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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1259418
審判番号 不服2011-25351  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-24 
確定日 2012-07-05 
事件の表示 特願2009-129435「電気自動車用充電スタンド」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 9日出願公開,特開2010-279181〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は,平成21年5月28日の出願であって,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「電気自動車を駐車する地面に立設される筒状のスタンド本体と,電気自動車を充電するための充電ケーブルの電源プラグが挿抜自在に接続される複数のコンセントと,スタンド本体の周面に対して回動自在に設けられた複数の扉とを備え,
スタンド本体は,複数の扉によって個別且つ開閉自在に閉塞される複数の収納空所を内部に有し,これら複数の収納空所内にそれぞれコンセントが配設されていることを特徴とする電気自動車用充電スタンド。」

2.引用例
(1)これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-143370号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
この発明は,充電装置,電動車両および充電システムに関し,特に,電動車両に搭載され,車両外部の商用電源から蓄電装置を充電可能な充電装置の充電方法に関する。」

・「【0043】
入力ポート50は,商用電源55からの商用電力をハイブリッド自動車100に入力するための入力端子である。入力ポート50は,商用電源55のコンセントに接続され,たとえば,自宅の電源コンセントに接続される。」

・「【0068】
[実施の形態2]
実施の形態2では,複数台の電動車両を充電可能な充電システムの構成が示される。
【0069】
図6は,この発明の実施の形態2による充電システムを概略的に示す全体ブロック図である。なお,この図6では,2台の電動車両が充電される場合が代表的に示されるが,充電される電動車両は3台以上であってもよい。
【0070】
図6を参照して,この充電システム200は,ハイブリッド自動車100A,100Bと,充電ステーション80と,商用電源55とを備える。ハイブリッド自動車100A,100Bの各々は,入力ポート50Aによって充電ステーション80に接続され,商用電源55から供給される商用電力を充電ステーション80から電力入力ラインACL1,ACL2を介して受ける。また,ハイブリッド自動車100A,100Bの各々は,搭載される蓄電装置のSOCを算出し,その算出したSOCを信号線SGLを介して充電ステーション80へ出力する。
【0071】
充電ステーション80は,商用電源55から商用電力を受け,その受けた商用電力をハイブリッド自動車100A,100Bへ供給する。」

・「【0075】
入力ポート50Aは,制御装置60Aから信号線SGLを介して受ける蓄電装置BのSOCを図示されない充電ステーション80へ出力する。なお,入力ポート50Aのその他の構成は,図1に示される入力ポート50と同じである。」

・「【0088】
また,上記においては,この発明による電動車両の一例としてハイブリッド自動車の場合が示されたが,この発明の適用範囲は,ハイブリッド自動車に限定されるものではなく,電気自動車(Electric Vehicle)や,燃料電池(Fuel Cell)と商用電力を用いて充電可能な蓄電装置とを搭載した燃料電池車なども含むものである。」

・図6には,充電ステーション80のステーション本体が地面に立設される態様が示され,また,ステーション本体の外面の縦方向に配設された2つの位置で,電力入力ラインACL1,ACL2の2つの入力ポート50Aが充電ステーション80に接続される態様が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「電動車両100A,100Bを駐車する地面に立設されるステーション本体と,電動車両100A,100Bを充電するための電力入力ラインACL1,ACL2の入力ポート50Aが接続される2つのコンセントとを備え,
ステーション本体は,外面の縦方向に2つのコンセントが配設されている充電ステーション80。」

(2)同じく,引用された特開平9-107605号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気自動車に充電を行うための充電システムに関する。」

・「【0004】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので,電気自動車への充電中に他人が充電システムに触れて不正な行為を行うことを防止できる電気自動車充電システムを提供することを目的とする。」

・「【0013】
【発明の実施の形態】以下,本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】図1は一般的な車庫の設置形態を示した平面図である。家屋Hの周りにフェンス11が設けられ,家屋Hの玄関へ連なる門扉12には周知の呼び鈴装置の押しボタンスイッチ13が設けられており,その押しボタンスイッチ13をオン操作することによってドアチャイム14が鳴動する。家屋Hに隣接して車庫15が設けられ,フェンス11及び門扉16にて道路側から仕切られている。
【0015】車庫15は家屋Hの勝手口17に連なり,この勝手口17の外側部分に充電ボックス20が取り付けられている。この充電ボックス20は,図2,図3に示すように,本体ケース21の前面に防水扉22を開閉可能に設けてなり,その防水扉22に設けたハンドル22aにて開閉操作可能である。充電ボックス20内には,図示しない充電用電源に連なる充電スイッチ23及び充電コンセント24が設けられるとともに,防水扉22の開放を検出してオン動作する防犯スイッチに相当する扉スイッチ25と錠装置26が設けられている。錠装置26は車庫15に駐車された電気自動車Vの運転用キーKにて施錠及び解錠できるようになっており,解錠されると解錠スイッチ27(図4にのみ図示)がオン動作する。
【0016】また,充電コンセント24には,電源ケーブル28のプラグ29が接続可能で,その電源ケーブル28の先端には電気自動車Vの受電コネクタ(図示せず)に接続される給電コネクタ30が設けられている。」

・「【0018】次に,上記構成の作用について説明する。車庫15に駐車した電気自動車Vに充電するには,充電ボックス20の防水扉22を開放し,電源ケーブル28のプラグ29を充電コンセント24に差し込み,給電コネクタ30を電気自動車Vの受電コネクタに嵌合接続する。そして,電気自動車Vの運転用キーKにて錠装置26を施錠し,充電スイッチ23をオン操作して防水扉22を閉じる。これにて,電気自動車Vの充電が行われる。なお,この状態では,錠装置26が施錠されて解錠スイッチ27は閉じているが,センサスイッチ31及び扉スイッチ25の双方ともオフしているから,リレーコイル32は断電されており,リレースイッチ33は開放してドアチャイム14は鳴動しない。
【0019】充電の終了後は,電気自動車Vの運転用キーKにて錠装置26を解錠し,防水扉22を開放して充電スイッチ23をオフ操作し,電源ケーブル28のプラグ29を充電コンセント24から抜き出すとともに,給電コネクタ30を電気自動車Vの受電コネクタから外せば良い。
【0020】さて,電気自動車Vの充電中において,万一,他人が車庫15に侵入して充電ボックス20の防水扉22を開放したとする。すると,これに基づいて扉スイッチ25がオン作動するため,リレーコイル32が励磁され,リレースイッチ33が閉じることにより,ドアチャイム14が鳴動する。これにて,他人が電気自動車の充電システムを無断で操作したことが報知されるから,不法行為を未然に防止することができる。」

・図3には,本体ケース21の前面に対して開閉可能に設けられた防水扉22を備え,本体ケース21は,防水扉22によって開閉可能に閉塞される収納空所を内部に有し,この収納空所内に充電コンセント24が配設されている充電ボックス20が示されている。

3.対比
そこで,本願発明と引用発明とを対比する。

まず,後者の「電動車両」は,引用例1の【0088】段落の記載によれば,電気自動車を含むから,前者の「電気自動車」に相当している。

続いて,後者の「ステーション本体」と前者の「筒状のスタンド本体」とは,「スタンド本体」との概念で共通している。

次に,後者の「電力入力ラインACL1,ACL2」は前者の「充電ケーブル」に,後者の「入力ポート50A」は前者の「電源プラグ」に,後者の「接続される」態様は前者の「挿抜自在に接続される」態様に,後者の「2つのコンセント」は前者の「複数のコンセント」に,それぞれ相当している。

また,後者の「ステーション本体は,外面の縦方向に2つのコンセントが配設されている」とする態様と前者の「スタンド本体は,複数の扉によって個別且つ開閉自在に閉塞される複数の収納空所を内部に有し,これら複数の収納空所内にそれぞれコンセントが配設されている」とする態様とは,「スタンド本体は,所定箇所に複数のコンセントが配設されている」との概念で共通している。

さらに,後者の「充電ステーション80」は前者の「電気自動車用充電スタンド」に相当している。

したがって,両者は,
「電気自動車を駐車する地面に立設されるスタンド本体と,電気自動車を充電するための充電ケーブルの電源プラグが挿抜自在に接続される複数のコンセントとを備え,
スタンド本体は,所定箇所に複数のコンセントが配設されている電気自動車用充電スタンド。」
である点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
スタンド本体に関し,本願発明は,「筒状の」ものであるのに対し,引用発明は,かかる形状が特定されていない点。
[相違点2]
本願発明は,「スタンド本体の周面に対して回動自在に設けられた複数の扉」を備えているのに対し,引用発明は,かかる扉を備えていない点。
[相違点3]
スタンド本体の「所定箇所に複数の」コンセントが配設されている態様に関し,本願発明は,「複数の扉によって個別且つ開閉自在に閉塞される複数の収納空所を内部に有し,これら複数の収納空所内にそれぞれ」コンセントが配設されているのに対し,引用発明は,「外面の縦方向に複数(2つ)の」コンセントが配設されているにすぎない点。

4.判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1について
例えば,本願明細書中に従来技術を示す特許文献1として提示された特開平10-223339号公報(【0010】の「本実施形態のコンセント装置Aは,円筒状のポール7の上部にケーシング1が装着されて構成されている。ケーシング1はアルミダイカスト製で,周面の略半分が開口する円筒状に形成されたボディ2と,ボディ2の開口部を開閉自在に塞ぐカバー3と,ボディ2の下部及び上部にそれぞれ取着される円形の下蓋4並びに上蓋5とで形成されている。」なる記載及び図1参照)にも開示されているように,スタンド本体(「ケーシング1のボディ2」が相当)を筒状(「円筒状」が相当)とすることは,電気自動車用充電スタンド(「コンセント装置」が相当)の分野における慣用技術であるから,引用発明において,かかる慣用技術を踏まえることにより,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者にとって容易である。

・相違点2及び3について
例えば,引用例2にも開示されているように,本体(「本体ケース21」が相当)の周面(「前面」が相当)に対して回動自在(「開閉可能」が相当)に設けられた扉(「防水扉22」が相当)を備え,本体は,キーにて施錠及び解錠ができる扉によって開閉自在(「開閉可能」が相当)に閉塞される収納空所を内部に有し,この収納空所内にコンセント(「充電コンセント24」が相当)が配設されている構成とすることで,不正行為の防止を図ることは,電気自動車充電システムの分野における周知技術である。

スタンド本体の外面の縦方向に複数のコンセントを配設することで複数台の電気自動車の充電を同時ないし個別に行い得る電気自動車用充電スタンドである引用発明において,不正行為の防止は当然に要求されるべき課題であるといえるから,かかる課題の下に,複数のコンセントの配設構成に上記周知技術を適用することは,当業者にとって容易であり,その際,複数の電気自動車の充電を個別に行いつつ不正行為の防止を図り得るように,キーにて施錠及び解錠ができる扉によって開閉自在に閉塞される収納空所への配設を各コンセント毎に施すことは,単なる設計的事項にすぎない。

そうすると,引用発明において,各コンセントの配置構成に上記周知技術を適用し,相違点2及び3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。

なお,請求人は,審判請求書(3頁6?13行参照)において,本願発明は,充電中の安全性を確保しつつ複数台の電気自動車を同時に充電することが可能となるという効果を奏する旨主張している。
しかしながら,本願発明において,単に,扉が開閉自在に閉塞されるという構成により,充電中の安全性が確保されることになるとは解されず(本願明細書中に提示された上記特許文献1に,開閉自在に閉塞される扉(「開閉自在に塞ぐカバー3」が相当)を備えた電気自動車用充電スタンドが記載されているが,このものは,充電中の安全性の確保がなされないものである。),また,該構成以外に充電中の安全性の確保に結び付く格別の構成(例えば,本願明細書の実施例として記載された,鍵を用いてロック装置を施錠する構成)も特定されていないため,請求人の上記主張は認められない。

そして,本願発明の全体構成により奏される効果も,引用発明,上記慣用技術及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願発明は,引用発明,上記慣用技術及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,上記慣用技術及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-26 
結審通知日 2012-05-08 
審決日 2012-05-22 
出願番号 特願2009-129435(P2009-129435)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 麻川 倫広  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 槙原 進
田村 嘉章
発明の名称 電気自動車用充電スタンド  
代理人 西川 惠清  
代理人 水尻 勝久  
代理人 北出 英敏  
代理人 坂口 武  

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