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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1260726
審判番号 不服2011-13401  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-23 
確定日 2012-07-26 
事件の表示 特願2005-253517「携帯電話装置及び携帯電話装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月15日出願公開、特開2007- 66170〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年9月1日の出願であって、平成22年8月4日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月12日付けで手続補正がなされたが、平成23年3月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年6月23日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「複数の入力ボタンと、
複数の前記入力ボタンの表面にそれぞれ設けられた前記入力ボタンに対するユーザの接触を検知する接触検知センサと、
情報を表示するとともに、表示される情報の中から特定の情報を指し示すためのマークを表示する表示部と、
複数の前記接触検知センサに接触がなされたことを条件に、複数の前記接触検知センサに接触する順番に基づいて、前記マークを移動させる制御部と、を備え、
前記制御部は、更に、複数の前記接触検知センサに接触する順番が第1の順番であるときは、前記マークを第1の方向に移動させ、複数の前記接触検知センサに接触する順番が第1の順番とは異なる第2の順番であるときは、前記マークを第1の方向とは異なる第2の方向に移動させること、
を特徴とする携帯電話装置。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-318362号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

A.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の釦が行列に配置されてなるテンキー部を備える情報端末であって、
前記テンキー部における複数の釦が所定の順序で触れられたとき、該順序に対応させて、画面のスクロール方向を規定するスクロール方向信号を出力する処理回路を有することを特徴とする情報端末。
【請求項2】
前記処理回路は、前記複数の釦が所定の順序で触られたとき、ある釦が触れた時から他の釦が触られた時までの時間に対応させて、画面のスクロール移動速度を規定するスクロール速度信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の情報端末。
【請求項3】
前記テンキー部の釦は、静電容量方式及び抵抗膜方式のいずれかのタッチセンサを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報端末。」

B.「【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る情報端末について説明する。本実施形態では、情報端末の一例として携帯電話を挙げて説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る携帯電話を示す外観図である。本実施形態に係る携帯電話1の外観は、従来の携帯電話と同一にすることができる。図2は図1に示す携帯電話1のテンキー部10を示す模式平面図である。このテンキー部10の外観も、従来の携帯電話に備えられているテンキー部と同一にすることができる。ただし、本実施形態のテンキー部10の機能は、従来における携帯電話のテンキー部の機能とは以下に述べるように異なる。
【0018】
本実施形態のテンキー部10は、「短押下」と「長押下」という時間による2つのキー入力状態と、指で触ることで指示入力が可能な第3の入力状態とが設けられている。換言すれば、テンキー部10の各キーは、「短押下」、「長押下」及び「押下なく(指などで)触れられるのみ」という3つの入力に検出することができる。従来のキーでは、「短押下」と「長押下」という時間によるキー入力状態しかなかった。
【0019】
この指で触られた状態を検出する具体的な構成としては、かねてからあるような、静電容量方式や抵抗膜方式のセンサをキートップに配置することで実現できる。各キーのキークリック感は必要なため、従来のメンブレンキーで得られるキーストロークを減らすことなく、キートップ部に静電容量電極もしくは抵抗膜を配置することで、テンキー部10の各キーのセンサとすることができる。
【0020】
このセンサが図2に示すテンキー部10において、例えば中央の一列(2、5、8、0)のキーに配置する。そして、ユーザが図1に示す矢印Y1の方向にテンキー部10を指でなぞると、キー2、キー5、キー8、キー0の順序でそれらのキーが指で触れられる。すると、各キー2、キー5、キー8、キー0から順次タッチ信号が出力され、その信号が携帯電話1のCPU(演算処理部など)に単位時間ごとに取り込まれる。なお、中央の一列(2、5、8、0)のキーの代わりに、他の列又は行のキーを用いてもよい。
【0021】
このタッチ信号(スクロール方向信号)により演算処理部は、上から下方向への移動であることが検出できるため、携帯電話1の画面に表示されている電子メールの文字や画像などを上方向(図1の矢印Y2の方向)にスクロールすることができる。
【0022】
また、上記スクロール方向信号の検出と同時に、テンキー部10の各キーから発生する信号の間隔を測ることで移動速度を検知することができ、その移動速度の検知をスクロール速度信号として出力することができる。このため、本実施形態の携帯電話1は、一行ごとのスクロール時間もしくは一度にスクロールする行数を可変して、画面のスクロール速度を移動量に合わせて変えることができる。
【0023】
また、上記とは逆に、テンキー部10においてキー0、キー8、キー5、キー2の順になぞった場合には、各キーからのセンス信号の順番が逆になるため、下方向へのスクロールであることを検出し、下方向へのスクロールが可能となる。
【0024】
図3は、テンキー部10に組み込まれたキーパット部におけるタッチセンサの構成を示す模式断面図であり、キー0、キー8、キー5、キー2の部分についての断面を示している。テンキー部10は、メンブレンキー土台11、電極部12、キートップ13、キー接点用コンタクト14、電極接続用配線15及び電極用コネクタ16を備えている。
【0025】
そして、テンキー部10は、既存のゴム製のキーパッドからなるキートップ13に、導電性の導体を埋め込みこれを電極部12としている。各キートップ13の各電極部12には、それぞれ信号線である電極接続用配線15が引き出されており、各電極接続用配線15は電極用コネクタ16に集められて、センサ処理回路に接続されている。
【0026】
図3に示す本実施形態のテンキー部10では、静電容量方式での例を示しているが、抵抗膜方式の場合は、先端の導体部を抵抗膜式タッチセンサに変える必要がある。抵抗膜方式は指が触れなくてもよく、手袋でも操作できるメリットがあるが、キー押下と併用している関係で、爪などでの傷がつく可能性もあり、構造的に弱いことが懸念される。
【0027】
図4は、タッチセンサ回路の一例を示す回路図である。本タッチセンサ回路20は、図3に示すテンキー部10における電極部12と電極接続用配線15及び電極用コネクタ16を介して接続されている。タッチセンサ回路20は、静電容量方式に対応するものである。このようなタッチセンサ回路20をセンサの数分だけ用意することで、各キーそれぞれのタッチセンサの検出が可能となる。現在における携帯電話に内蔵される集積回路では、タッチセンサ回路20を複数個内蔵する程度はまったくコストアップとはならない。
【0028】
また、このタッチセンサ回路20では、検出用のスレッショルドが可変となっていないが、指が近づいただけで「Low」レベルを出力してしまう可能性があるため、この回路のアンプ部のゲインを落とし、タッチ出力にコンパレータを接続して、比較用基準電圧を可変することでスレッショルド設定を行うことも可能となる。
【0029】
この場合、ソフトウェアによる可変のスレッショルドとすることで、センサ部の感度を変えることができ、指が触れた場合のみ「Low」レベル信号を出力することも可能となる。また感度を上げれば、手袋をした状態での入力も可能となる。
【0030】
図5は、図4に示すタッチセンサ回路20の出力信号を示している。このように、各キーに触れられたことをソフトウェア(又は図6のタッチセンサ処理回路30)で検出し、1つのキーに触れている時間t1と、順番に触れられた時間間隔t2を計測することで、スクロール方向とスクロール量を適切に検出することが可能となる。
【0031】
また、図5に示すような4つの信号が発生する繰り返し周期を測定することにより、ユーザが高速にスクロールしてほしいことが検出可能となるため、スクロール量を1行単位でなく、数行単位にしたり、スクロール処理自体に慣性を持たせるなど、アナログ感覚の処理も可能となる。
【0032】
図6は携帯電話1の構成を示すブロック図である。携帯電話1と従来の携帯電話との相違点は、携帯電話1ではタッチセンサ回路20及びタッチセンサ処理回路30を備えている点である。したがって、携帯電話1は、従来の携帯電話に備えられている高周波回路部61、信号処理回路62、演算処理部63、キーパッド64、表示部(LCD)65、メモリ66、外部インターフェース67、電源回路68、外部機器接続コネクタ69及び電池70に、タッチセンサ回路20及びタッチセンサ処理回路30を追加しただけで実現可能となっている。
【0033】
これらにより、本実施形態の携帯電話1によれば、1つのキーで3つの入力指示(短押下、長押下、タッチ)を得ることができる。そして、本実施形態の携帯電話1は、タッチパネルやタッチキーでキーパッドを構成した場合にくらべ、従来のキー(テンキー)も使用できるため、本来のキークリック感が得られ、違和感のない確実なキー入力が可能となる。
【0034】
さらに、本実施形態の携帯電話1は、画面スクロールを行う際も、文字又は数字の入力時と異なる位置にある方向キーに指を移動させる必要がないため、画面スクロールについての操作性が優れるとともに、他の端末操作性も向上させることができる。また、本実施形態の携帯電話1は、パーソナルコンピュータのマウスについているホイールでスクロールするように、指などの移動量によりアナログ的感覚で画面スクロールなどを操作することができる。」

よって、上記A,Bの記載及び関連する図面を参照すると、引用例には、実質的に、次の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「複数の釦が行列に配置されてなるテンキー部と、
前記テンキーのキートップにそれぞれ設けられた前記キーが指で触れられるとセンス信号(タッチ信号)を出力するタッチセンサと、
電子メールの文字や画像などを表示する表示部と、を備え、
キー2、キー5、キー8、キー0の順序でそれらのキーが指で触れられると、各キー2、キー5、キー8、キー0から順次タッチ信号が出力され、その信号がCPU(演算処理部など)に単位時間ごとに取り込まれ、このタッチ信号(スクロール方向信号)により演算処理部は、上から下方向への移動であることが検出できるため、画面に表示されている電子メールの文字や画像などを上方向にスクロールすることができ、キー0、キー8、キー5、キー2の順になぞった場合には、各キーからのセンス信号の順番が逆になるため、下方向へのスクロールであることを検出し、下方向へのスクロールが可能となる、
携帯電話。」

4.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例記載の発明における「釦」あるいは「キー」、「キートップ」、「タッチセンサ」、「文字や画像」、「順序」、「演算処理部」、「キー2、キー5、キー8、キー0の順序」、「上方向」、「キー0、キー8、キー5、キー2の順」、「下方向」、「携帯電話」は、それぞれ、本願発明における「入力ボタン」、「表面」、「接触検知センサ」、「情報」、「順番」、「制御部」、「第1の順番」、「第1の方向」、「第2の順番」、「第2の方向」、「携帯電話装置」に相当する。

(い)引用例記載の発明におけるタッチセンサが「キーが指で触れられるとセンス信号(タッチ信号)を出力する」ことは、キーに指で触れるのは携帯電話のユーザであると考えられるから、本願発明における接触検知センサが「入力ボタンに対するユーザの接触を検知する」ことに相当する。

(う)引用例記載の発明において、キーが指で触れられることとは、キーのキートップにそれぞれ設けられたタッチセンサに触れられることであると解されることを踏まえ、引用例記載の発明における「キー2、キー5、キー8、キー0の順序でそれらのキーが指で触れられると」と、本願発明における「複数の前記接触検知センサに接触がなされたことを条件」とは、複数の接触検知センサに接触がなされたことを契機(トリガ)とする点において一致するものである。
そして、引用例記載の発明における「キー2、キー5、キー8、キー0の順序でそれらのキーが指で触れられると、画面に表示されている電子メールの文字や画像などを上方向にスクロールすることができ、キー0、キー8、キー5、キー2の順になぞった場合には、下方向へのスクロール」を「可能と」する「演算処理部」と、本願発明における「複数の前記接触検知センサに接触がなされたことを条件に、複数の前記接触検知センサに接触する順番に基づいて、前記マークを移動させる制御部」とは、ともに、「複数の接触検知センサに接触がなされたことを条件に、複数の前記接触検知センサに接触する順番に基づいて、画面の表示を移動させる制御部」であるということができる。

(え)引用例記載の発明において、キーが指で触れられる、あるいはなぞられることとは、キーのキートップにそれぞれ設けられたタッチセンサに触れられることであると解されるから、引用例記載の発明における「キー2、キー5、キー8、キー0の順序でそれらのキーが指で触れられる」ときの当該「キー2、キー5、キー8、キー0の順序」、「キー0、キー8、キー5、キー2の順になぞった場合」の当該「キー0、キー8、キー5、キー2の順」は、それぞれ、本願発明における「複数の前記接触検知センサに接触する順番が第1の順番」、「複数の前記接触検知センサに接触する順番が第1の順番とは異なる第2の順番」に相当する。
そして、引用例記載の発明における「キー2、キー5、キー8、キー0の順序でそれらのキーが指で触れられると、画面に表示されている電子メールの文字や画像などを上方向にスクロールすることができ、キー0、キー8、キー5、キー2の順になぞった場合には、下方向へのスクロール」を「可能と」することと、本願発明における「複数の前記接触検知センサに接触する順番が第1の順番であるときは、前記マークを第1の方向に移動させ、複数の前記接触検知センサに接触する順番が第1の順番とは異なる第2の順番であるときは、前記マークを第1の方向とは異なる第2の方向に移動させること」とは、ともに、「複数の接触検知センサに接触する順番が第1の順番であるときは、画面の表示を第1の方向に移動させ、複数の前記接触検知センサに接触する順番が第1の順番とは異なる第2の順番であるときは、前記画面の表示を第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる」ことであるということができる。

上記(あ)?(え)の事項を踏まえると、本願発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「複数の入力ボタンと、
複数の前記入力ボタンの表面にそれぞれ設けられた前記入力ボタンに対するユーザの接触を検知する接触検知センサと、
情報を表示する表示部と、
複数の前記接触検知センサに接触がなされたことを条件に、複数の前記接触検知センサに接触する順番に基づいて、画面の表示を移動させる制御部と、を備え、
前記制御部は、更に、複数の前記接触検知センサに接触する順番が第1の順番であるときは、前記画面の表示を第1の方向に移動させ、複数の前記接触検知センサに接触する順番が第1の順番とは異なる第2の順番であるときは、前記画面の表示を第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる、
携帯電話装置。」
である点。

(相違点)
相違点1:「表示部」が、本願発明においては「表示される情報の中から特定の情報を指し示すためのマークを表示する」ものであるのに対し、引用例記載の発明においてはそのようなものではない点。

相違点2:複数の接触検知センサに接触する順番に基づいた方向に移動させられる「画面の表示」が、本願発明においては「表示される情報の中から特定の情報を指し示すためのマーク」であるのに対し、引用例記載の発明においてはスクロールさせられ得る「画面」に表示される情報の全体である点。

5.判断
そこで、上記相違点1,2について検討する。
表示部が、表示される情報の中から特定の情報を指し示すためのマークを表示するものであり、制御部が、複数の接触検知センサに接触する順番に基づいた方向に前記マークを移動させるものは、例えば、特開平11-194882号公報の段落【0015】?段落【0017】、図12、図15?図18や、特開平11-195353号公報の段落【0026】、図29、特開2002-149308号公報の段落【0023】、図5等に記載されているように、周知技術である。
したがって、引用例記載の発明において、上記周知技術を適用して、表示部を、表示される情報(文字や画像)の中から特定の情報(文字や画像)を指し示すためのマークを表示するものとし、また、制御部(演算処理部)を、複数の接触検知センサ(複数のキーのタッチセンサ)に接触する順番に基づいた方向に、画面に表示される情報の全体をスクロールさせる代わりに前記マークを移動させるものとすることは、当業者が適宜実施できたことである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-23 
結審通知日 2012-05-29 
審決日 2012-06-11 
出願番号 特願2005-253517(P2005-253517)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
甲斐 哲雄
発明の名称 携帯電話装置及び携帯電話装置の制御方法  

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