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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28D |
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管理番号 | 1260376 |
審判番号 | 不服2011-21924 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-11 |
確定日 | 2012-07-19 |
事件の表示 | 特願2006-53076号「蓄熱体の清掃方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月5日出願公開、特開2006-266673号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年2月28日(優先権主張平成17年2月28日)の出願であって、平成23年7月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年10月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成23年10月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年10月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により請求項1は、次のように補正された。 「蓄熱式バーナの蓄熱層に配置されたボール状蓄熱体を清掃する蓄熱体の清掃方法であって、 前記ボール状蓄熱体を前記蓄熱層内から第1管状体を介してレシーバタンク内に一旦取り込む取り込み工程と、当該取り込み工程にて前記レシーバタンクに取り込んだ前記ボール状蓄熱体を第2管状体を介して前記蓄熱層内に再び充填する充填工程とを備え、 前記取り込み工程では、前記レシーバタンクに吸引管を介して接続されているバキューム車で構成される吸引手段が前記レシーバタンク内を吸引することで発生する吸引力により、前記ボール状蓄熱体を前記蓄熱層内から前記第1管状体内を移送して前記レシーバタンクに取り込み、前記第1管状体内における前記ボール状蓄熱体の移送過程において、前記ボール状蓄熱体を前記第1管状体内を循環させることで前記ボール状蓄熱体表面から付着物を分離し、前記分離した付着物を前記レシーバタンク内から前記吸引手段により吸引して取り除くとともに、 前記充填工程では、前記付着物を分離した前記ボール状蓄熱体を前記レシーバタンクから前記第2管状体を介して前記蓄熱層内に再び充填することを特徴とする蓄熱体の清掃方法。」(下線は補正箇所。) 2.補正の目的 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「吸引手段」について、「吸引管を介して接続されているバキューム車で構成される」と限定したものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2003-56991号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、燃焼バーナに取り付けられた蓄熱器の蓄熱媒体の洗浄方法、および蓄熱媒体を取り出し、洗浄して充填することを容易にできる構造とした燃焼バーナ用蓄熱器に関する。」(下線は当審で付与。以下、同様。) イ 「【0018】燃焼バーナ3に取り付けられる蓄熱器7であって、蓄熱媒体25を取り出す排出管23と蓄熱媒体を充填する充填管24とが設けられ、蓄熱媒体を取り出す排出管23には集塵機15および17が設けられ、集塵機17の後に真空ポンプ19が連結されるか、または集塵機15の前にエゼクタ式空気搬送装置13が連結され、蓄熱媒体を充填する充填管24にはチューブ型搬送装置(図3には、エゼクタ式空気搬送装置14を示す)が連結されている燃焼バーナ用蓄熱器。 【0019】チューブ型搬送装置には、真空ポンプ、ブロワ若しくはコンプレッサを連結した気送管、またはエゼクタ式空気搬送装置を連結した管路が用いられる。」 ウ 「【0026】蓄熱媒体25は、耐熱性を有し、熱容量の大きなものが望ましく、たとえば、アルミナボールのような球状のものが用いられる。図示するアルミナボールは、説明の都合上大きく描いてあるが、実際は直径が10数mm程度である。・・・」 エ 「【0029】図3は、本発明の燃焼バーナ用蓄熱器およびその付帯設備を示す概念図である。この図は、図1の右側に示す蓄熱器7とその付帯設備とが例示されているが、他の蓄熱器についても付帯設備は共通に連結される。 【0030】蓄熱器7には、燃焼バーナのエアーレジスター(図1の符号2-2、参照)に連結するフランジ部7-1、空気を供給する供給口7-2、排ガスを排出する排気口7-3のほかに、蓄熱媒体25を取り出し搬送する排出管23および蓄熱媒体を充填する充填管24とが設けられている。 【0031】排出管23は、蓄熱媒体25を気流によって取り出し、搬送する管路であり、その内径は蓄熱媒体25の最大幅(最大直径)よりも大きく構成されている。排出管23の他端には、切換弁23-1を介して第一の集塵機であるサイクロン15が連結されている。サイクロン15には、さらに管路16および切換弁16-1を介して第二の集塵機であるバグフィルタ17が連結されている。バグフィルタ17には、管路18によって真空ポンプ19が連結されている。排出管23には、図3で一点鎖線で示すように、図2に示すようなエゼクタ式空気搬送装置を使用することができる。この場合には、真空ポンプ19は不要であるが、集塵機がサイクロンである場合、細かな粉塵は大気中に放散される可能性があるので、バグフィルタ17および真空ポンプ19を設けるのが望ましい。 【0032】サイクロン15の下部には、分離された蓄熱媒体25を排出するための切り出し弁15-1が設けられている。切り出し弁15-1の他端には、蓄熱媒体25を搬送するための搬送装置20が設けられている。搬送装置20の他端には、蓄熱媒体25を洗浄するための洗浄装置21、たとえばコンクリートミキサ型の装置が設けられている。搬送装置20には、ベルトコンベアなどのオープンタイプのものも使用できるが、チューブ式搬送装置を使用するのが望ましい。洗浄装置21には、回転する傾斜管の蓄熱媒体と水とが向流する装置を使用することもできる。 【0033】ホッパー22は、洗浄装置21で洗浄された蓄熱媒体25を蓄熱器7の充填管24まで搬送する装置であり、途中の管路24-1にはエゼクタ式空気搬送装置14が設けられている。また、管路24-1には、ベルトコンベアや管の内部に螺旋状の羽根を回転可能に設けたチューブ型搬送装置が使用できる。いずれの場合でも、蓄熱器7への入り口には切換弁24-2を設けるのが望ましい。」 オ 「【0034】次に、図3に示す装置を用いて蓄熱媒体を洗浄する方法について説明する。蓄熱媒体25は、排出管23によって蓄熱器7から取り出すことができる。このためには、切換弁23-1および16-1を「開」として、真空ポンプ19を起動すれば、蓄熱媒体25は排出管23の内部を移動してサイクロン15に到達する。 【0035】サイクロン15では、蓄熱媒体25に混じっている微粉末とガスとが分離され、蓄熱媒体25はその底部に堆積し、ガスおよび微粉末は管路18を通ってバグフィルタ17に送られる。バグフィルタ17では、ガスと微粉末とが分離され、ガスは大気中に放出される。蓄熱媒体25を微粉末と分離して洗浄するだけであれば、バグフィルタ17を設けなくともよい。 【0036】サイクロン15の底部に集められた蓄熱媒体25は、切り出し弁15-1を開き、チューブ型搬送装置20によって洗浄装置21に送られる。蓄熱媒体を洗浄する手順は、図2で説明した方法と同様である。 【0037】洗浄によって付着物と分離された蓄熱媒体25は、エゼクタ式空気搬送装置14を連結したホッパー22に装入され、エゼクタ式空気搬送装置14によって切換弁24-1を介して充填管24を通って蓄熱器7に送られ、充填される。 【0038】蓄熱媒体を取り出す排出管23および蓄熱媒体を充填する充填管24は、蓄熱器3に常時取り付けられているものではなく、フランジおよびバルブを設け、可撓性の管路で構成し、蓄熱器から取り外し自由とすることもできる。」 上記記載を検討すると、記載イ、エには、排出管23は蓄熱器7から蓄熱媒体25を取り出す管であり、充填管24は蓄熱器7へ蓄熱媒体25を充填する管であることが記載され、それぞれ気流によって蓄熱媒体を搬送するものであることが記載されている。また、記載ウには、蓄熱媒体25はアルミナボールのような球状のものであることが記載されている。 そして、記載エには、排出管23は、蓄熱媒体25を気流によって取り出すものであり、排出管にはサイクロン15が連結され、さらに管路16、バグフィルタ17、管路18、真空ポンプ19が連結されていることが記載されており、サイクロン15に管路16、バグフィルタ17、管路18を介して連結された真空ポンプ19の吸引力で蓄熱媒体25を蓄熱器から排出管23内を移動させてサイクロン15に到達させるものと認められる。 また、記載エには、蓄熱媒体25はサイクロン15から洗浄装置21、充填管24を経て蓄熱器7に充填されることが記載されている。記載オには、サイクロン15で蓄熱媒体25に混じっている微粉末とガスとが分離され、すなわち、サイクロン15に蓄熱媒体25を一旦取り込んで蓄熱媒体25と微粉末が分離されるものであり、分離された微粉末はサイクロン15内から前記真空ポンプ19により吸引して取り除かれるものであることが記載されている。また、蓄熱媒体25は洗浄装置21で付着物と分離され、洗浄された蓄熱媒体25は充填管24を通って蓄熱器7に送られ充填されることが記載されている。ところで、蓄熱媒体25は排出管23の内部を真空ポンプ19による気流により移動するものであるから、本願明細書段落【0022】の記載によれば、蓄熱媒体25から分離される微粉末には蓄熱媒体25の表面に付着していたものが含まれるものと認められる。したがって、球状の蓄熱媒体25は排出管23の内部を移動する過程において、球状の蓄熱媒体25は排出管23の内部を移動することで球状の蓄熱媒体25の表面に付着していた微粉末を分離するということができる。 なお、請求人は、「引用文献1に記載された発明においては、蓄熱媒体25が集塵機15まで搬送された段階では、付着物(粉塵以外のスケールやフラックスも含む)は未だ蓄熱媒体25に付着しています。」、「本願請求項1、2に規定している付着物(スラッジや硫黄化合物)を除去するためにも洗浄装置21が必要になります。」と主張しているが、本願補正発明において、付着物は何ら特定されておらず、かつ、レシーバタンクへの移送過程で付着物を全て分離するとは特定されていないことから、請求人の主張は採用できない。 上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「燃焼バーナに取り付けられた蓄熱器7の球状の蓄熱媒体25を洗浄する蓄熱媒体の洗浄方法であって、 前記球状の蓄熱媒体25を前記蓄熱器7内から排出管23を介してサイクロン15内に一旦取り込む取り込み工程と、当該取り込み工程にて前記サイクロン15に取り込んだ前記球状の蓄熱媒体25を、さらに洗浄装置21で洗浄し、充填管24を介して前記蓄熱器7内に再び充填する充填工程とを備え、 前記取り込み工程では、前記サイクロン15に管路16、バグフィルタ17、管路18を介して接続された真空ポンプ19の吸引力により、前記球状の蓄熱媒体25を前記蓄熱器7内から前記排出管23の内部を移動させて前記サイクロン15に取り込み、前記球状の蓄熱媒体25は排出管23の内部を移動する過程において、前記球状の蓄熱媒体25は前記排出管23の内部を移動することで前記球状の蓄熱媒体25の表面に付着していた微粉末を分離し、前記分離した微粉末を前記サイクロン15内から前記真空ポンプ19により吸引して取り除くとともに、 前記充填工程では、洗浄装置21で洗浄された前記球状の蓄熱媒体25を前記洗浄装置21から前記充填管24を通って前記蓄熱器7内に再び充填する蓄熱媒体の洗浄方法。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「燃焼バーナ」、「蓄熱器7」、「球状の蓄熱媒体25」は、本願補正発明の「蓄熱式バーナ」、「蓄熱層」、「ボール状蓄熱体」に、それぞれ相当するから、引用発明の「燃焼バーナに取り付けられた蓄熱器7の球状の蓄熱媒体25」は、本願補正発明の「蓄熱式バーナの蓄熱層に配置されたボール状蓄熱体」に相当し、以下同様に、 「蓄熱媒体の洗浄方法」は「蓄熱体の清掃方法」に、 「排出管23」は「第1管状体」に、 「サイクロン15」は「レシーバタンク」に、 「充填管24」は「第2管状体」に、 「蓄熱器7内に再び充填する充填工程」は「蓄熱層内に再び充填する充填工程」に、 「前記球状の蓄熱媒体25を前記蓄熱器7内から前記排出管23の内部を移動させて前記サイクロン15に取り込」むことは「前記ボール状蓄熱体を前記蓄熱層内から前記第1管状体内を移送して前記レシーバタンクに取り込」むことに、 「前記球状の蓄熱媒体25は排出管23の内部を移動する過程」は「前記第1管状体内における前記ボール状蓄熱体の移送過程」に、 「前記球状の蓄熱媒体25は前記排出管23の内部を移動すること」は「前記ボール状蓄熱体を前記第1管状体内を循環させること」に、 「前記充填管24を通って前記蓄熱器7内に再び充填する」ことは「前記第2管状体を介して前記蓄熱層内に再び充填すること」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明の「真空ポンプ19」は、サイクロン15に管路16、バグフィルタ17、管路18を介して接続され、サイクロン15内を吸引するものであるから、本願補正発明の「レシーバタンクに吸引管を介して接続されているバキューム車で構成される吸引手段」と「レシーバタンクに接続されている吸引手段」として共通し、引用発明の「真空ポンプ19の吸引力」は本願補正発明の「吸引手段が前記レシーバタンク内を吸引することで発生する吸引力」に対応する。 また、引用発明の「微粉末」は、球状の蓄熱媒体25の表面に付着していたものを含むから、本願補正発明の「付着物」と、「付着物質」として共通し、引用発明の「前記球状の蓄熱媒体25の表面に付着していた微粉末を分離」することは、本願補正発明の「前記ボール状蓄熱体表面から付着物を分離」することと、「前記ボール状蓄熱体表面から付着物質を分離」することで共通する。 さらに、引用発明の「洗浄装置21で洗浄された」「球状の蓄熱媒体25」は微粉末を分離した球状の蓄熱媒体25であるから、本願発明の「付着物を分離した」「ボール状蓄熱体」に相当する。 そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「蓄熱式バーナの蓄熱層に配置されたボール状蓄熱体を清掃する蓄熱体の清掃方法であって、 前記ボール状蓄熱体を前記蓄熱層内から第1管状体を介してレシーバタンク内に一旦取り込む取り込み工程と、当該取り込み工程にて前記レシーバタンクに取り込んだ前記ボール状蓄熱体を第2管状体を介して前記蓄熱層内に再び充填する充填工程とを備え、 前記取り込み工程では、前記レシーバタンクに接続されている吸引手段が前記レシーバタンク内を吸引することで発生する吸引力により、前記ボール状蓄熱体を前記蓄熱層内から前記第1管状体内を移送して前記レシーバタンクに取り込み、前記第1管状体内における前記ボール状蓄熱体の移送過程において、前記ボール状蓄熱体を前記第1管状体内を循環させることで前記ボール状蓄熱体表面から付着物質を分離し、前記分離した付着物質を前記レシーバタンク内から前記吸引手段により吸引して取り除くとともに、 前記充填工程では、前記付着物を分離した前記ボール状蓄熱体を前記第2管状体を介して前記蓄熱層内に再び充填する蓄熱体の清掃方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 (相違点1) 吸引手段について、本願補正発明では「レシーバタンクに吸引管を介して接続されているバキューム車で構成される」ものであるのに対して、引用発明では「サイクロン15に管路16、バグフィルタ17、管路18を介して接続された真空ポンプ19」である点。 (相違点2) ボール状蓄熱体表面からの付着物質の分離及び充填工程について、本願補正発明では、第1管状体内におけるボール状蓄熱体の移送過程において、前記ボール状蓄熱体を前記第1管状体内を循環させることで前記ボール状蓄熱体表面から付着物を分離し、付着物を分離した前記ボール状蓄熱体をレシーバタンクから第2管状体を介して蓄熱層内に再び充填するのに対して、引用発明では、球状の蓄熱媒体25は排出管23の内部を移動する過程において、前記球状の蓄熱媒体25は前記排出管23の内部を移動することで微粉末を分離し、さらに洗浄装置21で洗浄された前記球状の蓄熱媒体25を前記洗浄装置21から充填管24を通って蓄熱器7内に再び充填する点。 3-3.相違点の判断 (相違点1) 粉塵の吸引や浚渫など吸引力が必要な場合に、吸引手段としてバキューム車を用いることは、従来周知(特開2002-22139号公報(段落【0009】参照)、特開平11-293698号公報(段落【0030】参照))であり、真空ポンプ19に代えてバキューム車を用いて相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が設計的事項として容易に成し得たことである。 (相違点2) 本願補正発明における「ボール状蓄熱体表面からの付着物質の分離」が、引用発明では、蓄熱媒体の排出管の内部を移動する過程での微粉末の分離だけでなく、洗浄装置21で洗浄によっても行われるものであるが、蓄熱媒体の排出管の内部を移動する過程での蓄熱媒体の表面からの付着物の分離で蓄熱媒体の清掃が十分とするならば、「洗浄装置21で洗浄」を省くことは、当業者であれば適宜採用することができる程度の事項にすぎないものである。 そして、洗浄装置21での洗浄を省けば、球状の蓄熱媒体25はサイクロン15から充填管24を通って蓄熱器7内に再び充填すること、本願補正発明でいえば、ボール状蓄熱体をレシーバタンクから第2管状体を介して蓄熱層内に再び充填することになるものである。 してみると、引用発明において、洗浄装置21での洗浄を省いて、相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が必要とされる清掃の程度に基づいて容易に想到することができる程度のものであって、格別創意を要することではない。 また、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものではない。 ところで、請求人は「付着物の除去のために洗浄装置21による洗浄作業が必要になるため、蓄熱体の清掃作業が簡単に行えず、作業時間も本発明に比べ長時間となります。」旨主張しているが、引用発明において、相違点1で判断したように吸引手段として必要な吸引力を得るためにバキューム車を用いることは設計事項の範囲であることから、その場合は本願補正発明と同様の付着物の分離の作用効果を奏するものであることは、当業者であれば容易に理解できるから、請求人の上記主張は採用することができない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび 以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年3月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「蓄熱式バーナの蓄熱層に配置されたボール状蓄熱体を清掃する蓄熱体の清掃方法であって、 前記ボール状蓄熱体を前記蓄熱層内から第1管状体を介してレシーバタンク内に一旦取り込む取り込み工程と、当該取り込み工程にて前記レシーバタンクに取り込んだ前記ボール状蓄熱体を第2管状体を介して前記蓄熱層内に再び充填する充填工程とを備え、 前記取り込み工程では、前記レシーバタンクに接続されている吸引手段が前記レシーバタンク内を吸引することで発生する吸引力により、前記ボール状蓄熱体を前記蓄熱層内から前記第1管状体内を移送して前記レシーバタンクに取り込み、前記第1管状体内における前記ボール状蓄熱体の移送過程において、前記ボール状蓄熱体を前記第1管状体内を循環させることで前記ボール状蓄熱体表面から付着物を分離し、前記分離した付着物を前記レシーバタンク内から前記吸引手段により吸引して取り除くとともに、 前記充填工程では、前記付着物を分離した前記ボール状蓄熱体を前記レシーバタンクから前記第2管状体を介して前記蓄熱層内に再び充填することを特徴とする蓄熱体の清掃方法。」 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2」「3-1.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2」「1.」の本願補正発明において、「吸引手段」についての限定を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記「第2」「3-3.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-18 |
結審通知日 | 2012-05-22 |
審決日 | 2012-06-05 |
出願番号 | 特願2006-53076(P2006-53076) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F28D)
P 1 8・ 575- Z (F28D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 勝司、千壽 哲郎 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 長浜 義憲 |
発明の名称 | 蓄熱体の清掃方法及びその装置 |
代理人 | 田中 秀▲てつ▼ |
代理人 | 小西 恵 |
代理人 | 廣瀬 一 |
代理人 | 森 哲也 |
代理人 | 宮坂 徹 |