一項に記載の化粧品用または皮膚用組成物。 4. 前記脂肪酸または前記脂肪酸混合物が,植物ワックスから得られていることを特徴とする,請求項1または2のいずれか一項に記載の化粧品用または皮膚用組成物。 5. 前記脂肪酸がC_(22)からC_(34)の鎖長を有することを特徴とする,前記請求項のいずれか一項に記載の化粧品用または皮膚用組成物。 6. C_(22)からC_(60)の鎖長を有する非分岐鎖,飽和および/または不飽和の脂肪族脂肪酸含分を有し,前記脂肪酸が単独でも混合物でも存在してよい,昆虫および/または植物ワックス加水分解産物含分を有する化粧品用または皮膚用組成物。」 [1b]「[0022] これらの課題は意外にも,かつ当業者に予見し得なかったことに, C_(22)からC_(60)の鎖長を有する非分岐鎖,飽和および/または不飽和の脂肪族脂肪酸含分を有し,前記脂肪酸が単独でも混合物でも存在してよい化粧品用または皮膚用組成物により解決される。 [0023] 本発明による組成物は,いずれの観点でも,非常に満足のいく製剤である。当業者は,本発明による組成物が従来技術の組成物よりも 良好に皮膚バリア特性を保持または再生し, 良好に皮膚乾燥に抵抗し, 良好に皮膚老化に作用し, 良好に外界影響に対して皮膚を保護する ことを予見することはできなかった。 [0024] 本発明の意味において,特に,ワックスまたはワックス混合物をけん化することにより得られる脂肪酸または脂肪酸混合物が有利である。出発物質として使用されるワックスまたはワックス混合物は,天然産物として,様々な組成であってよい。 [0025] 化粧品用または皮膚用組成物中でのワックスおよびワックス誘導体の使用は,それ自体知られている。ワックスは,動物および植物性製品に由来する脂肪酸エステルであるが,脂肪および油脂とは,ベースである脂肪酸がグリセリンではなく,高級で1級の一価アルコールでエステル化されていることにおいて異なる。 [0026] 有利な脂肪酸または脂肪酸混合物は例えば蜜ろう,チャイナワックス,マルハナバチワックスおよび他の昆虫ワックスから得られる。」 [1c]「[0044] 本発明による化粧品用または皮膚用組成物または配合物は,通常通り組成されていてよく,皮膚および/または髪を処置,手入れおよび洗浄するために,かつ装飾的化粧品中でメーキャップ製品として使用することができる。 ・・・ [0047] 本発明による化粧品用および皮膚用組成物は,このような組成物中で通常使用されるような化粧品用助剤,例えば,防腐剤,殺菌剤,香料,泡立ち防止剤,染料,着色作用を有する顔料,増粘剤,界面活性剤,乳化剤,軟化剤,湿潤剤および/または保湿剤,脂肪,オイル,ワックスまたは化粧品用もしくは皮膚用配合物の他の慣用の成分,例えば,アルコール,ポリオール,ポリマー,泡安定剤,電解質,有機溶剤またはケイ素誘導体を含有してよい。 ・・・ [0051] 本発明による化粧品用および皮膚用組成物は,様々な形態で存在してよい。例えば,溶液,水不含組成物,油中水型(W/O)もしくは水中油型(O/W)のエマルションもしくはマイクロエマルション,例えば,水中油中水型(W/O/W)の多相エマルション,ゲル,固体のペン,軟膏またはエアロゾルであってもよい。」 [1d]「[0058] 後続の実施例で本発明を明示するが,これらは,本発明を制限するものではない。実施例中の数値は,各組成物の全重量に対する重量パーセントを意味する。 実施例: ・・・ 実施例28 [0087] 実施例29 [0088] 」 (2)刊行物2に記載された事項 [2a]「マスカラの製品剤型は多岐にわたり,必要とされる化粧効果により選択される。・・・。これらマスカラの製品剤型の中で最も一般的なものがエマルション・エマルション樹脂複合タイプであり,様々なワックス類,及びエマルションポリマー等の配合検討がなされている。」(第222頁第1?8行) [2b]「(処方例)エマルション・エマルション樹脂複合タイプマスカラ ステアリン酸 3% カルナウバワックス 5 パラフィンワックス 5 セスキオレイン酸ソルビタン 2 トリエタノールアミン 2 グリセリン 5 ポリアクリル酸アルキルエマルション 30 黒酸化鉄 10 精製水 add100 (製法) 精製水に黒酸化鉄を混合し,ディスパミキサーで均一に分散後,ポリアクリル酸アルキルエマルションを加え均一に混合する。(水系)その他の成分を加熱溶解し,水系を加えて均一に乳化分散する。」(第223頁第11行?第224頁第5行) (3)刊行物3に記載された事項 [3a]「6 水分散系樹脂 アイライナー,マスカラ等に用いられる水分散系樹脂は,その製品を特徴づける最も重要な原料である。・・・ 表2に種別許可基準に記載されている水分散系樹脂の代表例を示した。」(第178頁第3行?第179頁第3行) [3b]「 」(第179頁) (4)刊行物4に記載された事項 [4a]「名称 アイ製品,マニキュア用皮膜形成剤 技術内容 (1)原料 アクリル系高分子ラテックス(例えばアクリル酸エステル系共重合体のエマルジョン) (2)使用対象 アイ製品,マニキュア (3)使用目的 皮膜形成剤 (4)特徴 アクリル系高分子物質の水分散物で水が蒸発することにより水不溶性の高分子皮膜を形成する。他の高分子溶液に比べ分子量の大きな高分子を扱うことが出来,また乾燥してフィルム化する速度が速い。そして上記エマルジョンを配合したアイメイクアップ化粧料は感触が柔らかく,しなやかで化粧もち,耐水性が良好である。」(第63頁第1?最終行) 3 対比・判断 (1)刊行物1記載の発明 上記の記載(特に[1d]の実施例28)によれば,刊行物1には,以下の発明(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ステアリン酸 5重量% ラノリン 5重量% ケイ酸アルミニウムマグネシウム 3重量% シクロメチコーン 0.5重量% 顔料混合物 5重量% 蜜ろう酸 1重量% 香料,防腐剤,染料,酸化防止剤,中和剤 適量 水 100重量%まで を配合するマスカラ。」 (2)本願補正発明と刊行物1発明との対比 ア 刊行物1発明の「蜜ろう酸」は,ワックスである蜜ろうをけん化することにより得られる,「C_(22)からC_(60)の鎖長を有する非分岐鎖,飽和および/または不飽和の脂肪族脂肪酸」であるから([1a][1b]参照),「蜜ろう酸」と本願補正発明の「(A)一部が塩を形成していてもよい総炭素数23?100のカルボン酸」とは,「総炭素数23?60のカルボン酸」である点で共通する。 また,上記「蜜ろう酸」の配合量「1重量%」は,本願補正発明の「(A)一部が塩を形成していてもよい総炭素数23?100のカルボン酸」の配合量「1?40質量%」の数値範囲に含まれる。なお,「重量%」と「質量%」はこの場合同義である。 イ 刊行物1発明の「ステアリン酸」は,本願補正発明の「(E)総炭素数10?22の飽和あるいは不飽和のカルボン酸又は該カルボン酸の一部又は全部が,アルカリ金属,有機アミン又は塩基性アミノ酸にて中和されている塩」のうちの,「総炭素数10?22の飽和あるいは不飽和のカルボン酸」に相当する。 また,上記「ステアリン酸」の配合量「5重量%」は,本願補正発明の「(E)総炭素数10?22の飽和あるいは不飽和のカルボン酸又は該カルボン酸の一部又は全部が,アルカリ金属,有機アミン又は塩基性アミノ酸にて中和されている塩」の配合量「1?20質量%」の数値範囲に含まれる。 ウ 刊行物1発明と本願補正発明とは,「水」を含む「マスカラ」である点で共通する。 以上のことを総合すると,両発明は, 「総炭素数23?60のカルボン酸1質量%,水,及び総炭素数10?22の飽和あるいは不飽和のカルボン酸5質量%を含むマスカラ。」という点で一致し,次の相違点を有する。 (相違点1) 本願補正発明では「樹脂エマルジョンを固形分換算で1?30質量%」をさらに含むのに対し,刊行物1発明では該成分を含まない点。 (相違点2) マスカラ中の水の配合量が,本願補正発明では「30?70質量%」であるのに対し,刊行物1発明では全体を100重量%にする量であり,数値範囲は明らかでない点。 (相違点3) マスカラが,本願補正発明では「水中油型」と特定されているのに対し,刊行物1発明ではそのような特定がなされていない点。 (3)相違点についての検討 ア 相違点1について マスカラ製品において,水分散系の樹脂エマルジョンは周知成分であり([2a][2b][3a][3b][4a]参照),上記樹脂エマルジョンの配合により,製品の皮膜形成性,耐水性及び化粧もちという化粧特性が期待できることも本願出願前から周知である([4a]参照)。そこで,刊行物1に「通常使用される化粧品用助剤」としてポリマーを含有してよいことが記載されていることから([1c]参照),上記の化粧特性を期待して,マスカラ製品に周知成分の樹脂エマルジョンを配合することは,当業者であれば容易になし得ることである。 そして,上記樹脂エマルジョンの配合量を検討するにあたり,刊行物2にマスカラの処方例としてポリアクリル酸アルキルエマルションを30%含有したものが記載されていることから鑑みて([2b]参照),マスカラに求められる皮膜形成性等の化粧特性が得られるように,上記樹脂エマルジョンの配合量を「固形分換算で1?30質量%」に決定することは,当業者が容易になし得ることである。 イ 相違点2について 刊行物3に記載されているように,マスカラ製品において,アクリル酸アルキル共重合体エマルションのような水分散系の樹脂エマルジョンをマスカラ製品に配合することは周知である。 ここにおいて,水分散系の樹脂エマルジョンを配合するマスカラ製品の製造方法として,刊行物2に「精製水に黒酸化鉄を混合し,ディスパミキサーで均一に分散後,ポリアクリル酸アルキルエマルションを加え均一に混合する。」([2b]参照)と記載されているように,精製水は水分散系の樹脂エマルジョンの分散媒として機能するものであり,[2b]の処方中,精製水の配合量は38%である。 さらに,刊行物4に「アクリル系高分子物質の水分散物で水が蒸発することにより水不溶性の高分子皮膜を形成する。他の高分子溶液に比べ分子量の大きな高分子を扱うことが出来,また乾燥してフィルム化する速度が速い。」と記載されているように,水分散系の樹脂エマルジョンは,共存する水が蒸発して樹脂が乾燥することにより,水不溶性の高分子皮膜が形成されることから,マスカラ組成物中の水の配合量は,樹脂皮膜の形成速度に影響を与えるものといえる。 してみると,刊行物1発明において,水分散系の樹脂エマルジョンを配合するに伴い,水の配合量を決定するにあたり,その分散媒としての機能及び樹脂皮膜の形成速度への関与を考慮して,具体的に水の配合量を「30?70重量%」とすることは,当業者が容易になし得ることである。 ウ 相違点3について 刊行物2の[2a]に「これらマスカラの製品剤型の中で最も一般的なものがエマルション・エマルション樹脂複合タイプであり,」と記載され,[2b]の「(処方例)エマルション・エマルション樹脂複合タイプマスカラ」にて配合されている樹脂が水分散系である「ポリアクリル酸アルキルエマルション」であることから鑑みて,水分散系の樹脂エマルジョンを配合するマスカラ製品において乳化剤型は周知である。 してみると,刊行物1発明において,追加的な水分散系の樹脂エマルジョンを配合するにあたり,上記の周知技術,並びに刊行物1発明のマスカラは,その形態として水中油型エマルションとし得るものであること([1c]参照)から,組成物を水中油型の乳化剤型とすることは,当業者が容易になし得ることである。 以上のとおりであり,前記相違点1?3に係る発明特定事項を合わせ採用することも,当業者が容易になし得たことであり,それによって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。 なお,本願補正発明は「(A)一部が塩を形成していてもよい総炭素数23?100のカルボン酸」を具体的に特定していないが,これに該当するとされる市販品「Performacid 350ACID」と「SYNCROWAX AW1-C」について,前者は炭素数20?40であり,後者は炭素数18?36であるから,本願補正発明に係る炭素数の数値範囲に臨界的意義を見出すことができない。(前者の炭素数については,平成19年3月15日付けで拒絶理由通知書の引用文献14である国際公開第03/53395号の第34頁第24?25行,引用文献15である国際公開第03/53393号の第33頁第33?34行,引用文献16である国際公開第03/53391号の第35頁第1?2行,引用文献17である特開2001-253813号公報の段落【0009】を,後者の炭素数については,同通知書の引用文献11である国際公開第03/28690号の第29頁第21行,引用文献12である特表2004-517815号公報の段落【0046】,引用文献13である特開2000-95638号公報の段落【0051】を,それぞれ参照されたい。) (4)請求人の主張について 平成21年6月9日付けの手続補正書(方式)にて主張されるところの,引用発明の追試実験についても述べる。 審判請求人は,原査定の引用文献1である欧州特許出願公開第974338号明細書の実施例29のII及びIIIの処方のマスカラを追試した結果,「いずれも冷却過程で油相と水相が完全に分離し,マスカラとして使用することはできませんでした。」と主張している。 しかしながら,上記実施例29の処方は,油分であるラノリン,蜜ろう及びシクロメチコーンが合計17重量%配合されるのに対し,乳化成分であるステアリン酸アルミニウムの配合量が2重量%であるから,乳化状態が十分に良好でないとしても予想外のことではない。 4 むすび したがって,本願補正発明は,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成21年4月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願請求項1?5に係る発明は,平成19年5月21日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであり,その請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,下記の事項により特定される発明である。 「(A)一部が塩を形成していてもよい総炭素数23?100のカルボン酸 1?40質量%,(B)樹脂エマルジョンを固形分換算で1?30質量%,(C)水30?70質量%,及び(E)総炭素数10?22の飽和あるいは不飽和のカルボン酸又は該カルボン酸の一部又は全部が中和されている塩1?20質量%含む水中油型メイクアップ用化粧料。」 2 引用刊行物およびその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物1,並びに刊行物2?4,および,その記載事項は上記「第2 2」に記載のとおりである。 3 対比・判断 本願発明は,前記「第2」で検討した本願補正発明から,「(E)総炭素数10?22の飽和あるいは不飽和のカルボン酸又は該カルボン酸の一部又は全部が中和されている塩」について,その限定事項であるところの,カルボン酸を塩にする中和剤の種類についての限定を解除し,さらに「マスカラ」であったものを上位概念である「メイクアップ用化粧料」に拡張するものである。 そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 3」に記載したとおり,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-07 |
結審通知日 | 2012-05-08 |
審決日 | 2012-05-21 |
出願番号 | 特願2004-366418(P2004-366418) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福井 美穂、北畑 勝彦 |
特許庁審判長 |
秋月 美紀子 |
特許庁審判官 |
▲高▼岡 裕美 齊藤 真由美 |
発明の名称 | メイクアップ用化粧料 |
代理人 | 大谷 保 |