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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1260374 |
審判番号 | 不服2011-20249 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-09-20 |
確定日 | 2012-07-19 |
事件の表示 | 特願2007-512417号「配線基板を有する電子デバイス、その製造方法、および前記電子デバイスに用いられる配線基板」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日国際公開、WO2006/109383〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2006年3月14日(優先権主張 平成17年4月5日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成23年8月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年9月20日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。 2.平成23年9月20日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年9月20日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 少なくとも第1の樹脂層と第2の樹脂層を配線を介して互いに積層してなる配線基板と、 先端が尖った突起電極が片面に形成された少なくとも一つのチップ部品と、 を有し、 前記チップ部品は、前記第1の樹脂層内に進入し前記突起電極が前記配線と接触することで、前記配線と接続されており、 前記第1の樹脂層は少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み、前記第1の樹脂層の融点での前記第2の樹脂層の弾性率が1GPa以上である電子デバイス。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「チップ部品」の「突起電極」について、上記下線部記載のように限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-77457号公報(以下「引用例」という。)には、半導体装置に関し、図面とともに次の技術事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体素子を接続部材を介して配線回路基板に接続実装して得る半導体装置において、信頼性に優れる半導体装置、半導体装置に使用する半導体実装用プリント及び半導体装置の製造方法を提供する。」 ・「【0020】 【発明の実施の形態】(半導体チップ及びバンプ)本発明に用いる半導体チップとしては、フリップチップ接続用にごく一般的に使用されているものが使用できる。プリント配線板と接続するための電極として形成するバンプとしては、金めっきバンプ、金スタッドバンプ、導電性樹脂によるバンプ、はんだバンプ等の一般的に用いられているものが使用できる。また、半導体チップにバンプを形成せず、プリント配線板の端子部にバンプを形成してもよい。バンプの高さは、10μm以上である必要がある。これは、第5図に示すように半導体チップの電極と接触し電気的に接続しているプリント配線板の端子が基板板厚方向に、該端子部及び他の端子部から100μm以上離れた基板表面より5μm以上沈み込み、かつ半導体チップのエッジとプリント配線板の配線との隙間が5μm以上となるようにするためである。端子沈み込み及びエッジと配線の隙間は大きい方が好ましいが、バンプが高くなりすぎると耐温度サイクル性を損うため、バンプの高さとしては、15μm?30μmがより好ましい。 【0021】(熱硬化性接続材料)熱硬化性接続材料は、電気絶縁性の樹脂、又は電気絶縁性のマトリックス樹脂と微細な導電粒子とからなる異方導電性接続材料が使用できる。これらに使用する樹脂は、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂の他、半導体チップ及び基板に接着性を有する電気絶縁性に優れる樹脂で構成し、加圧圧着温度(通常は120?250℃の範囲)で溶融・流動し、短時間(20秒以内)に硬化する熱硬化性樹脂であることが望ましい。ただし、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリイミド樹脂などの接着性を有する熱可塑性樹脂と熱硬化樹脂との混合複合体であっても差し支えない。さらに、半導体チップとの熱膨張係数の差による応力を低減するために樹脂の線膨張係数ならびに弾性率を下げる目的をもって、石英などの無機充填材やエラストマー等の弾性体微粒子を配合・分散させてもよい。常温でペースト状のものでも差し支えはないが、予めフィルム状に成形した方が扱いやすく、接着時にボイドができにくく、信頼性に優れる。 【0022】フィルム形成は、これら少なくともエポキシ樹脂、アクリルゴム、フェノキシ樹脂、潜在性硬化剤からなる接着組成物又はこの接着組成物と導電粒子を有機溶剤に溶解あるいは分散により液状化して、剥離性基材上に塗布し、硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより行われる。このとき用いる溶剤は、芳香族炭化水素系と含酸素系の混合溶剤が材料の溶解性を向上させるため好ましい。 【0023】異方導電性接続材料の樹脂に分散される導電性粒子は、Ni、Ag、Au、Cuなど導電性の優れた金属で良く、ポリマー粒子を核にしてこれらのいずれか、もしくは、複数の金属をめっきして形成してもよく、さらに金属粒子の横方向の絶縁性を高めるために、金属粒子あるいは金属被覆粒子自体に極薄の有機絶縁膜を形成したものを用いてもよい。また、Ni、Cu、Ag、WにAuやPtなどの貴金属めっきした金属粒子を用いることができる。上記した導電性粒子は異方導電性を確保するには少なくとも平均粒子径にして0.5?20μm(より好ましくは1?20μm)、樹脂に対して体積比0.1?30vol%(より好ましくは0.2?15vol%)の範囲内で配合・分散することが好ましい。 【0024】ただし、異方導電性接続材料が加圧圧着される際に導電粒子がマトリックス樹脂とともにチップ表面を流動するので、チップ表面の損傷を避けるためには、2層構造の異方性導電フィルムを使用するのが望ましい。チップ面側はマトリックス樹脂のみか、あるいは、粒子端面が球形に近い微細石英などの無機充填材を分散させた層であり、基板の側の層は上記した金属粒子、樹脂粒子に金属をめっきした粒子、あるいは金属粒子に極薄の有機絶縁膜を被覆した粒子のいずれかを分散させた層からなる2層構造の異方性導電フィルムを用いることが好ましい。 【0025】熱硬化性接続材料は、プリント配線板の半導体チップ搭載部に塗布、場合によっては乾燥するか、あるいはフィルムを半導体チップのサイズと同じか若干大きいXY寸法に切断し、プリント配線板の半導体チップ搭載部に載せ、熱圧プレスを用いて熱圧着する。 【0026】半導体チップのプリント配線板への搭載は、フリップチップボンダー等を用いて行える。半導体チップのバンプ電極とプリント配線板の端子とを位置合わせし、加熱、加圧を所定時間行い、半導体チップとプリント配線板を接続する。 【0027】接続時の熱硬化性接続材料の加熱温度は、120℃?250℃が可能であり、150?210℃が一般的であり、特に180℃前後が熱硬化性接続材料の溶融、流動、硬化特性上好ましく、接続後の熱硬化性接続材料中ボイド発生が少なく好適である。接続時の半導体チップ直下のプリント配線板の表層部分の温度は、熱硬化性接続材料の温度とほぼ同等になる。 【0028】本発明に用いるプリント配線板は、熱硬化性接続材料によりプリント配線板に半導体チップを接続搭載するときの、半導体チップの電極と接続されるプリント配線板の端子の下の表層材料の絶縁層の弾性率が、接続温度において3?10GPaのものである。ここで論じる弾性率は、表層絶縁層の面方向の引張り弾性率であり、動的粘弾性装置で測定した貯蔵弾性率を指し、その測定は、表層絶縁層の材料となるプリプレグ、接着フィルム又は銅箔付き接着フィルムを硬化させて作成したフィルム(銅箔付きのものは銅箔をエッチングにより除去する)に引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度5?10℃/minで-50℃から300℃まで測定する温度依存性モードで行った。通常、ガラスクロスや繊維が補強材として入っているプリント配線板の表層絶縁材料の弾性率は、面方向と厚み方向とで異なり、繊維が配向している面方向に比べ、繊維方向に直角方向となる厚み方向の弾性率の方が小さくなる。本発明の半導体装置の場合、原理的には厚み方向の弾性率がその半導体装置の接続信頼性に及ぼす影響の方が重要ではあるが、現実的には、厚み方向の弾性率を測定するのは困難でり、なおかつ、厚み方向の弾性率と面方向の弾性率は、ほぼ比例関係にあるため、面方向の弾性率を規定したのである。」 ここで、上記の、段落【0021】の記載から、接続材料は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合複合体からなるものであってよく、段落【0025】の記載から、接続材料は、表層材料に熱圧着したものであってよいといえる。また、全体の記載からみて、プリント配線板の端子と半導体チップのバンプとの接続は、半導体チップが接続材料に進入してバンプが端子と接触することによってなされるものといえる。 すると引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されているものと認められる。 「熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合複合体からなる接続材料と、プリント配線板の端子を上面に有する表層材料と、バンプが片面に形成された半導体チップと、を有し、前記接続材料は、前記表層材料に熱圧着されたものであって、前記半導体チップは、前記接続材料に進入し前記バンプが前記端子と接触することで、前記端子と接続されており、接続温度での前記表層材料の弾性率が3?10GPaである半導体装置。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを比較すると、次のことが明らかである。 ・引用発明の「半導体装置」は、本願補正発明の「電子デバイス」に相当する。同様に、「半導体チップ」は「チップ部品」に、「バンプ」は「突起電極」に、それぞれ相当する。 ・引用発明の「熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合複合体からなる接続材料」は、これがプリント配線板を構成するか否かはさておき、機能において、本願補正発明の「第1の樹脂層」に相当し、かつ「少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含」むといえる。引用発明の「表層材料」も同様、本願補正発明「第2の樹脂層」に相当する。また、引用発明の「プリント配線板の端子」も、本願補正発明の「配線」に相当するといえ、それら「端子」ないしは「配線」はいずれも、「接続材料」ないしは「第1の樹脂層」と「表層材料」ないしは「第2の樹脂層」との間に介在しているといえる。 ・引用発明の「接続温度での前記表層材料の弾性率が3?10GPa」について、「接続温度」とは、半導体チップのバンプをプリント配線板の端子に接続するときの温度であって、接続材料が溶融する温度であるから、本願補正発明の「第1の樹脂層の融点」に相当し、また「弾性率が3?10GPa」とは、本願補正発明の「弾性率が1GPa以上」に相当する。 すると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 (一致点) 「第1の樹脂層と、第1の樹脂層との間に配線が介在する第2の樹脂層と、突起電極が片面に形成されたチップ部品と、を有し、前記チップ部品は、前記第1の樹脂層内に進入し前記突起電極が前記配線と接触することで、前記配線と接続されており、前記第1の樹脂層は少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み、前記第1の樹脂層の融点での前記第2の樹脂層の弾性率が1GPa以上である電子デバイス。」 (相違点) (ア)本願補正発明が「少なくとも第1の樹脂層と第2の樹脂層を配線を介して互いに積層してなる配線基板」を有するのに対して、引用発明は「熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合複合体からなる接続材料と、プリント配線板の端子を上面に有する表層材料と」を有し、「前記接続材料は、前記表層材料に熱圧着されたもの」である点。 (イ)本願補正発明が「先端が尖った突起電極が片面に形成された少なくとも一つのチップ部品」を有するのに対して、引用発明は「バンプが片面に形成された半導体チップ」を有する点。 (4)相違点についての判断 ・相違点(ア)について 引用発明における「プリント配線板」には、接続材料が含まれていない。しかし、この接続材料は、半導体チップをプリント配線板に搭載する前の段階で、表層材料に熱圧着されるものであるから、この段階でみれば、接続材料を含めたものをプリント配線板と称してよいことは明かである。実際、当審の前置審尋において、参考文献1として挙げた特開2001-156110号公報などには、その【図1】において積層された状態のもの全体を「配線基板7」と称している。 これらのことから、引用発明において、「接続材料」を含めて全体をプリント配線板ないしは配線基板であるとして、本願補正発明の相違点(ア)に係る構成とすることは当業者にとって容易である。 ・相違点(イ)について 先端が尖ったバンプを用いて配線に接続する技術は、当審の前置審尋において、引用文献2,3として挙げた、特開平11-135549号公報、特開2000-286297号公報などにあるように周知の技術である。 引用発明のバンプはその形状が不明であるが、これら周知の技術と同様の接続技術に係るものであるから、先端が尖っている方が有利であることは明かであって、その採用を妨げる事情も存在しない。 すると、引用発明において、その半導体チップのバンプを先端が尖った形状として、本願補正発明の相違点(イ)に係る構成とすることは当業者にとって想到容易ということができる。 そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明及び周知の技術から当業者であれば予測できる範囲のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成23年9月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成23年7月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、そこには次のとおり記載されている。 「【請求項1】 少なくとも第1の樹脂層と第2の樹脂層を配線を介して互いに積層してなる配線基板と、 片面に突起電極が形成された少なくとも一つのチップ部品と、 を有し、 前記チップ部品は、前記第1の樹脂層内に進入し前記突起電極が前記配線と接触することで、前記配線と接続されており、 前記第1の樹脂層は少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み、前記第1の樹脂層の融点での前記第2の樹脂層の弾性率が1GPa以上である電子デバイス。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) (2)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から前記の限定事項を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)において検討したとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものということができる。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-04-04 |
結審通知日 | 2012-04-10 |
審決日 | 2012-06-01 |
出願番号 | 特願2007-512417(P2007-512417) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 越本 秀幸 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
栗山 卓也 小関 峰夫 |
発明の名称 | 配線基板を有する電子デバイス、その製造方法、および前記電子デバイスに用いられる配線基板 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |
代理人 | 石橋 政幸 |
代理人 | 緒方 雅昭 |