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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1260882 |
審判番号 | 不服2010-28540 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-12-17 |
確定日 | 2012-08-02 |
事件の表示 | 特願2004-274107「WEB利用可能なデバイスによるサーバベースのコンテンツの配布の開始」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日出願公開、特開2005-130472〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成16年9月21日の出願(優先権主張平成15年10月23日;米国)であって、平成21年3月27日付け拒絶理由通知に対して平成21年6月30日付けで手続補正書が提出され、平成22年3月9日付けの最後の拒絶理由通知に対して平成22年6月10日付けで手続補正書が提出されたが、平成22年8月11日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年12月17日に審判請求がなされ、同日付けで手続補正書が提出されたものである。 審判合議体は、平成23年11月16日付けで拒絶理由を通知し、これに対し、平成24年2月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されている。 第2 本願発明について 1.本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成24年2月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲1ないし21に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「通信ネットワークを介してコンテンツを配布するための方法であって、 WEB利用可能なデバイスによってファックスサーバにログオンし、前記WEB利用可能なデバイスのユーザを認証するステップと、 前記ファックスサーバに関連付けられた記憶手段に格納され前記WEB利用可能なデバイスによってアクセス可能なコンテンツのリストを生成するステップであって、前記アクセス可能なコンテンツは前記ユーザまたは前記ユーザの関係者によって前記ファックスサーバに関連付けられた記憶手段に事前に記憶される、ステップと、 前記リストを前記WEB利用可能なデバイスに提供するステップと、 前記WEB利用可能なデバイスにおけるアクセス可能なコンテンツの前記リストからの選択を受け取るステップと、 前記選択を前記ファックスサーバに伝送するステップと、 前記ファックスサーバに関連付けられた記憶装置から前記選択されたコンテンツを取り出すステップと、 1つまたは複数の指定のデバイスに関する宛先情報を前記WEB利用可能なデバイスから前記ファックスサーバに送るステップと、 前記取り出したアクセス可能なコンテンツおよび前記宛先情報をファックスサービスプロバイダに転送するステップと、 前記宛先情報に従って、前記取り出したアクセス可能なコンテンツを前記ファックスサービスプロバイダから前記1つまたは複数の指定のデバイスにファックスするステップと を備えることを特徴とする方法。」 2.当審が通知した拒絶理由の要旨 平成23年11月16日付けで当審が通知した拒絶理由の要旨は、本願発明は、特開2002-32331号公報(以下、「引用刊行物7」という。)、特開2003-234869号公報(以下、「引用刊行物8」という。)、特開平11-355503号公報(以下、「引用刊行物9」という。)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.引用刊行物に記載の発明 当審が拒絶の理由に引用した引用刊行物7には、図面とともに、次の事項が記載されている。 なお、下線は当審において付した。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータや携帯情報端末などが接続されるコンピュータネットワークにおいて、配信されたカプセル化コンテンツを受信し、あるいは蓄積し,前記したコンテンツ受信手段のインタフェースからの利用者の操作により複合複写機へとデータを受け渡すことが可能な、コンテンツ配信システムに関する。」 (イ)「【0012】 【発明が解決しようとする課題】そこで、上記課題を解決するため、本発明の目的は、利用者がコンテンツの配信を予約したり、配信先その他の情報を設定したりする際に、多機能複写機などを利用しつつ、多機能複写機あるいは携帯端末その他の利用者の端末から、利用者個々の設定・配信予約等を行うための利用者ごとに個性化されたユーザー・インターフェイスを用意することにより、利用者が誰でも、あるいはどこにいても、コンテンツの受信やその予約あるいは指定端末への配信等を行うシステム及び方法、並びにこれらを実現するためのインターフェイスを提供することにある。」 (ウ)「【0042】以下、本発明のシステムにおける基本的な処理の流れの一例を、図を用いて説明する。図3は、本発明のサーバと複合機能付複写機の基本的な機能を示す機能ブロック図である。また図4は、本発明のシステムの基本的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。 【0043】利用者は初めに、複合機能付複写機、又は携帯電話その他の端末を用いて、コンテンツをメニュー等により選択し、ダウンロード等するための画面を表示するよう、URLの入力その他の方法により表示要求を行う(S1)。表示要求の情報は、本発明のサーバが受信する。コンテンツ選択メニュー、検索メニュー等を表示するステップの前に、利用者の情報等を認証するステップを経る場合には、認証画面を表示するための情報をサーバ側が作成し、送信する(S2)ことにより、利用者の端末又は複合複写機に備えられた表示部(液晶画面等)にユーザー認証画面を表示する(S3)。これは例えば、システムの管理者から発行されたIDとパスワードを入力して認証がされると、Webサイトの次の画面に進めるというものである。また個々のIDやパスワードは、アクセスする者が自分の情報等を入力・送信して個人情報の登録を行い、その返信の電子メール等で発行してもらうという形態が多くとられる。この場合には、個人情報(認証情報)は通常、認証サーバーに格納され、次回以降にアクセスしてIDとパスワード等を入力・送信した際に格納された認証情報を参照して、その認証通過の可否を判断する。 【0044】さらに、請求項8に記載の発明のように、カプセル化コンテンツを複写機から複写させるための、個人認証手段が、利用者の携帯端末等の端末に備えられるようにしてもよい。また認証は、コンテンツを選択等した後の、ダウンロードをしたり出力をしたりする段階になって行うなどの方法をとることもできる。この例では、S4において認証がなされると、サーバは利用者端末又は複合機能付複写機に対しメニュー画面送信し(S5)、端末画面にコンテンツ選択や、ジャンル等の選択、あるいは検索等を行うためのメニューが表示される(S6)。 【0045】利用者は、メニューに従って情報選択し、サーバ側にその情報を送信する(S7)。また再選択を行ったり(S11)、S8において検索を行ったりすることが可能である。検索を行うためのキーとなるインデックス情報は、前記のセンターサーバに格納され、コンテンツそのものに関連付けられたデータ、例えばコンテンツのジャンルや分野、ファイルの種類、ファイルのデータ・サイズ、有料コンテンツの料金、著作権等に関するデータ、その他のデータなどを用いることが可能である。これらのデータは、利用者が前記のコンテンツ受信手段のインターフェイスにより操作するために用いるメニューとしても利用することができる。またダウンロードするコンテンツを選択したり、あるいは外部記憶装置等にダウンロードする前に端末画面において拡大表示等をする場合などに、本発明において特徴的なことは、サムネイルを用いたインターフェイスを端末画面に表示させる。そのため、例えば表示されたメニューからあるジャンルを利用者が選択し、具体的にいずれのコンテンツを選択するかのステップまできた際などに、それまでに選択あるいは検索等されたジャンルのインデックス情報に関連付けられたコンテンツの、サムネイル情報をサーバ側の前記コンテンツ送信手段がセンターサーバから取得し、ピックアップして、利用者の端末画面に表示されるようにファイルが送信される。(S9) 【0046】このサムネイルが表示された画面の一例を示す画面イメージ図が図5である。サムネイルが表示される画面は、例えばHTMLファイルなどであり、ブラウザソフトを介して表示され(S10)、コンテンツのサムネイルにはコンテンツ自体へのリンクが張られ、それをクリックすると拡大表示がされるように設定することもできる。あるいは「コンテンツのダウンロード」、「コンテンツの拡大表示」のようなボタンを設定することもできる。あるいはコンテンツのサムネイルを見て、さらに別のコンテンツを検索したり、メニューにもどったりすることもできる(S11) 【0047】次のステップで利用者がコンテンツを選択して(S12)、コンテンツをダウンロードしたり、コンテンツの送信先やその他の設定を行って(S13)、その情報をサーバ側に送信することにより、配信の予約を行う(S14)。配信の予約は携帯電話やパーソナル・コンピュータなどの利用者の端末から行われるほか、図3において、複合機能付複写機に備えられた通信部から行う場合も含むものである。サーバ側では、配信予約の情報を受信し、記憶する(S15). 【0048】配信の予約にあたっては、請求項3に記載の発明のように、カプセル化コンテンツに関連づけられた参照情報に基づき,コンテンツの受信、ダウンロード、印刷等をするか否かを選択可能なメニューを備える、コンテンツ受信手段のインターフェイスを用いることができる。 【0049】また、配信の予約にあたっては、請求項4に記載のインターフェイスのように、カプセル化コンテンツに関連づけられた参照情報に基づき,コンテンツを受信等する際に、コンテンツのデータ容量、コンテンツの受信数などの制限、コンテンツの情報精度、その他の設定等を選択可能な、コンテンツ受信手段のインターフェイスを用いることができる。 【0050】コンテンツの配信要求の送信は、前記したように、例えばコンビニエンスストア等の不特定多数が利用可能に設置されている複合機能付複写機を通じて配信要求を送信し、同じその複合機能付複写機により配信を受けることができる。あるいは、コンテンツの配信先は、別の場所に設置されている複合機能付複写機に対して行うことができる。請求項6に記載の発明のように、ネットワークに接続される複数の複合機能付複写機等の端末に対してコンテンツ配信等を行うことが可能なシステムとすることもできる 一方、無差別かつ無制限にコンテンツを送信するなどの悪用その他の弊害を防ぐため、上述のように、コンテンツのデータ容量、コンテンツの受信数などの制限などを設定し、あるいは上限などを設定できるように前記インターフェイスを用いることも可能であり、有用である。 【0051】また、コンテンツ配信要求の送信は、例えば請求項9に記載の発明のように、携帯電話その他の等直接コンテンツを保持していない複写機以外の機器、例えば利用者の所有する端末などから行われ、そのコンテンツ配信要求の条件を満たすコンテンツのデータを、いずれかの場所に設置された一又は複数の複写機が、データサーバから受信可能なようにすることも可能である。 【0052】次に、S14において配信予約がされ、サーバ側で配信予約の情報を受信し、記憶された情報は、コンテンツの送信又は受信先、あるいは課金情報その他の利用者に関する情報に関連付けられる等して、ユーザーごとに個性化された情報ファイルとして本発明のシステムのサーバ側に記憶させることができる。ここで配信予約の情報が記憶された後に、請求項12に記載の発明のように、利用者が、コンテンツが配信される日時や、コンテンツの保存日数の設定、コンテンツ配信先の端末等を指定して、配信予約・変更・消去等ができるようにすることができ、また望ましい実施形態である(S16)。 【0053】以上の配信要求の設定、送信、サーバ側での受信、記憶により、配信要求にしたがった日時、送信先、その他の指定内容で、選択されたコンテンツが送信される(S17)。受信されたコンテンツは(S18)、複合機能付複写機に備えられた表示部(液晶画面等)において表示させ、あるいはプリントなどの出力を行い、又は複合機能付複写機に備えられあるいは外部接続された出力機器により、フロッピー(登録商標)ディスク、メモリースティック、スマートメディア、MOその他の外部記憶装置に出力等をすることができる(S19)。複合機能付複写機にダウンロードされたコンテンツは、請求項13に記載の発明のように、請求項12に記載の発明において、カプセル化コンテンツに関連づけられた参照情報に基づき、表示画面のインターフェイスを操作して、不要になったコンテンツを消去する機能を備えることができる。機密性の高いコンテンツを受領後に消去する場合などに有用である。あるいは、受信したコンテンツをさらに通信機能を用いて他の端末に転送することなどもできる。 (中略) 【0057】また、本発明の他の実施形態としては、請求項14に記載の発明のように、請求項1又は5?10に記載の発明において、前記システムにはさらに、利用者がコンテンツを送信し、コンテンツをカプセル化して前記コンテンツ格納手段に格納するためのコンテンツ・カプセル化手段が備えられている、請求項1又は5?10のいずれかに記載のコンテンツ配信システムがあげられる。この実施形態によれば、利用者がFTPその他の方法によりコンテンツを送信すると、前記のセンターサーバにおいて、コンテンツに関連付けられたデータ、例えば利用者に関するデータ等や、コンテンツのジャンルや分野、ファイルの種類、コンテンツのサムネイル、ファイルのデータ・サイズ、有料コンテンツの料金、著作権等に関するデータ、その他のデータなどのデータを付加する処理が行われる。コンテンツそのものは前記のコンテンツサーバに格納され、カプセル化されることにより、利用者が格納したコンテンツを配信させることができるようになる。」 上記(ア)?(ウ)によれば、引用刊行物7には、以下の発明(以下、「刊行物7発明」という。)が記載されている。 [刊行物7発明] (エ)「コンピュータや携帯電話、複合複写機が接続されるコンピュータネットワークにおいて、利用者がコンテンツを送信したコンテンツがコンテンツサーバに格納され、利用者が格納したコンテンツを配信させることができるコンテンツの配信を行う方法であって、 利用者はコンテンツ配信の際に、利用者端末を用いて、コンテンツをメニューにより選択するための画面を表示するよう、URLの入力により表示要求を行い(S1)、 認証画面を表示するための情報をサーバ側が作成し、送信し(S2)、 利用者端末に備えられた表示部にユーザー認証画面を表示し(S3)、 システムの管理者から発行されたIDとパスワードを入力して認証がされ(S4)、 サーバは利用者端末に対しメニュー画面送信し(S5)、 端末画面にコンテンツ選択や、ジャンル等の選択、あるいは検索等を行うためのメニューが表示され(S6)、 利用者は、メニューに従って情報を選択し、サーバ側にその情報を送信し(S7)、 選択あるいは検索等されたジャンルのコンテンツのサムネイル情報をサーバ側で取得し、利用者の端末画面に表示されるようにファイルが送信され(S9)、 利用者の端末画面にコンテンツのサムネイル情報の一覧が表示され(S10)、 利用者がコンテンツを選択して(S12)、 コンテンツの送信先の設定を行って(S13)、 その情報をサーバ側に送信することにより、配信の予約を行い(S14)、 利用者の配信要求にしたがった内容で、選択されたコンテンツが複合複写機に対して送信される(S17) コンテンツの配信を行う方法。」 4.本願発明と刊行物7発明との対比 刊行物7発明の「コンピュータや携帯電話、複合複写機が接続されるコンピュータネットワーク」は本願発明の「通信ネットワーク」に相当し、刊行物7発明の「コンテンツの配信を行う」ことは、本願発明の「コンテンツを配布する」ことであるので、刊行物7発明と本願発明とは、「通信ネットワークを介してコンテンツを配布するための方法」である点で共通する。 刊行物7発明の「利用者」は本願発明の「ユーザ」に相当し、刊行物7発明の「利用者端末」は「URLの入力」が可能なものであって「コンピュータネットワーク」を利用するものであって、本願発明の「WEB」を利用するものであるといえることから、刊行物7発明の「利用者端末」は本願発明の「WEB利用可能なデバイス」に相当する。 また、刊行物7発明は「認証画面を表示するための情報をサーバ側が作成し、送信し(S2)」、「利用者端末に備えられた表示部にユーザー認証画面を表示し(S3)」、「システムの管理者から発行されたIDとパスワードを入力して認証がされ(S4)」る動作を行うもの、すなわち、「利用者端末」によって「サーバ」にログオンし、「サーバ」が「利用者端末」の「利用者」を認証する動作を行うものであることから、刊行物7発明と本願発明とは、「WEB利用可能なデバイスによってサーバにログオンし、前記WEB利用可能なデバイスのユーザを認証するステップ」を有するものである点で一致する。 刊行物7発明の「コンテンツサーバ」は刊行物7発明の「サーバ」を構成する複数のサーバのうちの一つであって、「コンテンツ」を格納する機能を有するものであって、本願発明の「サーバに関連付けられた記憶手段」に相当する。 そして、刊行物7発明は「選択あるいは検索等されたジャンルのコンテンツのサムネイル情報をサーバ側で取得し、利用者の端末画面に表示されるようにファイルが送信され(S9)」る動作を行うものであって、すなわち、「コンテンツのサムネイル情報の一覧」を生成する動作と、「コンテンツのサムネイル情報の一覧」を「利用者端末」に送信する動作を行うものであって、当該「コンテンツのサムネイル情報の一覧」は「利用者端末」からアクセスができる「コンテンツ」の「一覧」であって本願発明の「アクセス可能なコンテンツのリスト」に他ならない。 よって、刊行物7発明と本願発明とは「前記サーバに関連付けられた記憶手段に格納され前記WEB利用可能なデバイスによってアクセス可能なコンテンツのリストを生成するステップ」、「前記リストを前記WEB利用可能なデバイスに提供するステップ」を有するものである点で一致する。 ここで、刊行物7発明における「コンテンツ」は、刊行物7発明のコンテンツの配信に関する一連の動作が行われる前に「利用者が送信し」、「コンテンツサーバに格納され」るものであることから、刊行物7発明と本願発明とは「前記アクセス可能なコンテンツは前記ユーザによって前記サーバに関連付けられた記憶手段に事前に記憶される、ステップ」を有するものである。 刊行物7発明は「利用者がコンテンツを選択して(S12)」、「コンテンツの送信先の設定を行って(S13)」、「その情報をサーバ側に送信する」ものであって、刊行物7発明の「利用者端末」はコンテンツの選択を受け付ける動作、当該受け付けた選択結果を「サーバ」に送信する動作、「コンテンツの送信先の設定」に関する情報を「サーバ」に送信する動作を行うものであることから、刊行物7発明と本願発明とは、「前記リストを前記WEB利用可能なデバイスにおけるアクセス可能なコンテンツの前記リストからの選択を受け取るステップ」、「前記選択を前記サーバに伝送するステップ」、「指定のデバイスに関する宛先情報を前記WEB利用可能なデバイスから前記サーバに送るステップ」を有するものである点で一致する。 刊行物7発明は「利用者の配信要求にしたがった内容で、選択されたコンテンツが複合複写機に対して送信される(S17)」もの、すなわち、「コンテンツサーバ」に格納された「コンテンツ」を「複合複写機」に対して送信するものであると共に、「複合複写機」はファックス機能を当然備えるものであって、処理対象となるデータのやりとりをファックス通信動作によって行うものであることから、刊行物7発明と本願発明は「前記サーバに関連付けられた記憶装置から前記選択されたコンテンツを取り出すステップ」と「前記宛先情報に従って、前記取り出したアクセス可能なコンテンツを前記指定のデバイスにファックスするステップ」を有するものである点で一致する。 したがって、刊行物7発明における構成要素を本願発明において用いられている用語に置き換えれば、本願発明と刊行物7発明は以下の点で一致、あるいは相違する。 [一致点] (オ)「通信ネットワークを介してコンテンツを配布するための方法であって、 WEB利用可能なデバイスによってサーバにログオンし、前記WEB利用可能なデバイスのユーザを認証するステップと、 前記サーバに関連付けられた記憶手段に格納され前記WEB利用可能なデバイスによってアクセス可能なコンテンツのリストを生成するステップであって、前記アクセス可能なコンテンツは前記ユーザまたは前記ユーザの関係者によって前記サーバに関連付けられた記憶手段に事前に記憶される、ステップと、 前記リストを前記WEB利用可能なデバイスに提供するステップと、 前記WEB利用可能なデバイスにおけるアクセス可能なコンテンツの前記リストからの選択を受け取るステップと、 前記選択を前記サーバに伝送するステップと、 前記サーバに関連付けられた記憶装置から前記選択されたコンテンツを取り出すステップと、 指定のデバイスに関する宛先情報を前記WEB利用可能なデバイスから前記サーバに送るステップと、 前記宛先情報に従って、前記取り出したアクセス可能なコンテンツを指定のデバイスにファックスするステップと を備えることを特徴とする方法。」 [相違点] (カ)コンテンツの配信のための各種制御動作を行うサーバについて、本願発明は「ファックスサーバ」が各種制御動作を行うものであるのに対し、刊行物7は「コンテンツサーバ」を一つの構成要素として含む「サーバ」が各種制御動作を行うものである点。 (キ)記憶手段に事前に格納される「コンテンツ」について、本願発明は「前記ユーザまたは前記ユーザの関係者」によって記憶されるものであるのに対し、刊行物7発明では単に「利用者」、すなわち、「ユーザ」によって格納されるものである点。 (ク)コンテンツが配信される「指定のデバイス」について、本願発明は「1つまたは複数」とするものであるのに対し、刊行物7発明は送信先の設定数について言及されていない点。 (ケ)本願発明は「前記取り出したアクセス可能なコンテンツおよび前記宛先情報をファックスサービスプロバイダに転送するステップ」を有すると共に、「前記取り出したアクセス可能なコンテンツを前記ファックスサービスプロバイダから前記1つまたは複数の指定のデバイスにファックスする」ものであるのに対し、刊行物7発明は当該「ファックスサービスプロバイダ」について言及されていない点。 5.当審の判断 上記相違点(カ)について検討する。 ファクシミリを含む通信ネットワークの技術分野において、ファックスサーバを用いてコンテンツ配信を行うことは、例えば、引用刊行物8にあるようにごく普通に行われていることであり、刊行物7発明における「サーバ」を上記周知慣用された「ファックスサーバ」に置換して、本願発明の構成とすることは、当業者にとって想到困難な事項ではない。 上記相違点(キ)について検討する。 コンテンツ配信を行うためのコンテンツを事前に格納する動作を行う者の対象範囲をどのようにするかは当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎず、刊行物7発明においてコンテンツの格納する動作を行う者の範囲をユーザの関係者まで拡張して、本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。 上記相違点(ク)について検討する。 ファクシミリを含む通信ネットワークの技術分野において、データ送信を行う宛先を1つ指定することはもとより、これに限ることなく複数指定することは、例示するまでもなく、ごく普通に行われていることであるから、刊行物7発明における「送信先」を「1つまたは複数」設定して、本願発明の構成とすることは、当業者にとって想到困難な事項ではない。 上記相違点(ケ)について検討する。 通信回線を通じてファクシミリ受信可能な端末にコンテンツをファックスする際に、データ送信をファックスサービスプロバイダが行うことは、例えば、引用刊行物9にあるように周知の技術にすぎず、刊行物7発明に当該周知の技術を適用して、本願発明の構成とすることは、当業者にとって想到困難な事項ではない。 そして、これら相違点(カ)?(ケ)を総合的に判断してみても、本願発明が格別顕著な構成であり、格別顕著な効果を奏するものであるということはできない。 6.付記 審判請求人は、平成22年12月17日付け手続補正書にて、請求項1、8における「アクセス可能なコンテンツのリスト」に関して、「前記リストは前記WEB利用可能なデバイスによって入手できるコンテンツのみを含み」なる記載を追加する補正を行った後に、平成23年11月16日付けの当審の拒絶理由通知における 「(2)請求項1、8には、「前記リストは前記WEB利用可能なデバイスによって入手できるコンテンツのみを含み」と記載されているが、当該「のみ」という記載は「前記WEB利用可能なデバイスによって入手できるコンテンツ」以外の「コンテンツ」の存在を示唆するものであるが、当該「コンテンツ」がどのような「コンテンツ」を指すとするのか不明である。 (当該「のみ」という記載は、平成22年12月17日付けの手続補正において補正されたものであるが、当該補正の根拠が不明である。)」 という指摘に対して、平成24年2月16日付け手続補正書において、請求項1、8における「アクセス可能なコンテンツのリスト」に関して、「前記ファックスサーバに関連付けられた記憶手段に格納され前記WEB利用可能なデバイスによってアクセス可能なコンテンツのリスト」とする補正を行っている。 本願発明の「アクセス可能なコンテンツのリスト」は「前記ファックスサーバに関連付けられた記憶手段に格納され前記WEB利用可能なデバイスによってアクセス可能」であって、「前記ユーザまたは前記ユーザの関係者によって前記ファクスサーバに関連付けられた記憶手段に事前に記憶される」という事項によって特定される「コンテンツ」から構成されるものであるが、上記の経緯をふまえて、当該「アクセス可能なコンテンツのリスト」の内容を一部拡大して解釈した場合について、以下において言及する。 (1)上記「前記WEB利用可能なデバイス」とは、請求項において当該箇所に先行する「前記WEB利用可能なデバイスによってファックスサーバにログオンし、前記WEB利用可能なデバイスのユーザを認証するステップ」で認証されたユーザが使用しているデバイスである。 そうすると、本願発明の「前記WEB利用可能なデバイスによってアクセス可能なコンテンツのリスト」とは、同一ユーザであってもユーザが使用する「WEB利用可能なデバイス」によって異なるものとも解されるが、発明の詳細な説明にはそのような発明は記載されておらず、請求項1?21に記載された発明を、発明の詳細な説明に記載したものとすることができなくなるから、本願発明を、同一ユーザであってもユーザが使用する「WEB利用可能なデバイス」によって異なるリストを備えるものととらえることはできない。 したがって、「前記WEB利用可能なデバイスによってアクセス可能なコンテンツのリスト」の「前記WEB利用可能なデバイス」は、「アクセス可能なコンテンツのリスト」の内容を定義するための手段を表すものではなく、「コンテンツ」へのアクセスを行うための手段を表すものであると認めざるを得ない。 してみれば、刊行物7発明における「利用者端末」も「メニュー画面」で表示される「コンテンツ」へのアクセスを行うための手段であることから、この点において、本願発明と刊行物7発明との差異は認められない。 (2)「前記アクセス可能なコンテンツ」は、「前記ユーザまたは前記ユーザの関係者によって前記ファックスサーバに関連付けられた記憶手段に事前に記憶される」ものであって、「ユーザ」によって記憶されたコンテンツ以外に、「ユーザの関係者」によって記憶されたコンテンツも含まれているが、当該「アクセス可能なコンテンツのリスト」自体が、(a)ログオンしたユーザ毎に異なるものとなる場合と、(b)ログオンしたユーザ毎に異ならずに万人に対して共通のものとなる場合とが想定される。 しかしながら、刊行物7発明は、「コンテンツ選択や、ジャンルなどの選択、あるいは検索等を行うためのメニューを表示し(S6)」、「利用者は、メニューに従って情報選択し、サーバ側にその情報を送信し(S7)」、「選択あるいは検索等されたジャンルのコンテンツのサムネイル情報をサーバ側で取得し、利用者の端末画面に表示されるようにファイルが送信され(S9)」、「利用者の端末画面にコンテンツのサムネイル情報の一覧が表示され(S10)」るもの、すなわち、当該「コンテンツのサムネイル情報の一覧」の内容は利用者の情報選択によって、如何様にもなり得るものであることが明らかであって、刊行物7発明において、当該「コンテンツのサムネイル情報の一覧」を利用者毎に異なるものとすることや、利用者毎に異ならずに万人に対して共通のものとすることは、当業者が容易に推考し得るものである。 したがって、仮に、本願発明の「アクセス可能なコンテンツのリスト」が(a)ログオンしたユーザ毎に異なるものとなる場合、(b)ログオンしたユーザ毎に異ならずに万人に対して共通のものとなる場合のいずれの場合であったとしても、そのようにすることは、刊行物7発明から当業者が容易に推考し得るものである。 (3)補正事項についての判断は前記のとおりであるが、当該「アクセス可能なコンテンツのリスト」に関するこれまでの審判請求人の主張の意図は「アクセス可能なコンテンツのリスト」がユーザが入手できるコンテンツ「のみ」に限定されるものであることと推察される。 そのような主張は、本願の明細書や図面における根拠を欠くものではあるが、仮に本願発明がそのようなものであるとしても、上記(2)で述べたように刊行物7発明において「コンテンツのサムネイル情報の一覧」の内容をどのようにするかは当業者が適宜なし得るものであって、刊行物7発明において「コンテンツのサムネイル情報の一覧」の内容を利用者が入手できるコンテンツ「のみ」に限定することは、当業者が容易に推考し得る程度のものにすぎない。 7.まとめ したがって、本願発明は、引用刊行物7に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-09 |
結審通知日 | 2012-03-12 |
審決日 | 2012-03-23 |
出願番号 | 特願2004-274107(P2004-274107) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 國分 直樹 |
特許庁審判長 |
吉村 博之 |
特許庁審判官 |
板橋 通孝 溝本 安展 |
発明の名称 | WEB利用可能なデバイスによるサーバベースのコンテンツの配布の開始 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 上田 忠 |