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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1261138
審判番号 不服2010-27593  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-06 
確定日 2012-08-06 
事件の表示 特願2008-213280「デジタル画像の露出補正」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月 8日出願公開、特開2009- 5395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2004年(平成16年)2月19日(パリ条約による優先権主張2003年(平成15年)2月27日、アメリカ合衆国)に出願された国際出願である特願2005-518583号の一部を新たな特許出願としたものであって、平成22年2月1日付けの拒絶理由の通知に対し、平成22年6月14日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、平成22年8月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年12月6日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。


第2.原査定の拒絶の理由
平成22年8月9日付けの拒絶査定の内容は次のとおりである。

『この出願については、平成22年 2月 1日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。』

平成22年2月1日付け拒絶理由通知の内容(理由2に関する部分のみ、一部省略)は次のとおりである。

『この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から3か月以内に意見書を提出してください。

理 由
・・・(省略)・・・
理由2
この出願は、特許請求の範囲及び明細書の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号乃至第2号に規定する要件を満たしていない。
・・・(省略)・・・

・・・(省略)・・・
理由2について
特許請求の範囲及び明細書の記載が全体的に不明である(例えば請求項1-10について挙げると、
・・・(省略)・・・
(3)請求項4の記載のみからでは、アクティブな着目領域を何に基づきどのように識別するのか、アクティブな画像をどのように生成するのか、両ヒストグラムを何に基づいてどのように加重平均するのか、平均ヒストグラムからどのようにして特徴の値を抽出するのか、不明である。
・・・(省略)・・・』


第3.本願の請求項、明細書及び図面の記載
平成22年12月6日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(上記拒絶理由通知がなされた時点では請求項4がこれに対応する)の記載及び関連する明細書、図面の記載は次の1ないし6のとおりである。

1.「【請求項1】
画像内の複数の所定の領域における各領域の平均輝度率の対数の絶対値を決定する工程であって、前記領域の平均輝度率が、前記領域を除外した画像の輝度の平均に対する前記領域の輝度の平均の比である、工程と、
前記複数の所定の領域内から領域を認識する工程であって、前記認識された領域が、前記領域の平均輝度率の対数の絶対値の中で最大のものであって、前記画像におけるアクティブな着目領域である、工程と、
前記アクティブな着目領域のヒストグラムを生成する工程であって、前記ヒストグラムが、前記アクティブな着目領域内におけるピクセル数の関数であり、前記アクティブな着目領域内におけるピクセルの輝度である、工程と、
平均ヒストグラムを生成する工程であって、前記平均ヒストグラムが、前記アクティブな着目領域内におけるピクセル数の関数であり、前記アクティブな着目領域内においてピクセルの加重輝度である、ここで、前記ピクセルの加重輝度が、加重要素によって乗算されたピクセルの輝度である、工程と、
前記平均ヒストグラムから特徴の値を抽出する工程と、
前記抽出された値に基づいて前記画像の露出補正に関する予測子を生成する工程と、
前記予測された露出補正により前記画像の露出を補正することにより、露出補正のなされた画像を生成する工程と
を包含する、画像を処理する方法。」


2.「【0029】
方法140では、ROIヒストグラム246とアクティブヒストグラム244との加重平均をとることにより、平均ヒストグラム248も生成し得る(工程136)。この平均ヒストグラムは、工程106において抽出され得る特徴の別の例である。平均ヒストグラム248を生成する手法について、図4に関連して以下に記載する。」


3.「【0039】
・・・(中略)・・・
図4を説明すると、アクティブROIヒストグラム246およびアクティブヒストグラム244からさらなる特徴を抽出するために用いられ得る方法のフローチャートが示されている。着目領域242が画像202の所望の露出に影響を及ぼす確率を表す確率数は、背景を介して、着目領域242に関連し得る。r_(ROI)を残りの画像の線形性の輝度の平均に対するROI線形輝度の平均の比(換言すると、L_(C)/L_(I)、ここで、C=ROI)とする。その結果、着目領域242に関連した確率は、(1)式により与えられる(図4、工程402)。
【0040】
【数1】



ここで、sおよびoは、調節可能なパラメータである。パラメータoは、着目領域242に関連した確率が0.5である場合における、着目領域242と残りの画像との絞り(stop)における輝度の差を表す。パラメータsは、|log_(2)r_(ROI)|=oにおける確率関数の傾きに比例する。|log_(2)r_(ROI)|→∞のときに、p(ROI)→1.0となるために、着目領域242の線形性の輝度の平均と線形性の輝度チャネル224の残りの線形性の輝度の平均との差が大きいということは、着目領域242が画像202の最終露出に影響を及ぼす確率が高いということを意味し、その逆も同様である。ROIの確率p(ROI)が特徴値208の最終ベクトルへのROIの寄与に重みをかける態様を決定する手法について、以下に記載する。
【0041】
H_(ROI)(・)が、アクティブROI輝度ヒストグラム246を指すものとする(図4、工程404)。HI(・)が、アクティブ輝度ヒストグラム244を指すものとする(工程406)。その結果、全体の平均ヒストグラムH(・)248が、(2)式により与えられる(工程408)。
H(・)=(1-p(ROI))H_(I)(・)+p(ROI)H_(ROI)(・) (2)
ヒストグラムH(・)248は、工程106において抽出され得る特徴の一例である。しかし、ヒストグラムH(・)248から線形性の特徴および非線形性の特徴を幾つか抽出することにより(工程410および412)、特徴空間の大きさは、さらに低減されうる。そのような特徴は、工程106において抽出され得る特徴の例である。抽出され得る非線形性の特徴の例には、ヒストグラムH(・)248の異なったパーセンタイル値が含まれ得る。抽出され得る線形性の特徴の例には、ヒストグラムH(・)248の異なったモーメントが含まれ得る。」


4.「【図1C】本発明の一実施形態による、画像から特徴を抽出する方法のフローチャートである。」


5.「【図2C】図1Cに示される方法により実行されたオペレーションを図示するデータフロー図である。」


6.「【図4】本発明の一実施形態による、画像から特徴を抽出する方法のフローチャートである。」


第4.当審の判断
まず、請求項1について検討する。
本願請求項1の第4段落には、「平均ヒストグラムを生成する工程であって、前記平均ヒストグラムが、前記アクティブな着目領域内におけるピクセル数の関数であり、前記アクティブな着目領域内においてピクセルの加重輝度である、ここで、前記ピクセルの加重輝度が、加重要素によって乗算されたピクセルの輝度である、工程」と記載されている。
これは、「平均ヒストグラムを生成する工程」であるが、この請求項1の記載の、平均ヒストグラムが、「前記アクティブな着目領域内においてピクセルの加重輝度である、ここで、前記ピクセルの加重輝度が、加重要素によって乗算されたピクセルの輝度である」とは、どのような意味であるのか不明である。特に、ピクセルの加重輝度とは、何をどのように加重するのか、平均ヒストグラムがどのように生成されるのか不明であり、したがって、請求項1に記載された発明は明確でない。

次に、請求項1のこの記載に関連すると考えられる明細書、図面の記載(上記第3の1.-6.)を考察する。
【図1C】(本発明の一実施形態による、画像の露出を補正する方法のフローチャート)には、アクティブヒストグラムとROIヒストグラムとから平均ヒストグラムを生成すること(136)が記載されている。
【0029】には、図1Cの方法140の説明として、ROIヒストグラム246とアクティブヒストグラム244との加重平均をとることにより、平均ヒストグラム248を生成し得る(工程136)ことが記載されている。
【図2C】(図1Cに示される方法により実行されたオペレーションを図示するデータフロー図)には、アクティブROIヒストグラム246とアクティブヒストグラム244を入力して加重平均をとり平均ヒストグラムとすることが記載されている。
【0041】および【図4】(本発明の一実施形態による、画像から特徴を抽出する方法のフローチャート)には、アクティブROI輝度ヒストグラム246H_(ROI)(・)とアクティブ輝度ヒストグラムとから次の式
H(・)=(1-p(ROI))H_(I)(・)+p(ROI)H_(ROI)(・) (2)
により、全体の平均ヒストグラムH(・)248が与えられる(工程408)ことが記載されている。
しかしながら、これらのどの記載も、請求項1における、“平均ヒストグラムがアクティブな着目領域内においてピクセルの加重輝度であること”を説示しているとはいえない。この“加重”について、二つのヒストグラムの加重平均をとることは、【0029】、【図2C】、【0041】および【図4】の(2)式に記載されているといえるが、請求項1の「ピクセルの加重輝度」に対応するものはない。

したがって、明細書、図面の記載を参酌しても請求項1に記載された発明は明確であるとはいえないし、また、明細書又は図面に記載されたものでもない。

さらに、明細書又は図面では、ヒストグラムについて、アクティブヒストグラム、ROIヒストグラム、アクティブROIヒストグラム、アクティブROI輝度ヒストグラム、アクティブ輝度ヒストグラム、ROIのアクティブ輝度ヒストグラム、低減された画像のアクティブ輝度ヒストグラムなどの様々な表現が用いられているが、それらの区別も明確とはいえず、そもそも“アクティブ”との文言に対して明確な定義がなされていないから、これらのヒストグラムがどのように生成されたどのようなものであるのか不明であり、特に、アクティブヒストグラム等の生成に関する図2Cについてはほとんど明細書に説明がなされていない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとすることができない。

なお、平成23年8月30日に提出された(審尋に対する)回答書において、請求項4に記載された特徴を請求項1に導入する補正を行うことにより、拒絶理由が解消する旨主張している。しかしながら、請求項4に記載されているのは、平均ヒストグラムを生成する工程において用いる加重要素である、‘着目領域が画像の所望な露出のシフトに影響を及ぼす確率’を算出する式を特定することであって、たとえこの加重要素を算出する式が特定されたとしても、該加重要素によって加重される両ヒストグラムがどのようなものなのかは依然として不明であって、両ヒストグラムをどのように加重平均するのか、という拒絶理由で指摘した不明な点が解消されるわけではない。
したがって、回答書の主張は採用できない。

第5.むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-12 
結審通知日 2012-03-13 
審決日 2012-03-26 
出願番号 特願2008-213280(P2008-213280)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (H04N)
P 1 8・ 537- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加内 慎也松尾 淳一  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 千葉 輝久
古川 哲也
発明の名称 デジタル画像の露出補正  
代理人 河村 英文  
代理人 吉田 尚美  
代理人 森本 聡二  
代理人 松島 鉄男  
代理人 深川 英里  
代理人 有原 幸一  
代理人 中村 綾子  
代理人 奥山 尚一  

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