• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1259406
審判番号 不服2011-12101  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-07 
確定日 2012-07-05 
事件の表示 特願2001-115342「ユニット式建物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月23日出願公開、特開2002-309678〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成13年4月13日の出願であって,平成23年5月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月7日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされたものである。
その後,同年9月7日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年11月4日付けで回答書が提出された。


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年6月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成23年6月7日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲の請求項1を,次のように補正しようとする補正事項を含むものである。(補正前,平成23年1月7日付けの手続補正書参照。)
「【請求項1】上下に積層される上階ユニットおよび下階ユニットを含む複数の建物ユニットで構成され,下階部分には前記下階ユニットの側面にピロティ状空間が形成され,このピロティ状空間の上部に屋根構造が形成されたユニット式建物であって,前記ピロティ状空間に面した下階ユニットの上部に上階ユニットが設置され,この上階ユニットの床部に,ピロティ状空間側に水平に延びる前記ピロティ状空間の上部を覆うピロティパネルが取り付けられ,前記ピロティパネルの建物屋外側の下面には,ピロティパネルを下側から支持するポーチ柱が設置され,このピロティパネルによって前記屋根構造が支持されるとともに,前記屋根構造は,上階ユニットの上部と前記ピロティパネルの屋外側端縁とに設けられる屋根受け具により支持されることを特徴とするユニット式建物。」

上記補正事項は,請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ピロティパネル」について「ピロティパネルの建物屋外側の下面には,ピロティパネルを下側から支持するポーチ柱が設置され」と限定し,「屋根構造」について「屋根構造は,上階ユニットの上部とピロティパネルの屋外側端縁とに設けられる屋根受け具により支持される」と限定したものと認められるから,本件補正は,少なくとも,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。

そこで,本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしているか,について以下に検討する。

2.独立特許要件違反(特許法第29条第2項違反)
2-1.引用刊行物
(1)刊行物1
本願出願前に頒布された刊行物である,特開2000-336754号公報(以下,「刊行物1」という。)には,以下の記載がある(下線は当審にて付与。)。
(1a)「【請求項1】 ユニット建物の上階ユニットの一部を構成すると共に,前記ユニット建物の下階ユニットの上からオーバーハングするようにして組立てられるスペースユニットであって,天井面が1方向に少なくとも大部分が傾斜して傾斜屋根兼建物側面を構成するようにしたことを特徴とする傾斜天井スペースユニット。」

(1b)「【0009】図1中,11は全体的形状が直方体をなす標準の建物ユニットであって,その6個が組合わされて一階部分を構成し,それぞれコンクリート基礎12の上に設置されている。他方,二階部分はこの標準建物ユニット11の5個と,この標準建物ユニット11を1/2にカットした形状の1/2ユニット13の1個と,本発明に係わる傾斜天井スペースユニット14の1個とから構成されている。さらに詳述すると,傾斜天井スペースユニット14は図2に明示するように,その一側が1/2ユニット13と連通し,その底面14bのほぼ半分が一階部分を構成する1個の標準建物ユニット11の上に整合,載置されるようにして組立てられている。従って,傾斜天井スペースユニット14の底面14bの他の半分はこの下階ユニット11の上からオーバーハングし,雨水,日照を避ける庇の役目を果たすようになっている。・・・」

(1c)「【0010】傾斜天井スペースユニット14について更に詳述すると,この傾斜天井スペースユニット14は,基本的に,直方体を一方の上部エッジ部分から対角線状に斜め下方の下部エッジ部分に向けて斜めにカットした形状をなしている。図4は,この傾斜天井スペースユニット14の基本骨格を示すもので,四角枠状の底枠部15と,その一辺である第1の下梁16の両端に立設された一対の柱17と,この一対の柱17の上端間を連結固定する上梁18と,前記第1の下梁16と対向する第2の下梁19の両端と前記一対の柱17の上端間とをそれぞれ連結固定する傾斜梁20とからなっている。・・・」

(1d)「【0014】図3は前記傾斜天井スペースユニット14の他の使用例を概略的に示すものであるが,この場合,前記傾斜天井スペースユニット14は,その底面14b全体が一階部分の標準建物ユニット11からはみ出し,その外側両端部が一対のポール23により支えられ,その内側側面が二階ユニット11の1側と連通するようにして接合されている。従って,傾斜天井スペースユニット14の下階ユニット11からオーバーハング部分が大きくなり,車庫あるいは玄関部の庇の役目を果たすことができる。・・・」

(1e)
【図3】



記載(1d),(1e)からみて,「車庫あるいは玄関部」は底面14bの下部であって,傾斜天井スペースユニット14が接合された二階の標準建物ユニット11の下部の,一階の標準建物ユニット11の側面に形成されていると認められ,傾斜天井スペースユニット14は,外側両端部の下面が一対のポール23により支えられていると認められる。さらに,記載(1b),(1e)からみて,二階の標準建物ユニットは一階の標準建物ユニット11の上に積み上げられていると認められる。
そうすると,上記記載(1a)?(1e)からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されていると認められる(以下,「刊行物1記載の発明」という。)。
「複数の一階と二階の標準建物ユニット11と,傾斜天井スペースユニット14で構成されるユニット建物であって,
二階の標準建物ユニットは一階の標準建物ユニット11の上に積み上げられ,
傾斜天井スペースユニット14は,底面14b全体が一階の標準建物ユニット11からはみ出し,外側両端部の下面が一対のポール23により支えられ,内側側面が二階の標準建物ユニット11の1側と連通するように接合されて,当該接合された二階の標準建物ユニット11の下部の一階の標準建物ユニット11の側面に形成される車庫あるいは玄関部の庇の役目を果たす,
ユニット建物。」

(2)刊行物2
本願出願前に頒布された刊行物である,特開2000-154598号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面と共に,以下の記載がある(下線は当審にて付与。)。
(2a)「【請求項1】 間にオープンスペースを形成して複数の建物ユニットを配置するとともに前記オープンスペースを上方から覆って屋根パネルを設けるユニット式建物における屋根パネルの施工方法であって,
前記オープンスペースを覆う軒天パネルを備え,
この軒天パネルを前記オープンスペースの上方を覆って前記建物ユニットに取り付け,
その後,前記屋根パネルを前記軒天パネルに取り付けることを特徴とするユニット式建物における屋根パネルの施工方法。
【請求項2】 請求項1記載のユニット式建物における屋根パネルの施工方法において,前記軒天パネルは枠組みを備えて形成され,この枠組みの上面には前記屋根パネルを支持する屋根パネル支持具が設けられ,下面には軒天材が貼付けられていることを特徴とするユニット式建物における屋根パネルの施工方法。」

(2b)「【0013】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。 図1?6には,本発明の第1の実施形態が示されている。図1に示すように,軒天パネル1を取付けたユニット式建物2は,複数個の下階および上階建物ユニット3,4を平面コ字形となるように配置するとともに,それらの建物ユニット3,4の上に傾斜する屋根パネル5等を組合わせて構成されている。・・・そして,前記コ字形で囲まれた部分はオープンスペース7とされ,このオープンスペース7内には,上階建物ユニット4用の階段ユニット30が設置されるとともに,オープンスペース7の上部を塞ぐ軒天パネル1が建物ユニット4,4に跨がって,かつ,A支持部8とB支持部9とで支持されて設けられている。
【0014】図2に示すように,軒天パネル1は,長辺梁10A,短辺梁10Bおよび小梁11で形成された枠組みであるパネル本体10と,このパネル本体10の上面四隅に設けられた取付けブラケット12,取付けプレート13,および,パネル本体10の前記取付けブラケット12を取付けた長辺梁10Aに設けられた屋根パネル受け支持具14とを備えて構成され,パネル本体10の下面には,板状の軒天材15が貼付けられている。・・・」

(2c)「【0016】屋根パネル受け支持具14は,長辺梁10Aに固着される底辺部14Aと,そこから立ち上がる垂直部14Bと,屋根の傾斜と等しい傾きの傾斜部14Cとを有して形成されており,図6に示すように,傾斜部14Cの上面で屋根パネル5を支持するようになっている。
【0017】図3には,軒天パネル1の取付け部の詳細が示されている。軒天パネル1は,取付けブラケット12が建物ユニット4の柱20に支持され,接合プレート13は,3つの建物ユニット4A,4B,4Cの3本の柱20に支持されている。すなわち,取付けブラケット12のあるA支持部8では,図5に示すように,リブ21で補強された断面略L字形状のブラケット22が建物ユニット4Aの柱20に取付けられており,このブラケット22の水平部にピン23が立設されている。このピン23には前記取付けブラケット12のピン孔12Aが係合可能となっている。・・・」

(2d)「【0019】このような軒天パネル1をユニット式建物2に取付けるには次のような手順で行う。まず,工場で,長辺梁10A ,短辺梁10B 等で枠組みしたパネル本体10を形成する。このパネル本体10の四隅には取付けブラケット12および取付けプレート13を取付け,上面には屋根パネル受け支持具14を取付け,さらに,下面に軒天材15を貼付けて軒天パネル1を形成する。
【0020】この軒天パネル1を,他の建物ユニット4等とともに建設現場に輸送し,そこで建物ユニット4等を適宜組合わせる。この際,建物ユニット4等を平面コ字形となるように配置する。上下階建物ユニット4,3が組合わされ,階段ユニット30等も設置されたら,軒天パネル1をオープンスペース7内に配置し,A支持部8およびB支持部9で支持させて設置する。この際,A支持部8では,建物ユニット4の柱20に取付けたブラケット22のピン23に,取付けブラケット12のピン孔12Aを差し込み,B支持部9では,3つの建物ユニット4A,4B,4Cのそれぞれの柱20のピン25,26,27に取付けプレート13の3つのピン孔13A,13B,13Cに差し込んで取付け,固定装置で固定して軒天パネル1を設置する。次いで,屋根パネル5を,軒天パネル1の屋根パネル受け支持具14および建物ユニット4Aに取付けてある図示しない屋根パネル受け支持具等に支持させて取付ける。」

(2e)「【0022】また,軒天パネル1の取付けプレート13は隣合う上階建物ユニット4A,4B,4C等を連結する接合プレートの役割りを兼ねているので,接合プレートを別途準備しなくてもよく,その分,材料費や製作費等を節約できる。さらに,軒天パネル1は四隅で支持されているので,安定しているとともに,十分な強度を有しており,屋根パネル5が屋根パネル受け支持具14に載せられても確実に支持できる。また,取付けブラケット12は建物ユニット4Aの柱20に取付けられているが,外壁24程度の長さ寸法とされているので,建物ユニット4A等の輸送時に輸送制限等に触れる虞もない。」

(2f)
【図1】



2-2.補正発明と刊行物1記載の発明との対比
刊行物1記載の発明と補正発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の「ユニット建物」は,補正発明の「ユニット式建物」に相当し,以下同様に,
「二階の標準建物ユニット11」は,「上階ユニット」及び「建物ユニット」に,
「一階の標準建物ユニット11」は,「下階ユニット」及び「建物ユニット」に,
「一階のユニット11の側面に形成される車庫あるいは玄関部」は庇の下部であるから,「下階ユニットの側面」に形成される「ピロティ状空間」に,
「外側両端部の下面」は,「建物屋外側の下面」に,
「ポール23」は,「ポーチ柱」に,
それぞれ相当する。
ここで,刊行物1記載の発明は「二階の標準建物ユニットは一階の標準建物ユニット11の上に積み上げられ」ていることから,補正発明の「上下に積層される上階ユニットおよび下階ユニット」に相当する構成を備えていると認められる。
また,刊行物1記載の発明の「傾斜天井スペースユニット14」と,補正発明の「ピロティパネル」,「屋根構造」及び「屋根受け具」は,「ピロティ上部構造」である点で共通し,
刊行物1記載の発明の「傾斜天井スペースユニット14は,底面14b全体が一階の標準建物ユニット11からはみ出し,外側両端部の下面が一対のポール23により支えられ,内側側面が二階のユニット11の1側と連通するように接合されて,当該接合された二階の標準建物ユニット11の下部の一階の標準建物ユニット11の側面に形成される車庫あるいは玄関部の庇の役目を果たす」との構成と,
補正発明の「ピロティ状空間の上部に屋根構造が形成されたユニット式建物であって,ピロティ状空間に面した下階ユニットの上部に上階ユニットが設置され,この上階ユニットの床部に,ピロティ状空間側に水平に延びるピロティ状空間の上部を覆うピロティパネルが取り付けられ,ピロティパネルの建物屋外側の下面には,ピロティパネルを下側から支持するポーチ柱が設置され,ピロティパネルによって屋根構造が支持されるとともに,屋根構造は,上階ユニットの上部とピロティパネルの屋外側端縁とに設けられる屋根受け具により支持される」との構成とは,
「ピロティ状空間の上部に屋根構造が形成されたユニット式建物であって,ピロティ状空間に面した下階ユニットの上部に上階ユニットが設置され,この上階ユニットに屋根構造を含むピロティ上部構造が取り付けられ,ピロティ上部構造の建物屋外側の下面には,ピロティ上部構造を下側から支持するポーチ柱が設置される」点で共通している。

したがって,刊行物1記載の発明と補正発明は以下の点で一致している。
「上下に積層される上階ユニットおよび下階ユニットを含む複数の建物ユニットで構成され,下階部分には前記下階ユニットの側面にピロティ状空間が形成され,このピロティ状空間の上部に屋根構造が形成されたユニット式建物であって,前記ピロティ状空間に面した下階ユニットの上部に上階ユニットが設置され,この上階ユニットに屋根構造を含むピロティ上部構造が取り付けられ,ピロティ上部構造の建物屋外側の下面には,ピロティ上部構造を下側から支持するポーチ柱が設置されるユニット式建物。」

そして,下記の点で相違している。
<相違点>
ピロティ上部構造が,
補正発明では,「ピロティパネル」,「屋根構造」及び「屋根受け具」であって,「上階ユニットの床部に,ピロティ状空間側に水平に延びるピロティ状空間の上部を覆うピロティパネルが取り付けられ,ピロティパネルの建物屋外側の下面には,ピロティパネルを下側から支持するポーチ柱が設置され,このピロティパネルによって屋根構造が支持されるとともに,屋根構造は,上階ユニットの上部と前記ピロティパネルの屋外側端縁とに設けられる屋根受け具により支持される」ものであるのに対し,
刊行物1記載の発明では,「傾斜天井スペースユニット14」であって,「底面14b全体が一階の標準建物ユニット11からはみ出し,外側両端部の下面が一対のポール23により支えられ,内側側面が二階のユニット11の1側と連通するように接合され」るものである点。

2-3.判断
刊行物2には,記載(2a)からみて,「オープンスペースを覆う軒天パネルを備え,軒天パネルをオープンスペースの上方を覆って建物ユニットに取り付け,屋根パネルを軒天パネルに取り付けたユニット式建物における屋根パネルの施工方法」が記載されており,軒天パネルをオープンスペースの上方を覆って建物ユニットに取り付けることにより,ピロティ状空間が形成されているといえる。また,記載(2b)の「軒天パネル1は,長辺梁10A,短辺梁10Bおよび小梁11で形成された枠組みであるパネル本体10と,このパネル本体10の上面四隅に設けられた取付けブラケット12,取付けプレート13,および,パネル本体10の前記取付けブラケット12を取付けた長辺梁10Aに設けられた屋根パネル受け支持具14とを備えて構成され,パネル本体10の下面には,板状の軒天材15が貼付けられている。」との点,及び,記載(2e)の「軒天パネル1は四隅で支持されているので,安定しているとともに,十分な強度を有しており,屋根パネル5が屋根パネル受け支持具14に載せられても確実に支持できる。」との点からみて,「軒天パネル1」はパネル本体10により屋根構造を支持していると認められるから補正発明の「ピロティパネル」に相当し,「軒天パネル1の屋根パネル受け支持具14」も屋根構造を支持していると認められるから,「ピロティパネルの屋外側端縁に設けられる屋根受け具」に相当する。
刊行物1記載の発明も刊行物2のユニット式建物も共にユニットを用いた建物でありながら,ユニットのフレーム内をピロティとするのではなく,ユニットのフレーム外にピロティ状空間を形成するものであって,ピロティ上部構造を,刊行物1記載の発明のように,傾斜天井スペースユニットで構成するか,刊行物2のユニット式建物のように,軒天パネルと屋根パネルにより構成するかは,当業者が必要に応じて適宜選択しうる事項と認められるから,刊行物1記載の発明の傾斜天井スペースユニットに代えて,刊行物2の軒天パネルと屋根パネル等を採用することは当業者が容易に想到したことである。そして,刊行物1記載の発明の,傾斜天井スペースユニット14の内側側面が二階のユニット11の1側と連通するように接合され,外側両端部の下面が一対のポール23により支えられている構成において,傾斜天井スペースユニット14に代えて刊行物2の軒天パネルと屋根パネルを採用するに際しては,軒天パネルは二階のユニット11の下方に位置することは明らかであるうえ十分な強度を有しているから,軒天パネルを上階ユニットの床部に水平に取り付けるとともにポーチ柱により下側から支持して,軒天パネルにより屋根構造を支持することは当業者が適宜なし得たことであり,屋根パネルの上端は二階のユニット11の上方に位置することも当然に想定されるから,上階ユニットの上部に屋根受け部により取り付けた屋根構造とすることも,当業者が適宜なし得たことである。

そして,補正発明の作用効果は,刊行物1および2記載の発明から予測できる程度のものである。

したがって,補正発明は,刊行物1および2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.補正の却下の決定のむすび
以上より,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていないものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本願発明
1.本願発明
平成23年6月7日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1?7に係る発明は,平成23年1月7日付けで手続補正された請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち,請求項1に係る発明は,以下のとおりのものである。
「【請求項1】上下に積層される上階ユニットおよび下階ユニットを含む複数の建物ユニットで構成され,下階部分には前記下階ユニットの側面にピロティ状空間が形成され,このピロティ状空間の上部に屋根構造が形成されたユニット式建物であって,前記ピロティ状空間に面した下階ユニットの上部に上階ユニットが設置され,この上階ユニットの床部に,ピロティ状空間側に水平に延びる前記ピロティ状空間の上部を覆うピロティパネルが取り付けられ,このピロティパネルによって前記屋根構造が支持されていることを特徴とするユニット式建物。」(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2.引用刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された,上記刊行物1には,「第2 2.2-1.(1)」に記載したとおりの発明が記載されているものと認められる。

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された,上記刊行物2には,「第2 2.2-1.(2)」に記載したとおりの発明が記載されているものと認められる。

3.対比・判断
本願発明は,前記「第2」で検討した補正発明から,「ピロティパネル」の限定事項である「ピロティパネルの建物屋外側の下面には,ピロティパネルを下側から支持するポーチ柱が設置され」との構成と,「屋根構造」の限定事項である「屋根構造は,上階ユニットの上部とピロティパネルの屋外側端縁とに設けられる屋根受け具により支持される」との構成を省いたものである。
そうすると,本願発明を特定するために必要な事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が,前記「第2 2.2-3.」に記載したとおり,刊行物1および2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1および2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


ここで,以上では本件補正が補正前の請求項1に係る発明を限定したものとして検討したが,本件補正が補正前の請求項1および2に係る発明を削除し,請求項3に係る発明を請求項1の補正発明としたものとして検討したとしても,補正発明は上記の「第2」で検討したように,刊行物1および2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第4 むすび
以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-12 
結審通知日 2012-04-24 
審決日 2012-05-15 
出願番号 特願2001-115342(P2001-115342)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
P 1 8・ 571- Z (E04B)
P 1 8・ 575- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 横井 巨人
中川 真一
発明の名称 ユニット式建物  
代理人 土井 清暢  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ