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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1261030
審判番号 不服2009-21033  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-30 
確定日 2012-08-01 
事件の表示 平成11年特許願第121157号「界面活性剤を含む配合物の安定化のための抗酸化剤」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月21日出願公開、特開平11-349988〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年4月28日(優先権主張(外国庁受理)平成10年10月23日、スイス国)の出願であって、平成19年5月16日付けで拒絶理由(最初)が通知され、同年11月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成20年10月8日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成21年4月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月22日付けで
平成21年4月13日の手続補正に対する補正の却下の決定、及び、拒絶査定がされ、同年10月30日に拒絶査定に対する審判が請求され、同年12月17日に審判請求書の手続補正書が提出されたものである。

第2 本願の特許請求の範囲に記載された発明
平成21年6月22日付け補正の却下の決定によって、同年4月13日の手続補正は却下されたから、本願の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、平成19年11月16日付け手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
【請求項1】 洗剤組成物であって、
(a1)式:
【化1】

(上記式において、
R_(1)は、C_(1)-C_(22)アルキルであり;
R_(2)は、C_(1)-C_(22)アルキル;又は-SO_(3)Mであり;
Qは、-C_(m)H_(2m)-;又は-CH(C_(m)H_(2m+1))-であり;
Tは、-C_(n)H_(2n)-;-(CH_(2))_(n)-O-CH_(2)-;-C_(n)H_(2n)-NH-C(O)-;又は
式(1c):
【化2】

の基であり;
Vは、-O-;又は-NH-であり;
b及びdは、互いに独立して、0;又は1であり;
eは、1?3の整数であり;そして
m、n及びpは、互いに独立して、1?3の整数であり;
eが1のとき、
R_(3)は、水素;M;C_(1)-C_(22)アルキル;又は(1f):
【化3】

の基であり;
ここで、R_(3)がC_(1)-C_(22)アルキルであるとき、b=0であり;
gは、0又は1であり;
Mは、水素;アルカリ金属;又はアンモニウムであり;
eが2のとき、
R_(3)は、直接結合;-CH_(2)-、
【化4】

-O-;又は-S-であり;そして
eが3のとき、
R_(3)は、式(1g)、(1h)、(1i)又は(1k):
【化5】

の基である)で示される抗酸化剤、並びに
(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤を含み、
成分(a1)が、50?1,000ppmの濃度で存在する、洗剤組成物。」

(以下、特許請求の範囲の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、平成20年10月8日付け拒絶理由に記載した理由によって拒絶すべきものであるというものであり、上記拒絶理由によれば、原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。

1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

理由 :1
請求項:1?3 引用文献等:2,3,5?7
<備考>
引用文献2,3に記載される抗酸化剤として、引用文献5?7に記載される抗酸化剤を採用することに特段の困難性は認められない。
また、そのことによる効果が格別なものとも認められない。

引 用 文 献 等 一 覧

2.特開平09-078085号公報
3.特開平04-372699号公報

5.特開昭49-094644号公報
6.特開平02-261839号公報

(以下、引用文献2、3、5、6を「刊行物2」、「刊行物3」、「刊行物5」、「刊行物6」という。)

第4 刊行物に記載された事項
刊行物2、3、5、6には、以下の事項が記載されている。

1.刊行物2
(1a)「【請求項1】 次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)
【化1】

(式中、R1 は炭素数5?21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示す)
で表わされるグリシン誘導体又はその塩 2?90重量%、
(B)金属キレート剤 0.01?1重量%、
(C)抗酸化剤 0.05?1重量%
を含有する洗浄剤組成物。」(【特許請求の範囲】)

(1b)「本発明で用いられる(C)成分の抗酸化剤としては、例えばトコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。…(C)成分の抗酸化剤の配合量は、全組成中に0.05?1%、好ましくは0.1?0.5%である。配合量が0.05%未満では着色及びにおいの劣化を防止することができず、一方、1%を超えると前記金属キレート剤と併用しても着色及びにおいの劣化防止効果がほぼ平衡に達してしまうので好ましくない。」(段落【0035】?【0037】)

(1c)「本発明で用いられる(B)成分の金属キレート剤としては、金属イオンをキレートする能力を有するものであれば特に制限されないが、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸…及びこれらの塩が挙げられる。これらのうち、エチレンジアミンテトラ酢酸…これらの塩が特に好ましい。」(段落【0033】)

(1d)「…使用感に優れ、低刺激な界面活性剤として、特定のグリシン誘導体を洗浄剤の主基剤として用いることが検討されている…本発明の目的は、グリシン誘導体の特性を活かしつつ、高温度保存においても着色及びにおいの劣化を防止できる洗浄剤組成物を提供することにある。」(段落【0003】?【0004】)

(1e)「実施例2
下記組成の液体洗浄剤組成物を、常法により製造した。
得られた液体洗浄剤組成物は刺激性も少なく、使用感に優れると共に、高温保存において、色調及びにおいの安定性に優れていた。
【表3】
(成分) (%)
(1)N-ココイル-N-カルボキシエチルグリシンナトリウム 25
(2)1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸 0.1
(3)ジブチルヒドロキシトルエン 0.2
(4)ラウリン酸トリエタノールアミン 5
(5)香料 0.5
(6)精製水 バランス
」(段落【0050】?【0051】)

2.刊行物3
(2a)「【請求項1】 次の成分(A)、(B)及び(C)
(A)高級脂肪酸塩
(B)一般式(1)
【化1】

(式中、R_(1 )は炭素数8?18の直鎖又は分岐鎖のアルキル、アルケニル又はアルキルフェニル基を示し、R_(2 )は炭素数2?4のアルキレン基を示し、Gは炭素数5?6の還元糖を示し、mは0?10の数を示し、nは1?10の数を示す)
で表わされる糖系界面活性剤
(C)酸化防止剤
を含有することを特徴とする洗浄剤組成物。」(【特許請求の範囲】)

(2b)「本発明に用いられる(A)成分である高級脂肪酸塩としては、例えば炭素数8?22の脂肪酸の塩基塩が挙げられる。具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などの単一脂肪酸の他…の塩基塩を挙げることができる。」(段落【0009】)

(2c)「(C)成分の酸化防止剤としては、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、グアヤク酸、ノルジヒドログアヤレチン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。」(段落【0013】)

(2d)「本発明洗浄剤組成物への(C)成分の配合量は、剤型により異なるが、0.0001?2%、特に0.001?0.5%が好ましい。」(段落【0014】)
(2e)「…この洗浄剤は、調製の際、高級脂肪酸塩の配合のため加熱すると、高級脂肪酸塩の分解臭がするという問題がある。…かかる実情において…酸化防止剤を配合すれば、洗浄力及び起泡性に優れ…更に加熱に起因する臭気の少ない清浄剤が得られることを見出し、本発明を完成した。」(段落【0004】?【0005】)


3.刊行物5
(3a)「式(I):

〔式中R_(1)及びR_(2)はそれぞれ独立に炭素原子数1?6のアルキル基を表わし、B1は基-O-(C_(x)H_(2x))-H又は-NY_(1)Y_(2)(基中xは6?30の数値を表わし、Y1は炭素原子数1?18のアルキル基、又は炭素原子数3?12のシクロアルキル基を表わし、Y_(1)は炭素原子数1?18のアルキル基、又は炭素原子数3?12のシクロアルキル基を表わし、Y_(2)は水素、炭素原子数1?18のアルキル基、又は炭素原子数5?12のシクロアルキル基を表わすか、又はY_(1)及びY_(2)はこれらが結合している窒素原子と共にピペリジノ環又はピペラジノ環を形成してもよい)を表わす〕のヒドロキシアルキルフェニル誘導体を製造するため、式(V):

〔式中R_(1)及びR_(2)は前記のものを表わす〕のフェノール化合物に対して0.001?10モル%のアルカリ触媒の存在でアクリル酸メチルを徐々に添加し、反応が完了した後生じた反応混合物に式(Ia)又は(Ib):
-O-(C_(x)H_(2x))-H 又は -NY_(1)Y_(2)
(1a) (1b)
〔式中x,Y_(1)及びY_(2)は前記のものを表わす〕
の一価アルコール又はモノアミンを前記触媒とは異なる第二のアルカリ触媒0?10モル%の存在で添加することを特徴とするヒドロキシアルキルフェニル誘導体の製法。」(第1頁特許請求の範囲第1項)

(3b)「式(I)?(IV)の化合物は高収率で、しかも不所望の副生成物をほとんど含まない状態で得られる。これらの化合物は自体公知であり、通常酸性劣化を受けやすい有機物質を安定化するため、公知操作により使用することができる。」(第8頁右下欄第18行?第9頁左上欄第2行)

(3c)「式(I)?(IV)の化合物で安定化される物質は有機合成ポリマー、…ジーゼル油、鉱油、燃料油、乾性油、切削流体、ロウ、樹脂等、脂肪酸、例えば石けん等である。一般に、式(I)?(IV)の安定剤化合物は安定化すべき物質の約0.005?10重量%の量で使用する。」(第9頁左上欄第3行?右上欄18行)

(3d)「実施例3

(図)…」(第10頁右上欄)

4.刊行物6
(4a)「フェノール系酸化防止剤を含む貯蔵安定性分散液を製造することは米国特許第3,962,123号明細書から公知である。この種の分散液は、自体固体のフェノール系酸化防止剤の他に脂肪酸石けん又は非イオン性あるいはアニオン性表面活性剤及び水を含む。このような分散液の製造は、種々の成分を混合することによって行われる。」(第4頁左上欄第9?16行)

(4b)「a)酸化防止剤30?35重量%、
b)式R-COOY(式中R及びYは前記のものを表す)の酸のアルカリ金属塩の形の表面活性剤0.8?3.5重量%、
c)式R‘-OH(式中R‘は前記のものを表わす)のアルコールの形の共表面活性剤0.8?7重量%及び
d)水54.5?68.4重量%
を含む本発明によるエマルジョンが特に好ましい。」(第9頁右下欄第1?9行)

(4c)「酸化防止剤としては、一般式(Ia):

(式中R^(1)、R^(2)及びR^(4)は前記のものを表わし、xは2又は3の数を表わす)の化合物が好ましい。」(第5頁右上欄最下行?左下欄第3行)

第5 当審の判断
「第3」に記載した本願発明についての原査定の理由の妥当性について検討する。

1.引用発明2を主引用発明とする理由について
(1)刊行物2に記載された発明
刊行物2には、摘記(1-a)よりみて、
「(A)一般式(1)
【化1】

(式中、R^(1 )は炭素数5?21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示す)
で表わされるグリシン誘導体又はその塩 2?90重量%、
(B)金属キレート剤 0.01?1重量%、
(C)抗酸化剤 0.05?1重量%
を含有する洗浄剤組成物。」
の発明が記載されている(以下、「引用発明2」という。)

(2)対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「…(C)抗酸化剤…を含有する洗浄剤組成物。」は、本願発明の「洗剤組成物であって、抗酸化剤を含み、…、洗剤組成物。」に相当する。
また、引用発明2の抗酸化剤の使用量である0.05?1重量%はppmに換算すると500?10,000ppmであり、本願発明の抗酸化剤の使用量と「500?1,000ppm」の範囲で重複する。
また、引用発明2のグリシン誘導体は、界面活性剤であり(摘記(1-d))、炭素数5?21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基(R^(1 ))を有することからみて、長鎖である場合を含むものと解されるから(本願明細書の段落【0071】?【0088】には、
これと重複する数の炭素を有する界面活性剤が(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤として複数種類例示されていると認められる。)
、本願発明の「(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤」に相当する場合を含むと認められる。
よって、両者は、
「洗剤組成物であって、…抗酸化剤、並びに(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤を含み、…(抗酸化剤が)500?1,000ppmの濃度で存在する、洗剤組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本願発明は抗酸化剤成分として「(a1)式で表される抗酸化剤」を含有するのに対して、引用発明2は「抗酸化剤」の種類を特定するものでない点
相違点2:引用発明2は「金属キレート剤 0.01?1重量%」を含有するのに対して、本願発明は金属キレート剤を使用することを特定するものでない点

(3)検討
上記の相違点1、相違点2、及び、本願発明の効果について検討する。

(i)相違点1について
刊行物5には、式(I)で表される化合物(摘記(3a))の具体例として、次の化合物が記載されていると認められる(摘記(3d))。

この化合物は、本願発明の抗酸化剤を表した(a1)式において、R_(1)、R_(2)がC_(4)のアルキル、R_(3)がC_(18)のアルキル、Vが-O-、m=2、b=1、d=0、e=1である化合物に相当するから、刊行物5には、本願発明の「(a1)式で表される」化合物が記載されているといえる。
さらに、刊行物5には、式(I)で表される化合物について、「…式(I)?(IV)の化合物は…通常酸性劣化を受けやすい有機物質を安定化するため…使用することができる」(摘記(3b))ことが記載され、安定化される有機物質として、脂肪酸、例えば石けん等を含め、多数の有機物質が例示されている(摘記(3c))。刊行物5において、酸性劣化を防止して安定化する対象としての有機物質としては、種々のものが記載されており、その記載から、広範な有機物質について式(I)?(IV)の化合物によって、酸化劣化が防止され得ることは当業者が容易に想到し得たことと認められる。
してみれば、引用発明2において、有機物質であるグリシン誘導体からなる界面活性剤について、酸化劣化を防止して安定化する場合に、引用文献5に記載された同文献中の式(I)で表される化合物を用いることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(ii)相違点2
引用発明2は、金属キレート剤として、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、すなわち、EDTAの塩、等を0.01?1重量%使用するものである(摘記(1c))。
しかしながら、本願発明は「洗剤組成物であって、…抗酸化剤、並びに(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤を含み、…洗剤組成物。」との発明特定事項からみて他成分を含むことを排除しないものであること、及び、本願明細書において本願発明の具体例として開示された本願発明品の製造についての実施例1?3はいずれも、エチレンジアミンテトラ酢酸塩に相当する「ジナトリウムEDTA」を「0.1重量%」使用するものであること(本願明細書段落【0101】?【0107】参照。)、よりみて、本願発明は金属キレート剤を0.1重量%程度、使用する場合を実質的に包含しているものと認められる。
してみれば、金属キレート剤を0.01?1重量%含有する点は、実質的な相違点とは認められない。

(iii)本願発明の効果について
本願明細書の「したがって、この新規な組成物は、色変化及び化学分解に対して高い安定性を示す。このことは、効果、色安定性、組み込みの容易性及び用いられた抗酸化剤の加水分解に対する安定性に帰するものである。」
(段落【0070】)との記載等からみて、本願発明の洗浄剤組成物は、抗酸化剤として(a1)式で表される抗酸化剤を使用することによって、洗浄剤組成物に容易に組み込まれて、酸化による色変化や化学分解を防止することによる効果を奏するものと認められる。
しかしながら、引用発明2が記載された刊行物2に「…高温度保存においても着色…の劣化を防止できる洗浄剤組成物を提供する…」、「…液体洗浄剤組成物は…高温保存において、色調…の安定性に優れていた。」(摘記(1d)、(1e))と色変化の防止の効果について、及び、抗酸化剤はその効果のために使用されるものであること(摘記(1-b))について記載されていること、及び、抗酸化剤の添加によって、石鹸等の洗浄剤成分の酸化による色変化や化学分解が防止される効果があることは、技術常識(例えば、「石鹸・界面活性剤」三雲次郎等著(日刊工業新聞社)昭和34年11月20日発行、第32?33頁「4・1・5 セッケンの変質」の項には、「商品セッケンは…その安定性すなわち保存性が重要である。…不飽和度の比較的高い脂肪酸のセッケンを相当量含む素地は,次第に表面から酸敗臭を発し,褐色を帯び…その中に酸化酸などが証明される。…変質には…その防止ないし抑制のため,…原料あるいは素地に種々の抗酸化剤を加える.例えば…ある種のフェノール…など.」と、セッケンの酸化による変色、化学変化を防止するために抗酸化剤を加えることが記載されている。)と認められることを考慮すると、(a1)式で表される抗酸化剤によって洗浄剤組成物の酸化による色変化や化学分解が防止されることは、当業者が予測し得たことと推認される。
また、本願発明で使用される(a1)式に該当する抗酸化剤を石鹸等の洗浄剤組成物と混合分散させて使用することは、例えば、刊行物6に記載されるように本出願優先日前に知られていたことと認められる(摘記(4a)?(4c))から、(a1)式で表される抗酸化剤が石鹸等の洗浄剤組成物に組み込まれ得ることも、当業者が予測し得たことと推認される。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の実施例等の記載を参照しても、
本願発明において、使用される抗酸化剤を特に(a1)式で表される抗酸化剤に限定することによって、他の抗酸化剤を使用した場合に比べて当業者が予測し得ない効果が奏されるものとも直ちには認められない。
よって、本願発明によって奏される効果は、引用文献2、5、6の記載事項、及び、技術常識に基づいて当業者が予測し得た範囲のものと認められる。

2.引用発明3を主引用発明とする理由について
(1)刊行物3に記載された発明
刊行物3には、「(A)高級脂肪酸塩
(B)一般式(1)
【化1】

(式中、R_(1) は炭素数8?18の直鎖又は分岐鎖のアルキル、アルケニル又はアルキルフェニル基を示し、R_(2 )は炭素数2?4のアルキレン基を示し、Gは炭素数5?6の還元糖を示し、mは0?10の数を示し、nは1?10の数を示す)
で表わされる糖系界面活性剤
(C)酸化防止剤
を含有する洗浄剤組成物」(摘記(2a))が記載され、(C)酸化防止剤
の使用量は0.001?0.5%が好ましいこと(摘記(2c))、及び、(A)高級脂肪酸塩としてラウリン酸カリウムを使用した実施例(摘記(2d))が記載されているから、以上を総合すると、刊行物3には、
「(A)高級脂肪酸カリウム塩
(B)一般式(1)
【化1】

(式中、R^(1 )は炭素数8?18の直鎖又は分岐鎖のアルキル、アルケニル又はアルキルフェニル基を示し、R^(2) は炭素数2?4のアルキレン基を示し、Gは炭素数5?6の還元糖を示し、mは0?10の数を示し、nは1?10の数を示す)
で表わされる糖系界面活性剤
(C)酸化防止剤
を含有し、(C)酸化防止剤の使用量が0.001?0.5%である洗浄剤組成物」の発明が記載されている(以下、「引用発明3」という。)。

(2)対比
本願発明と引用発明3とを対比する。
引用発明3の「酸化防止剤」は、本願発明の「抗酸化剤」に相当する。
また、引用発明3の「…(C)酸化防止剤を含有し…洗浄剤組成物」は、本願発明の「洗剤組成物であって、抗酸化剤を含み、…、洗剤組成物。」に相当する。
また、引用発明3の「酸化防止剤の使用量が0.001?0.5%である」との使用量はppmに換算すると10?5,000ppmであり、本願発明の抗酸化剤成分(a1)の使用量である「50?1,000ppm」を包含するものである。
そして、引用発明3の(A)高級脂肪酸カリウム塩は、炭素数8?22の脂肪酸の塩基塩であること(摘記2(c))からみて、長鎖である場合を含むものと解されるから(本願明細書の段落【0071】?【0088】には、これと重複する数の炭素を有する界面活性剤が(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤として複数種類例示されていると認められる。)、本願発明の「(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤」に相当する場合を含むと認められる。
よって、両者は、
「洗剤組成物であって、…抗酸化剤、並びに(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤を含み、…(抗酸化剤が)50?1,000ppmの濃度で存在する、洗剤組成物。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1‘:本願発明は抗酸化剤成分として「(a1)式で表される抗酸化剤」を使用するのに対して、引用発明3は、抗酸化剤成分の種類を特定するものではない点
相違点2‘:引用発明3は「糖系界面活性剤」を含有するのに対して、本願発明は糖系界面活性剤を使用することを特定するものでない点

(3)検討
上記相違点1‘、相違点2‘、及び、本願発明の効果について検討する。

(i)相違点1‘について
「1(3)(ii)」で述べたように、刊行物5には、本願発明の「(a1)式で表される」化合物に相当する化合物が記載され、さらに、該化合物について、通常酸性劣化を受けやすい有機物質を安定化するために使用することができること、及び、安定化される有機物質として、脂肪酸、例えば石けん等種々のものが記載されている。そして、その記載から、広範な有機物質について、式(I)?(IV)の化合物によって、酸化劣化が防止され得ることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
してみれば、引用発明3において、有機物質である高級脂肪酸カリウム塩について、酸化防止剤によって、分解を防止する場合に(摘記(2e))、引用文献5に記載された同文献中の式(I)で表される化合物を用いることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(ii)相違点2‘について
引用発明3の糖系界面活性剤は、炭素数8?18の直鎖又は分岐鎖のアルキル、アルケニル又はアルキルフェニル基(R^(1 ))を有することからみて、長鎖である場合を含むものと解されるから(本願明細書の段落【0071】?【0088】には、これと重複する数の炭素を有する界面活性剤が(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤として複数種類例示されていると認められる。)、本願発明の「(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤」に相当する場合を含むと認められる。
また、仮に、引用発明3の糖系界面活性剤が本願発明の「(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤」に該当しないとしても、本願発明は「洗剤組成物であって、…抗酸化剤、並びに(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤を含み、…洗剤組成物。」との発明特定事項からみて、他成分を含むことを排除しないものであるから、糖系界面活性剤を含有する点は相違点とは認められない。

(iii)本願発明の効果について
「1(3)(iii)」にも記載したように、本願発明の洗浄剤組成物は、抗酸化剤として(a1)式で表される抗酸化剤を使用することによって、洗浄剤組成物に容易に組み込まれて、酸化による色変化や化学分解を防止することによる効果を奏するものと認められる。
しかしながら、「1(3)(iii)」で、周知例(「石鹸・界面活性剤」三雲次郎等著(日刊工業新聞社)昭和34年11月20日発行、第32?33頁「4・1・5 セッケンの変質」の項)を示して述べたように、抗酸化剤の添加によって、石鹸等の洗浄剤成分の酸化による色変化や化学分解が防止される効果があることは、技術常識であるから、(a1)式で表される抗酸化剤によって、洗浄剤組成物の酸化による色変化や化学分解が防止されることは、当業者が予測し得たことと推認される。
また、本願発明で使用される(a1)式で表される抗酸化剤が、石鹸等の洗浄剤組成物と混ざり得ることは、例えば、刊行物6に記載されるように本出願優先日前に知られていたことと認められるから、(a1)式で表される抗酸化剤が石鹸等の洗浄剤組成物に組み込まれ得ることも、当業者が予測し得たことと推認される。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の実施例等の記載を参照しても、
本願発明において、使用される抗酸化剤を特に(a1)式で表される抗酸化剤に限定することによって、他の抗酸化剤を使用した場合に比べて当業者が予測し得ない効果が奏されるものとも直ちには認められない。
よって、本願発明によって奏される効果は、引用文献3、5、6の記載事項、及び、技術常識に基づいて当業者が予測し得た範囲のものと認められる。

3.請求人の主張について
請求人は、平成21年12月17日付けの審判請求書の手続補正において、引用文献2,3,5?7に記載された発明に基づく特許法第29条第2項による拒絶査定の理由に対して次の主張をしていると認められる。

(1)「…引用文献2には、(C)抗酸化剤が、どのような作用効果に寄与するのか一切記載がない。引用文献2には、洗浄剤組成物が、低刺激でその色調が劣化しないことが記載されているはいるものの(段落0001)、(B)金属キレート剤も色調の劣化防止に機能することから、(C)抗酸化剤そのものが色調の劣化防止に寄与することが示されているとはいえない。さらに、ジブチルヒドロキシトルエンをはじめ、具体的に挙げられている(C)抗酸化剤は、(a1)の抗酸化剤とは全く異なる構造を有する。…よって、引用文献2から、本願発明の(a1)の抗酸化剤を想起することはできず、また、それを(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤に組み合わせることによってもたらされる効果は予測しうるものではない。」

(2)「…引用文献3には、洗浄剤組成物が、洗浄力及び起泡性に優れ、かつ皮膚等に対する刺激性が少なく、更に加熱に起因する臭気が少ないことが記載されているが(段落0005)、その色変化に関しては何ら記載されていない。さらに、(C)抗酸化剤として例示されているジブチルヒドロキシトルエンは、(a1)の抗酸化剤とは全く異なる構造を有する。…よって、引用文献3から、本願発明の(a1)の抗酸化剤を想起することはできない。…(a1)の抗酸化剤と(b)長鎖のアルキル又はアルケニルを含む界面活性剤とを組み合わせることの示唆はなく、また、それによってもたらされる効果は、それから予測しうるものではない。」

(3)「引用文献2?3は、洗浄剤組成物に関する発明を開示しているところ、いずれも、(a1)の抗酸化剤を開示していない。一方、…引用文献5?7に記載の発明の目的は、それぞれ洗浄剤組成物とは異なる。よって、引用文献2?3の洗浄剤組成物の抗酸化剤として、引用文献5?7に記載のものを組み合わせることを想起することはできない。」

そこで、これらの主張について、検討する。

(1)の主張について
請求人は、引用文献2には、抗酸化剤が色調の劣化防止に寄与することが示されているとはいえないことを主張するが、引用文献2には抗酸化剤の使用について「…抗酸化剤の配合量は、全組成中に0.05?1%、好ましくは0.1?0.5%である。配合量が0.05%未満では着色及びにおいの劣化を防止することができず…」(摘記1b)と記載されていることよりみて、引用文献2には抗酸化剤が色調の劣化防止に寄与することが記載されているものと認められる。また、抗酸化剤の添加によって石鹸等の洗浄剤成分の酸化による色変化や化学分解が防止される効果があることは、技術常識と認められる(「1.(3)(iii)」参照。)。
また、引用文献2の「 本発明で用いられる(C)成分の抗酸化剤としては…等が挙げられる。…」(摘記(1b))との記載等からみて、引用文献2は抗酸化剤成分の種類をジブチルヒドロキシトルエンに限定するものとはいえないし、引用文献2において、抗酸化剤の種類を制約するような技術常識が存在するものとも認められない。

(2)の主張について
請求人は、引用文献3には、洗浄剤の色変化について何ら記載されていないこと、例示されてる抗酸化剤は本願発明の抗酸化剤と構造の異なるものであることを主張しているが、抗酸化剤の添加によって石鹸等の洗浄剤成分の酸化による色変化や化学分解が防止される効果があることは、技術常識と認められる(「2.(3)(iii)」参照。)。
また、引用文献3の「(C)成分の酸化防止剤としては…等が挙げられる。」(摘記(2c))との記載等からみて、引用文献3は抗酸化剤成分の種類をジブチルヒドロキシトルエンに限定するものとはいえないし、引用文献3において、抗酸化剤の種類を制約するような技術常識技術が存在するものとも認められない。

(3)の主張について
請求人は、引用文献5に記載の発明の目的は、洗浄剤組成物とは異なるから、引用文献2、3の洗浄剤組成物の抗酸化剤として、引用文献5に記載のものを組み合わせることを想起することはできないことを主張しているが、「1.(3)(ii)」、「2.(3)(ii)」で述べたとおり、引用文献5には、酸性劣化を防止して安定化する対象としての有機物質としては、種々のものが記載されており、その記載から、広範な有機物質について式(I)?(IV)の化合物によって、酸化劣化が防止され得ることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
してみれば、引用文献2、3の洗浄剤組成物の抗酸化剤として、引用文献5に記載のものを用いることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

以上のとおり、審判請求書の手続補正における請求人の主張は採用できないものである。

4.まとめ
よって、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物2ないし3、及び、刊行物5、6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の点について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-01 
結審通知日 2012-03-06 
審決日 2012-03-21 
出願番号 特願平11-121157
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂井 哲也  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 齋藤 恵
東 裕子
発明の名称 界面活性剤を含む配合物の安定化のための抗酸化剤  
代理人 齋藤 房幸  
代理人 束田 幸四郎  
代理人 伊藤 佐保子  
代理人 津国 肇  
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