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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01C
管理番号 1260333
審判番号 不服2010-13077  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-15 
確定日 2012-07-19 
事件の表示 特願2008-104834「水素雰囲気用サーミスタ材料」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日出願公開、特開2009-259911〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯の概略
本願は,平成20年4月14日に出願され,平成21年6月12日(起案日)付けで拒絶の理由が通知され,平成21年8月5日付けで意見書の提出及び手続補正がなされたところ,平成22年3月15日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。これに対し,平成22年6月15日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ,同日付けで手続補正がなされた。

2 平成22年6月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年6月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
平成22年6月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
絶縁性セラミックスからなるマトリックス材料と,
非酸化物系の導電性材料からなり,前記マトリックス材料の周囲に分散して導電パスを形成している導電性粒子と
を備え,
前記導電性粒子は,その間隔が0.5nm?1μmとなるように前記マトリックス材料の周囲に不連続に分散している水素雰囲気用サーミスタ材料。」
と補正された(なお,下線は,請求人が付した本件補正による補正箇所を示す。)
上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「マトリックス材料の周囲に分散して導電パスを形成している導電性粒子」の分散の態様に関し「前記導電性粒子は,その間隔が0.5nm?1μmとなるように前記マトリックス材料の周囲に不連続に分散している」との限定を付加するものであって,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則2条18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第6項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用刊行物の記載事項
(i)ア 原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願前に頒布された刊行物である特許第3007281号公報(以下「刊行物1」という。)には,「サーミスタ材料およびその製造方法に関し,さらに詳しくは,測温域が広いサーミスタ材料およびその製造方法に関(し)」(【0001】),以下の事項が記載されている。
(ア)「絶縁性を有する物質からなるマトリックスと,該マトリックス中に不連続に分散させた,前記マトリックスと熱膨張率が異なる物質からなる分散材とからなるサーミスタ材料であって,
前記分散材は,半導体物質または電導性を有する物質からなり,
前記分散材の間隔が,10μm以下であり,
前記分散材が,マトリックスを構成する物質の結晶粒の複数個を取り囲むようにネットワーク構造を形成してなり,
不連続でネットワーク構造に分散した分散材が,前記サーミスタ材料中で導電パスを形成することにより,測温域が広く,温度-抵抗変化に優れた直線性を有してなることを特徴とするサーミスタ材料。」(【請求項1】)
(イ)「請求項1記載のサーミスタ材料において,前記分散材の間隔が,0.005μm?1μmであることを特徴とするサーミスタ材料。」(【請求項3】)
(ウ)「請求項1記載のサーミスタ材料において,マトリックスが,酸化物,窒化物,および珪化物から選択されるセラミックスの一種以上であることを特徴とするサーミスタ材料。」(【請求項8】)
(エ)「請求項1記載のサーミスタ材料において,分散材が,炭化物,珪化物,窒化物,硼化物,および酸化物から選択されるセラミックスの一種以上であるサーミスタ材料。」(【請求項9】)
(オ)「サーミスタ材料は,温度などによって抵抗値が敏感に変化する抵抗体となる材料であり,各種温度センサ等に用いられている。なお,このサーミスタ材料の用途は,電子レンジや電気釜などの調理器用温度センサ,エアコンやファンヒータなどの空調・暖房用温度センサ,電子体温計や温水洗浄便座などの健康・美容器用温度センサ,冷蔵庫や時計など上記以外の家電用温度センサ,各種OA機器用温度センサ,吸気温度検知やエンジン温度測定,冷却水温度検知などに用いる自動車用温度センサ,タバコ葉乾燥用や製氷機用,海水温度測定用,自動販売機用,冷凍ショーケース用などの各種産業用温度センサ,各種検査用温度センサ,など,家電から産業用,理化学研究用,医療・通信,宇宙開発に至るまで,大変広範囲にわたっている。また,このサーミスタ材料は,特殊な用途として,ホットサーミスタとしての使い方,例えば湿度センサ,風速センサなどとして用いることができる。さらに,これらサーミスタ材料を検知部として用いた応用機器の開発も活発であり,温度調節器,温度記録計などの温度計測機器や,サーミスタ材料を湿度検知素子として用いた絶対湿度センサを利用した絶対湿度計や露点計,結露防止制御器,湿度調節器,水分活性計などの湿度計測機器などのほか,風速,流速,真空度,ガス濃度などを検知対象とするものが考えられ,これらの組み合わせの複合化機器の開発も考えられるなど,サーミスタ材料の適用範囲は幅広い。」(【0002】)
(カ)「第1実施例
先ず,79重量%および74重量%のSi_(3)N_(4) 粉末(平均1次粒子径:0.2μm)と6重量%のY_(2)O_(3)粉末(平均1次粒子径:0.5μm)に対し,粒径比(Si_(3)N_(4) /SiC)が6?7のSiCを15重量%および20重量%加え,ボールミルで湿式混合し,乾燥,スプレードライにより造粒粉を作製した。
得られた造粒粉末を,金型に入れて一軸プレス成形(圧力:20MPa)した後,1850℃×1時間(N_(2)中)の条件でホットプレス焼結して,本実施例にかかる複合材料を得た(試料番号:1〔SiC添加量20重量%〕,試料番号2〔SiC添加量15重量%〕)。
得られた複合材料の断面をECRプラズマエッチングし,その表面を金属顕微鏡観察した。その結果,本実施例の複合材料は,複数のSi_(3)N_(4) (マトリックス)結晶粒の周りをSiC粒子が取り囲むように,かつSiC粒子が母材中に三次元網目状で不連続に分散していることが確認された。」(【0089】ないし【0091】)
イ 以上のような記載事項からすると,刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「絶縁性を有する,酸化物,窒化物,および珪化物から選択されるセラミックスからなるマトリックスと,
半導体物質または電導性を有する物質であって,炭化物,珪化物,窒化物,硼化物,および酸化物から選択されるセラミックスからなり,前記マトリックスの周囲に分散して導電パスを形成している分散材と
を備え,
前記分散材は,その間隔が0.005μm?1μmとなるように前記マトリックスの周囲に不連続に分散しているサーミスタ材料。」
(ii) 原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第98/12714号(以下「刊行物2」という。)には,「サーミスタ材料およびその製造方法に関し,さらに詳しくは,測温域が広いワイドレンジサーミスタ材料およびその製造方法に関(し)」(1頁6ないし7行),以下の事項が記載されている。
(ア)「1.電気絶縁性を有するセラミックスからなるマトリックスと,該マトリックス中に不連続に分散した第2相粒子からなるサーミスタ材料であって,前記第2相粒子が,半導体性または導電性を有し,温度-抵抗変化率が大きい物質からなることを特徴
とするワイドレンジサーミスタ材料。
(中略)
3.前記第2相粒子は複数のマトリックス結晶粒子が集合したマトリックス集合体の周囲を,取り囲むように分散してなることを特徴とする請求の範囲第1項記載のワイドレンジサーミスタ材料。
4.前記マトリックス内に,室温での比抵抗値が0.1Ωcm?10^(6)Ωcmの,前記第2相粒子による導電パスを形成してなることを特徴とする請求の範囲第1項記載のワイドレンジサーミスタ材料。
(中略)
6.前記第2相粒子の間隔が,0.5nm?1000nmの範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項記載のワイドレンジサーミスタ材料。
(中略)
8.前記マトリックスが,Al,B,Ca,Mg,Si,Y,Yb,Ti,Zrの一種以上の窒化物または酸化物,これらの複合化合物,サイアロン,スピネル,ムライトおよびコージェライトから選択されるセラミックスの一種以上であり,第2相粒子の大きさが,前記マトリックス結晶粒の粒径の1/2?1/100であることを特徴とする請求の範囲第1項記載のワイドレンジサーミスタ材料。
9.前記第2相粒子が,α型SiC,β型SiC,P型元素をドープしたα型SiC,β型SiC,半導体化合物あるいはこれらの複合相の少なくとも1種であることを特徴とする請求の範囲第1項記載のワイドレンジサーミスタ材料。」(31頁2行ないし32頁3行)
(イ)「また,耐熱性,耐食性の高いマトリックス材料を選択することにより,保護管を設けることなくサーミスタ材料をそのまま雰囲気ガス(還元ガス,不活性ガスなど)の中に入れて測温することが可能となる。これにより,高応答性を発現することができるだけでなく,低コスト化および構造のシンプル化が可能となる。」(7頁19ないし23行)
・「また,マトリックスおよび第2相粒子として非酸化物系の材料を用いる場合には,自動車の排気ガスのような還元雰囲気中において,保護管なしで長期間抵抗値が変化せず,応答性も高いサーミスタの開発が可能である。」(30頁23ないし26行)
(3)対比・判断
(i) 本願補正発明と引用発明とをその機能に鑑み対比すると,引用発明の「マトリックス」は「絶縁性を有する酸化物,窒化物,および珪化物から選択されるセラミックスからなる」ものであるから,本願補正発明の「マトリックス材料」に相当するといえる。
そして,引用発明の「分散材」は「半導体物質または電導性を有する物質であって,炭化物,珪化物,窒化物,硼化物,および酸化物から選択されるセラミックスからなり,前記マトリックスの周囲に分散して導電パスを形成している」ものであって,「前記マトリックスの周囲に不連続に分散している」ものであるから,本願補正発明「導電性粒子」に相当し,「その間隔が0.005μm?1μmとなるように」分散しているから,本願補正発明が規定する範囲に含まれる大きさの間隔で分散していることがわかる。
そうすると,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,相違するといえる。
(一致点)
「絶縁性セラミックスからなるマトリックス材料と,
非酸化物系の導電性材料からなり,前記マトリックス材料の周囲に分散して導電パスを形成している導電性粒子と
を備え,
前記導電性粒子は,その間隔が0.5nm?1μmとなるように前記マトリックス材料の周囲に不連続に分散しているサーミスタ材料。」
(相違点)
本願補正発明が「水素雰囲気用サーミスタ材料」であるのに対し,引用発明は水素雰囲気用とすることができるのか不明である点。
(ii) 上記相違点について検討するに,刊行物2には,引用発明と同様,絶縁性を有するセラミックスからなるマトリックスと,半導体物質または電導性を有する物質からなり,前記マトリックスの周囲に分散して導電パスを形成し,マトリックスの周囲に不連続に分散している第2相粒子(分散材)とを備えたサーミスタ材料について,耐熱性,耐食性の高いマトリックス材料を選択することにより,保護管を設けることなくサーミスタ材料をそのまま雰囲気ガス(還元ガス,不活性ガスなど)の中に入れて測温することが可能となる旨,マトリックス及び第2相粒子として非酸化系の材料を用いる場合には,自動車の排気ガスのような還元雰囲気中において,保護管なしで長期間抵抗値が変化せず,応答性も高いサーミスタの開発が可能である旨記載されている(上記(2)(ii))。
このように,本願出願当時において,引用発明のような,絶縁性を有するセラミックスからなるマトリックスと,半導体物質または電導性を有する物質からなり,前記マトリックスの周囲に分散して導電パスを形成し,マトリックスの周囲に不連続に分散している分散材とを備えたサーミスタ材料について,耐熱性,耐食性の高いマトリックス材料を選択することや,マトリックス及び第2相粒子として非酸化系の材料を用いることにより,保護管を設けることなくそのまま還元性のある雰囲気中において使用可能であることが知られていたことがわかる。
引用発明は,マトリックスとして窒化ケイ素を,分散材として炭化ケイ素を採用することが予定されているから(上記(2)(i)ア(カ)),このような材料を用いる場合に,保護管を設けることなくそのまま還元性のある雰囲気中において使用可能であることは,刊行物2に記載された事項を知り得た当業者であれば,容易に理解できるものである。
その場合,水素が代表的な還元性ガスであることは技術常識であるから,引用発明を水素雰囲気用とすることは,当業者にとって格別困難な選択肢ではない。
また,引用発明は,広範な分野での使用を想定しているといえ(上記(2)(i)ア(オ)),刊行物1には水素雰囲気用とすることを阻害する特段の記載もない。
そうすると,引用発明に刊行物2に記載された事項を適用し,水素雰囲気用とすることは,当業者が容易に想到できた事項とするのが相当である。
そして,本願補正発明が奏する効果を検討しても,引用発明及び刊行物2に記載された事項から予測し得る範囲内のものであって,格別ではない。
この点に関し,請求人は,本願補正発明に係るサーミスタ材料を,水素10気圧×120℃×1000hという極めて過酷な水素雰囲気下に曝しても,抵抗変化率は僅か1%程度に抑えられるという効果が得られ,このような効果は,刊行物1及び2に記載されていない,還元雰囲気下での使用が全く考慮されていない刊行物1に記載の発明が奏するものとは「異質な効果」に該当し,水素を含まない自動車の排ガス中のような相対的に穏やかな還元雰囲気下での使用が示唆されているに過ぎない刊行物2に記載された発明が奏するものとは「同質であるが際だって優れた効果」に該当する,実際に10気圧の高圧水素雰囲気下において耐久試験を行うことによって初めて得られる知見で,刊行物1及び2に基づいて容易に予測し得た効果ではない,と主張している。
しかしながら,刊行物2に,保護管を設けることなく還元性のある雰囲気中において使用可能であることが記載されている以上,水素は代表的な還元性ガスであることが技術常識であることに照らせば,刊行物1又は刊行物2に記載のような,当該サーミスタ材料が水素雰囲気中においても所定の機能を発揮することは,当業者であれば容易に理解できるものである。その奏する効果も本願補正発明のものと同質である。使用条件に過酷さの違いがあるとしても程度の問題であり,本願補正発明の奏する効果が際だって優れているとまではいえないものであって,当業者であれば十分に予測できるものである。
よって,本願補正発明は,引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(4) 以上のとおり,本件補正は,平成23年法律第63号改正附則2条18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第6項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
平成22年6月15日付け手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年8月5日付けの手続補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のとおりのものである。
「【請求項1】
絶縁性セラミックスからなるマトリックス材料と,
非酸化物系の導電性材料からなり,前記マトリックス材料の周囲に分散して導電パスを形成している導電性粒子と
を備えた水素雰囲気用サーミスタ材料。」
(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び2に記載された事項は,上記2(2)のとおりである。
(3)対比・判断
本願発明は,本願補正発明から「前記導電性粒子は,その間隔が0.5nm?1μmとなるように前記マトリックス材料の周囲に不連続に分散している」との限定を省いたものである(上記2(1))。
そうすると,本願発明を特定するために必要な事項をすべて含み,さらに発明を特定するために必要な事項を付加したものに相当する本願補正発明が,上記2(3)で検討したとおり,引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて発明をすることができたものである。
(4) 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
そして,本願発明が特許を受けることができないものである以上,本願の他の発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-17 
結審通知日 2012-05-23 
審決日 2012-06-05 
出願番号 特願2008-104834(P2008-104834)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01C)
P 1 8・ 575- Z (H01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 重田 尚郎  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 窪田 治彦
冨岡 和人
発明の名称 水素雰囲気用サーミスタ材料  
代理人 小林 かおる  
代理人 畠山 文夫  
代理人 畠山 文夫  
代理人 小林 かおる  
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