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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1260157 |
審判番号 | 不服2009-22625 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-11-18 |
確定日 | 2012-07-09 |
事件の表示 | 特願2005-513336「生活習慣病の検査用食品」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月 3日国際公開、WO2005/018341〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は,2004年8月18日(優先権主張2003年8月21日 日本国)を国際出願日とする出願であって,以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。 平成21年 1月15日付け 拒絶理由通知書 平成21年 3月23日 意見書・手続補正書 平成21年 8月14日付け 拒絶査定 平成21年11月18日 審判請求書,手続補正書 平成22年 1月 6日付け 前置報告書 平成23年 9月 2日付け 審尋 第2 平成21年11月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成21年11月18日付けの手続補正は却下する。 [理由] 1 本件補正 平成21年11月18日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,本件補正前の, 「【請求項1】糖質100重量部と脂肪20?40重量部とを含有してなる生活習慣病代謝要因検出のためのクッキー形態を有する検査用食品であって, a)検査に際して被検者に摂取させ,時間経過ごとに血液を採取し,血糖値,インスリン,中性脂肪(TG),レムナント様リポ蛋白(RLP-C),低比重リポ蛋白(LDL-C),高比重リポ蛋白(HDL-C)およびアポリポ蛋白B(Apo-B)よりなる群から選択された生活習慣病の代謝要因の1種または2種以上を測定し, b)その測定値を摂取前と対比することにより変動を調べて,異常値の有無を予め設定した基準値と次のとおり対比して, (1)血糖値(mg/dl)が空腹時に110以上126未満,摂取後1時間において160以上,または摂取後2時間において140以上200未満であるとき空腹時高血糖または耐糖能障害と判定し,空腹時に126以上または摂取後2時間において200以上であるときは糖尿病と判定する, (2)インスリン値(μU/ml)が空腹時に10以上,摂取後1時間において80以上または摂取後2時間において40以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるインスリン値の変動値が50以上または空腹時と摂取後2時間におけるインスリン値の変動値が35以上であるときはいずれも高インスリン血症と判定する, (3)TG値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間または摂取後2時間においていずれも150以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるTG値の変動値または空腹時と摂取後2時間におけるTG値の変動値がいずれも40以上であるときは,高トリグリセライド血症または食後高トリグリセライド血症と判定する, (4)RLP-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間または摂取後2時間においていずれも7.5以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるRLP-C値の変動値または空腹時と摂取後2時間におけるRLP-C値の変動値がいずれも2以上であるとき,高RLP血症または食後高RLP血症と判定する, (5)HDL-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも40以下であるとき,低HDL血症と判定する, (6)LDL-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも120以上であるとき,高LDL血症と判定する, (7)Apo-B値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも110以上であるとき,高アポB血症と判定する, ことにより前記代謝要因による生活習慣病であるかどうかを判定するために使用される, 前記生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品。 【請求項2】生活習慣病代謝要因としてのインスリン抵抗性を検査するに際して,その指標としてインスリン面積(AUCI)が100μU/ml・hr以上であるとき,インスリン面積とグルコース面積の積値が28000(mg/dl・μU/ml.・hr2)以上であるとき,インスリン抵抗性があるものと判定するために使用される,請求項1記載の生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品。 【請求項3】1検査分の摂取当たり,糖質を73?77gおよび脂肪を15?30gを含有してなる請求項1または2記載の生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品。 【請求項4】1検査分当たりの摂取カロリーが460?600kcalである請求項3記載の生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品。」を, 「【請求項1】糖質100重量部と脂肪20?40重量部とを含有し,かつ1検査分の摂取当たり,糖質を73?77gおよび脂肪を15?30gを含有してなる生活習慣病代謝要因検出のためのクッキー形態を有する検査用食品であって, a)検査に際して被検者に摂取させ,時間経過ごとに採取した血液から,血糖値,インスリン,中性脂肪(TG),レムナント様リポ蛋白(RLP-C),低比重リポ蛋白(LDL-C),高比重リポ蛋白(HDL-C)およびアポリポ蛋白B(Apo-B)よりなる群から選択された生活習慣病の代謝要因の1種または2種以上を測定し, b)その測定値を摂取前と対比することにより変動を調べて,異常値の有無を予め設定した基準値と次のとおり対比して, (1)血糖値(mg/dl)が空腹時に110以上126未満,摂取後1時間において160以上,または摂取後2時間において140以上200未満であるとき空腹時高血糖または耐糖能障害と判定し,空腹時に126以上または摂取後2時間において200以上であるときは糖尿病と判定する, (2)インスリン値(μU/ml)が空腹時に10以上,摂取後1時間において80以上または摂取後2時間において40以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるインスリン値の変動値が50以上または空腹時と摂取後2時間におけるインスリン値の変動値が35以上であるときはいずれも高インスリン血症と判定する, (3)TG値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間または摂取後2時間においていずれも150以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるTG値の変動値または空腹時と摂取後2時間におけるTG値の変動値がいずれも40以上であるときは,高トリグリセライド血症または食後高トリグリセライド血症と判定する, (4)RLP-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間または摂取後2時間においていずれも7.5以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるRLP-C値の変動値または空腹時と摂取後2時間におけるRLP-C値の変動値がいずれも2以上であるとき,高RLP血症または食後高RLP血症と判定する, (5)HDL-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも40以下であるとき,低HDL血症と判定する, (6)LDL-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも120以上であるとき,高LDL血症と判定する, (7)Apo-B値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも110以上であるとき,高アポB血症と判定する, ことにより前記代謝要因による生活習慣病であるかどうかを判定するために使用される,前記生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品。 【請求項2】生活習慣病代謝要因としてのインスリン抵抗性を検査するに際して,その指標としてインスリン面積(AUCI)が100μU/ml・hr以上であるとき,インスリン面積とグルコース面積の積値が28000(mg/dl・μU/ml.・hr2)以上であるとき,インスリン抵抗性があるものと判定するために使用される,請求項1記載の生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品。 【請求項3】1検査分当たりの摂取カロリーが460?600kcalである請求項3記載の生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品。」 と補正するものである。 2 補正の適否 (1)補正の目的の適否 上記補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「生活習慣病代謝要因検出のためのクッキー形態を有する検査用食品」を,補正前の請求項3の記載に基づき「かつ1検査分の摂取当たり,糖質を73?77gおよび脂肪を15?30gを含有して」に限定し,請求項3を削除し,それに伴い請求項4の番号を繰り上げ「請求項3」とすると共に,補正前の請求項1に記載された「血液を採取し」を,本願明細書の試験例1,2に記載の被験者より採取した血液から検査を実施している実施形態に合わせ「採取した血液から」と明りょうでない記載の釈明を目的とする補正をするものである。 そして,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2)独立特許要件について そこで,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という。なお,本件補正後の明細書を,以下,「本願補正明細書」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて,以下検討する。 (2-1)本願補正発明 本願補正発明は,以下のとおりである。 「糖質100重量部と脂肪20?40重量部とを含有し,かつ1検査分の摂取当たり,糖質を73?77gおよび脂肪を15?30gを含有してなる生活習慣病代謝要因検出のためのクッキー形態を有する検査用食品であって, a)検査に際して被検者に摂取させ,時間経過ごとに採取した血液から,血糖値,インスリン,中性脂肪(TG),レムナント様リポ蛋白(RLP-C),低比重リポ蛋白(LDL-C),高比重リポ蛋白(HDL-C)およびアポリポ蛋白B(Apo-B)よりなる群から選択された生活習慣病の代謝要因の1種または2種以上を測定し, b)その測定値を摂取前と対比することにより変動を調べて,異常値の有無を予め設定した基準値と次のとおり対比して, (1)血糖値(mg/dl)が空腹時に110以上126未満,摂取後1時間において160以上,または摂取後2時間において140以上200未満であるとき空腹時高血糖または耐糖能障害と判定し,空腹時に126以上または摂取後2時間において200以上であるときは糖尿病と判定する, (2)インスリン値(μU/ml)が空腹時に10以上,摂取後1時間において80以上または摂取後2時間において40以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるインスリン値の変動値が50以上または空腹時と摂取後2時間におけるインスリン値の変動値が35以上であるときはいずれも高インスリン血症と判定する, (3)TG値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間または摂取後2時間においていずれも150以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるTG値の変動値または空腹時と摂取後2時間におけるTG値の変動値がいずれも40以上であるときは,高トリグリセライド血症または食後高トリグリセライド血症と判定する, (4)RLP-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間または摂取後2時間においていずれも7.5以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるRLP-C値の変動値または空腹時と摂取後2時間におけるRLP-C値の変動値がいずれも2以上であるとき,高RLP血症または食後高RLP血症と判定する, (5)HDL-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも40以下であるとき,低HDL血症と判定する, (6)LDL-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも120以上であるとき,高LDL血症と判定する, (7)Apo-B値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも110以上であるとき,高アポB血症と判定する, ことにより前記代謝要因による生活習慣病であるかどうかを判定するために使用される,前記生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品。」 (2-2)刊行物及びその記載事項 ア 刊行物 特表2000-507802号公報(原査定の引用文献2。以下,「刊行物1」という。) イ 刊行物の記載事項 この出願の優先日前に頒布された刊行物である刊行物1には,以下の事項が記載されている。 1a「1.固形経口診断用試験食であって,その試験食が脊椎被検体により摂取されたときに医学的に管理された量の有効炭水化物を供する炭水化物源を含んで成る,前記固形診断用試験食。 ・・(中略)・・ 9.固形診断用試験食バーであって: (a)前記試験食に備わっているエネルギーの約50%?約65%の範囲の量で医学的に管理された量の有効炭水化物を供する炭水化物源,ここでの炭水化物源はオート穀粒である; (b)食物脂肪源,ここでこの食物脂肪は前記試験食に備わっているエネルギーの約15%?約30%の範囲の量で存在する; (c)食物タンパク質源,ここでのこの食物タンパク質は前記試験食に備わっているエネルギーの約10%?約25%の範囲の量で存在する;及び任意的に, (d)食物繊維源; を含んで成る固形診断用試験食バー。 ・・(中略)・・ 19.脊椎動物被検体の炭水化物代謝障害を診断するための方法であって:(a)請求項1記載の固形経口診断用試験食を用意する; (b)前記試験食を前記被検体に経口投与する; (c)生物学的サンプル中の食後グルコース濃度をアッセイする;そして (d)前記生物学的サンプル中の食後グルコース濃度を対照グルコース濃度と比較する; ことを含んで成る方法。 20.前記生物学的サンプルが血液である,請求項19記載の方法。 21.前記炭水化物代謝障害が真性糖尿病,障害型グルコース寛容,インスリン抵抗,非インスリン依存性糖尿病,成熟開始糖尿病,妊娠糖尿病及び高インスリン血症により成る群から選ばれる,請求項20記載の方法。」(特許請求の範囲 請求項1,9,19ないし21) 1b「「糖血応答」とは,特定の食後時点,例えば30,60,90及び/又は120分目にて採取した,食品,試験食等の摂取後に血液の中に産生されているグルコースの量を意味する。被検体の糖血応答はコントロール標準品,例えば75gのグルコース含有飲料品,例えばGlucodex(登録商標)(Bougier,Inc.,Camble,Quebec)に応答するパーセンテージとして示す。好ましくは,糖血指数は食後60分目にとる食品,試験食等(「GI」)の「糖血症指数は(F/S)×100と定義し,ここでFは50gの有効炭水化物を供する量の食品又は試験食を採取した後0?120分の間の複数の時点において取った糖血応答の曲線下面積(AUC)であり,そしてSは50gの有効炭水化物を供する対照食品の摂取後の糖血応答AUCである。好ましくは,この対照食品はホワイトブレッド又は液体グルコース飲料品とする。食品又は試験食の糖血指数の決定において,F及びSは被検体において取られる。好ましくは,Sは三重測定で決定し,そして平均値をGIの計算のために利用する。食品又は試験食のGIは好ましくは約3人?10人以上の被検体において決定された食品又は試験食についてのGIの平均値として計算する。 ・・(中略)・・ この試験食は生理学的にバランスのとれた炭水化物源を含むように配合されていてよく,即ち,この試験食は炭水化物,脂肪及びタンパク質の奨励の糖尿病食物必須品を含んでよい。かかる食物ガイドラインはAmerican Diabetes Association(“ADA”)(1994)Diabetes Care 17:519-522, Canadian Diabetes Association(“CDA”)(1989)Beta Release 13:8-17及びEuropean Association for the Study of Diabetes(“EASD”)(1988)Diab. Nutr. Metab.1;145-149に記載されている。その開示内容全体を引用することで本明細書に組入れる。CDA及びEASDの奨励は,炭水化物が50%以上のエネルギー摂取量を構成し,脂肪が30%以下のエネルギー摂取量を構成し(そのうち,10%が飽和脂肪,10%が一不飽和脂肪,そして10%が多重不法和脂肪と推奨されている),タンパク質は個別のエネルギー要件,例えば約12%?約15%のエネルギー摂取量を供するよう調節すべきであるとし,食物は高繊維質可溶性繊維含量,例えば1日当たり40g又は1000キロカロリー(「Kcal)」当たり20gを有するべきものとしている。」(16頁下から6行?17頁9行,22頁11?24行) 1c「一の好適な態様において,90.5gの固形試験食はバー状にする。 326Kcalのエネルギーの供された試験食はオート穀粒から抽出したデンプンに由来する50.0gの炭水化物(試験食エネルギーの61.5%),カノラ油及び抽出オート脂肪に由来する8.9gの脂肪(試験食エネルギーの24.5%),ソイフラワー,タマゴアルブミン及び/又はホイートグルテンに由来する11.4gのタンパク質(試験食エネルギーの14.0%),オートブラン中のβ-グルカンに由来する6.9gの繊維,並びに風味のためのアップルジュース,シナモン及びオレンジジュースより成る。 ・・(中略)・・ 試験食中の有効炭水化物の量は選定の糖血応答,又は好ましくは上記の選定の糖血指数が達成されるように較正できうる。対照糖血応答は例えば25g,50g,75g又は100gのグルコースの量のグルコースを含む経口液体グルコース標準品を利用して得られうる。試験食中の有効炭水化物の量は選定の30分,45分,60分,90分,120分等の食後血液グルコース応答を達成するように標準化し得る。経口液体グルコース対照に対して較正した試験食に関し,この対照糖血応答は75gの経口液体グルコース飲料品,例えばGlucodex(登録商標)を利用して決定するのが好ましい。選定の糖血指数を達成するために較正した試験食に関し,好適な対照糖血指数は50gの炭水化物部のホワイトブレッドを利用して得られうる。即ち,例えば,試験食の摂取後の被検体に関して得られる糖血応答又は糖血指数を,試験食の予め較正した糖血指数又は糖血応答と比較し得る。」(24頁6行?25頁5行) 1d「試験食は任意の固形物理形態,例えばバー,ウェーハー,ビスケット,クッキー等であってよい。」(26頁1?2行) 1e「実施例5 肥満被検体,IGI被検体及び2型糖尿病を有する被検体における経口グルコース及び試験食に対する血漿グルコースとインスリン応答との関係の対比 各グループ10人のボランティアの4つの成人グループ(18才以上)を試験した。それらは非肥満(BMI<27kg/m^(2))の正常被検体;肥満(BMI≧27kg/m^(2))の正常被検体;ここ12ヶ月以内障害型グルコース寛容(「IGT」)を有する被検体;及び食事療法のみで処置した非インスリン依存型(2型)糖尿病)を有する被検体である。 各被検体は12時間の一夜の絶食後に8通りの状況で試験した。これらの非検体は300mlのオレンジフレーバー水(Glucodex(登録商標))(「GTT」)又は表Iに記載の通りのバー形状の98.0gの試験食(「TMB」)の形態における50gの有効炭水化物のいづれかを消費した。これらの試験食は4個の連続ブロックで各被検体に投与され,ここで各ブロックは1個のGTT及び1個のTMBより成る。各ブロック内の試験の順序はランダムとし,ランダム化をグループ及び性別に従って分類した。 静脈及び毛細管血液サンプルを各時点で採取した。毛細管血液サンプルは,静脈サンプルを静脈内カヌーレを介して採取した直後に刺指より採取した。静脈及び毛細管血液の絶食後サンプルを採取し,被検体はGTT又はTMBを10分の時間で消費した。更なる血液サンプルを試験食の開始(試験食消費の開始=t_(0))後,15,30,45,60,90及び120分目に採取した。 各被検体ブループにおける反復試験の再現性を変動係数として表示し,それは各被検体に行った4回の反復試験より計算した。再現性は60分及び120分の時点,並びに曲線下暫進面積について決定した。それぞれの試験食(GTT及びTMB)の血漿グルコース及びインスリン応答の差は第一に曲線下面積を利用し,そして第二に各時点での反復測定値の変動分析を利用して決定した。 75gのグルコース摂取後の血液グルコース及びインスリン応答の被検体内変動を試験バー形態の50gの有効炭水化物の摂取後の再現性と比較した。更に,経口グルコース及び試験バー食摂取後の血漿グルコースとインスリン応答との間の関係を,非肥満及び肥満被検体,障害型グルコース寛容を有する被検体及び食事療法のみで処置した2型糖尿病被検体において対比した。 今日まで,44回のGTT試験及び41回のTMB試験が完了している。6人の被検体につきこの研究が完了しており,そして16人の被検体(8人が正常,5人がIGT,そして3人が糖尿病)が少なくとも1回のグルコース及び1回のバー試験を受けている。これらの16人の被検体のGTT後の平均2時間食後血漿グルコースは3.6mmol/l?19.9mmol/lに変動した。経口グルコース後の平均2時間食後グルコースは試験バー摂取後の2時間食後グルコースと直線的な関係にあった(r=0.95;r^(2)=0.90;p<0.001)。このデーターは,TMB後の≧8.7mmol/lの2時間食後の血漿グルコースがGTT後の≧11.1mmol/l(即ち,糖尿病)の2時間食後血漿グルコースと対応することを示し,そしてTMB後の≦6.3mmolの2時間食後血漿グルコースがGTT後の≦7.7mmol/l(即ち,正常人)のTMBに対応することを示す。これらの結果は,試験バーが糖尿病の価値あるスクリーニング試験として有用であろうことを示唆する。」(34頁17行?36頁3行) (2-3)刊行物1に記載された発明 刊行物1は,「固形経口診断用試験食であって,その試験食が脊椎被検体により摂取されたときに医学的に管理された量の有効炭水化物を供する炭水化物源を含んで成る,前記固形診断用試験食」(摘示1a 請求項1)に関し記載するものであって,この具体的な実施の態様として,刊行物1には「90.5gの固形試験食はバー状にする。326Kcalのエネルギーの供された試験食はオート穀粒から抽出したデンプンに由来する50.0gの炭水化物(試験食エネルギーの61.5%),カノラ油及び抽出オート脂肪に由来する8.9gの脂肪(試験食エネルギーの24.5%),ソイフラワー,タマゴアルブミン及び/又はホイートグルテンに由来する11.4gのタンパク質(試験食エネルギーの14.0%),オートブラン中のβ-グルカンに由来する6.9gの繊維,並びに風味のためのアップルジュース,シナモン及びオレンジジュースより成る」(摘示1c)ものが記載されている。 そして,この固形経口診断用試験食の利用方法としては,「脊椎動物被検体の炭水化物代謝障害を診断するための方法であって:(a)請求項1記載の固形経口診断用試験食を用意する;(b)前記試験食を前記被検体に経口投与する;(c)生物学的サンプル中の食後グルコース濃度をアッセイする;そして(d)前記生物学的サンプル中の食後グルコース濃度を対照グルコース濃度と比較する;ことを含んで成る方法」(摘示1a請求項19)で,該「生物学的サンプル」として具体的には「血液」(摘示1a請求項20)であり,該「炭水化物代謝障害」として具体的には「真性糖尿病,障害型グルコース寛容,インスリン抵抗,非インスリン依存性糖尿病,成熟開始糖尿病,妊娠糖尿病及び高インスリン血症により成る群から選ばれる」(摘示1a請求項21)ものであることが記載されている。 ここで,上記「(c)血液中の食後グルコース濃度をアッセイする」について,刊行物1の記載を検討すると,「静脈及び毛細管血液の絶食後サンプルを採取し・・更なる血液サンプルを試験食の開始・・15,30,45,60,90及び120分目に採取した」(摘示1e)より,絶食後すなわち試験食の摂食前,及び,試験食摂取後の時間経過毎に採取した血液中のグルコース濃度をアッセイすることであることが分かる。 したがって,刊行物1には, 「固形経口診断用試験食で,その試験食が脊椎被検体により摂取されたときに医学的に管理された量の有効炭水化物を供する炭水化物源を含んで成る,前記固形診断用試験食であって,90.5gの固形試験食はバー状で,326Kcalのエネルギーの供された該試験食はオート穀粒から抽出したデンプンに由来する50.0gの炭水化物(試験食エネルギーの61.5%),カノラ油及び抽出オート脂肪に由来する8.9gの脂肪(試験食エネルギーの24.5%),ソイフラワー,タマゴアルブミン及び/又はホイートグルテンに由来する11.4gのタンパク質(試験食エネルギーの14.0%),オートブラン中のβ-グルカンに由来する6.9gの繊維,並びに風味のためのアップルジュース,シナモン及びオレンジジュースより成るもので,それを用いて脊椎動物被検体の炭水化物代謝障害である,真性糖尿病,障害型グルコース寛容,インスリン抵抗,非インスリン依存性糖尿病,成熟開始糖尿病,妊娠糖尿病及び高インスリン血症により成る群から選ばれる疾病を診断するには,(a)該固形経口診断用試験食を用意する(b)前記試験食を前記被検体に経口投与する(c)試験食の摂食前及び試験食摂取後の時間経過毎に採取した血液中のグルコース濃度をアッセイする(d)前記血液中のグルコース濃度を対照グルコース濃度と比較することを含むものである,固形経口診断用試験食。」 の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (2-4)本願補正発明と引用発明との対比 ア 引用発明の「固形経口診断用試験食で,その試験食が脊椎被検体により摂取されたときに医学的に管理された量の有効炭水化物を供する炭水化物源を含んで成る,前記固形診断用試験食」は,「それを用いて脊椎動物被検体の炭水化物代謝障害である,真性糖尿病,障害型グルコース寛容,インスリン抵抗,非インスリン依存性糖尿病,成熟開始糖尿病,妊娠糖尿病及び高インスリン血症により成る群から選ばれる疾病を診断」するために「(a)前記試験食を前記被検体に経口投与する(c)試験食の摂食前及び試験食摂取後の時間経過毎に採取した血液中のグルコース濃度をアッセイする(d)前記血液中のグルコース濃度を対照グルコース濃度と比較する」ものであるから,生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品といえる。 さらに,引用発明の該「固形経口診断用試験食」は,糖質である「オート穀粒から抽出したデンプンに由来する50.0gの炭水化物(試験食エネルギーの61.5%)」及び脂肪である「カノラ油及び抽出オート脂肪に由来する8.9gの脂肪(試験食エネルギーの24.5%)」とを含有するものである。 そうすると,引用発明の「固形経口診断用試験食で,その試験食が脊椎被検体により摂取されたときに医学的に管理された量の有効炭水化物を供する炭水化物源を含んで成る,前記固形診断用試験食であって,90.5gの固形試験食はバー状で,326Kcalのエネルギーの供された該試験食はオート穀粒から抽出したデンプンに由来する50.0gの炭水化物(試験食エネルギーの61.5%),カノラ油及び抽出オート脂肪に由来する8.9gの脂肪(試験食エネルギーの24.5%),ソイフラワー,タマゴアルブミン及び/又はホイートグルテンに由来する11.4gのタンパク質(試験食エネルギーの14.0%),オートブラン中のβ-グルカンに由来する6.9gの繊維,並びに風味のためのアップルジュース,シナモン及びオレンジジュースより成るもの」と,本願補正発明の「糖質100重量部と脂肪20?40重量部とを含有し,かつ1検査分の摂取当たり,糖質を73?77gおよび脂肪を15?30gを含有してなる生活習慣病代謝要因検出のためのクッキー形態を有する検査用食品」とは,糖質と脂肪とを含有してなる生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品である点で共通する。 イ 引用発明の「(b)前記試験食を前記被検体に経口投与する」とは,検査に際して,固形経口診断用試験食を被験者に経口投与し摂取させることであり,引用発明の「(c)試験食の摂食前及び試験食摂取後の経過時間毎に採取した血液中のグルコース濃度をアッセイするする」は,試験食の摂食前及び摂取後の時間経過毎の血中のグルコース濃度をアッセイすなわち血糖値を測定することといえる。 他方,本願補正発明の「時間経過ごとに採取した(血液)」につき,本願補正明細書の記載を確認すると「試験例1 ・・クッキーを・・対象に摂取させた。そして,摂取前,摂取後1時間および2時間において,血糖値・・を測定した」(5頁2?8行)と記載され,試験食の摂取前及び摂取後の時間経過毎の血糖値を測定している。 そうすると,引用発明の「(b)前記試験食を前記被検体に経口投与する(c)試験食の摂食前及び試験食摂取後の時間経過毎に採取した血液中のグルコース濃度をアッセイする」ことは,本願補正発明の「a)検査に際して被検者に摂取させ,時間経過ごとに採取した血液から,血糖値,インスリン,中性脂肪(TG),レムナント様リポ蛋白(RLP-C),低比重リポ蛋白(LDL-C),高比重リポ蛋白(HDL-C)およびアポリポ蛋白B(Apo-B)よりなる群から選択された生活習慣病の代謝要因の1種または2種以上を測定」することに包含される。 ウ 引用発明の「(d)前記血液中のグルコース濃度を対照グルコース濃度と比較する」について,引用発明の実施例として刊行物1には「(静脈及び毛細管血液の絶食後サンプルを採取し・・更なる血液サンプルを試験食の開始・・15,30,45,60,90及び120分目に採取した・・)それぞれの試験食(GTT及びTMB)の血漿グルコース及びインスリン応答の差は第一に曲線下面積を利用し,そして第二に各時点での反復測定値の変動分析を利用して決定した。75gのグルコース摂取後の血液グルコース及びインスリン応答の被検体内変動を試験バー形態の50gの有効炭水化物の摂取後の再現性と比較した・・16人の被検体・・が少なくとも1回のグルコース及び1回のバー試験を受けている・・16人の被検体のGTT後の平均2時間食後血漿グルコースは3.6mmol/l?19.9mmol/lに変動・・経口グルコース後の平均2時間食後グルコースは試験バー摂取後の2時間食後グルコースと直線的な関係にあった・・このデーターは,TMB後の≧8.7mmol/lの2時間食後の血漿グルコースがGTT後の≧11.1mmol/l(即ち,糖尿病)の2時間食後血漿グルコースと対応することを示し,そしてTMB後の≦6.3mmolの2時間食後血漿グルコースがGTT後の≦7.7mmol/l(即ち,正常人)のTMBに対応することを示す」(摘示1e)との記載より,試験食の摂食前並びに試験食を食し始めてから一定時間後(複数)の被験者の血中グルコース測定値を基に算出した数値を,経口グルコース摂取後の血中グルコース濃度の被検体内変動の数値と対比し,血中グルコース濃度の変動関係の対応を調べているといえる。 そして,引用発明の「それを用いて脊椎動物被検体の炭水化物代謝障害である,真性糖尿病,障害型グルコース寛容,インスリン抵抗,非インスリン依存性糖尿病,成熟開始糖尿病,妊娠糖尿病及び高インスリン血症により成る群から選ばれる疾病を診断する」とは,固形経口診断用試験食を用いて,上記血中グルコース濃度の変動関係の対応を調べた結果に基づき,被験者の炭水化物代謝障害である糖尿病を含む疾病の診断をすることである。 そうすると,引用発明の「(d)前記血液中のグルコース濃度を対照グルコース濃度と比較する」及び「それを用いて脊椎動物被検体の炭水化物代謝障害である,真性糖尿病,障害型グルコース寛容,インスリン抵抗,非インスリン依存性糖尿病,成熟開始糖尿病,妊娠糖尿病及び高インスリン血症により成る群から選ばれる疾病を診断する」と,本願補正発明の「b)その測定値を摂取前と対比することにより変動を調べて,異常値の有無を予め設定した基準値と次のとおり対比して,(1)血糖値(mg/dl)が空腹時に110以上126未満,摂取後1時間において160以上,または摂取後2時間において140以上200未満であるとき空腹時高血糖または耐糖能障害と判定し,空腹時に126以上または摂取後2時間において200以上であるときは糖尿病と判定する」とは,その測定値をある値と対比することにより変動を調べて,糖尿病を判定する点で共通する。 エ 引用発明の「固形経口診断用試験食」は,上記アないしウより,炭水化物代謝障害による生活習慣病の一種である糖尿病を含む疾病を診断するために使用される検査用食品といえ,これが該疾病を診断するために使用されるものであれば,該疾病を判定するために使用されるといえるから,本願補正発明の「前記代謝要因による生活習慣病であるかどうかを判定するために使用される,前記生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品」に相当する。 したがって,両者は, 「糖質と脂肪とを含有してなる生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品であって,a)検査に際して被検者に摂取させ,時間経過ごとに採取した血液から,血糖値,インスリン,中性脂肪(TG),レムナント様リポ蛋白(RLP-C),低比重リポ蛋白(LDL-C),高比重リポ蛋白(HDL-C)およびアポリポ蛋白B(Apo-B)よりなる群から選択された生活習慣病の代謝要因の1種を測定し,b)その測定値をある値と対比することにより変動を調べて,(1)生活習慣病の一種である糖尿病を判定するために使用される,前記生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品。」 である点で一致し,以下の点で相違する。 (ア)糖質と脂肪とを含有してなる検査用食品が, 本願補正発明では,糖質100重量部と脂肪20?40重量部とを含有し,かつ1検査分の摂取当たり,糖質を73?77gおよび脂肪を15?30gを含有してなり,クッキー形態を有するのに対し, 引用発明では,50.0gの炭水化物,8.9gの脂肪を含有し,1検査分の摂取当たりの糖質および脂肪の含有量は明らかでなく,クッキー形態を有するかも明らかでない点(以下,「相違点(ア)」という。)。 (イ)変動を調べる測定値,及び,異常の有無を判定する基準値が, 本願補正発明では,変動を調べる測定値が,検査用食品の摂取前の測定値と,摂取後1時間または摂取後2時間の測定値であり,及び,糖尿病を判定する基準値が,予め設定した基準値で,血糖値(mg/dl)が空腹時に110以上126未満,摂取後1時間において160以上,または摂取後2時間において140以上200未満であるとき空腹時高血糖または耐糖能障害と判定し,空腹時に126以上または摂取後2時間において200以上であるときは糖尿病と判定するものであるのに対し, 引用発明では,変動を調べる測定値が,診断用試験食の摂取前の測定値と,摂取後の時間経過毎の測定値であり,及び,糖尿病を判定する基準値については,判定のため血液中のグルコース濃度を対照グルコース濃度と比較するが,その比較した結果糖尿病と判定する基準値は明らかでない点(以下,「相違点(イ)」という。)。 (2-5)相違点についての判断 ア 相違点について (ア)相違点(ア)について i 検査用食品に含有されている糖質と脂肪の重量部割合について 引用発明の固形経口診断用試験食は,糖質50.0g及び脂肪8.9g含有するものであり,これを糖質100重量部として換算すると,脂肪17.8重量部含有するものといえる。 引用発明は,被検者の炭水化物代謝障害である糖尿病を含む疾病を診断するための試験食であり,糖尿病を診断する場合は摂取する試験食に含まれる重要な成分は,グルコースを構成単位とする糖質であって,グルコースを構成単位としない脂肪は,診断上は重要な成分ではなくなる。 ここで,本願補正発明の脂肪含有量の技術的意義を確認すると,通常の朝食程度の摂取カロリーに整えるということであり(本願補正明細書4頁9?13行),これ以上の意義は記載がない。 そして,刊行物1には,食物ガイドラインにより奨励されるものとして脂肪30%以下(摘示1b)が示されているが,上記のとおり糖尿病を含む疾患の診断上重要でない脂肪について,食べた味の満足感や摂取カロリー等を考慮し,診断用試験食において,試験に直接重要ではない成分の含有割合を,試験に影響の無い範囲で若干増加させることは,当業者が適宜なし得ていたことである。 そうすると,引用発明において,診断用試験食中に含有される,試験に直接重要ではない成分である脂肪の重量部を,17.8重量部に代えて,試験に影響の無い範囲で17.8重量部より若干増加させた程度の20重量部とすることは,当業者が容易になし得たことである。 ii 1検査分の摂取当たりの糖質及び脂肪の含有量について 引用発明は,真性糖尿等の糖尿病を診断するための診断用試験食である。 糖尿病の診断基準については,1999年に日本糖尿病学会から新たな診断基準が報告されており,この基準では75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)を用いていることは,本願優先日前,周知事項であった(例えば,特開2001-316293号公報「【0019】糖尿病の判定基準については,1999年に日本糖尿病学会から新たな判定基準が報告されている。この報告によれば,糖尿病とは・・75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値・・」参照。)。 そして,75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)は,75gブドウ糖水溶液を経口投与後,30分,1時間,90分,2時間等経過時点で採血し,血糖を測定するものであることも,本願優先日前,周知事項であった。(例えば,特開平3-141930号公報「経口ブドウ糖負荷試験では,75gブドウ糖を経口投与後,30,60,90,120,180分経過時点で採血し,血糖を測定して糖尿病の検査を行う」(2頁左上欄10?13行)参照。)。 この75g経口ブドウ糖負荷試験では,ブドウ糖75gを経口投与していることから,糖尿病の診断用試験食としては,糖質を75g含有することが必要といえる。 そうすると,引用発明を糖尿病の診断用試験食とした場合,上記周知事項である1999年に日本糖尿病学会から報告された診断基準に則り,引用発明の診断用試験食に含まれる糖質の量を75gとすることは,当業者が容易になし得たことである。 また,引用発明の診断用試験食に含まれる脂肪の量については,上記iで述べたことを踏まえ,糖質と脂肪の重量部割合を糖質100重量部,脂肪20重量部とする場合,糖質の量を75gとすると脂質の量は,75g×20/100=15gとなり,この量を特定することにも,格別の困難性は認められない。 iii クッキー形態について 刊行物1には,「試験食は任意の固形物理形態,例えば・・クッキー等であってよい」(摘示1d)と記載されていることから,引用発明の固形経口診断用試験食の形態を,クッキ-形態とすることは,当業者が容易になし得たことである。 (イ)相違点(イ)について 糖尿病の診断基準としては,本願優先年の4年前である1999年に,日本糖尿病学会から報告された以下の基準(空腹時血糖値及び75g経口糖負荷試験(OGTT)2時間血糖値の判定基準)が定められており,本願優先日当時,周知事項であった。 この判定基準によると,糖尿病とは,空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が126mg/dl以上,75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が200mg/dl以上,随時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が200mg/dl以上のいずれかを示す状態をいう。 正常型とは,空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が110mg/dl未満及び75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が140mg/dl未満の両方を満たす状態をいう。 さらに,上記糖尿病に該当せず且つ上記正常型でない状態を,境界型という。 (例えば,特開2001-316293号公報「【0019】糖尿病の判定基準については,1999年に日本糖尿病学会から新たな判定基準が報告されている。この報告によれば,糖尿病とは,空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が126mg/dl以上,75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が200mg/dl以上,随時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が200mg/dl以上のいずれかを示す状態である。また,上記糖尿病に該当せず,かつ,「空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が110mg/dl未満および75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が140mg/dl未満の両方を満たす状態」(正常型)でない状態を,「境界型」と呼ぶ」参照。)。 引用発明は糖尿病の診断用試験食であるから,引用発明の「(c)試験食の摂食前及び試験食摂取後の時間経過毎に採取した血液中のグルコース濃度をアッセイする(d)前記血液中のグルコース濃度を対照グルコース濃度と比較する」際に,上記周知の糖尿病の診断基準に則り, 変動を調べる測定値として,空腹時すなわち摂取前及び診断用試験食摂取2時間時の測定値とし,その測定値を対比して変動を調べること,及び, 異常値の有無の判断基準である基準値として,上記周知事項である糖尿病の診断基準に則り, 空腹時血糖値が126mg/dl以上または診断用試験食摂取後2時間値が200mg/dl以上である状態は,糖尿病と判定し, 上記糖尿病に該当せず,且つ,正常型として空腹時血糖値が110mg/dl未満及び診断用試験食摂取後2時間値が140mg/dl未満の両方を満たす状態でない状態を,境界型(本願補正発明の「空腹時高血糖または耐糖能障害」に相当)と判定する, ものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 イ 効果について 本願補正発明の効果は,刊行物1の記載事項及び本願優先日当時の周知技術から予測される範囲内のものであり,格別顕著なものではない。 (2-6)独立特許要件のまとめ したがって,本願補正発明は,刊行物1に記載された発明及び本願優先日当時の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,請求項1についての補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり,請求項1についての補正は,平成18年改正前特許法第126条第5項の規定に適合しないから,本件補正は,その余の点を検討するまでもなく,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成21年11月18日付けの手続補正は,上記のとおり却下されることとなったので,この出願の請求項1ないし4に係る発明は,平成21年3月23日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「糖質100重量部と脂肪20?40重量部とを含有してなる生活習慣病代謝要因検出のためのクッキー形態を有する検査用食品であって, a)検査に際して被検者に摂取させ,時間経過ごとに血液を採取し,血糖値,インスリン,中性脂肪(TG),レムナント様リポ蛋白(RLP-C),低比重リポ蛋白(LDL-C),高比重リポ蛋白(HDL-C)およびアポリポ蛋白B(Apo-B)よりなる群から選択された生活習慣病の代謝要因の1種または2種以上を測定し, b)その測定値を摂取前と対比することにより変動を調べて,異常値の有無を予め設定した基準値と次のとおり対比して, (1)血糖値(mg/dl)が空腹時に110以上126未満,摂取後1時間において160以上,または摂取後2時間において140以上200未満であるとき空腹時高血糖または耐糖能障害と判定し,空腹時に126以上または摂取後2時間において200以上であるときは糖尿病と判定する, (2)インスリン値(μU/ml)が空腹時に10以上,摂取後1時間において80以上または摂取後2時間において40以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるインスリン値の変動値が50以上または空腹時と摂取後2時間におけるインスリン値の変動値が35以上であるときはいずれも高インスリン血症と判定する, (3)TG値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間または摂取後2時間においていずれも150以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるTG値の変動値または空腹時と摂取後2時間におけるTG値の変動値がいずれも40以上であるときは,高トリグリセライド血症または食後高トリグリセライド血症と判定する, (4)RLP-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間または摂取後2時間においていずれも7.5以上であるとき,または空腹時と摂取後1時間におけるRLP-C値の変動値または空腹時と摂取後2時間におけるRLP-C値の変動値がいずれも2以上であるとき,高RLP血症または食後高RLP血症と判定する, (5)HDL-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも40以下であるとき,低HDL血症と判定する, (6)LDL-C値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも120以上であるとき,高LDL血症と判定する, (7)Apo-B値(mg/dl)が空腹時,摂取後1時間および2時間においていずれも110以上であるとき,高アポB血症と判定する, ことにより前記代謝要因による生活習慣病であるかどうかを判定するために使用される, 前記生活習慣病代謝要因検出のための検査用食品。」 2 原査定の拒絶の理由の概要 本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は,本願発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 記 特表2000-507802号公報(「第2 2(2)(2-2)ア」に示した刊行物1と同じ。)以下この刊行物を「刊行物1」と続けて用いて述べる。 3 刊行物の記載事項 前記「第2 2(2)(2-2)イ」に記載したとおりである。 4 刊行物1に記載された発明 前記「第2 2(2)(2-3)」に記載したとおりである。 5 対比・判断 本願発明は,上記「第2 2(2)(2-4)」で検討した本願補正発明から,「生活習慣病代謝要因検出のためのクッキー形態を有する検査用食品」の限定事項である「かつ1検査分の摂取当たり,糖質を73?77gおよび脂肪を15?30gを含有して」との発明特定事項を省き,実施形態に合わせて補正された「採取した血液から」を「血液を採取し」とするものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の発明特定事項を減縮したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 2(2)(2-4),(2-5)」に記載したとおり,刊行物1に記載された発明及び本願優先日当時の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1に記載された発明及び本願優先日当時の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余について言及するまでもなく,この出願は,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-04-27 |
結審通知日 | 2012-05-10 |
審決日 | 2012-05-22 |
出願番号 | 特願2005-513336(P2005-513336) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
P 1 8・ 113- Z (G01N) P 1 8・ 575- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森井 隆信、今村 玲英子 |
特許庁審判長 |
秋月 美紀子 |
特許庁審判官 |
齊藤 真由美 郡山 順 |
発明の名称 | 生活習慣病の検査用食品 |
代理人 | 稲岡 耕作 |
代理人 | 川崎 実夫 |