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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01M |
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管理番号 | 1261039 |
審判番号 | 不服2010-16413 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-07-21 |
確定日 | 2012-08-01 |
事件の表示 | 特願2006-25244「燃料電池システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年8月17日出願公開、特開2006-216555〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成18年2月2日(パリ条約による優先権主張2005年2月2日、韓国)の出願であって、平成21年10月23日付けの拒絶理由通知に対して、平成22年1月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月5日付けで拒絶査定がなされ、この査定を不服として、同年7月21日に審判請求がされるとともに手続補正書が提出された。 その後、当審において、本願について、平成23年6月6日付けで前置報告書に基づく審尋がされ、同年8月31日付けで回答書が提出されたが、同年10月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成24年1月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 そして、その発明は、平成24年1月20日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「水素が含まれている燃料を供給する燃料供給源と; 酸素を供給する酸素供給源と; 前記燃料供給源から供給される燃料,または前記燃料から発生した水素と,前記酸素供給源から供給される酸素との電気化学的な反応によって,電気を発生させる一以上の電気発生部と; 前記電気発生部において,一酸化炭素による触媒被毒が発生して,電圧が設定値未満に低下した際に,逆電圧を印加して,前記触媒被毒を除去する被毒除去部と; を備え、 前記被毒除去部は, 前記電気発生部で発生する電圧を感知する電圧感知部と; 前記電圧感知部において感知された電圧が,設定値未満に低下した際に,前記電気発生部に逆電圧を印加するように制御する制御部と; 1次電池,2次電池,または,前記電気発生部と連結設置して電気発生部の余裕電力によって充電されるキャパシターの中で一つ以上を選択して構成され、前記制御部の制御信号によって,前記電気発生部に逆電圧を印加する補助電源と; を有し、 前記制御部は,逆電圧を印加する時間T(秒)を0.25<T≦10の範囲で設定し、前記電気発生部に逆電圧を印加する際に,同時に,前記補助電源から外部機器に対して,駆動電圧を印加するように制御する ことを特徴とする,燃料電池システム。」(以下、「本願発明」という。) 第2 当審拒絶理由の概要 当審で通知した拒絶理由の1つの概要は、本願発明は、下記の刊行物2に記載された発明及び刊行物1の記載事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 刊行物1:特開平8-7905号公報 刊行物2:特開2004-288638号公報 第3 当審の判断 1 刊行物の記載事項 (1)刊行物2 [2a]「【請求項1】 アノードと電解質とカソードとを有する燃料電池を用いて電気化学的発電を行う方法であって: 燃料を前記アノードに供給する段階と; 酸化剤を前記カソードに供給する段階と; 逆電流チャージングを前記燃料電池に間欠的に供給する段階と;を備えた方法。 【請求項2】 さらに、前記の燃料電池の作動状態をモニターすることを含む請求項1に記載の電気化学的発電を行う方法。 【請求項3】 前記燃料電池の作動状態をモニターすることが前記燃料電池のパフォーマンスの低下を示すときは、前記逆電流チャージングが生じる請求項2に記載の電気化学的発電を行う方法。 【請求項4】 前記の燃料電池の作動状態をモニターすることが前記燃料電池の電圧をモニターすることを含む請求項2に記載の電気化学的発電を行う方法。 【請求項5】?【請求項12】略 【請求項13】 前記酸化剤が空気からの酸素ガスである請求項1に記載の電気化学的発電を行う方法。」(下線は当審にて付与。以下同様) [2b]「【請求項40】 アノードと電解質とカソードとを有する燃料電池と、 前記アノードとカソードとを接続する外部電源回路と、 燃料を前記アノードに供給する第1のサプライヤーと、 酸化剤を前記カソードに供給する第2のサプライヤーと、 前記外部電源回路を介して逆電流チャージングを燃料電池に供給するコントローラと、を備えた燃料電池を前処理する装置。 【請求項41】?【請求項45】略 【請求項46】 前記コントローラは、前記燃料電池のパフォーマンス及び作動状態をモニターするように構成され配置されている請求項40に記載の装置。」 [2c]「【0007】 本発明の方法及び装置を、直接メタノール燃料電池(DMFC)に関係付けて説明する。しかしながら、本発明の方法及び装置は限定的ではないが、メタノール及びエタノールのようなカーボンベース(母体)の燃料を利用する燃料電池を含むいかなる燃料電池にも適用可能である。燃料として、純水素又は一酸化炭素(CO)で汚染された(混合された)水素を利用する水素燃料電池にも適用される。略」 [2d]「【0009】 アノードで生成した電子は、出力(電力)処理(パワープロセッシング)回路及び負荷回路(以下に説明する)を含む外部回路200を介して進む。外部回路200は、例えば、バッテリー及び/又はキャパシタを含むことができるエネルギー蓄積ユニット150を含む。燃料電池からのエネルギーは、エネルギー蓄積ユニット150の中に蓄積(セーブ)することができる。外部回路200は、必要なら、任意で、エネルギー蓄積ユニット150を適当に供給するために燃料電池からの電力を調節する第1の中間(介在)電力処理回路140を含むことができる。第1の中間出力処理回路は例えば、DC/DC変換器を含むことができる。エネルギー蓄積ユニット150に蓄積されたエネルギーは、任意の第2の出力処理回路160を介して負荷回路170(例えば、携帯電子装置)に給電するために用いることができる。第2の出力処理回路160は、負荷回路170の要求に依存してエネルギー蓄積ユニット150から出力にさらに出力調整を付与してもよく、また、例えば、DC/DC又はDC/AC変換器を含んでもよい。第1の出力処理回路140、第2の出力処理回路160及びエネルギー蓄積ユニット150の組合せによって、負荷回路170に電力を供給する。 【0010】 燃料電池中断を、出力処理回路180、第2の処理回路160、エネルギー蓄積ユニット150、及び制御ボックス190の相互作用によって供給することができる。回路180及び制御ボックス190は、ハードウェアモジュール、ソフトウェアモジュール又はその組合せを備えてもよい。回路180は、スイッチ又はリレー147を介して燃料電池に逆電流185を供給することによって、エネルギー蓄積ユニット150から電力を引き出す。回路180は、通常の燃料電池放電(ディスチャージ)電流に逆の電流を注入することによって、燃料電池に逆電流を供給する。従って、逆電流チャージング中のカソード電位は通常作動中のものより高く、アノード電位は通常作動中のものより低い。スイッチ又はリレー147は通常燃料電池作動用にターミナル145に接続する。スイッチ又はリレー147は、逆電流チャージング中はスイッチターミナル146に接続し、エネルギー蓄積ユニット150に蓄積されたエネルギーからの電力を回路180に供給する。エネルギー蓄積ユニット150は、逆電流チャージング中に第2の出力処理回路160を介して負荷170に電力を供給し続ける。 略 【0011】 燃料電池に印加される逆電流チャージパルスは、回路180及びスイッチ若しくはリレー147を介してのモニターされたパラメータ毎に制御することができる。例えば、制御ボックス190は、逆電流チャージング中に出力処理回路140の機能を無効にし得る。燃料電池出力電圧の低下が観察されると、制御ボックス190は初期に迅速な逆電流パルス群を電池をして燃料電池電力出力のレベルを増大することができる。次いで、逆電流パルスを、例えば、電池出力の観察された増加及び安定に起因して、モニターされた電池パフォーマンスによって決定されたものより低い頻度に調整することができる。 略」 [2e]「【0016】 短時間逆電流チャージングを介した前処理を以下のように実施した:逆電流チャージングを、180秒にわたって計6回、2Aの18秒逆電流チャージングを周期的に付与することによってMEA上で実施した。逆電流チャージングされなかったとき、セル出力電流を2Aに維持した。電力改善は15%だった(一定出力電流状態で図2に示した15%電圧改善によって、15%電力改善された。)。逆電流チャージング後に、セルによってより高い電圧で電力が供給されたことに留意されたい。」 [2f]図1 (2)刊行物1 [1a]「【請求項1】 アノードとカソードを備え、その各々が白金を含む触媒手段を備えているような形式の燃料セルを動作する方法において、水素及び/又は気体状アルコールを含む気体状燃料を上記アノードに供給すると共に酸素を含む気体状オキシダントを上記カソードに供給し;実質的に250℃を越えない温度で燃料セルを動作し;上記セルの外部に遮断可能な第1回路を設け、カソードがアノードに対して正の電位になることによりセルから導出された電流がカソードからアノードへとこの外部回路に流れるようにし;セルの外部に第2回路を設け、この第2回路は、上記アノード及びカソードに逆のDC電位を選択的に供給してアノードをカソードに対して正の電位にするための電気エネルギー供給手段を備え;上記第1回路を交互に遮断及び完成すると共に上記第2回路を動作して、上記第1回路が遮断されたときには上記逆のDC電位が上記第2回路によって同時に印加されるようにし、そして上記第1回路が完成されたときには上記逆電位の印加が停止し、上記第1回路は第1の時間周期中に完成されそして上記逆のDC電位は第2の時間周期中に印加され、上記第1の時間周期は、上記第2の時間周期よりも少なくとも実質的に10倍は大きく、そして上記第2の時間周期は実質的に0.25秒以下であることを特徴とする方法。」 [1b]「【0003】アノードに水素ガス燃料をそしてカソードに酸素ガスオキシダントを供給する上記形式の燃料セルが知られている。水素は、触媒手段を害する物質を含んではならない。例えば、メタンや天然ガスのような炭化水素を改質することによって生成された水素を供給することが知られている。しかしながら、それにより生じる水素は、一酸化炭素も含み、これは、白金より成るアノード触媒手段の表面に優先的に吸着されてアノードの触媒手段に毒作用を及ぼし、セルの有効内部抵抗を増加させると共に、外部電流を低いレベル又はおそらくはゼロレベルまで減少させる。従って、アノードが次第に毒作用を受けるにつれて、セルの性能が低下する。触媒手段の毒作用を回避するために、触媒又は他の手段を用いて、水素がセルに供給される前に、水素燃料ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素(又は触媒手段に毒作用を及ぼさない他の物質、例えば、メタン)に変換することが知られている。 【0004】略 【0005】そこで、本発明の目的は、上記形式の燃料セルを動作する方法であって、一酸化炭素によって毒作用を受けることのあるアノードの触媒手段を比較的簡単且つ安価な仕方で解毒(又はセルを活発化)することのできる方法を提供することである。」 2 刊行物2に記載された発明 刊行物2には、[2a]によれば、「アノードと電解質とカソードとを有する燃料電池を用いて電気化学的発電を行う方法であって: 燃料を前記アノードに供給する段階と; 空気からの酸素ガスを前記カソードに供給する段階と; 逆電流チャージングを前記燃料電池に間欠的に供給する段階と;を備え、 前記燃料電池の電圧をモニターして、前記燃料電池のパフォーマンスである電圧の低下を示すときは、前記逆電流チャージングが生じる電気化学的発電を行う方法。」が記載されており、[2c]によれば、アノードに供給する燃料として、一酸化炭素で汚染された水素を用いることが記載されている。そして、[2b]、[2d]及び[2f]によると、「第1のサプライヤー」が「燃料をアノード」に、「第2のサプライヤー」が「酸素をカソード」に供給し、「燃料電池」で発電した電流を、「負荷回路170」に対して供給することが把握できる。さらに、「制御ボックス190」は、出力電圧の低下を観察すると、「バッテリー」である「エネルギー蓄積ユニット150」から逆電流チャージングを燃料電池に供給させ、かつ、「エネルギー蓄積ユニット150」から「負荷回路170」に電力を供給させることを制御するものであって、「エネルギー蓄積ユニット150」は、その逆電流チャージングと負荷回路170に対する電力供給を、同時にする態様も意図しているものである。また、「制御ボックス190」は、エネルギー蓄積ユニット150から逆電流を供給する回路180及びエネルギー蓄積ユニット150から負荷回路170に電力を供給し続ける回路160と相互作用するのであるから(【0010】)、逆電流チャージングの制御の条件である時間や、負荷の駆動を維持するために印加する電圧等も決定しているものといえる。 そうすると、刊行物2には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「一酸化炭素で汚染された水素が含まれている燃料を供給する第1のサプライヤーと; 酸素を供給する第2のサプライヤーと; 前記第1のサプライヤーから供給される燃料と,前記第2のサプライヤーから供給される酸素との電気化学的発電を行う燃料電池と; 前記燃料電池において,電圧をモニターして,前記燃料電池の出力電圧が低下した際に,逆電流チャージングして,燃料電池のパフォーマンスである電圧を回復させる機構と; を備え、 前記機構は, 前記燃料電池で発生する電圧のモニターと; 前記電圧のモニターにおいて感知された電圧が低下した際に,前記燃料電池に逆電流チャージングするように制御する制御ボックスと; バッテリーで構成され、前記制御ボックスによって,前記燃料電池に逆電流チャージングするエネルギー蓄積ユニットと; を有し、 前記制御ボックスは,逆電流チャージングする時間T(秒)を設定し、前記燃料電池に逆電流チャージングする際に,同時に,前記エネルギー蓄積ユニットから負荷回路に対して,駆動電圧を印加するように制御する燃料電池を備えた装置。」 3 対比 引用発明の「一酸化炭素で汚染された水素が含まれている燃料」、「第1のサプライヤー」、「第2のサプライヤー」、「燃料電池」、「バッテリー」、「エネルギー蓄積ユニット」、「負荷回路」及び「燃料電池を備えた装置」は、それぞれ、本願発明の「水素が含まれている燃料」、「燃料供給源」、「酸素供給源」、「電気発生部」、「1次電池,2次電池,または,前記電気発生部と連結設置して電気発生部の余裕電力によって充電されるキャパシターの中で一つ以上を選択」したもの、「補助電源」、「外部機器」及び「燃料電池システム」に相当し、引用発明の「電圧のモニター」及び「制御ボックス」は、それぞれ、本願発明の「電圧を感知する電圧感知部」及び「制御部」の機能を有するものである。そして、「電気化学的発電を行う」とは、電気化学的な反応によって、電気を発生させるものであって、「逆電流チャージング」するとは、「逆電圧を印加」することと同義である。また、電圧をモニターして、燃料電池の電圧が低下したある段階で、逆電流チャージングという処理を行うには、閾値となる設定値が当然必要とされ、その設定値未満に電圧が低下した際に、逆電流チャージングが実行されるものといえる。さらに、引用発明の「制御ボックス」は「エネルギー蓄積ユニット」を制御しているのであるから、何らかの「制御信号」によって「エネルギー蓄積ユニット」を制御しているものと認められる。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「水素が含まれている燃料を供給する燃料供給源と; 酸素を供給する酸素供給源と; 前記燃料供給源から供給される燃料,または前記燃料から発生した水素と,前記酸素供給源から供給される酸素との電気化学的な反応によって,電気を発生させる一以上の電気発生部と; 前記電気発生部において,電圧が設定値未満に低下した際に,逆電圧を印加する機構と; を備え、 前記機構は, 前記電気発生部で発生する電圧を感知する電圧感知部と; 前記電圧感知部において感知された電圧が,設定値未満に低下した際に,前記電気発生部に逆電圧を印加するように制御する制御部と; 1次電池,2次電池,または,前記電気発生部と連結設置して電気発生部の余裕電力によって充電されるキャパシターの中で一つ以上を選択して構成され、前記制御部の制御信号によって,前記電気発生部に逆電圧を印加する補助電源と; を有し、 前記制御部は,逆電圧を印加する時間T(秒)を設定し、前記電気発生部に逆電圧を印加する際に,同時に,前記補助電源から外部機器に対して,駆動電圧を印加するように制御する燃料電池システム。」 の点で一致し、以下の相違点1、2で相違しているものと認められる。 <相違点1> 本願発明は、電気発生部において発生した一酸化炭素による触媒被毒を除去するために逆電圧を印加する被毒除去部を有しているのに対して、引用発明は、燃料として一酸化炭素で汚染された水素を用いたり、逆電流チャージングにより出力電圧を回復しているものの、当該逆電流チャージングが一酸化炭素による触媒被毒を除去するためのものであることが不明である点 <相違点2> 本願発明は、制御部が、逆電圧を印加する時間T(秒)を0.25<T≦10の範囲で設定しているのに対して、引用発明は、逆電圧を印加する時間が特定されていない点 4 判断 ア)相違点1について 刊行物2には、燃料電池のパフォーマンス低下が一酸化炭素による触媒被毒によるものであることが記載されていない。しかしながら、引用発明は、燃料として一酸化炭素で汚染された水素を用いることを想定し、その場合、発電に伴って一酸化炭素による触媒被毒は当然発生するものである。そして、その被毒発生等に起因する電圧低下に対して逆電流チャージングにより出力電圧を回復させている工程には、一酸化炭素の触媒被毒が除去される機能が含まれているといえるから、相違点1は実質的な相違点とはいえない。 (また、刊行物1又は特開2004-265692号公報に記載されているように、一酸化炭素によるアノードの触媒被毒を解消する要請があることは、技術常識でもある。) イ)相違点2について 引用発明において、逆電圧を印加する時間は、出力電圧を回復するに十分な時間以上であって、その間に動作するエネルギー蓄積ユニットの出力電圧及びエネルギー容量(電池容量)を含む電力供給能力との兼ね合いによって定められると認められるところ、摘記[2e]には、180秒にわたって計6回18秒逆電圧を印加するシステムが例示されており、刊行物1の摘記[1a]及び[1b]には、燃料電池に対して逆電圧(逆電位)を印加することで一酸化炭素を除去(解毒)するある特定のシステム条件下において、逆電圧の印加時間が0.1?0.25秒でも、一酸化炭素の除去を達成できることが開示されている。 そうすると、引用発明において、逆電圧を印加する時間は、出力電圧を回復するに十分な時間以上であって、エネルギー蓄積ユニットの電力供給能力の出力可能な範囲内において設定されるのであるから、逆電圧の印加時間T(秒)を、0.1?18の範囲に含まれる0.25<T≦10程度に設定することは、当業者にとって単なる設計的事項であるにすぎない。 なお、請求人は、審判請求書における追加実験データに基づき、0.25<T≦10の印加時間T(秒)は、高いCO(一酸化炭素)除去水準が得られることを主張しているが、CO除去の程度は、印加時間だけでなく、印加電圧等を含めた諸条件の総和の結果であるから、単にその印加時間T(秒)を0.25<T≦10としただけで、十分なCO除去が達成できるものではないし(例えば、請求人が審判請求書で示した追加実験データによれば、印加電圧600mV・印加時間1秒間の場合、CO除去率は75%にすぎない。)、通常、当業者は十分な電圧回復、すなわち、十分なCO除去が実施されるように、印加時間を含めた諸条件を設定するものである。 5 小活 したがって、本願発明は、刊行物2に記載された発明及び刊行物1の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、当審拒絶理由は妥当なものと認められる。 したがって、本願発明は特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-02-29 |
結審通知日 | 2012-03-06 |
審決日 | 2012-03-21 |
出願番号 | 特願2006-25244(P2006-25244) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 進、蛭田 敦 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
長者 義久 野田 定文 |
発明の名称 | 燃料電池システム |
代理人 | アイ・ピー・ディー国際特許業務法人 |