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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1259616
審判番号 不服2011-11557  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-01 
確定日 2012-07-06 
事件の表示 特願2006- 94214「内燃機関の排気浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月18日出願公開、特開2007-270643〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本件出願は、平成18年3月30日の出願であって、平成22年12月2日付けの拒絶理由通知に対して、平成23年1月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成24年2月6日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、同年3月23日付けで回答書が提出されたものである。


【2】平成23年6月1日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年6月1日付けの手続補正を却下する。


[理 由]
1.本件補正の内容
平成23年6月1日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年1月28日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(b)に示す請求項1を、下記の(a)に示す請求項1へと補正するものである。

(a)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
内燃機関からの排気が導入される筐体と、
該筐体内にそれぞれ収容され、排気中のパティキュレートを捕捉するパティキュレートフィルタ、及び該フィルタの下流側に配置されて還元剤の添加によって排気中のNOxを浄化する選択還元型NOx触媒と、
前記筐体内に形成され、前記フィルタと前記NOx触媒とを接続し、前記フィルタからの排気流れを前記NOx触媒に向けて折り返させる通路と、
前記フィルタの強制再生時であるか否かを判別し、強制再生時であると判別されると該通路内の排気を冷却する冷却手段と
を具備し、車両速度が所定値以上の場合には外気によって冷却され、車両速度が所定値未満の場合にはファンによって冷却されることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。」(下線部は審判請求人が補正箇所を示したものである。)

(b)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
内燃機関からの排気が導入される筐体と、
該筐体内にそれぞれ収容され、排気中のパティキュレートを捕捉するパティキュレートフィルタ、及び該フィルタの下流側に配置されて還元剤の添加によって排気中のNOxを浄化する選択還元型NOx触媒と、
前記筐体内に形成され、前記フィルタと前記NOx触媒とを接続し、前記フィルタからの排気流れを前記NOx触媒に向けて折り返させる通路と、
前記フィルタの強制再生時であるか否かを判別し、強制再生時であると判別されると該通路内の排気を冷却する冷却手段と
を具備することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。」


2.本件補正の目的
本件補正は、請求項1に関して、
「冷却手段」により「車両速度が所定値以上の場合には外気によって冷却され、車両速度が所定値未満の場合にはファンによって冷却される」ものであることを含む旨を限定するものであるから、
請求項1に関する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


3.本件補正の適否の判断(独立特許要件)
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。

3-1.引用文献記載の発明及び技術
3-1-1.引用文献1記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-74331号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【発明の名称】排ガス浄化装置及び排ガス処理方法」(【発明の名称】)

(イ)「【請求項1】 排ガスと接触する脱硝触媒と、前記脱硝触媒の排ガス上流側に設けた熱交換手段と、前記熱交換手段と前記脱硝触媒の排ガス流路間に還元剤供給手段とを設けたことを特徴とする排ガス中の窒素酸化物の脱硝装置。
【請求項2】 前記排ガスの温度が200℃以上300℃以下の範囲内において制御可能である温度制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の排ガス中の窒素酸化物の脱硝装置。
【請求項3】 前記還元剤供給手段が、前記燃焼装置に接続された燃料貯留装置と、還元剤注入手段と、前記燃料貯留装置と還元剤注入手段の間に設置された部分酸化リアクタとからなることを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス中の窒素酸化物の脱硝装置。
【請求項4】 前記脱硝触媒が、TiO_(2)、SiO_(2)、ZrO_(2)、Al_(2)O_(3)、及びゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種の単独酸化物またはこれらの複合酸化物を含有した担体と、Pt、Rh、Ru、Pd、Ir、Auからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属または合金である活性成分とからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の排ガス中の窒素酸化物の脱硝装置。
【請求項5】 前記活性成分の一次粒径が10nm以下であることを特徴とする請求項4に記載の排ガス中の窒素酸化物の脱硝装置。
【請求項6】 前記熱交換手段の排ガス上流側、または前記脱硝触媒の排ガス下流側に、酸化触媒、煤塵捕集手段及びDPF(Diesel Particulate Filter)のいずれか1種以上を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の排ガス中の窒素酸化物の脱硝装置。
【請求項7】 前記熱交換手段の排ガス上流側に脱硫装置を設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の排ガス中の窒素酸化物の脱硝装置。
【請求項8】 前記還元剤が、炭化水素類と含酸素有機化合物類とから選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の排ガス中の窒素酸化物の脱硝装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項8】)

(ウ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、移動体用または定置用のディーゼルエンジン及びガスエンジン等の燃焼装置から発生する排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元して無害な窒素に変える、窒素酸化物の除去装置及び方法に関する。」(段落【0001】)

(エ)「【0004】この他、ディーゼルエンジン排ガス中のNOxの除去方法としては、アンモニアを還元剤としたNOx選択還元触媒(SCR触媒)がある。しかし、この場合、還元剤のアンモニアが劇物、高圧ガス規制の対象となることから一定の管理区域での使用に限られる。また、ハンドリングが容易な固体尿素を還元剤に用い、これをアンモニアに加水分解し脱硝する方法もある。しかし、この方法では、脱硝触媒の出口からアンモニアがスリップしないように尿素の注入量を排ガス中のNOxの化学量論比よりも少なくする必要があり、実質的な浄化率は低下するといった問題がある。また、触媒の前後にNOxセンサーやアンモニアガスセンサーを設置し、排ガス中のNOxやアンモニアの濃度を常に監視しながら、アンモニア水、または尿素水の噴射量を制御する必要があり、噴射制御装置やセンサーにコストがかかり経済的でないといった問題がある。さらに、アンモニア、または尿素を還元剤に用いた場合のもう一つの課題としては、排ガス中の硫黄とアンモニアとの反応によって生成した硫安((NH_(4))_(2)SO_(4))、酸性硫安(NH_(4)HSO_(4))が触媒を被毒することである。特に、ディーゼルエンジンに適用する場合は、ガソリンよりも硫黄を多く含んだ軽油や重油を燃料として用いており、しかも排ガス温度が低いことから、硫安や酸性硫安が析出しやすい条件が整っている。」(段落【0004】)

(オ)「【0011】図1の性質は、O_(2)共存下、NO-N_(2)O-NO_(2)系の気相中での熱力学平衡反応に基づくものと考えられる。特に、活性の高い触媒ほど、低温からその触媒による反応物質の平衡組成に近づくものと推定される。NOx浄化特性の好適な温度としては、およそ150℃から320℃の範囲であり、より好適な範囲は200℃以上300℃以下である。320℃を超えると、触媒上でNOが酸化されやすく、NO_(2)を多量に発生するため好ましくない。逆に、150℃未満では、NOx還元速度が著しく低下するため、実用的でない。また、N_(2)が生成する最大ピーク温度よりも、やや低い温度で制御する方法は、N_(2)への転化率はやや低下するものの、N_(2)Oの副生が著しく抑えられ、N_(2)の反応選択性の観点からは最も有効な手段である。」(段落【0011】)

(カ)「【0018】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)図2に本実施例の基本的な排ガス浄化方法の模式図を示す。本浄化方法は、燃焼排ガス中の窒素酸化物を、炭化水素類、含酸素有機化合物類から選ばれる少なくとも1種の化合物を還元剤として用いて、無害な窒素に還元する脱硝方法において、排ガスと接触する脱硝触媒1の上流側の排ガス中に熱交換手段である熱交換器2を設け、排ガス温度をほぼ一定の温度に制御し、次いで還元剤供給手段3により排ガス中に還元剤を添加しながら、窒素酸化物を効率よく窒素に還元することを特徴とする。熱交換器2には水などの冷媒を使用したシェルチューブ型やプレート型、あるいは空冷式など、公知のものが利用できる。また、脱硝触媒と接触する排ガス温度は、150?320℃の範囲に制御し、NO_(2)、N_(2)Oの副生を抑制できることを特徴とする。なお、排ガスの熱交換手段は必ずしも熱交換器に限定するものではなく、例えば、脱硝触媒1の排ガス入口側で外気を供給することによって、排ガスを上記温度範囲まで冷却することも可能である。温度を制御する方法としては、たとえば熱電対や測温抵抗体によって排ガス温度を検知し、検知された温度に応じて冷媒の流量を制御するなどの公知の方法が利用できる。また、熱交換の冷却効率を高めるには、浄化装置の許容範囲内でエンジンと脱硝装置との距離をなるべく遠ざけることが好ましい。」(段落【0018】)

(キ)「【0033】最後に、本発明の装置の実施例について図4に基づいて説明する。まず、エンジン9から未処理排ガス10が発生する。エンジン9は燃料ポンプ8を介してエンジン燃料タンク4に接続されており、エンジン燃料タンク4には軽油7が満たされている。未処理排ガス10は脱硫装置11によって硫黄分を除去されて排ガスA12となり、排ガスA12は煤塵捕集手段13によって煤塵を除去されて排ガスB14となる。前記硫黄分の除去及び煤塵の除去は、排ガス下流の各機器や配管、特に脱硝触媒1の保護に寄与する。排ガスB14は熱交換器2によって冷却されて排ガスC15となる。ここに、排ガスC15を好ましい温度である150?300℃に保つために、排ガスC15の温度を熱電対などの温度検知手段16によって測定し、測定された温度は計装ラインA20によって温度制御装置17に入力し、冷媒19の流量を調節する流量調整弁18の必要な開度を温度制御装置17によって演算し、演算結果を計装ラインB21によって流量調整弁18に出力する。流量調整弁18の開度を高めれば冷媒19の流量が増して排ガスC15の温度が下がり、逆に流量調整弁18の開度を低めれば冷媒19の流量が減じて排ガスC15の温度があがることはいうまでもない。一方、前記エンジン燃料タンク4に満たされている軽油7の一部は供給ポンプ6によって部分酸化リアクタ5に送られ、軽油7は部分酸化されて還元剤となる。これにより、専用の還元剤タンクを設ける必要はなくなり、また、専用の還元剤を供給する必要もなくなって、設計及び運用上の自由度が増す。前記還元剤は還元剤供給手段3によって排ガスC15の中に供給される。排ガスC15に含まれる窒素酸化物は脱硝触媒1によって前記還元剤と反応して無害な窒素ガスとなり、浄化された処理ずみ排ガス22として排出される。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、燃焼排ガス、特にディーゼルエンジンからの排ガスと接触する貴金属類触媒の上流側の排ガス中に熱交換器を設け、排ガス温度を200?300℃の範囲に制御し、炭化水素または含酸素有機化合物の還元剤を添加することにより、窒素酸化物を効率よく窒素に還元することができる。」(段落【0033】及び【0034】)

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(キ)及び図面の記載からみて、次のことがわかる。

(ク)上記(1)の(ア)ないし(ウ)、(カ)及び(キ)並びに図2及び4の記載からみて、実施例における排ガス中の窒素酸化物の脱硝装置は、移動体用または定置用のディーゼルエンジン及びガスエンジン等の燃焼装置から発生する排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元して無害な窒素に変える窒素酸化物の除去装置であり、排ガス中の煤塵を捕捉する煤塵捕集手段13も具備しているので、エンジン9の排ガス浄化装置といえる。

(ケ)上記(1)の(イ)、(カ)、(キ)及び上記(ク)並びに図2及び4の記載からみて、エンジン9の排ガス浄化装置は、エンジン9からの排ガスが導入される管路(以下、「排気管」という。)を具備していることがわかる。
また、前記排気管内には、排ガス中の煤塵を捕捉する煤塵捕集手段13が収容され、当該煤塵捕集手段13の下流側には、還元剤の添加によって排ガス中のNOxを浄化する脱硝触媒1が配置されて収容されていることがわかる。
さらに、前記排気管の一部の通路である、前記煤塵捕集手段13と前記脱硝触媒1の間の通路(以下、「排気管の一部の通路」という。)は、前記煤塵捕集手段13と前記脱硝触媒1とを接続し、前記煤塵捕集手段13からの排ガス流れを前記脱硝触媒1に向けて連通させているといえる。
さらにまた、前記「排気管の一部の通路」内には、内部にある排ガスを冷却する熱交換器2が具備されていることがわかる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「エンジン9からの排ガスが導入される排気管と、
該排気管内にそれぞれ収容され、排ガス中の煤塵を捕捉する煤塵捕集手段13、及び該煤塵捕集手段13の下流側に配置されて還元剤の添加によって排ガス中のNOxを浄化する脱硝触媒1と、
前記排気管の一部として形成され、前記煤塵捕集手段13と前記脱硝触媒1とを接続し、前記煤塵捕集手段13からの排ガス流れを前記脱硝触媒1に向けて連通させる排気管の一部の通路と、
該排気管の一部の通路内の排ガスを冷却する熱交換器2と
を具備するエンジン9の排ガス浄化装置。」


3-1-2.引用文献2記載の技術
(1)本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-155404号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
内燃機関の排気ガス浄化装置であって、
前記内燃機関の排気ガスの流れ方向の上流に配置された第1後処理装置(10)と、
この第1後処理装置(10)の下流に配置された第2後処理装置(20)と、
前記第1後処理装置(10)の出口(10B)および前記第2後処理装置(20)の入口(20A)を連通させる連通室(30)とを備え、
前記第1、第2後処理装置(10,20)および前記連通室(30)により全体コ字形状に形成されている
ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排気ガス浄化装置(1)において、
前記第1後処理装置(10)側に設けられた排気ガスの入口管(42)は、当該第1後処理装置(10)内の排気ガスの流れ方向に対して略直角方向から排気ガスが流入するように取り付けられている
ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置(1)。
・・・(中略)・・・
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の内燃機関の排気ガス浄化装置(1)において、
前記第1後処理装置(10)はディーゼルパーティキュレートフィルタ(13)を備え、
前記第2後処理装置(20)はDeNOx触媒を備えている
ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の排気ガス浄化装置(1)において、
前記DeNOx触媒は、尿素を還元剤とする尿素脱硝触媒(23)であり、
尿素を供給する供給部(84)が前記第1後処理装置(10)の出口(10B)近傍に設けられている
ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置(1)。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項6】)

(イ)「【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス浄化装置に係り、詳しくは、内燃機関の排気流路に設けられて、排気ガスを浄化する内燃機関の排気ガス浄化装置に関する。」(段落【0001】)

(ウ)「【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の排気ガス浄化装置では、DPFおよびDeNOx触媒がストレートな管体内に直列に収容されていることで、全体的に長尺体となっているため、トラックやバスなどといった車両長さの長いものに対しては、その車両の長手方向に沿って効率的に配置できるが、油圧ショベルやブルドーザといった建設機械のような場合には、配置スペースが限られていることで良好に配置できないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、排気ガスの浄化性能に優れ、かつ限られた配置スペースに良好に配置できる内燃機関の排気ガス浄化装置を提供することにある。」(段落【0006】及び【0007】)

(エ)「【0033】
第1後処理装置10は、円筒状のケース11の内部に緩衝部材12を介して円柱状のDPF13を内蔵した構成である。
このうち、DPF13は、詳細な図示を省略するが、ハニカム状に多数の小孔を配した構造となっている。小孔は、流入側端面13Aから流出側端面13Bに向かって、つまり、軸方向に沿って連通しており、その断面は多角形状(例えば、六角形状)に形成されている。小孔としては、流入側端面13Aで開口して流出側端面13Bで閉じられたものと、流入側端面13Aで閉じられて流出側端面13Bで開口したものとが交互に配置されており、前者の小孔から流入した排気ガスが、境界壁を通過して後者の小孔に抜け、下流側に流出する。そして、その境界壁でパーティキュレートが捕集される。このようなDPF13の材質は、コージュライト、炭化珪素等のセラミックス、または、ステンレス、アルミニウム等の金属からなり、用途に応じて適宜決定される。
【0034】
さらに、DPF13にはウォッシュコート等により酸化触媒がコーティングされている。ここでの酸化触媒は、流入する排気ガス中の一酸化窒素を酸化して二酸化窒素を生成する。生成された二酸化窒素は、排気ガス等の高温の雰囲気中では不安定であり、酸素を放出して一酸化炭素に戻るのであるが、放出した酸素での酸化力により、DPF13で連続的に捕集されたパーティキュレートを逐一燃焼させ、DPF13を常時詰まりが生じていない状態に再生する。また、一酸化窒素に戻りきれなかった二酸化窒素は、第2後処理装置20まで達することになる。
【0035】
第2後処理装置20は、同様なケース21の内部に緩衝部材22を介して尿素脱硝触媒(DeNOx触媒)23を内蔵した構成である。
このうち、尿素脱硝触媒23は、ゼオライト、バナジウム等の卑金属からなり、還元剤としての尿素から得られるアンモニアと排気ガス中のNOxとを反応させ、NOxを窒素と酸素とに分解して浄化する。この際、尿素脱硝触媒23は、上流側の積層体24と下流側の積層体25とに分かれており、間の隙間26にて排気ガスの流れに乱流を生じさせ、攪拌状態を引き起こして反応を促進させている。
【0036】
連通室30は、第1、第2後処理装置10,20側に開口したケース31によって形成されている。この開口部分には、第1後処理装置10および第2後処理装置20側の第1補助装置50に挟持されるようにプレート32が配置されている。ここで、プレート32には一対の開口33,34が穿設され、このプレート32によって連通室30内の流路が確保され、第1後処理装置10の出口10Bから流出した排気ガスが途中で漏れ出すことなく、第1補助装置50の入口50Aに達するようになっている。
【0037】
ケース31の内部において、第1補助装置50の入口50A側(第2後処理装置20の入口20A側に同じ)には、この入口50Aに向かうに従って流路面積が縮小するように下流側整流板35が設けられ、入口50Aと対向したこの下流側整流板35の面には、第2後処理装置20内での排気ガスの流れ方向(軸方向)に沿って延出した複数(本実施形態では4枚)のフローガイド36が取り付けられている。これらの下流側整流板35およびフローガイド36は、排気ガスの流れを集約して入口50A側によどみなくスムーズに変更させ、排気ガスが第1補助装置50や第2後処理装置20に流入する際の流れの分布を均一化している。
【0038】
さらに、下流側整流板35の上流には、排気ガスの流れに抗した向きに多孔板38が設けられている。多孔板38はいわゆるパンチングメタルからなり、多数の孔38Aを有している。排気ガスは、これらの孔38Aを通して連通室30内を流通する。
この多孔板38のさらに上流側であって、第1後処理装置10への出口10B側には、出口10Bから離間するに従って流路面積が増加するように上流側整流板39が設けられている。この上流側整流板39も排気ガスの流れ方向を整えるものであり、出口50Bから流出した排気ガスの流れを多孔板38側によどみなく変更させる。」(段落【0033】ないし【0038】)

(オ)「【0048】
(2)また、第1、第2後処理装置10,20が並列に配置され(排気ガスの流れは直列)、これらが連通室30で連通しており、排気ガス浄化装置1全体がコ字形状となっているので、第1、第2後処理装置10,20を一直線上に配置した従来に比して長手方向の長さを短くでき、コンパクトにできる。従って、配置スペースが小さくてよく、排気ガス浄化装置1を限られた配置スペースに効率的に配置でき、車両の長さが長くない建設機械等に好適に用いることができる。」(段落【0048】)

(カ)「【0060】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態の第2後処理装置20には、尿素を還元剤とする尿素脱硝触媒23が用いられていたが、この他、燃料等の炭化水素(HC)を還元剤とするDeNOx触媒やNOx吸蔵還元触媒等を用いてもよく、還元剤を必要としないその他のDeNOx触媒を用いてもよい。また、還元剤として炭化水素を用いた場合、第2後処理装置20の下流には、アンモニアを無害化する酸化触媒63の代わりに、炭化水素を酸化して無害化する別の性質の酸化触媒を配置することが必要である。」(段落【0060】)

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(カ)及び図面の記載からみて、次のことがわかる。

(キ)上記(1)の(ア)、(イ)、(エ)及び(オ)並びに図1及び2の記載からみて、内燃機関の排気ガス浄化装置は、内燃機関からの排気ガスを導入するケース、すなわち、ケース41,11,31,51,21,61,71及びプレート32を具備しており、これらのケース41,11,31,51,21,61,71のそれぞれ及びプレート32は、全体として結合され一体となっていることがわかる。
また、当該ケース41,11,31,51,21,61,71及びプレート32内には、排気ガス中のパーティキュレートを捕捉するDPF13、及び該DPF13の下流側に還元剤の添加によって排気ガス中のNOxを浄化する尿素脱硝触媒23が収容され配置されていることがわかる。
さらに、前記ケース41,11,31,51,21,61,71及びプレート32内には、「開口33及び開口34を有するプレート32・上流側整流板39・下流側整流板35・ケース31に囲まれた連通室30からなるコの字形の通路」が形成されており、当該コの字形の通路は、前記DPF13と前記尿素脱硝触媒23とを接続し、前記DPF13からの排気ガス流れを前記尿素脱硝触媒23に向けて逆方向に向かわせる形状の通路になっているといえる。

(ク)上記(1)の(ア)、(エ)、(オ)及び上記(キ)並びに図1及び2の記載からみて、「開口33及び開口34を有するプレート32・上流側整流板39・下流側整流板35・ケース31に囲まれた連通室30からなるコの字形の通路」は、DPF13からの排気ガス流れを尿素脱硝触媒23に向けて逆方向に向かわせて流すように形成されており、当該「開口33及び開口34を有するプレート32・上流側整流板39・下流側整流板35・ケース31に囲まれた連通室30からなるコの字形の通路」、「DPF13」及び「尿素脱硝触媒23」が「ケース41,11,31,51,21,61,71及びプレート32」内に収容され形成されているといえる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。

「内燃機関からの排気ガスが導入されるケース41,11,31,51,21,61,71及びプレート32と、
該ケース41,11,31,51,21,61,71及びプレート32内にそれぞれ収容され、排気ガス中のパーティキュレートを捕捉するDPF13、及び該DPF13の下流側に配置されて還元剤の添加によって排気ガス中のNOxを浄化する尿素脱硝触媒23と、
前記ケース41,11,31,51,21,61,71及びプレート32内に形成され、前記DPF13と前記尿素脱硝触媒23とを接続し、前記DPF13からの排気ガス流れを前記尿素脱硝触媒23に向けて逆方向に向かわせる開口33及び開口34を有するプレート32・上流側整流板39・下流側整流板35・ケース31に囲まれた連通室30からなるコの字形の通路と、
を具備した内燃機関の排気ガス浄化装置において、
DPF13からの排気ガス流れを尿素脱硝触媒23に向けて逆方向に向かわせる開口33及び開口34を有するプレート32・上流側整流板39・下流側整流板35・ケース31に囲まれた連通室30からなるコの字形の通路を有し、当該開口33及び開口34を有するプレート32・上流側整流板39・下流側整流板35・ケース31に囲まれた連通室30からなるコの字形の通路、DPF13及び尿素脱硝触媒23をケース41,11,31,51,21,61,71及びプレート32内に収容・形成する技術。」


3-2.対比
本件補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「エンジン9」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「排ガス」は「排気」に、「排気管」は「筐体」に、「煤塵」は「パティキュレート」に、「煤塵捕集手段13」は「パティキュレートフィルタ」及び「フィルタ」のそれぞれに、「熱交換器2」は「冷却手段」に、「エンジン9の排ガス浄化装置」は「内燃機関の排気浄化装置」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1記載の発明における「脱硝触媒1」は、「NOx還元触媒」という限りにおいて、本件補正発明における「選択還元型NOx触媒」及び「NOx触媒」のそれぞれに相当し、以下同様に、
「排気管の一部として形成され、煤塵捕集手段13と前記脱硝触媒1とを接続し、前記煤塵捕集手段13からの排ガス流れを前記脱硝触媒1に向けて連通させる排気管の一部の通路」は「フィルタとNOx還元触媒とを接続し、前記フィルタからの排気流れを前記NOx還元触媒に向けて連通させる通路」という限りにおいて「筐体内に形成され、フィルタとNOx触媒とを接続し、前記フィルタからの排気流れを前記NOx触媒に向けて折り返させる通路」に、
「排気管の一部の通路」は「通路」という限りにおいて「通路」に、
それぞれ相当する。

したがって、本件補正発明と引用文献1記載の発明は、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
「内燃機関からの排気が導入される筐体と、
該筐体内にそれぞれ収容され、排気中のパティキュレートを捕捉するパティキュレートフィルタ、及び該フィルタの下流側に配置されて還元剤の添加によって排気中のNOxを浄化するNOx還元触媒と、
前記フィルタと前記NOx還元触媒とを接続し、前記フィルタからの排気流れを前記NOx還元触媒に向けて連通させる通路と、
該通路内の排気を冷却する冷却手段と
を具備する内燃機関の排気浄化装置。」

<相違点>
なお、( )内に本件補正発明において相当する発明特定事項を示す。
(1)相違点1
NOx還元触媒の種類、フィルタとNOx還元触媒との間の通路、並びに当該通路、フィルタ及びNOx還元触媒の収容・形成の形態に関し、
本件補正発明においては、NOx還元触媒が「選択還元型NOx触媒」であり、フィルタとNOx還元触媒との間の通路として「フィルタからの排気流れをNOx触媒に向けて折り返させる通路」を有し、収容・形成の形態として、当該「通路」、「パティキュレートフィルタ」及び「選択還元型NOx触媒」を「筐体」内に収容・形成しているのに対し、
引用文献1記載の発明においては、NOx還元触媒が「脱硝触媒1」であり、フィルタとNOx還元触媒との間の通路として「煤塵捕集手段13(フィルタ)からの排ガス流れ(排気流れ)を脱硝触媒1に向けて連通させる排気管(筐体)の一部の通路」を有し、収容・形成の形態として、当該「排気管(筐体)の一部の通路」を「排気管(筐体)」の一部として形成し、「煤塵捕集手段13(フィルタ)」及び「脱硝触媒1」を「排気管(筐体)」内に収容している点(以下、「相違点1」という。)。

(2)相違点2
再生時の冷却手段の作動時期に関し、
本件補正発明においては、「フィルタの強制再生時であるか否かを判別し、強制再生時であると判別される」時期であるのに対し、
引用文献1記載の発明においては、このような時期であるのか不明である点(以下、「相違点2」という。)。

(3)相違点3
運転状態に応じた気流による冷却方法に関し、
本件補正発明においては、「車両速度が所定値以上の場合には外気によって冷却され、車両速度が所定値未満の場合にはファンによって冷却される」のに対し、
引用文献1記載の発明においては、気流による冷却が行われているのか不明である点(以下、「相違点3」という。)。


3-3.判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
(ア)内燃機関の排気浄化装置において、NOx還元触媒として選択還元型NOx触媒(SCR触媒)を用いることは、従来周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、引用文献1の特に、上記3-1.の3-1-1.の(1)(エ)の段落【0004】、引用文献2の特に、上記3-1.の3-1-2.の(1)(ア)の【請求項6】、(ウ)の段落【0035】及び(オ)の段落【0060】、原査定において例示された特開2004-162600号公報の特に、段落【0007】、【0014】及び【0017】参照。)である。

(イ)つぎに、本件補正発明と引用文献2記載の技術とを対比すると、引用文献2記載の技術における「排気ガス」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「排気」に相当し、以下同様に、「ケース41,11,31,51,21,61,71及びプレート32」は「筐体」に、「パーティキュレート」は「パティキュレート」に、「DPF13」は「パティキュレートフィルタ」及び「フィルタ」のそれぞれに、「尿素脱硝触媒23」は「選択還元型NOx触媒」及び「NOx触媒」のそれぞれに、「排気ガス流れ」は「排気流れ」に、「逆方向に向かわせる」は流路方向を逆方向に向かわせる形状となるので「折り返させる」に、「開口33及び開口34を有するプレート32・上流側整流板39・下流側整流板35・ケース31に囲まれた連通室30からなるコの字形の通路」は「通路」に、「内燃機関の排気ガス浄化装置」は「内燃機関の排気浄化装置」に、それぞれ相当する。

(ウ)したがって、引用文献2記載の技術を本件補正発明における用語を用いて記載すると、
「内燃機関からの排気が導入される筐体と、
該筐体内にそれぞれ収容され、排気中のパティキュレートを捕捉するパティキュレートフィルタ、及び該フィルタの下流側に配置されて還元剤の添加によって排気中のNOxを浄化する選択還元型NOx触媒と、
前記筐体内に形成され、前記フィルタと前記選択還元型NOx触媒とを接続し、前記フィルタからの排気流れを前記選択還元型NOx触媒に向けて折り返させる通路と、
を具備した内燃機関の排気浄化装置において、
フィルタからの排気流れを選択還元型NOx触媒に向けて折り返させる通路を有し、当該通路、パティキュレートフィルタ及び選択還元型NOx触媒を筐体内に収容・形成する技術。」
となる。

(エ)また、引用文献1記載の発明と引用文献2記載の技術とは、両者とも「内燃機関の排気浄化装置」の技術分野に属するものであり、さらに、引用文献1記載の発明と引用文献2記載の技術とを本件補正発明における用語を用いて記載すると、
「内燃機関からの排気が導入される筐体と、
該筐体内にそれぞれ収容され、排気中のパティキュレートを捕捉するパティキュレートフィルタ、及び該フィルタの下流側に配置されて還元剤の添加によって排気中のNOxを浄化するNOx還元触媒と、
前記筐体内に又は筐体の一部として形成され、前記フィルタと前記NOx還元触媒とを接続し、前記フィルタからの排気流れを前記NOx還元触媒に向けて連通させる通路と、
を具備した内燃機関の排気浄化装置。」
という点でも共通するものである。

(オ)さらに、内燃機関の排気浄化装置において、排気浄化装置を含んだ長尺体となる排気通路を車両に対して良好な配置スペースとなるようにすることは、従来からの普遍的課題である(例えば、引用文献2の特に、上記3-1.の3-1-2.の(1)(ウ)の段落【0006】及び【0007】参照。)。

(カ)そうすると、引用文献1記載の発明において、NOx還元触媒の種類として上記周知技術1を採用し、フィルタとNOx還元触媒との間の通路、並びに当該通路、フィルタ及びNOx還元触媒の収容・形成の形態として、引用文献2記載の技術を適用して、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
内燃機関の排気浄化装置において、パティキュレートフィルタの強制再生時に排気温度が高温となって下流の触媒を劣化させるので、前記触媒への高温の排気を何らかの手段で処理しようとすることは、従来周知の事項(以下、「周知事項」という。例えば、原査定において例示された特開2004-162600号公報の特に、段落【0007】、【0010】、【0014】、【0033】及び【0034】並びに図1、2、4及び5、同様に、原査定において例示された特開2005-248765号公報の特に、段落【0003】、【0014】及び【0030】ないし【0035】並びに図1及び3参照。)であり、触媒への高温の排気を処理する何らかの手段としては、例えば、前記周知例として例示した特開2004-162600号公報においては、高温の排気ガスに低温の排気ガスを混合することにより触媒へ入る排気ガスの温度を冷却することが記載されており(段落【0010】及び【0033】参照。)、触媒への高温の排気を処理する手段として、高温の排気を冷却しようとすることは、当業者であればまず初めに想到し得る手段といえる。
また、内燃機関の排気浄化装置において、パティキュレートフィルタの強制再生時に排気温度が高温となって下流の触媒を劣化させるのを防止させる手段の作動時期について、フィルタの強制再生時であるか否かを判別し、強制再生時であると判別される時期とすることは、従来周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、原査定において例示された特開2005-248765号公報の特に、段落【0003】、【0014】及び【0030】ないし【0035】並びに図1及び3参照。)である。
そうすると、引用文献1記載の発明において、上記周知事項を勘案して上記周知技術2を採用し、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)相違点3について
内燃機関の排気浄化装置において、車両速度が冷却能力不足とならない高速時の場合には外気によって冷却され、車両速度が冷却能力不足となる低速時の場合にはファンによって冷却させるようにすることは、従来周知の技術(以下、「周知技術3」という。例えば、特開平7-279653号公報の特に、段落【0003】、【0014】及び【0030】ないし【0035】並びに図1及び3参照。)である。ここで、走行風の量、すなわち、車両速度が冷却能力不足となるか否かの判別に、ごく一般に使用される比較レベル値である「所定値」を用いることは単なる設計上の事項にすぎない。
そうすると、引用文献1記載の発明において、上記周知技術3を採用し、上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、本件補正発明は、全体として検討してみても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術、周知事項及び周知技術1ないし3から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

なお、審判請求人は、平成24年3月23日付けの回答書において、請求項1に関し、特に、「パティキュレートフィルタと選択還元型NOx触媒とが(a)『筐体内を内壁により上下2段に区画して収容され』ている」の点及び(b)「冷却手段は、前記通路を囲繞するケーシングを備え、該ケーシングにそれぞれ開口された外気導入口及び外気導出口と、前記外気導入口及び外気導出口を開閉可能な開閉ユニットとを含み」の点を付加する補正案を示している。
しかしながら、上記(a)の点については、引用文献2には、「DPF13」と「尿素脱硝触媒23」とが「円筒状のケース11」及び「同様なケース21」の壁により上下2段に区画して収納されている事項が記載されており(図1及び2参照。)、また、上記(b)の点については、上記周知技術3として例示した特開平7-279653号公報の特に、図1には、外気を導入する冷却手段として同様な事項が記載されている。
したがって、補正案であっても進歩性があるものとは認められない。


3-4.まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術、周知事項及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


【3】本件発明について
1.本件発明の内容
平成23年6月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、平成23年1月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、単に「本件発明」という。)は、前記【2】の[理 由]の1.(b)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。


2.引用文献記載の発明及び技術
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開2003-74331号公報)の記載事項及び引用文献1記載の発明並びに原査定の拒絶理由に引用された引用文献2(特開2005-155404号公報)の記載事項及び引用文献2記載の技術は、前記【2】の[理 由]3.の3-1.の3-1-1.(1)ないし(3)及び前記【2】の[理 由]3.の3-1.の3-1-2.(1)ないし(3)のそれぞれに記載したとおりである。


3.対比・判断
本件発明は、実質的に、前記【2】で検討した本件補正発明における発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記【2】の[理 由]3.の3-1.ないし3-4.に記載したとおり、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術、周知事項及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術、周知事項及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明は、全体として検討してみても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術、周知事項及び周知技術1ないし3から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。


4.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術、周知事項及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-07 
結審通知日 2012-05-09 
審決日 2012-05-23 
出願番号 特願2006-94214(P2006-94214)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今関 雅子亀田 貴志  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 岡崎 克彦
柳田 利夫
発明の名称 内燃機関の排気浄化装置  
代理人 長門 侃二  

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