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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B
管理番号 1260071
審判番号 不服2010-12556  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-09 
確定日 2012-07-12 
事件の表示 特願2004-285956「開粒度混合物用注入材及び当該注入材を用いた半たわみ性構造体の施工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月13日出願公開、特開2006- 96627〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年9月30日の出願であって、平成21年11月26日付けで拒絶理由が通知され、平成22年2月1日付けで意見書並びに特許請求の範囲及び明細書に係る手続補正書が提出され、同年3月4日付けで拒絶査定され、同年6月9日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると共に同日付けで特許請求の範囲及び明細書に係る手続補正書が提出されたものであり、その後、平成23年12月28日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が通知され、平成24年3月5日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成22年6月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年6月9日付けの手続補正を却下する。
[理由]
平成22年6月9日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は次のとおりに補正された。
「 【請求項1】
半たわみ性構造体の施工に用いる注入材であって、超速硬セメント50?80重量%及び20μm以下に分級されたフライアッシュ20?50重量%の配合比を有する前記セメントとフライアッシュの混合材料100重量部に対して、高性能減水剤を0.2?1.6重量部、リグニン系遅延剤を0.2?1.2重量部及びオキシカルボン酸系遅延剤を0.01?0.30重量部配合してなり、細骨材を含まないことを特徴とする、開粒度混合物用注入材。
【請求項2】
請求項1記載の開粒度混合物用注入材において、前記超速硬セメントに対するフライアッシュの配合量の12重量%以下を炭酸カルシウム粉末に置換してなることを特徴とする、開粒度混合物用注入材。
【請求項3】
請求項1または2記載の開粒度混合物用注入材100重量部に、水45?60重量部を混合してセメントミルクを調製し、次いで当該セメントミルクを開粒度混合物構造体に対して注入供給し、当該供給されたセメントミルクが開粒度混合物構造体の空隙に浸透する工程を備えることを特徴とする、半たわみ性構造体の施工方法。
【請求項4】
請求項3記載の半たわみ性構造体の施工方法において、更に、セメントミルクを注入供給後、細骨材を0.2?1.0kg/m^(2)散布する工程を備えることを特徴とする、半たわみ性構造体の施工方法。」

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「注入材」を、「半たわみ性構造体の施工に用いる注入材」に減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか、以下に検討する。

(1)刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-183812号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 超速硬セメントに、高性能減水剤0.20?1.00重量%、リグニン系遅延剤0.20?1.20重量%及びオキシカルボン酸系遅延剤0.01?0.30重量%を配合してなる高流動性超速硬セメント組成物。
【請求項2】 アスファルトと骨材とを敷設した路盤に、請求項1のセメント組成物を注入して得られることを特徴とする、半たわみ性舗装構造体。
【請求項3】 アスファルトと骨材とを敷設した路盤に、請求項1のセメント組成物を注入することを特徴とする、半たわみ性舗装法。」(特許請求の範囲)
(イ)「この際前記セメント組成物は、そのまま、もしくは砂を添加して調製されるモルタルとして注入される。」(段落【0021】)
(ウ)「【発明の効果】本発明によれば、2種類の遅延剤を併用することにより、広い温度範囲にわたって、短時間での強度発現を示し、かつ高流動性を長時間維持可能な、しかも可使時間の調節も容易な高流動性超速硬セメント組成物を提供することができる。更に、本発明の高流動性超速硬セメント組成物を使用すると、施工が簡便で、かつ耐久性に優れた半たわみ性舗装構造体及び舗装法を提供することができる。」(段落【0051】)

(2)対比、判断
刊行物1には、記載事項(ア)に「 超速硬セメントに、高性能減水剤0.20?1.00重量%、リグニン系遅延剤0.20?1.20重量%及びオキシカルボン酸系遅延剤0.01?0.30重量%を配合してなる高流動性超速硬セメント組成物。」及び「請求項1のセメント組成物を注入して得られることを特徴とする、半たわみ性舗装構造体。」と記載され、記載事項(イ)には、「前記セメント組成物は、そのまま、もしくは砂を添加して調製されるモルタルとして注入される」ことが記載されている。
これらの記載を本願補正発明の記載振りに則って整理すると、刊行物1には、
「超速硬セメントに、高性能減水剤0.20?1.00重量%、リグニン系遅延剤0.20?1.20重量%及びオキシカルボン酸系遅延剤0.01?0.30重量%を配合してなる高流動性超速硬セメント組成物をそのままモルタルとして、半たわみ性舗装構造体に注入される注入材。」
の発明(以下、「刊行1発明」という。)が記載されているものと認められる。

本願補正発明と刊行1発明とを対比すると、刊行1発明の「超速硬セメント」、「高性能減水剤」、「リグニン系遅延剤」及び「オキシカルボン酸系遅延剤」は、それぞれ、本願補正発明の「超速硬セメント」、「高性能減水剤」、「リグニン系遅延剤」及び「オキシカルボン酸系遅延剤」に相当することは明らかであり、刊行1発明の各組成を重量部に換算すると、「超速硬セメント100重量部」、「高性能減水剤0.195?0.996重量部」、「リグニン系遅延剤0.195?1.195重量部」及び「オキシカルボン酸系遅延剤0.00975?0.2988重量部」であり、本願補正発明の超速硬セメントの最大値及び最小値についてそれぞれ100重量部として各組成の最小値及び最大値を重量部で換算すると、「超速硬セメント100重量部」、「高性能減水剤0.25?3.2重量部」、「リグニン系遅延剤0.25?2.4重量部」及び「オキシカルボン酸系遅延剤0.00125?0.6重量部」となるから、刊行1発明と本願補正発明とは「超速硬セメント100重量部」、「高性能減水剤0.201?1.026重量部」、「リグニン系遅延剤0.25?1.195重量部」及び「オキシカルボン酸系遅延剤0.00975?0.2988重量部」である点において重複することも明らかである。また、刊行1発明は、「砂を添加」しないで「そのままモルタルとして、半たわみ性舗装構造体に注入」されるから、「細骨材」を含まない点でも共通する。

してみると、両者は、
「半たわみ性構造体の施工に用いる注入材であって、超速硬セメント100重量部、高性能減水剤0.25?0.996重量部、リグニン系遅延剤0.25?1.195重量部及びオキシカルボン酸系遅延剤0.00975?0.2988重量部」配合してなり、細骨材を含まない注入材。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点a:本願補正発明は、注入材の用途を「開粒度混合物用」と特定するのに対し、刊行1発明は「半たわみ性舗装構造体に注入される」と特定される点
相違点b:本願補正発明は、活性シリカ物質として「超速硬セメント50?80重量%及び20μm以下に分級されたフライアッシュ20?50重量%の配合比を有する前記セメントとフライアッシュの混合材料100重量部に対して」を含有するのに対し、刊行1発明はフライアッシュを用いることは特定されていない点
そこで、相違点aについて検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-1347号公報(以下、「刊行物3」という。)には、
「【0002】・・・半たわみ性舗装の施工は、母体となる20?27%程度の空隙率の大きい開粒度アスファルト混合物を舗設した後に、この開粒度アスファルト混合物にグラウトとしての浸透用セメントミルクを浸透させることにより行われる。」と記載されているように、「開粒度混合物」は、「半たわみ性舗装」のために普通に用いられていた原料であるということができる。
してみれば、刊行1発明の「注入材」の用途を「開粒度混合物」と特定することは、刊行物3を参照すれば当業者が容易に想到し得たことであると認められる。
次に相違点bについて検討する。
本願補正発明において「20μm以下に分級されたフライアッシュ」を含有する技術的意義は、
「また、本発明の開粒度混合物用注入材に用いられるフライアッシュは、得られる注入材の流動性を向上させ、材料分離による注入後の半たわみ性構造体の沈下を防止する作用を有し、特に20μm以下に分級されたフライアッシュは、既設の開粒度混合物への良好な浸透性を確保するために好適である。
当該フライアッシュの配合量は超速硬セメントとの混合材中、20?50重量%、好ましくは30?40重量%である。
かかる配合割合とすることにより、既設の排水性混合物への浸透性を良好とする。」(本願当初明細書段落【0015】)であって、「既設の開粒度混合物への良好な浸透性を確保」或いは「既設の排水性混合物への浸透性を良好とする」ことにある。
そして、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-139859公報(以下、「刊行物2」という。)には「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、超速硬セメント組成物に関し」、「【請求項1】 超速硬性セメントと、細骨材と、フライアッシュと、化学混和剤とを含み、前記フライアッシュが、分級された粒径10μm以下の微粒分であり、かつ前記フライアッシュ微粒分の含有量が、前記超速硬性セメントと前記フライアッシュ微粒分との合計重量に対し10?40重量%である、ことを特徴とする超速硬性セメント組成物。」、「【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、超速硬性セメント、細骨材、フライアッシュ及び化学混和剤を含むセメント組成物において、グラウト材の充填の際に、混練後20分でも細部流入を確実にする高い流動性を有し、しかも2時間の短時間で所望の強度を発現することが可能な超速硬性セメント組成物を提供しようとするものである。」及び「【0007】本発明の超速硬性セメント組成物に用いられるフライアッシュ微粒分は、フライアッシュを分級して、粒径10μm以下の微粒を捕集したものである。以下、粒径10μm以下のフライアッシュ分級捕集分をフライアッシュ微粒分と記す。本発明においては、このような特定フライアッシュ微粒分が、セメントモルタルの流動性を向上させる。また水を増やさずに混練ができるので2時間の短期強度達成にも有効なものとなるのである。」と記載されているように、「粒径10μm以下のフライアッシュ分級捕集分」は、いわゆる「ベアリング効果」により「セメントモルタルの流動性を向上させ」「細部流入を確実にする」ために普通に用いられていた周知材料(必要であれば、特開平8-169779号公報段落【0008】参照)であるということができる。
してみれば、セメントモルタルの流動性の向上が要求される刊行1発明の「注入材」に前記周知材料を添加することは、刊行物2、3を参照すれば当業者が容易に想到し得たことであると認められる。
そして、本件補正後の明細書の記載を検討しても、本願補正発明により当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたものとすることはできない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2、3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
平成22年6月9日付けの手続補正は前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成22年2月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
超速硬セメント50?80重量%及び20μm以下に分級されたフライアッシュ20?50重量%の配合比を有する前記セメントとフライアッシュの混合材料100重量部に対して、高性能減水剤を0.2?1.6重量部、リグニン系遅延剤を0.2?1.2重量部及びオキシカルボン酸系遅延剤を0.01?0.30重量部配合してなり、細骨材を含まないことを特徴とする、開粒度混合物用注入材。」

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である刊行物1及びその記載事項は、前記第2(1)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明1は、前記第2で検討した本願補正発明に関し、「半たわみ性構造体の施工に用いる注入材であって」から「注入材」に拡張したものである。
してみると、本願発明1の発明特定事項である「注入材」を「半たわみ性構造体の施工に用いる注入材」に限定したものに相当する本願補正発明が、前記第2(3)に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び刊行物2、3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明と同様の理由により、本願発明1も、刊行物1に記載された発明及び刊行物2、3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2、3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-11 
結審通知日 2012-05-15 
審決日 2012-05-29 
出願番号 特願2004-285956(P2004-285956)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C04B)
P 1 8・ 575- Z (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀ヶ谷 明久小川 武  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 中澤 登
木村 孔一
発明の名称 開粒度混合物用注入材及び当該注入材を用いた半たわみ性構造体の施工方法  
代理人 田村 爾  

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