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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1260338
審判番号 不服2010-18609  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-18 
確定日 2012-07-19 
事件の表示 特願2004-243303「情報処理装置、情報処理システムおよび情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 2日出願公開、特開2006- 59292〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成16年8月24日に出願したものであって、平成21年12月18日付けの拒絶理由通知に対して平成22年2月15日付けで手続補正がなされ、同年3月3日付けの最後の拒絶理由通知に対して同年4月22日付けで手続補正がなされたが、同年5月12日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月18日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされた。
その後、平成24年1月12日付けで審尋がなされ、同年3月19日付けで回答書が提出されたものである。


第2 平成22年8月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年8月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正

本件補正前に、
「【請求項1】
撮像エリア内の画像を取り込むとともに、その撮像エリア内の撮像対象物から送信される、当該撮像対象物の緯度、経度の情報である第1の位置情報を含む識別信号を取り込む入力手段と、
前記入力手段で取り込んだ前記識別信号に基づき、当該識別信号と対応する、前記撮像対象物に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記画像の撮像エリアの位置情報である第2の位置情報を把握する位置情報把握手段と、
前記入力手段によって取り込んだ画像と、前記情報取得手段によって取得した前記撮像対象物に関する情報とを表示するとともに、前記位置情報把握手段が取得した前記第2の位置情報と前記入力手段が取り込んだ前記第1の位置情報とを基に、前記画像内に前記撮像対象物の位置を示す表示手段と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記情報取得手段は、ネットワークを介して外部のサーバに前記画像に関する情報の要求を行う
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
撮像対象物に備えられ、当該撮像対象物の緯度、経度の情報である第1の位置情報を含む識別信号を発信する識別信号発生装置と、
撮像エリア内の画像を取り込むとともに、その撮像エリア内の撮像対象物の識別信号発生装置から発信される前記識別信号を取り込む入力手段と、
前記入力手段で取り込んだ前記識別信号に基づき、当該識別信号と対応する、前記撮像対象物に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記画像の撮像エリアの位置情報である第2の位置情報を把握する位置情報把握手段と、
前記入力手段によって取り込んだ画像と、前記情報取得手段によって取得した前記撮像対象物に関する情報とを表示するとともに、前記位置情報把握手段が取得した前記第2の位置情報と前記入力手段が取り込んだ前記第1の位置情報とを基に、前記画像内に前記撮像対象物の位置を示す表示手段と
を備える情報処理システム。
【請求項4】
撮像対象物の画像を取り込み表示する情報処理装置を備えた情報処理装置の情報処理方法であって、
前記情報処理装置の入力手段が、撮像エリア内の画像を取り込むとともに、その撮像エリア内の撮像対象物が発信する、前記撮像対象物の緯度、経度の情報である第1の位置情報を含む識別信号を取り込む第1の工程と、
前記情報処理装置の情報取得手段が、前記第1の工程において取り込んだ前記識別信号に基づき、当該識別信号と対応する、前記撮像対象物に関する情報を取得する第2の工程と、
前記情報処理装置の位置情報把握手段が、前記画像の撮像エリアの位置情報である第2の位置情報を把握する第3の工程と、
前記情報処理装置の表示手段が、前記第1の工程において取り込んだ画像と、前記第2の工程において取得された前記撮像対象物に関する情報とを表示するとともに、前記第3の工程において取得された前記第2の位置情報と前記前記第1の工程において取り込んだ前記第1の位置情報とを基に、前記画像内に前記撮像対象物の位置を示す第4の工程と、
を有する情報処理方法。」
とあったところを、

本件補正により、
「【請求項1】
識別情報を発信可能な識別情報発信手段を備えた撮像対象物を含む撮像エリア内の画像を撮像するとともに、前記撮像対象物に設けられた前記識別情報発信手段から発信される当該撮像対象物の識別信号を入力する入力手段と、
前記入力手段で入力した前記識別信号に基づき、ネットワークを介して外部装置としての、前記識別情報に対応する関連情報を記憶しているサーバに前記画像に関する関連情報を取得する要求を行い、前記外部装置から当該識別信号に対応する、前記撮像対象物に関する関連情報を取得する情報取得手段と、
前記撮像した撮像対象物を含む撮像エリア内の画像における、前記識別情報発信手段が識別信号を発信している画素の座標位置を特定して記憶する、位置情報把握手段と、
前記入力手段によって撮像した前記撮像対象物を含む撮像エリア内の画像と、前記情報取得手段によって取得した前記撮像対象物に関する関連情報とを表示器に表示するとともに、前記位置情報把握手段が取得した前記画素の座標位置に前記撮像対象物を示すマークを前記表示器に表示する、表示手段と
を備える
情報処理装置。
【請求項2】
撮像対象物に備えられ、当該撮像対象物の識別信号を発信する識別信号発信装置と、
識別情報発信手段を備えた撮像対象物を含む撮像エリア内の画像を撮像するとともに、
前記撮像対象物に設けられた前記識別情報発信手段から発信される当該撮像対象物の識別信号を入力する入力手段と、
前記入力手段で入力した前記識別信号に基づき、ネットワークを介して外部装置としての、識別情報に対応する関連情報を記憶しているサーバに前記画像に関する関連情報を取得する要求を行い、前記外部装置から当該識別信号に対応する、前記撮像対象物に関する関連情報を取得する情報取得手段と、
前記撮像した撮像対象物を含む撮像エリア内の画像における、前記識別情報発信手段が識別信号を発信している画素の座標位置を特定して記憶する、位置情報把握手段と、
前記入力手段によって撮像した前記撮像対象物を含む撮像エリア内の画像と、前記情報取得手段によって取得した前記撮像対象物に関する関連情報とを表示器に表示するとともに、前記位置情報把握手段が取得した前記画素の座標位置に前記撮像対象物を示すマークを前記表示器に表示する、表示手段と
を備える、
情報処理システム。
【請求項3】
撮像対象物の画像を取り込み表示する、入力手段、情報取得手段、位置情報把握手段、表示手段を有する情報処理装置の情報処理方法であって、
前記入力手段が、識別情報を発信可能な識別情報発信手段を備えた撮像対象物を含む撮像エリア内の画像を撮像するとともに、前記撮像対象物に設けられた前記識別情報発信手段から発信される当該撮像対象物の識別信号を入力する、第1の工程と、
前記情報取得手段が、前記入力手段で入力した前記識別信号に基づき、ネットワークを介して外部装置としての、識別情報に対応する関連情報を記憶しているサーバに前記画像に関する関連情報を取得する要求を行い、前記外部装置から当該識別信号に対応する、前記撮像対象物に関する関連情報を取得する第2の工程と、
前記位置情報把握手段が、前記撮像した撮像対象物を含む撮像エリア内の画像における、前記識別情報発信手段が識別信号を発信している画素の座標位置を特定して記憶する、第3の工程と、
前記表示手段が、前記入力手段によって撮像した前記撮像対象物を含む撮像エリア内の画像と、前記情報取得手段によって取得した前記撮像対象物に関する関連情報とを表示器に表示するとともに、前記位置情報把握手段が取得した前記画素の座標位置に前記撮像対象物を示すマークを前記表示器に表示する、第4の工程と
を有する、
情報処理方法。」
とするものである。


2 判断

本件補正は、補正前の請求項1の「当該撮像対象物の緯度、経度の情報である第1の位置情報を含む識別信号」を、「当該撮像対象物の識別信号」とするものであって、「緯度、経度の情報である第1の位置情報を含む」事項を削除する補正事項を含むものである。

したがって、この補正は、識別信号を上位概念化するものであって、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しない。

よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものに該当しない。

なお、請求人は、平成22年8月18日付けの審判請求書2において、「2.補正 本願出願人は、上記拒絶の理由を解消すべく、本意見書と同時に提出した手続補正書において下記に概要を記す補正を行いました。‥‥‥ 2.1 請求項の補正 以下、補正した請求項を下記に転記して、補正の説明を致します。‥‥‥(1)新請求項1‥‥‥(1.3)補正の詳細説明 補正1、3 補正の却下の決定の通知において、特許法第17条の2第4項の規定に違反すると指摘された事項を訂正する補正です。 なお、前回補正により削除した記載、「緯度、経度の情報である第1の位置情報を含む」識別情報は、明細書の記載にない内容であり、明らかな誤記の訂正に該当しており、補正の却下の決定の通知は、単に、形式的に判断したものと思料致します。」と、主張しているが、本願明細書の段落【0042】には、「さらに、上記第3実施形態では位置検出手段を備えていないが、識別信号として対象物Sの位置情報(緯度、経度等の情報)を含めたものを送信し、」と記載されており、また、平成22年2月15日付け意見書2.をみても、補正の根拠として本願明細書の段落【0042】を挙げていることから、誤記の訂正に該当するとする、請求人の前記主張は採用することができない。


3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成22年8月18日付けの手続補正は上記のとおり却下され、また、平成22年4月22日付けの手続補正は、同年5月12日付けの補正の却下の決定により却下されているので、本願の請求項に係る発明は、平成22年2月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。


2 引用例及びその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平2003-174578号公報(平成15年6月20日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。また、丸付数字は「(1)」などと表記した。)。

(a)「【0008】図2は本発明を適用した電子カメラと該電子カメラを利用した電子画像通信システムの概念図である。図1において、電子カメラ100はメモリカードを備え、所定サイズの撮影画面内に入る被写界を撮影した電子画像データまたはデジタル画像データ(以下画像データと呼ぶ)をメモリカードに保存する。また電子カメラ100は近距離無線通信機能(例えば交信可能範囲が半径10m程度のブルーツース)を備え、同じく近距離無線通信機能を備えた携帯電話160と交信する。この携帯電話160は電子カメラ100の被写体となる人物が所持していることが想定されており、この携帯電話160にはユーザの個人情報が格納されたUIMカード(User Identify Module カード)170が装着される。またこの携帯電話160はGPSなどの測位手段(位置検出手段)が内蔵されている。
【0009】電子カメラ100により被写体となる人物を撮影すると、電子カメラ100と被写体となる人物が所持している携帯電話160の交信により、被写体となる人物の個人情報が電子カメラ100に転送される。また電子カメラ100は後述する方法で被写体となる人物の撮影画面内での位置を検出し、該画面内位置情報と前記個人情報をセットにして、撮影した画像データとともに、画像ファイルとしてメモリーカードに記憶する。また電子カメラ100は前記画像ファイルを無線携帯電話回線190により無線基地局120を経由し、有線または無線の一般公衆電話回線またはインターネット130をさらに経由して個人使用のパソコン140や画像データベース150に転送する。
【0010】電子カメラ100は液晶表示画面を備え、メモリカードに保存した画像ファイルを読み出して前記液晶表示画面に再生表示することができる。さらに電子カメラ100は前記無線携帯電話回線190とインターネット130を介して、被写体の関連情報に基づき種々の情報サーバーや情報サイトにアクセスし、被写体に関する詳細な情報を入手して、該情報を前記液晶表示画面に再生表示することができる。」

(b)「【0038】図15は無線交信処理サブルーチンの詳細フローチャートであって、S40で起動すると、S401で撮影モードであるかチェックし、撮影モードでない場合はS408でリターンする。撮影モードの場合は、S402で無線通信手段71により、電子カメラ100の周囲にある電子機器(被写体となる人物が所持している携帯電話や史跡近傍に固定設定されており該史跡の観光情報を無線交信により送信可能な電子観光ガイド装置)に対して無線交信を試みる。その際撮影レンズの焦点距離に応じて、無線交信の際の信号送信出力を変更する。例えば焦点距離が長いほど被写体が遠距離に存在すると推測されるので、信号送信出力レベルを大きくする。S403で交信が成立しなかった場合はS408でリターンする。交信が成立した場合は、S404で交信が成立した交信相手の電子機器より電子機器の位置情報データと被写体情報データ(または一般情報データ)を無線交信により取得する。S405では電子カメラ100自身の位置情報をGPS回路61から受け取るとともに、電子カメラ100自身の姿勢情報を姿勢検出回路62から受け取り、前記電子機器の位置情報と電子カメラ100の位置情報と電子カメラ100の姿勢情報から後述するように、電子カメラ100に対する被写体(電子機器)の位置を求める。S407では撮影レンズ10の焦点距離情報を撮影制御回路60から受け取り、後述するように該焦点距離情報と撮像素子の有効画面サイズから撮影時の画角を演算するとともに、前記電子カメラ100に対する被写体の位置情報に基づき、撮影した画面内での被写体の位置(画面内位置情報データ)を生成し、S408でリターンする。
【0039】図16は上記レリーズ割込み処理と無線交信処理の際の電子カメラと電子機器との間で行われる無線交信動作を説明するためのシーケンス図であって、まず電子カメラ100側でレリーズ操作されると、それに応じて撮影動作が行われ、次に電子カメラ100側から周囲にある電子機器に対して(1)交信要求の無線交信が試みられる。(1)交信要求では送信元を示す電子カメラ100の識別情報も送信される。
【0040】この(1)交信要求を受信した電子機器は、これに応答してして電子カメラ100に対し(2)応答を行い、送信元の電子機器の識別情報と送信先の電子カメラ識別情報を送信する。(2)応答を受信した電子カメラ100は、電子機器の識別情報に基づいて交信相手を確認するとともに、交信相手の電子機器を特定して関連情報を要求するために、(3)情報要求を送信する。(3)情報要求では、送信先の電子機器の識別情報、送信元の電子カメラ100の識別情報、要求する情報の内容などが電子機器側に送信される。
【0041】(3)情報要求に含まれる電子機器の識別情報に対応する電子機器は、要求された関連情報(位置情報、アクセス情報など)を電子カメラに(4)情報送信する。(4)情報送信には、送信先の電子カメラ100の識別情報、送信元を示す電子機器の識別情報、関連情報が含まれる。
【0042】電子カメラ100は電子機器からの(4)情報送信をうけとる。電子カメラ100は(1)交信要求に応答したすべての電子機器に対して順次(3)情報要求を行うとともに、該電子機器からの(4)情報送信を受け取ると、無線交信を終了し、画像ファイルを生成して、該画像ファイルをメモリカード104に保存する。」

(c)「【0048】図25は情報表示モードサブルーチンの詳細フローチャートであって、S80で起動すると、まずS801で情報表示モードのホーム画面を表示する。ホーム画面では図22に示すように左画面21に画像データを表示する。再生モードから情報表示モードに移行した場合には、再生モードで左画面21に再生表示されていた画像データをそのまま表示し、撮影モードから情報表示モードに移行した場合には最後に撮影された画像ファイルの画像データが表示される。また左画面21には画像データに重畳(スーパーインポーズ)して、付加情報データに含まれる画面内位置情報データに応じた位置に被写体情報を示すアイコン82、83が表示されるとともに、撮影位置情報データに応じて地図を表示するためのアイコン85と撮影日時情報データに応じて撮影日のニュースを表示するためのアイコン84と一般情報を表示するためのアイコン86が表示される。右画面22には左画面21に対する操作説明が表示される。」

(d)「【0051】図26においてアイコン82またはアイコン83がタッチされた場合はS805に分岐し、アイコンが示す被写体情報に含まれるインターネットアクセス情報データに応じて無線電話回路72経由でインターネット上の被写体に関連する詳細な情報を蓄積した情報源(ホームページやデータベース)にアクセスし、そのホームページのトップ画面を表示する。例えばアイコン82をタッチした場合には、図29に示すように被写体となっている人物のホームページのトップ画面が左画面21に表示され、タッチタブレット66の操作により更に下層の画面を表示したりや別のホームページにリンクしたりすることができる。またアイコン83をタッチした場合には、図30に示すように、画面に写っている歴史的建造物の解説画面が左画面21に表示され、タッチタブレット66の操作により更に詳細な解説や画像を左画面21に表示させることができる。右画面22にはホーム画面に表示されていた画像データがサムネイル画像(縮小画像)で表示され、このサムネイル画像部分をユーザがタッチするとS801のホーム画面に戻る。」

(e)図29には、右画面に、被写体が表示されることが示されている。


ア 上記(a)の「【0008】‥‥‥電子カメラ100は‥‥‥所定サイズの撮影画面内に入る被写界を撮影‥‥‥する。‥‥‥【0009】電子カメラ100により被写体となる人物を撮影する」との記載から、被写界において、被写体を撮影するといえるから、引用例に記載の「電子カメラ」は「所定サイズの撮影画面内に入る被写体を撮影する」ものであるといえる。

イ 上記(a)の「【0008】‥‥‥この携帯電話160は電子カメラ100の被写体となる人物が所持していることが想定されており、‥‥‥またこの携帯電話160はGPSなどの測位手段(位置検出手段)が内蔵されている。」との記載、上記(b)の「【0038】‥‥‥撮影モードの場合は、‥‥‥電子カメラ100の周囲にある電子機器(被写体となる人物が所持している携帯電話‥‥‥)に対して無線交信を試みる。‥‥‥交信が成立した交信相手の電子機器より電子機器の位置情報データ‥‥‥を無線交信により取得する。‥‥‥【0041】‥‥‥電子機器は、要求された関連情報(位置情報、アクセス情報など)を電子カメラに‥‥‥情報送信する。‥‥‥情報送信には、‥‥‥送信元を示す電子機器の識別情報、関連情報が含まれる。」との記載、電子カメラによって被写体を撮影すること、及び位置情報はGPSなどの測位手段(位置検出手段)から得られることは自明であることから、引用例に記載の電子カメラは、「被写体が所持する電子機器(携帯電話)から、電子機器(携帯電話)のGPSから得られる位置情報、及び電子機器の識別信号を取得する」ものといえる。

ウ 上記(b)の「‥‥‥【0039】‥‥‥無線交信処理の際の電子カメラと電子機器との間で行われる無線交信動作を説明する‥‥‥【0040】‥‥‥電子カメラ100は、‥‥‥交信相手の電子機器を特定して関連情報を要求するために、情報要求を送信する。‥‥‥【0041】‥‥‥電子機器は、要求された関連情報(位置情報、アクセス情報など)を電子カメラに‥‥‥情報送信する。‥‥‥情報送信には、‥‥‥送信元を示す電子機器の識別情報、関連情報が含まれる。【0042】電子カメラ100は電子機器からの‥‥‥情報送信をうけとる。‥‥‥」との記載から、引用例に記載の電子カメラは、「電子機器の識別情報、関連情報(位置情報、アクセス情報)を含む、情報送信を受け取る」ものである。

エ 上記(a)の「‥‥‥【0010】電子カメラ100は液晶表示画面を備え、‥‥‥電子カメラ100は前記無線携帯電話回線190とインターネット130を介して、被写体の関連情報に基づき種々の情報サーバーや情報サイトにアクセスし、被写体に関する詳細な情報を入手‥‥‥することができる。」との記載、上記(b)の「‥‥‥【0041】‥‥‥電子機器は、要求された関連情報(位置情報、アクセス情報など)を電子カメラに‥‥‥情報送信する。‥‥‥情報送信には、‥‥‥送信元を示す電子機器の識別情報、関連情報が含まれる。【0042】電子カメラ100は電子機器からの‥‥‥情報送信をうけとる。‥‥‥」との記載、上記(c)の「【0051】‥‥‥アイコン82またはアイコン83がタッチされた場合は‥‥‥アイコンが示す被写体情報に含まれるインターネットアクセス情報データに応じて‥‥‥インターネット上の被写体に関連する詳細な情報を蓄積した情報源(ホームページやデータベース)にアクセスし、そのホームページ‥‥‥を表示する。」との記載から、電子カメラは、被写体の関連情報であるアクセス情報によって、種々の情報サーバーや情報サイトの情報源にアクセスするものであって、被写体の関連情報は、電子機器から受け取るものであり、また、情報源がホームページである場合には、そのホームページを表示するものであるから、引用例に記載の電子カメラは、「電子機器から受け取った、被写体の関連情報であるアクセス情報によって、情報源にアクセスし、その情報を表示する」ものである。

オ 上記(b)の「【0038】‥‥‥電子カメラ100自身の位置情報をGPS回路61から受け取るとともに、電子カメラ100自身の姿勢情報を姿勢検出回路62から受け取り、前記電子機器の位置情報と電子カメラ100の位置情報と電子カメラ100の姿勢情報から‥‥‥電子カメラ100に対する被写体(電子機器)の位置を求める。‥‥‥撮影レンズ10の焦点距離情報を撮影制御回路60から受け取り、‥‥‥該焦点距離情報と撮像素子の有効画面サイズから撮影時の画角を演算するとともに、前記電子カメラ100に対する被写体の位置情報に基づき、撮影した画面内での被写体の位置(画面内位置情報データ)を生成‥‥‥する。」との記載から、引用例に記載の電子カメラは、「電子機器の位置情報と電子カメラの位置情報と電子カメラの姿勢情報から、電子カメラに対する被写体(電子機器)の位置を求め、撮影レンズの焦点距離情報と、撮像素子の有効画面サイズから撮影時の画角を演算するとともに、電子カメラに対する被写体の位置情報に基づき、撮影した画面内での被写体の位置(画面内位置情報データ)を生成する」ものである。

カ 上記(d)の「【0051】‥‥‥アイコン82またはアイコン83がタッチされた場合は‥‥‥アイコンが示す被写体情報に含まれるインターネットアクセス情報データに応じて‥‥‥情報源(ホームページやデータベース)にアクセスし、そのホームページ‥‥‥を表示する。例えばアイコン82をタッチした場合には、図29に示すように被写体となっている人物のホームページ‥‥‥が左画面21に表示され‥‥‥る。‥‥‥右画面22には‥‥‥画像データがサムネイル画像(縮小画像)で表示され‥‥‥る。」との記載、及び上記(e)のとおり、図29には、右画面に、被写体が表示されることが示されていることから、被写体となっている人物のホームページ、すなわち、被写体に関する情報が左画面に表示され、被写体の画像データが右画面に表示されるものであるから、引用例に記載の電子カメラは、「被写体に関する情報が左画面に表示され、被写体の画像データが右画面に表示される」ものである。

キ 上記(c)の「【0048】‥‥‥画面内位置情報データに応じた位置に‥‥‥アイコン82、83が表示される‥‥‥」との記載から、引用例に記載の電子カメラは、「画面内位置情報データに応じた位置にアイコンが表示される」ものである。


上記引用例に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしキを総合すると、引用例には、次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。

「所定サイズの撮影画面内に入る被写体を撮影するとともに、
被写体が所持する電子機器(携帯電話)から、電子機器(携帯電話)のGPSから得られる位置情報、及び電子機器の識別信号を取得する電子カメラであって、
電子機器の識別情報、関連情報(位置情報、アクセス情報)を含む、情報送信を受け取り、電子機器から受け取った、被写体の関連情報であるアクセス情報によって、情報源にアクセスし、その情報を表示し、
電子機器の位置情報と電子カメラの位置情報と電子カメラの姿勢情報から、電子カメラに対する被写体(電子機器)の位置を求め、撮影レンズの焦点距離情報と、撮像素子の有効画面サイズから撮影時の画角を演算するとともに、電子カメラに対する被写体の位置情報に基づき、撮影した画面内での被写体の位置(画面内位置情報データ)を生成し、
被写体に関する情報が左画面に表示され、被写体の画像データが右画面に表示され、また、画面内位置情報データに応じた位置にアイコンが表示される、
電子カメラ。」


3 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(A)引用発明の「所定サイズの撮影画面内に入る被写体を撮影するとともに、被写体が所持する電子機器(携帯電話)から、電子機器(携帯電話)のGPSから得られる位置情報、及び電子機器の識別信号を取得する電子カメラ」において、電子機器(携帯電話)のGPSから得られる位置情報データは、緯度、経度の情報として出力することが常套手段であり、また、所定サイズの撮影画面内に入る被写体を撮影するとともに、外部から位置情報、及び電子機器の識別信号を取得するものであるから入力手段を有することは明らかであり、加えて、被写体が所持する電子機器(携帯電話)からの信号は、撮像対象物から送信されるということができるから、本願発明とは「撮像エリア内の画像を取り込むとともに、その撮像エリア内の撮像対象物から送信される、当該撮像対象物の緯度、経度の情報である第1の位置情報を含む識別信号を取り込む入力手段」を有する点で共通する。

(B)引用発明の「電子機器(携帯電話)の識別情報、関連情報(位置情報、アクセス情報)を含む、情報送信を受け取り、電子機器から受け取った、被写体の関連情報であるアクセス情報によって、情報源にアクセスし、その情報を表示」することは、電子機器から受け取った、アクセス情報なる情報信号に基づいて、当該情報信号に対応する被写体に関連する情報を表示するということができ、また、表示する情報を取得する情報取得手段を有することは明らかであるから、引用発明と本願発明とは、「前記入力手段で取り込んだ前記情報信号に基づき、当該情報信号と対応する、前記撮像対象物に関する情報を取得する情報取得手段」を有する点で共通する。

(C)引用発明の「電子機器の位置情報と電子カメラの位置情報と電子カメラの姿勢情報から、電子カメラに対する被写体(電子機器)の位置を求め、撮影レンズの焦点距離情報と、撮像素子の有効画面サイズから撮影時の画角を演算するとともに、電子カメラに対する被写体の位置情報に基づき、撮影した画面内での被写体の位置(画面内位置情報データ)を生成」することにおいて、「撮影時の画角」と「電子カメラに対する被写体の位置情報」に基づき、「撮影した画面内での被写体の位置(画面内位置情報データ)」を生成するものであって、画像の撮像エリアの大きさ(画角)を考慮して、電子カメラに対する被写体の位置情報に基づき、撮影した画面内での被写体の位置(画面内位置情報データ)を生成する、すなわち、画像エリアの大きさの中で、電子カメラに対する被写体がどの位置にあるかを知ることにより、撮影した画面内での被写体の位置(画面内位置情報データ)を生成していることから、画像エリアの大きさ(画角)とともに、その画像エリアの位置を知ることが前提となっているといえ、引用発明と本願発明とは、「前記画像の撮像エリアの位置情報である第2の位置情報を把握する位置情報把握手段」を有するものということができる。

(D)引用発明の「被写体に関する情報が左画面に表示され、被写体の画像データが右画面に表示され」ることは、本願発明の「前記入力手段によって取り込んだ画像と、前記情報取得手段によって取得した前記撮像対象物に関する情報とを表示する」ことに相当する。

(E)引用発明は「画面内位置情報データに応じた位置に被写体情報を示すアイコンが表示される」ものであり、「画面内位置情報データ」は、「電子機器の位置情報と電子カメラの位置情報と電子カメラの姿勢情報から、電子カメラに対する被写体(電子機器)の位置を求め、撮影レンズの焦点距離情報と、撮像素子の有効画面サイズから撮影時の画角を演算するとともに、電子カメラに対する被写体の位置情報に基づき」生成されるものであるから、「電子機器(携帯電話)のGPSから得られる位置情報」(本願発明の「当該撮像対象物の緯度、経度の情報である第1の位置情報」に相当(上記(A)参照))すなわち「電子機器の位置情報」と、「画像エリアの大きさ(画角)とともに、その画像エリアの位置」(本願発明の「前記画像の撮像エリアの位置情報である第2の位置情報」に相当(上記(C)参照))とに基づいて、「画面内位置情報データ」が生成されるということができるから、引用発明の「画面内位置情報データに応じた位置」は、本願発明の「前記位置情報把握手段が取得した前記第2の位置情報と前記入力手段が取り込んだ前記第1の位置情報とを基に」した「前記画像内」の「前記撮像対象物の位置」ということができる。
そして、引用発明の「画面内位置情報データに応じた位置に」表示される「アイコン」は、被写体の位置を示す機能を有するものと捉えることができ、また、表示手段を有することは自明であるから、引用発明と本願発明とは、「前記画像内に前記撮像対象物の位置を示す表示手段」を有する点で共通する。
したがって、引用発明の「画面内位置情報データに応じた位置に被写体情報を示すアイコンが表示される」表示手段は、本願発明の「前記位置情報把握手段が取得した前記第2の位置情報と前記入力手段が取り込んだ前記第1の位置情報とを基に、前記画像内に前記撮像対象物の位置を示す表示手段」に相当する。

(F)引用発明の「電子カメラ」は、情報を処理する機能を有していることから、本願発明の「情報処理装置」に相当する。

すると、本願発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「撮像エリア内の画像を取り込むとともに、その撮像エリア内の撮像対象物から送信される、当該撮像対象物の緯度、経度の情報である第1の位置情報を含む識別信号を取り込む入力手段と、
前記入力手段で取り込んだ前記情報信号に基づき、当該情報信号と対応する、前記撮像対象物に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記画像の撮像エリアの位置情報である第2の位置情報を把握する位置情報把握手段と、
前記入力手段によって取り込んだ画像と、前記情報取得手段によって取得した前記撮像対象物に関する情報とを表示し、また、前記位置情報把握手段が取得した前記第2の位置情報と前記入力手段が取り込んだ前記第1の位置情報とを基に、前記画像内に前記撮像対象物の位置を示す表示手段と
を備える情報処理装置。」

<相違点>

(ア)本願発明が「識別信号に基づき、当該識別信号と対応する、前記撮像対象物に関する情報を取得する」のに対し、引用発明は、アクセス情報に基づいて、撮像対象物に関する情報を取得する点。

(イ)本願発明が「前記入力手段によって取り込んだ画像と、前記情報取得手段によって取得した前記撮像対象物に関する情報とを表示するとともに、」「前記画像内に前記撮像対象物の位置を示す」表示を行うのに対し、引用発明は、「前記入力手段によって取り込んだ画像と、前記情報取得手段によって取得した前記撮像対象物に関する情報とを表示」し、若しくは「前記画像内に前記撮像対象物の位置を示す」表示を行う点。


4 判断

<相違点>(ア)について
引用発明の「被写体のアクセス情報」は、被写体に対応するものであって、この情報に基づいて、撮像対象物に関する情報を取得するものであり、一方、情報源へのアクセス情報として、被写体の識別情報を用いることは周知であるから(原審の平成21年12月18日付けの拒絶理由通知に引用された特開2003-348424号公報(「【0015】受信機20からIDおよび位置データ(例えば座標データ)S1と撮像信号S2が画像合成装置31に供給される。画像合成装置31は、データベース32に対してオブジェクトのIDに関連する情報例えば選手名を問い合わせる。」参照))、引用発明において、被写体の識別情報を用いて、情報源にアクセスしようとすることは当業者が容易に想到し得る事項である。

なお、請求人は、審判請求書の4.2.2において、「‥‥‥第3の相違点、被写体の指定 ‥‥‥引用文献1において、撮像データを画面に表示し、画面において被写体をアイコンなどで指定します。本願発明は、被写体が識別情報を発信するので、画面の表示を通じて関連情報を入手すべき被写体を特定する必要はありません。」旨、主張しているが、本願特許請求の範囲にはこの点について特定されておらず、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、また、画面において被写体を指定することなく被写体に関連した情報を入手することは、上記特開2003-348424号公報(【0015】同上参照)に記載されており周知であるから、請求人の前記主張を採用することができない。

<相違点>(イ)について
画像内に前記撮像対象物の位置を示す表示を行うことは、引用例においても表示の他の一形態として、被写体の情報と画像上の被写体との関係を確認するために被写体の位置を示すマークを設ける技術が記載されており(引用例の「【0058】‥‥‥また被写体情報に対応した左画面21上の被写体の位置に矢印マーク44が表示される。‥‥‥画像データを左画面21に表示したまま、右画面22で被写体情報を閲覧することができるとともに、被写体情報と画像上の被写体との関係を確認することができる。‥‥‥」参照)、引用発明の「被写体に関する情報が左画面に表示され、被写体の画像データが右画面に表示され」たものにおいて、被写体に関する情報と被写体との関係を確認するために「右画面に表示され」た「被写体の画像データ」に前記技術を用いて、被写体の位置を示す機能を有するアイコン(上記3(E)参照)を表示して、本願発明の上記<相違点>(イ)に係る構成のようにすることに格別の困難性を有しない。


そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用例及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-16 
結審通知日 2012-05-22 
審決日 2012-06-05 
出願番号 特願2004-243303(P2004-243303)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上嶋 裕樹紀田 馨梅本 達雄  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 西山 昇
殿川 雅也
発明の名称 情報処理装置、情報処理システムおよび情報処理方法  
代理人 佐藤 隆久  

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