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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1259364
審判番号 不服2009-22803  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-24 
確定日 2012-07-05 
事件の表示 特願2000-226451「インモールド成形用ラベルおよび該ラベル付き樹脂成形品」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月 5日出願公開、特開2002- 36345〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成12年7月27日の出願であって,平成21年6月4日付けで拒絶理由が通知され,同月29日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年8月17日付けで拒絶査定がされた。これに対して,平成21年11月24日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に手続補正がされたので,特許法162条所定の審査がされた結果,平成22年1月29日付けで同法164条3項所定の報告がされ,平成23年10月3日付けで同法134条4項所定の審尋がされ,同年12月5日に回答書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定

[結論]
平成21年11月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成21年11月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という)の内容
本件補正は明細書の特許請求の範囲を変更する内容を含むものであるところ,本件補正の前後における特許請求の範囲の記載は,それぞれ以下のとおりである。
・ 本件補正前(請求項2?13の記載省略)
「【請求項1】 熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,前記ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであり,ラベルの透気度が10?20,000秒であり,かつラベルを貫通するスリットが形成されていることを特徴とするインモールド成形用ラベル。」
・ 本件補正後(請求項2?12の記載省略)
「【請求項1】 熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,前記ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであり,ラベルの透気度が10?20,000秒であり,ラベルを貫通するスリットが形成されており,前記スリットの長さが0.5?20mmであり,かつ隣り合ったスリット間のピッチが5?25mmであることを特徴とするインモールド成形用ラベル。」

2 本件補正の目的
本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「スリット」を「スリットの長さが0.5?20mmであり,かつ隣り合ったスリット間のピッチが5?25mm」と限定する補正事項を含むものであるところ(しかも,補正の前後で,請求項1に記載の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わらない。),当該補正事項は,平成18年法律第55号改正前の特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件違反の有無について
上記2のとおりであるから,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。下記4)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(本件補正が,同条5項で準用する126条5項の規定に適合するか。いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討するところ,本件補正は当該要件に違反すると判断される。
すなわち,本願補正発明は,下記引用文献1に記載された発明(以下「引用発明1」という。下記5(1))及び下記引用文献2?3に記載された事項に基いて,あるいは,下記引用文献2に記載された発明(以下「引用発明2」という。下記6(1))及び下記引用文献1ならびに3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1: 特開平5-249895号公報
引用文献2: 特開平11-35019号公報
引用文献3: 特公平4-71699号公報
以下,特許を受けることができない理由(理由1?2)を,下記5?6において詳述する。
なお,引用文献1?3は,平成21年6月4日付け拒絶理由を通知するにあたり,請求人に提示された刊行物である(拒絶理由中,引用文献3の「特公昭04-071699号公報」は「特公平04-071699号公報」の明らかな誤記であり,請求人も誤記であることを前提に審判請求書などで主張している。)。

4 本願補正発明
本願補正発明は,平成21年11月24日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,前記ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであり,ラベルの透気度が10?20,000秒であり,ラベルを貫通するスリットが形成されており,前記スリットの長さが0.5?20mmであり,かつ隣り合ったスリット間のピッチが5?25mmであることを特徴とするインモールド成形用ラベル。」

5 理由1
(1) 引用発明1
ア 引用文献1には,次の記載がある。(なお,下線は当審で付した。以下同じ。)
「樹脂フィルムにロール線数が60?200本/インチのグラビア型のパターンよりなるエンボス加工を施し,更に延伸を行なって得られた表面にエンボスパターンを形成した基材上に,1?10g/m^(2)の感熱型の液状樹脂接着剤を塗布し,乾燥して基材上に接着層を形成してなることを特徴とするインモールドラベル。」(【請求項1】)
「本発明は給紙性及びインキ密着性等の印刷適性やラベル打抜加工時の作業性に優れ,かつ,インモールド成形に於ける幅広い成形条件下においてもラベルのブリスターが発生し難いインモールド用ラベルに関する。」(【0001】)
「本発明者は上記課題に鑑みて,鋭意研究を重ねた結果,予め基材上に特定な形状のエンボスを形成し,その上に特定な厚みの接着層を形成して得られるインモールド用ラベルは,水溶媒型の接着剤を接着層として設けた場合にも従来のラベルと同様のエンボスパターンを形成することができ,しかも,インモールド成形時に於けるブリスターの発生の無い幅広い成形条件に対応することができるものであるとの知見を得て本発明に至ったものである。…」(【0004】)
「(2)構造 …図1は,本発明のインモールド用ラベルの一例として挙げた,中空成形用の二層構造のインモールド用ラベルの断面図を表わす。図1において,1は本発明のインモールド用ラベルであり,2はそれを構成する熱可塑性樹脂の延伸フィルムよりなる基材で,3は印刷で,4はヒートシール性樹脂の塗工により形成された接着層である。また,5は該ヒートシール性樹脂よりなる接着層4の格子模様が付与された稜(凸部)の頂上であり,6は格子模様の谷部(凹部)を示すものである。また,図2はそのインモールド用ラベルのヒートシール性樹脂を塗工し乾燥して得た接着層4側の平面図を表わす。また,図3は基材の片面に形成された延伸後のエンボス模様の部分拡大図であり,図4は図3の基材のエンボス模様の稜の頂上に1g/m^(2)となる様に塗工された時の接着剤層面の拡大図である。この様にして基材フィルムに付与されたエンボス模様は塗工後もその模様は残り,中空成形時のインモールドラベル成形時に於いても空気やガスの封じ込める体積を有しており,ブリスターの発生を防止することができる。基材のエンボスパターンの谷の部分の中心線より平均深さは一般に1?15μm,好ましくは2?12μmであり,その表面に塗工される接着剤は固形分濃度が10?50%の溶液のものが好ましく,また,塗工量は溶液状態で基材のエンボスパターンの稜部6より少くとも5μm以上50μm以下,好ましくは10?30μmの膜厚となる様に塗工量を調整することが重要であり,乾燥後に於いては稜部6に接着層が1?10g/m^(2)の量で塗工されていることが中空成形時にインモールドされた時のラベル接着性を付与するために必要となる。塗工量が上記範囲未満ではラベルと中空容器との接着力が低下し,中空成形後の容器の型収縮にラベルが追随できなくなり剥離が起り易くなって,ブリスター発生の原因となる。また,乾燥後の接着剤層の稜部に於ける塗工量が上記範囲を越える様な場合は基材に形成されたエンボスのパターンがほとんど残らず表面がフラットな状態となってしまって,ガスや空気を容器とラベルの間に封じ込むことができなくなって,ブリスターの発生を防止することができなくなる。なお,接着層面のベック平滑度(JIS-P8119)が一般に20?800秒,好ましくは30?400秒,中心線平均粗さ(Ra)が一般に0.5?5μm,好ましくは0.8?3μmであるのが接着強度およびブリスター発生防止の点から好ましい。」(【0007】)
「【発明の効果】予めエンボスパターンを付与した基材を使用して接着層を積層した本発明のインモールド用ラベルは,従来のグラビア等によるコーティング方法ではそのグラビアパターンを乾燥後も残すには,接着剤の粘度調整や乾燥条件の設定が重要であったが,そのような乾燥条件や,粘度調整の必要も無く,基材表面に均一に塗工する事により,乾燥後に希望するエンボスパターンを備えたインモールド用ラベルを製造することが出来る。また,従来水溶媒型接着剤はグラビア方式に依る塗工に於いてはグラビアパターンを残すことが困難であったが,本発明のインモールドラベルではこのような水溶媒型の接着剤を用いて塗工した場合も,前記溶剤型接着剤の場合と同様に,表面にエンボスパターン残したインモールドラベルを造ることが出来る。接着剤が塗工された接着層のエンボスパターンの必要性は,インモールドラベルの成型加工時に容器樹脂とラベルの間の空気を瞬時に逃したり,又は空気やガスを分散させて凹部に封じ込めてブリスターの発生を防止することができる。特殊な変型のデザイン容器であったり,成形加工時の樹脂温度が高く分解ガスの発生が多い場合等において特に有効である。」(【0022】)
イ 上記アのとおり,引用文献1には,その請求項1に記載されたインモールドラベルについて,当該ラベルを構成する接着層面の中心線平均粗さ(Ra)を0.5?5μmとする旨の記載があること(【0007】)などを総合すると,次のとおりの引用発明1が記載されている。
「樹脂フィルムにロール線数が60?200本/インチのグラビア型のパターンよりなるエンボス加工を施し更に延伸して得られるところの表面にエンボスパターンを形成してなる基材上に,1?10g/m^(2)の感熱型の液状樹脂接着剤を塗布し乾燥して接着層を形成してなる,当該接着層面の中心線平均粗さ(Ra)が0.5?5μmであるインモールドラベル」

(2) 対比
本願補正発明と引用発明1を対比すると,引用発明1の「インモールドラベル」は本願補正発明の「インモールド成形用ラベル」と同義であるのは明らかであり,引用発明1の樹脂フィルムからなる「基材」は本願補正発明の「熱可塑性樹脂フィルム基材層」に,感熱型の液状樹脂接着剤を塗布し乾燥して得られた「接着層」は「ヒートシール性樹脂層」にそれぞれ相当する。また,引用発明1の「接着層面の中心線平均粗さ(Ra)が0.5?5μm」であることは,本願補正発明の「ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μm」であることと一致するから,両者の一致する点(一致点),相違する点(相違点1?2)はそれぞれ次のとおりである。
・ 一致点
「熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,前記ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであるインモールド成形用ラベル。」
・ 相違点1
「本願補正発明はそのラベルの透気度が10?20,000秒であるのに対し,引用発明1は透気度についての特定がない点」
・ 相違点2
「本願補正発明はそのラベルを貫通するスリットが形成されており,前記スリットの長さが0.5?20mmであり,かつ隣り合ったスリット間のピッチが5?25mmであるのに対し,引用発明1はその特定がない点」

(3) 相違点についての判断
上記相違点1?2について,以下検討する。
ア 相違点1について
(ア) 本願明細書の記載
本願明細書には,以下の記載がある。
「【発明の属する技術分野】本発明は,インモールド成形に用いるラベルに関する。…」(【0001】)
「しかしながら,これら従来のインモールド成形用ラベルを用いて中空成形によりラベル付き容器を製造するとき,ラベルが貼着される容器部分の曲率が大きかったり変化していたり,起伏があったりすると,ダイスより押し出されたパリソンが吹き込み空気により膨張する際に,金型内に固定されたラベルとの間に空気が残存し,気泡を抱き込む「ブリスター」が発生してしまうという問題があった。ブリスターが発生したラベル付き容器は商品価値が低いため,ブリスター発生を抑制することが求められていた。…」(【0003】)
「本発明はこれらの従来技術の問題点に鑑みて,様々な形状を有する樹脂成形品に対してブリスターの発生を効果的に抑制しながらラベル貼着を行うことができるインモールド成形用ラベルを提供することを課題とした。また本発明は,自動ラベル供給装置による吸引やラベル固定を確実かつスムーズに行うことができ,インモールド成形による製造効率が高いインモールド成形用ラベルを提供することも課題とした。さらに本発明は,外観がきれいで安価に製造しうるラベル付き樹脂成形品を提供することも課題とした。」(【0006】)
「【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討を行った結果,ラベルにスリットを形成して特定の透気度を付与するとともに,ヒートシール性樹脂層表面の中心線表面粗さを所定の範囲内に調整することによって,種々の自動ラベル供給装置や金型において確実かつスムーズにラベルを供給することができるようになり,ブリスターの発生も効果的に抑制しうることを見いだし,本発明に至った。…」(【0007】)
「本発明のインモールド成形用ラベルは,熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるものであるが,そのヒートシール性樹脂層の表面の中心線平均粗さ(JIS-B-0601に準拠)は0.5?5μmであり,ラベルの透気度(JIS P-8117準拠)は10?20,000秒である。…
ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さは0.5?5μmであるが,好ましくは1?4μmである。中心線平均粗さが0.5μmより小さいと,中空成形時の空気の逃げが不十分でありブリスターが発生しやすくなるため好ましくない。また5μmより大きいと,自動ラベル供給装置の吸引パッドによりラベルをラベルマガジンより取り出し,金型へ供給する際にラベルが取り出しづらくなったり,途中でラベルが落下して,樹脂成形品にラベルが十分に貼着されなくなってしまうため好ましくない。
本発明のラベルの透気度は10?20,000秒であり,好ましくは50?15,000秒である。透気度が10秒未満では,自動ラベル供給装置の吸引パッドによりラベルをラベルマガジンより取り出し金型へ挿入する際に,2枚あるいはそれ以上のラベルを同時に取り出しやすくなり,またラベルの搬送途中や吸引孔が設けられた金型壁面より落下しやすくなるため好ましくない。また透気度が20,000秒より大きいと,たとえ後述するエンボス加工を行っても,中空成形時の空気の逃げが不十分であるためにブリスターが発生しやすくなり好ましくない。
このように,中心線平均粗さと透気度を本発明の範囲に制御することが,様々な樹脂成形品の形状やラベルの形状に対し普遍的にブリスターの発生を防止するために重要である。これら中心線表面粗さと透気度は上述の範囲であれば任意に設定することができるが,透気度の値が小さいほど(透気性が大きいほど),エンボス加工を小さくし,また逆に透気度の値が大きいほど(透気性が小さいほど),エンボス加工を大きくすることがより好ましい。…
中心線平均粗さと透気度を本発明の範囲内に調整するためには,ヒートシール性樹脂層の表面にエンボス加工を施すことが好ましい。そのエンボス模様には,斜線型,ピラミッド型,台形型,およびそれらの逆型などがあるが,なかでも逆台形のエンボス模様を彫刻したロールを用い,前記ヒートシール性樹脂の融点近傍?融点以上の温度で圧着,転写することが好ましい。また,エンボス模様は1インチ当り80?200線(パターン)が好ましい。
本発明のラベルに形成されるスリットのサイズやパターンについては,ラベルの透気度が本発明の範囲内に調整される限り特に制限されない。透気度を本発明の範囲内に調整するためには,スリットの長さは0.5?20mmであることが好ましく,1?15mmであることがより好ましい。長さが0.5mm未満のスリットや20mmを超えるスリットでは透気度を本発明の範囲内に調整しにくい傾向があり,特に20mmを超えるスリットではスリットが開いて外観の悪いラベル付き樹脂成形品を与えてしまう傾向がある。また,透気度を本発明の範囲内に調整するためには,隣り合ったスリットの中心間の距離(ピッチ)は5?25mmであることが好ましく,10?20mmであることがより好ましい。ピッチが5mm未満の場合は透気性が良すぎるために透気度を本発明の範囲内に調整しにくく,例えば自動ラベル供給装置の吸引パッドの直径が30mmの場合,前述同様に金型内にラベルを供給することが困難になる傾向がある。反対にピッチが25mmを超える場合は,透気性に起因したラベルの金型内への供給に問題はないが,透気度を本発明の範囲内に調整しにくく,空気の逃げが不十分でブリスターが発生しやすくなる。…」(【0025】?【0030】)
(イ) 引用文献3の記載
引用文献3には,以下の記載がある。
「1 対向面にキヤビテイ1a,2aを設けた分割金型1,2のキヤビテイの一部分に,透気性を有する合成樹脂シートにて構成したラベル4をはり付け,その後分割金型1,2間にブロー成形可能な合成樹脂を加熱溶融した管状パリスン3を配置してから分割金型1,2を型締めすると共に,キヤビテイ1a,2a内に密封されたパリスン3内に圧力流体を吹込み膨張してパリスン3の表面をラベル4に圧接し,このときにラベル4とパリスン3の間に介在する空気をラベル4を透過させてラベル4の表側へ透気させてラベル4をパリスン3の表面に貼着するようにしたことを特徴とするラベルを貼着した中空体の製造方法。」(特許請求の範囲)
「本発明は,ブロー成形法にて成形される成形体で,かつこの成形体の外表面にこれの成形時にラベルを貼着するようにしたラベルを貼着した中空体の製造方法に関するものである。」(1欄17?20行)
「〔発明が解決しようとする問題点〕 前掲前者の明細書にあつては、ラベルと成形品の表面との間に空気が介在してエアだまりが発生したり、ラベルにシワが発生して貼着後のラベルの外観が悪くなることがあり、また前掲後者の明細書にあつてはラベルを載置するラムを上下させなくてはならず金型自体が大がかりとなるという欠点を有するだけでなく、ラムを上げてラベルを上げるタイミングが難しく、かえつてシワを発生させる場合があつた。」(1欄最下行?2欄9行)
「本発明において使用されるラベル4は透気性を有する合成樹脂フイルムあるいは合成樹脂からなる不織布等のシートにて構成されている。…なおこのラベルにおいて,ラベルの貼着面側には通気性を妨げない程度の透気性を有する接着剤層の存在があつてもよい。」(3欄8?23行)
「また上記透気性を有する合成樹脂シートの透気度は30?1500秒/100c.cである。さらに好ましくは,50?1000秒/100c.c.である。透気度が30秒/100c.c.未満ではラベルの表面に印刷する際の印刷特性が悪く,1500秒/100c.c.を越えると空気が完全に透気しない。」(3欄24?29行)
「なお,上記透気度は,JISP8117に規定するもので,測定にあたつては,ガーレ透気度試験機を使用する。」(3欄43行?4欄1行)
(ウ) 具体的検討
上記(イ)によると,引用文献3には,インモールド成形用ラベルについて,ラベルを成形体に貼着する際にラベルと成形体との間に空気が介在しないようにするといった解決課題のもと,ラベルの透気度を特定の数値範囲(30?1500秒/100c.c)とすることで上記課題が解決できる旨,さらには当該透気度について,特定の値より低いとラベル表面に印刷する際の印刷特性が悪くなり,特定の値よりも高いと空気が透気しにくい旨の技術思想が開示されている。
また,引用発明1は,ブリスターすなわちラベルと成形体との間に空気が残存し気泡を抱き込むという問題の発生を防止すること(【0001】など)を解決課題とするものであるとされる(上記(1)ア)。
そうすると,インモールド成形時のブリスター発生を防止しうるラベルの提供を解決課題とする引用発明1において,この点で当該引用発明1と課題が共通する引用文献3に開示されている技術思想を適用すること,すなわち引用発明1のラベルの透気度を30?1500秒/100c.cの如く相違点1に係る本願補正発明の数値(10?20,000秒)の範囲内(引用文献3の透気度と本願補正発明の透気度とは,ともにJIS P8117に準拠するものである。)に設定することは,当業者であれば想到容易である。
そして,引用発明1は,成形体とラベルの間の空気やガスを,接着層のエンボスパターンの凹部に瞬時に逃がしたり分散させたりして封じ込めることでブリスターの発生を防止するものであるところ(引用文献1の【0022】),引用発明1のラベルを透気させるようにしたからといって,このことにより,引用発明1の作用(例えば,空気をエンボスパターンの凹部に瞬時に逃がしたり分散させたりすること。)が妨げられることにはならないから,引用発明1に引用文献3に開示の技術事項を適用することを阻害する事由はみあたらない。

イ 相違点2について
(ア) 引用文献2の記載
引用文献2には,以下の記載がある。
「モールド内でプラスチックパリソンをブロー成形すると同時に胴部の外面にラベルを貼着させて成るラベル付きプラスチック容器において,前記ラベルに,上下方向に並んだ斜線群を形成するように切れ目線を刻設して成ることを特徴とするラベル付きプラスチック容器。」(【請求項1】)
「【発明の属する技術分野】本発明は,モールド内でプラスチックパリソンをブロー成形すると同時に胴部の外面にラベルを貼着させて成るラベル付きプラスチック容器及びそれに用いるラベルに関するもので,より詳細には,型内ラベル貼着時におけるプラスチック容器とラベルとの接着界面における気泡の抱き込みによるフクレが解消され,ラベル付容器の外観特性を向上させ,商品価値を高めたラベル付プラスチック容器及びそれに用いるラベルに関する。」(【0001】)
「【発明が解決しようとする課題】型内貼着用ラベルにおけるこれら従来技術の提案は,容器外表面とラベル裏面との間に残留しようとする空気を,ミシン目或いは針穴を通して,外部に逃がすことが可能となり,前述したフクレを防止するという点では一応の成功を収めているが,ラベルの外観特性やハンドリング性の点では未だ十分満足しうるものではない。」(【0010】)
「【発明の実施形態】[作用]本発明の型内貼着用ラベルでは,ラベルに上下方向に並んだ斜線群から成る切れ目線を刻設したことが特徴であり,これにより,ラベルの型内貼着を行うプラスチック容器に,器壁に肉厚分布があったり,器壁コーナーの曲率が小さい場合など,容器部材が形成される際型接触による冷却速度が均一にならない場合にも,該当する箇所に切れ目線の加工を施すことにより気泡のない優れた外観が得られる。
本発明において,ラベルに設ける切れ目線は,ラベルを上下に貫通しているという点では,従来の技術にみられる孔と共通するところがあるが,孔の場合には測定可能な開口面積を有するのに対して,切れ目線の場合には,長さを有するとしても開口面積は実質的に存在しない点で相違している。」(【0014】?【0015】)
「更に,前記斜線群の縦乃至横方向におけるピッチ(HD,WD)が2乃至10mm及び切れ目線の長さが0.5乃至5mmの範囲にあることが好ましく,切れ目線の長さが上記範囲よりも小さいか或いはピッチが上記範囲よりも大きい場合には,気泡の抜けが不十分となる傾向がある。一方,切れ目線の長さが上記範囲よりも大きい場合には,ラベルの四隅で切れ目線が開き,外観不良となる傾向がある。」(【0025】)
「図9のラベル3はフィルム基材10の内面側に熱接着性を有する接着剤樹脂層13がコーティング等の手段で施されている。」(【0030】)
(イ) 具体的検討
上記(ア)によると,引用文献2には,インモールド成形用ラベルについて,ラベルを成形体に貼着する際にラベルと成形体との間に空気が介在しないようにするといった解決課題のもと,ラベルを上下に貫通する切れ目線(スリット)を形成することで成形体とラベルとの間に残留する空気を外部に逃がし,もって上記課題を解決する旨,さらには当該スリットの構成について,長さ0.5?5mm,ピッチ2?10mmとする旨の技術事項の開示がある。
また,上述のとおり(上記ア(ウ)),引用発明1のラベルは,ブリスターすなわちラベルと成形体との間に空気が残存し気泡を抱き込むという問題の発生を防止することを解決課題とするものである。
そうすると,インモールド成形時のブリスター発生を防止しうるラベルの提供を解決課題とする引用発明1において,その課題を解決するべく,引用文献2に開示されている技術思想を適用すること,すなわち引用発明1のラベルについて,ラベルを貫通するスリットを形成し,当該スリットの長さを0.5?5mmの如く相違点2に係る本願補正発明の数値(0.5?20mm)の範囲内とし,当該スリットのピッチを2?10mmとすること(本願補正発明とは,5?10mmの範囲で一致する。)は,当業者であれば想到容易である。
この点に関し,請求人は,引用発明1には引用文献2に記載の事項を適用することを阻害する記載が存在する,具体的には,引用文献1の4欄1?4行の記載からすれば,引用発明1において,接着層から基材フィルムを貫通する貫通孔があると空気やガスが封じ込めることができなくなるためブリスター発生を防止できなくなる旨主張する(審判請求書8頁)。
しかし,請求人の上記主張は,採用の限りでない。
すなわち,引用発明1は,成形体とラベルの間の空気やガスを,特定の部位に封じ込めることに代えて,接着層のエンボスパターンの凹部に瞬時に逃がしたり分散させたりして封じ込めることでブリスターの発生を防止するものであるから,引用発明1のラベルにこれを貫通するスリットを設けたからといって,上記空気を上記凹部に瞬時に逃がしたり分散させたりする作用は何ら妨げられないし,そもそもブリスターの発生防止という引用発明1の課題の達成が没却されるものでもない。引用発明1に引用文献2に開示の技術事項を適用することを阻害する事由はみあたらない。

ウ 本願補正発明の効果(相違点1?2に係る構成の技術的意義)
上記ア(ア)の本願明細書の記載に照らすと,本願補正発明において,相違点1に係る構成は,下限値(10秒)については,自動ラベル供給装置における吸引パッドによるラベルの取り出しやすさ,上限値(20,000秒)については,成形時の空気の逃げやすさを考慮して設定されたものであるといえる。また,相違点2に係る構成は,長さの上限値(20mm)については,スリットが開いて外観の悪い完成品とならないように考慮して設定されたものであり,ピッチについては,所期の透気度を調整するためであったり,吸引パッドによるラベルの取り出しやすさを考慮して設定されたものであるといえる。
しかし,相違点1?2に係る構成の数値範囲には,その臨界的意義を見いだすことができないものである。
そして,相違点1?2の構成を有することによる本願補正発明の効果は,引用発明1及び引用文献2?3に記載の事項から予測しうる範囲のものか自明のものであって,何ら格別でないといわざるを得ない。

6 理由2
(1) 引用発明2
上記5(3)イ(ア)のとおり,引用文献2には,その請求項1に記載されたラベルについて,当該ラベルはフィルム基材と接着剤樹脂層から構成されたものである旨(【0030】),上下に貫通する切れ目線が形成されており,当該切れ目線はその長さが0.5?5mm,ピッチが2?10mmとする旨(【0025】)の記載があることなどを総合すると,引用発明2は次のとおりのものと認める。
「モールド内でプラスチックパリソンをブロー成形すると同時に胴部の外面に貼着させるためのフィルム基材と接着剤樹脂層よりなるラベルであって,上下方向に並んだ斜線群を形成するようにラベルを貫通する切れ目線が刻設されており,当該切れ目線の長さが0.5?5mmであり,かつ隣り合った切れ目線の間のピッチが2?10mmであるラベル」

(2) 対比
本願補正発明と引用発明2とを対比すると,引用発明2のモールド内で胴部外面に貼着させるための「ラベル」は本願補正発明の「インモールド成形用ラベル」と同義であるのは明らかであり,引用発明2の「フィルム基材」は本願補正発明の「熱可塑性樹脂フィルム基材層」に,「接着剤樹脂層」は「ヒートシール性樹脂層」に,「切れ目線」は「スリット」にそれぞれ相当し,両者は,スリットの長さが「0.5?5mm」の範囲で,スリット間のピッチが「5?10mm」の範囲で実質的に重複する。また,引用発明2のラベルは,空気を外部に逃がすためにスリットが形成されているから,ある程度の透気性,すなわち,特定の透気度を有しているといえる。そうすると,両者の一致する点(一致点),相違する点(相違点3?4)はそれぞれ次のとおりである。
・ 一致点
「熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,ラベルを貫通するスリットが形成されており,前記スリットの長さが0.5?5mmであり,かつ隣り合ったスリット間のピッチが5?10mmである特定の透気度を有するインモールド成形用ラベル。」
・ 相違点3
「本願補正発明はそのラベルの透気度が10?20,000秒であるのに対し,引用発明2は,透気度について,具体的数値の特定がない点」
・ 相違点4
「本願補正発明はヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであるのに対し,引用発明2はそのような特定がない点」

(3) 相違点についての判断
上記相違点3?4について,以下検討する。
ア 相違点3について
上記5(3)ア(ウ)で述べたように,引用文献3には,インモールド成形用ラベルについて,ラベルを成形体に貼着する際にラベルと成形体との間に空気が介在しないようにするといった解決課題のもと,ラベルの透気度を特定の数値範囲(30?1500秒/100c.c)とすることで上記課題が解決できる旨,さらには当該透気度について,特定の値より低いとラベル表面に印刷する際の印刷特性が悪くなり,特定の値よりも高いと空気が透気しにくい旨の技術思想が開示されている。
また,引用文献2の記載によれば(上記5(3)イ(イ)),引用発明2のラベルは,ラベルを成形体に貼着する際にラベルと成形体との間に空気が介在しないようにするといった解決課題のもと,ラベルを貫通するスリットを形成することで成形体とラベルとの間に残留する空気を外部に逃がし,もって上記課題を解決するものである。
そうすると,インモールド成形時におけるラベルと成形体との間の気泡の抱き込みを防止することを解決課題とする引用発明2において,この点で引用発明2と課題が共通する引用文献3に開示されている技術事項を採用すること,すなわち,上述したように引用発明2のラベルは特定の透気度を有しているところ,その透気度について特に引用文献3に記載の範囲(30?1500秒/100c.c)に設定することは,当業者であれば想到容易である。

イ 相違点4について
上記5(1)アで摘記したように,引用文献1には,ブリスターの発生防止の観点から,ラベルの接着層(ヒートシール性樹脂層)について,その表面の中心線平均粗さ(Ra)を0.5?5μmとする旨の記載がある(【0007】)。
そうすると,引用発明2と課題が共通する引用文献1に開示されている技術思想を適用すること,すなわち,引用発明2の接着剤樹脂層(ヒートシール性樹脂層)について,その表面の中心線平均粗さ(Ra)を0.5?5μmとすることは,当業者が格別困難なく想到しうることである。

ウ 本願補正発明の効果(相違点3?4に係る構成の技術的意義)
上記5(3)ウで述べたことと同旨である。すなわち,相違点3?4に係る構成の数値範囲には,その臨界的意義を見いだすことができないし,相違点3?4の構成を有することによる本願補正発明の効果は,引用発明2及び引用文献1もしくは3に記載の事項から予測しうる範囲のものか自明のものであって,何ら格別でない。

7 結論
以上のとおりであるから(本願補正発明は,上記5?6で述べた理由1?2のとおり,いわゆる進歩性を欠くから),本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり,本件補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年6月29日に提出された手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,前記ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであり,ラベルの透気度が10?20,000秒であり,かつラベルを貫通するスリットが形成されていることを特徴とするインモールド成形用ラベル。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,要するに,本願発明は,引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。(なお,原査定の拒絶の理由は,上述のほか,本願の請求項5及び6に係る発明は上記規定により特許を受けることができないという理由も含む。)

3 引用発明1及び同2
引用発明1については上記第2_5(1)イにおいて,引用発明2については同6(1)において認定のとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,ラベルを貫通するスリットについて,本願補正発明との比較において,「スリットの長さが0.5?20mmであり,かつ隣り合ったスリット間のピッチが5?25mmである」との限定が付加されていないものである。(上記第2_2参照)
そうすると,本願発明の特定事項をすべて含みさらに上記限定が付加されたものに相当する本願補正発明が,上述のとおり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである以上,本願発明も,同様の理由により,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるといえる。

5 むすび
以上のとおり,原査定の拒絶の理由は妥当なものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-01 
結審通知日 2012-05-08 
審決日 2012-05-23 
出願番号 特願2000-226451(P2000-226451)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 保倉 行雄田口 昌浩  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 須藤 康洋
富永 久子
発明の名称 インモールド成形用ラベルおよび該ラベル付き樹脂成形品  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
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