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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1261175
審判番号 不服2010-1430  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-22 
確定日 2012-08-09 
事件の表示 特願2000-181257「インモールド成形用ラベルおよび該ラベル付き樹脂成形品」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月25日出願公開、特開2001-353770〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成12年6月16日の出願であって,平成21年6月4日付けで拒絶理由が通知され,同月29日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年11月25日付けで拒絶査定がされた。これに対して,平成22年1月22日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に手続補正がされたので,特許法162条所定の審査がされた結果,同年7月23日付けで同法164条3項所定の報告がされ,平成23年10月3日付けで同法134条4項所定の審尋がされ,同年12月5日に回答書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定

[結論]
平成22年1月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成22年1月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の内容
本件補正は明細書の特許請求の範囲を変更する内容を含むものであるところ,本件補正の前後における特許請求の範囲の記載は,それぞれ以下のとおりである。
・ 本件補正前(請求項2?13の記載省略)
「【請求項1】 熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,前記ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであって,ラベルの透気度が10?20,000秒であり,かつラベルを貫通する貫通孔(ただしスリット状貫通孔は除く)が穿孔されていることを特徴とするインモールド成形用ラベル。」
・ 本件補正後(請求項2?13の記載省略)
「【請求項1】 熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,前記ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであって,ラベルの透気度が10?20,000秒であり,前記透気度を前記中心線平均粗さで除した値が20?4,000秒/μmであり,前記ヒートシール性樹脂層の表面にエンボス加工が施されており,かつラベルを貫通する貫通孔(ただしスリット状貫通孔は除く)が穿孔されていることを特徴とするインモールド成形用ラベル。」

2 本件補正の目的
本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μm」と「ラベルの透気度が10?20,000秒」との関係について「前記透気度を前記中心線平均粗さで除した値が20?4,000秒/μm」と特定し,さらに,ヒートシール性樹脂層について「表面にエンボス加工が施されており」と特定する補正事項を含むものであるところ(しかも,補正の前後で,請求項1に記載の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わらない。),当該補正事項は,平成18年法律第55号改正前の特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件違反の有無について
上記2のとおりであるから,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。下記4)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(本件補正が,特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に適合するか。いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討するところ,本件補正は当該要件に違反すると判断される。
すなわち,本願補正発明は,下記引用文献1に記載された発明(以下「引用発明1」という。下記5(1))及び下記引用文献2?3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1: 特開平5-249895号公報
引用文献2: 特開平11-35019号公報
引用文献3: 特公平4-71699号公報
以下,特許を受けることができない理由を,下記5において詳述する。
なお,引用文献1?3は,平成21年6月4日付け拒絶理由を通知するにあたり,請求人に提示された刊行物である(拒絶理由中,引用文献3の「特公昭04-071699号公報」は「特公平04-071699号公報」の明らかな誤記であり,請求人も誤記であることを前提に審判請求書などで主張している。)。

4 本願補正発明
本願補正発明は,平成22年1月22日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,前記ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであって,ラベルの透気度が10?20,000秒であり,前記透気度を前記中心線平均粗さで除した値が20?4,000秒/μmであり,前記ヒートシール性樹脂層の表面にエンボス加工が施されており,かつラベルを貫通する貫通孔(ただしスリット状貫通孔は除く)が穿孔されていることを特徴とするインモールド成形用ラベル。」

5 本願補正発明が特許を受けることができない理由
(1) 引用発明1
ア 引用文献1には,次の記載がある。(なお,下線は当審で付した。以下同じ。)
「樹脂フィルムにロール線数が60?200本/インチのグラビア型のパターンよりなるエンボス加工を施し,更に延伸を行なって得られた表面にエンボスパターンを形成した基材上に,1?10g/m^(2)の感熱型の液状樹脂接着剤を塗布し,乾燥して基材上に接着層を形成してなることを特徴とするインモールドラベル。」(【請求項1】)
「本発明は給紙性及びインキ密着性等の印刷適性やラベル打抜加工時の作業性に優れ,かつ,インモールド成形に於ける幅広い成形条件下においてもラベルのブリスターが発生し難いインモールド用ラベルに関する。」(【0001】)
「本発明者は上記課題に鑑みて,鋭意研究を重ねた結果,予め基材上に特定な形状のエンボスを形成し,その上に特定な厚みの接着層を形成して得られるインモールド用ラベルは,水溶媒型の接着剤を接着層として設けた場合にも従来のラベルと同様のエンボスパターンを形成することができ,しかも,インモールド成形時に於けるブリスターの発生の無い幅広い成形条件に対応することができるものであるとの知見を得て本発明に至ったものである。すなわち,本発明のインモールド用ラベルは,樹脂フィルムにロール線数が60?200本/インチのグラビア型のパターンよりなるエンボス加工を施し,更に延伸を行なって得られた表面にエンボスパターンを形成した基材上に,1?10g/m^(2)の感熱型の液状樹脂接着剤を塗布し,乾燥して基材上に接着剤を形成してなるものである。」(【0004】)
「(2)構造 …図1は,本発明のインモールド用ラベルの一例として挙げた,中空成形用の二層構造のインモールド用ラベルの断面図を表わす。図1において,1は本発明のインモールド用ラベルであり,2はそれを構成する熱可塑性樹脂の延伸フィルムよりなる基材で,3は印刷で,4はヒートシール性樹脂の塗工により形成された接着層である。また,5は該ヒートシール性樹脂よりなる接着層4の格子模様が付与された稜(凸部)の頂上であり,6は格子模様の谷部(凹部)を示すものである。また,図2はそのインモールド用ラベルのヒートシール性樹脂を塗工し乾燥して得た接着層4側の平面図を表わす。また,図3は基材の片面に形成された延伸後のエンボス模様の部分拡大図であり,図4は図3の基材のエンボス模様の稜の頂上に1g/m^(2)となる様に塗工された時の接着剤層面の拡大図である。この様にして基材フィルムに付与されたエンボス模様は塗工後もその模様は残り,中空成形時のインモールドラベル成形時に於いても空気やガスの封じ込める体積を有しており,ブリスターの発生を防止することができる。基材のエンボスパターンの谷の部分の中心線より平均深さは一般に1?15μm,好ましくは2?12μmであり,その表面に塗工される接着剤は固形分濃度が10?50%の溶液のものが好ましく,また,塗工量は溶液状態で基材のエンボスパターンの稜部6より少くとも5μm以上50μm以下,好ましくは10?30μmの膜厚となる様に塗工量を調整することが重要であり,乾燥後に於いては稜部6に接着層が1?10g/m^(2)の量で塗工されていることが中空成形時にインモールドされた時のラベル接着性を付与するために必要となる。塗工量が上記範囲未満ではラベルと中空容器との接着力が低下し,中空成形後の容器の型収縮にラベルが追随できなくなり剥離が起り易くなって,ブリスター発生の原因となる。また,乾燥後の接着剤層の稜部に於ける塗工量が上記範囲を越える様な場合は基材に形成されたエンボスのパターンがほとんど残らず表面がフラットな状態となってしまって,ガスや空気を容器とラベルの間に封じ込むことができなくなって,ブリスターの発生を防止することができなくなる。なお,接着層面のベック平滑度(JIS-P8119)が一般に20?800秒,好ましくは30?400秒,中心線平均粗さ(Ra)が一般に0.5?5μm,好ましくは0.8?3μmであるのが接着強度およびブリスター発生防止の点から好ましい。」(【0007】)
「(5)接着層の形成 前記基材の樹脂フィルムのエンボス加工面側(樹脂容器と接する側)には,感熱型の接着層となる融点が85?135℃のヒートシール性樹脂のエマルジョンやラテックスあるいは水溶化した溶液を各種のロールコーターやグラビア印刷機,オフセット印刷機等により,乾燥後の接着剤が1?10g/m^(2)の膜厚となる様に塗工される。また,上記ヒートシール性樹脂が有機溶剤などに溶かされた溶液であってもよい。該基材に積層される接着層は,前記基材のエンボスパターンを有する側の面に塗工される。接着剤は水溶媒型あるいは有機溶剤型いずれのものも使用することができるが樹脂固形分濃度が10?50%の範囲のものが好ましく,塗工量は溶液状態では基材のエンボスパターンの稜(凸部)の頂上より5μm以上の厚さとなることが重要である。これは乾燥後に於いてもエンボスパターンの稜(凸部)の上に接着層が0.5μm以上に形成されることがラベルの容器との接着性の為に必要となるからである。」(【0012】)
「【発明の効果】予めエンボスパターンを付与した基材を使用して接着層を積層した本発明のインモールド用ラベルは,従来のグラビア等によるコーティング方法ではそのグラビアパターンを乾燥後も残すには,接着剤の粘度調整や乾燥条件の設定が重要であったが,そのような乾燥条件や,粘度調整の必要も無く,基材表面に均一に塗工する事により,乾燥後に希望するエンボスパターンを備えたインモールド用ラベルを製造することが出来る。また,従来水溶媒型接着剤はグラビア方式に依る塗工に於いてはグラビアパターンを残すことが困難であったが,本発明のインモールドラベルではこのような水溶媒型の接着剤を用いて塗工した場合も,前記溶剤型接着剤の場合と同様に,表面にエンボスパターン残したインモールドラベルを造ることが出来る。接着剤が塗工された接着層のエンボスパターンの必要性は,インモールドラベルの成型加工時に容器樹脂とラベルの間の空気を瞬時に逃したり,又は空気やガスを分散させて凹部に封じ込めてブリスターの発生を防止することができる。特殊な変型のデザイン容器であったり,成形加工時の樹脂温度が高く分解ガスの発生が多い場合等において特に有効である。」(【0022】)
イ 上記アのとおり,引用文献1には,その請求項1に記載されたインモールドラベルについて,当該ラベルを構成する接着層面の中心線平均粗さ(Ra)を0.5?5μmとする旨の記載があること(【0007】)などを総合すると,次のとおりの引用発明1が記載されている。
「樹脂フィルムにロール線数が60?200本/インチのグラビア型のパターンよりなるエンボス加工を施し更に延伸して得られるところの表面にエンボスパターンを形成してなる基材上に,1?10g/m^(2)の感熱型の液状樹脂接着剤を塗布し乾燥して接着層を形成してなる,当該接着層面の中心線平均粗さ(Ra)が0.5?5μmであり,当該接着層表面にエンボスパターンを残したインモールドラベル」

(2) 対比
本願補正発明と引用発明1を対比すると,引用発明1の「インモールドラベル」は本願補正発明の「インモールド成形用ラベル」と同義であるのは明らかであり,引用発明1の樹脂フィルムからなる「基材」は本願補正発明の「熱可塑性樹脂フィルム基材層」に,感熱型の液状樹脂接着剤を塗布し乾燥して得られた「接着層」は「ヒートシール性樹脂層」にそれぞれ相当する。また,引用発明1の「接着層面の中心線平均粗さ(Ra)が0.5?5μm」であることは本願補正発明の「ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μm」であることと一致するから,両者の一致する点(一致点),相違する点(相違点1?3)はそれぞれ次のとおりである。
・ 一致点
「熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,前記ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであるインモールド成形用ラベル。」
・ 相違点1
「本願補正発明はそのラベルの透気度が10?20,000秒であり,かつ透気度を中心線平均粗さで除した値が20?4,000秒/μmであるのに対し,引用発明1は透気度についての特定がなく,したがって透気度を中心線平均粗さで除した値についての特定もない点」
・ 相違点2
「本願補正発明はそのラベルを貫通する貫通孔(ただしスリット状貫通孔は除く)が穿孔されているのに対し,引用発明1はその特定がない点」
・ 相違点3
「ヒートシール性樹脂層の表面の中心線平均粗さについて,本願補正発明はヒートシール性樹脂層の表面にエンボス加工を施すことで0.5?5μmとされたものであるのに対し,引用発明1は予め基材上にエンボス加工を施し,その上に接着剤を塗布し乾燥することで0.5?5μmとされたものである点」

(3) 相違点についての判断
上記相違点1?3について,以下検討する。
ア 相違点1について
(ア) 引用文献3の記載
引用文献3には,以下の記載がある。
「1 対向面にキヤビテイ1a,2aを設けた分割金型1,2のキヤビテイの一部分に,透気性を有する合成樹脂シートにて構成したラベル4をはり付け,その後分割金型1,2間にブロー成形可能な合成樹脂を加熱溶融した管状パリスン3を配置してから分割金型1,2を型締めすると共に,キヤビテイ1a,2a内に密封されたパリスン3内に圧力流体を吹込み膨張してパリスン3の表面をラベル4に圧接し,このときにラベル4とパリスン3の間に介在する空気をラベル4を透過させてラベル4の表側へ透気させてラベル4をパリスン3の表面に貼着するようにしたことを特徴とするラベルを貼着した中空体の製造方法。」(特許請求の範囲)
「本発明は,ブロー成形法にて成形される成形体で,かつこの成形体の外表面にこれの成形時にラベルを貼着するようにしたラベルを貼着した中空体の製造方法に関するものである。」(1欄17?20行)
「〔発明が解決しようとする問題点〕 前掲前者の明細書にあつては,ラベルと成形品の表面との間に空気が介在してエアだまりが発生したり,ラベルにシワが発生して貼着後のラベルの外観が悪くなることがあり,また前掲後者の明細書にあつてはラベルを載置するラムを上下させなくてはならず金型自体が大がかりとなるという欠点を有するだけでなく,ラムを上げてラベルを上げるタイミングが難しく,かえつてシワを発生させる場合があつた。」(1欄最下行?2欄9行)
「本発明において使用されるラベル4は透気性を有する合成樹脂フイルムあるいは合成樹脂からなる不織布等のシートにて構成されている。…なおこのラベルにおいて,ラベルの貼着面側には通気性を妨げない程度の透気性を有する接着剤層の存在があつてもよい。」(3欄8?23行)
「また上記透気性を有する合成樹脂シートの透気度は30?1500秒/100c.cである。さらに好ましくは,50?1000秒/100c.c.である。透気度が30秒/100c.c.未満ではラベルの表面に印刷する際の印刷特性が悪く,1500秒/100c.c.を越えると空気が完全に透気しない。」(3欄24?29行)
「なお,上記透気度は,JISP8117に規定するもので,測定にあたつては,ガーレ透気度試験機を使用する。」(3欄43行?4欄1行)
(イ) 具体的検討
a 上記(ア)によると,引用文献3には,インモールド成形用ラベルについて,ラベルを成形体に貼着する際にラベルと成形体との間に空気が介在しないようにするといった解決課題のもと,ラベルの透気度を特定の数値範囲(30?1500秒/100c.c)とすることで上記課題が解決できる旨,さらには当該透気度について,特定の値より低いとラベル表面に印刷する際の印刷特性が悪くなり,特定の値よりも高いと空気が透気しにくい旨の技術思想が開示されている。
また,引用発明1は,ブリスターすなわちラベルと成形体との間に空気が残存し気泡を抱き込むという問題の発生を防止すること(【0001】など)を解決課題とするものであるとされる(上記(1)ア)。
そうすると,インモールド成形時のブリスター発生を防止しうるラベルの提供を解決課題とする引用発明1において,この点で当該引用発明1と課題が共通する引用文献3に開示されている技術思想を適用すること,すなわち引用発明1のラベルの透気度を30?1500秒/100c.cの如く相違点1に係る本願補正発明の数値(10?20,000秒)の範囲内(なお,引用文献3の透気度と本願補正発明の透気度とは,ともにJIS P8117に準拠するものである。)に設定することは,当業者であれば想到容易である。
そして,引用発明1は,成形体とラベルの間の空気やガスを,接着層のエンボスパターンの凹部に瞬時に逃がしたり分散させたりして封じ込めることでブリスターの発生を防止するものであるところ(引用文献1の【0022】),引用発明1のラベルを透気させるようにしたからといって,このことにより,引用発明1の作用(例えば,空気をエンボスパターンの凹部に瞬時に逃がしたり分散させたりすること。)が妨げられることにはならないから,引用発明1に引用文献3に開示の技術事項を適用することを阻害する事由はみあたらない。
b また,本願補正発明は,上記4のとおり,透気度を中心線平均粗さで除した値が20?4,000秒/μmであることを特定事項とするものであるが,このような数値範囲は,上記aの検討にあたり,引用発明1に引用文献3に開示の技術事項を適用したときに自ずと決まる程度のものである。すなわち,引用発明1は中心線平均粗さが0.5?5μmであり,引用文献3に開示されている透気度は30?1500秒であるから,引用発明1に引用文献3に開示の技術事項を適用したときの透気度を中心線平均粗さで除した値は6秒/μm(=30秒÷5μm)から3000秒/μm(=1500秒÷0.5μm)の範囲の値を必然的に有することになるところ,この数値範囲は本願補正発明と重複する。
なお,本願の明細書の記載(例えば,【0028】,【表1】)からみて,上記特定事項に何ら技術的意義は認められない。

イ 相違点2について
(ア) 引用文献2の記載
引用文献2には,以下の記載がある。
「【発明の属する技術分野】本発明は,モールド内でプラスチックパリソンをブロー成形すると同時に胴部の外面にラベルを貼着させて成るラベル付きプラスチック容器及びそれに用いるラベルに関するもので,より詳細には,型内ラベル貼着時におけるプラスチック容器とラベルとの接着界面における気泡の抱き込みによるフクレが解消され,ラベル付容器の外観特性を向上させ,商品価値を高めたラベル付プラスチック容器及びそれに用いるラベルに関する。」(【0001】)
「【従来の技術】…中空容器に型内ラベル操作によりラベルを施すことは古くから知られており,成形用金型のキャビティ内表面に貼着すべきラベルを真空吸引等の手段により保持し,この金型内でプラスチックパリソンを中空成形する手段が一般に採用されている…。
型内ラベル操作用のラベルとしては,プラスチックフィルムを基本とするものが,裏面印刷が可能で,画像が鮮明であり,また耐汚染性に優れている等の利点を有することから望ましいものであり,成形されつつあるプラスチック容器壁の熱を利用して接着を行うという点では,少なくとも内表面が熱接着可能な樹脂で形成されていること,即ちラベル裏面が熱接着性樹脂フィルムから成るか,或いは感熱接着剤のコート層から成るのが有利である。
型内ラベル操作により,金型キャビティ表面に保持されたラベルと成形されつつある容器外表面とを結合させる際,ラベル内表面(貼着面)と容器外表面との間に屡々空気の抱き込みを生じる。抱き込まれた空気はラベルと容器外表面との間に閉じ込められて,この部分の接着が不完全なものと成り,ラベル付容器を成形型の外部に取出したとき,圧縮されていた気泡が膨張してフクレとなる。…
このフクレ発生を防止するため,ラベルにミシン目,針穴等を設けることも既に種々提案されており,例えば,特開平2-108516号公報…。
また,実公平7-54109号公報には,プラスチック容器を吹き込み成形すると同時にラベルを容器の胴部に貼着して成るラベル付きプラスチック容器において,前記ラベルに,開口径が0.01乃至2mm,開口面積がラベル全体の0.01乃至3%の微細通気口を30mm以下の小間隔をおいて貫通させて設けたことを特徴とするラベル付きプラスチック容器が記載されている。」(【0002】?【0008】)
(イ) 具体的検討
上記(ア)によると,引用文献2には,インモールド成形用ラベルについて,ラベルを成形体に貼着する際にラベルと成形体との間に空気が介在しないようにするといった解決課題のもと,ラベルを貫通する(ミシン目ではない)針穴などを形成することで成形体とラベルとの間に残留する空気を外部に逃がし,もって上記課題を解決する旨の技術事項の開示がある。なお,このような技術事項は,引用文献2が従来技術として特定の特許文献を例示しつつ開示していることからすれば,本願の出願時において周知の技術事項であるといえる。
また,上述のとおり(上記ア(イ)),引用発明1のラベルは,ブリスターすなわちラベルと成形体との間に空気が残存し気泡を抱き込むという問題の発生を防止することを解決課題とするものである。
そうすると,インモールド成形時のブリスター発生を防止しうるラベルの提供を解決課題とする引用発明1において,その課題を解決するべく,引用文献2に開示されている技術思想を適用すること,すなわち引用発明1のラベルについて,ラベルを貫通する針穴などの貫通孔(しかもミシン目といったスリット状貫通孔でないもの)を形成することは,当業者であれば想到容易である。
この点に関し,請求人は,引用発明1には引用文献2に記載の事項を適用することを阻害する記載が存在する,具体的には,引用文献1の4欄1?4行の記載からすれば,引用発明1において,接着層から基材フィルムを貫通する貫通孔があると空気やガスが封じ込めることができなくなるためブリスター発生を防止できなくなる旨主張する(審判請求書13頁)。
しかし,請求人の上記主張は,採用の限りでない。
すなわち,引用発明1は,成形体とラベルの間の空気やガスを,特定の部位に封じ込めることに代えて,接着層のエンボスパターンの凹部に瞬時に逃がしたり分散させたりして封じ込めることでブリスターの発生を防止するものであるから,引用発明1のラベルにこれを貫通する貫通孔を設けたからといって,上記空気を上記凹部に瞬時に逃がしたり分散させたりする作用は何ら妨げられないし,そもそもブリスターの発生防止という引用発明1の課題の達成が没却されるものでもない。引用発明1に引用文献2に開示の技術事項を適用することを阻害する事由はみあたらない。

ウ 相違点3について
引用発明1の「接着層表面にエンボスパターンを残し」てなる特定事項は本願補正発明1が「ヒートシール性樹脂層の表面にエンボス加工」を施してなる特定事項と同じである,すなわち,両発明とも接着層(ヒートシール性樹脂層)の表面にエンボスパターン(エンボス模様)を有している点で何ら異ならない。
また,本願の明細書の記載(例えば,【0028】,【0029】)によれば,ヒートシール性樹脂層の表面にエンボス加工を施すことの意義は,当該表面の中心線平均粗さを所定の範囲に調整するためと解される。このことは,実施例1,実施例2,比較例1,比較例2及び比較例3はいずれも同じ150線/インチのエンボスロールを用いてエンボス加工が施されたものであるところ,これらの中心線平均粗さがいずれも同じ2.5μmを呈していることからも明らかである(【表1】)。
そうすると,ヒートシール性樹脂層の表面にエンボス加工を施すことで形成された中心線平均粗さが0.5?5μmのエンボス模様を有する本願補正発明における当該表面の構成は,ヒートシール性樹脂層表面にその他の手段により形成された中心線平均粗さが0.5?5μmのエンボス模様を有する発明における当該表面の構成と,インモールド成形用ラベルという「物の発明」の構造として異なるものでないといえる。
そして,本願補正発明と引用発明1とは,ともにヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであり,ヒートシール性樹脂層の表面にエンボス模様を有するものであることを踏まえると,両者の間には中心線平均粗さを0.5?5μmの範囲に調整する方法の点で一応の相違があるものの,物の発明としてみたとき,相違点3を実質的な相違点とすることはできない。

6 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり,本件補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年6月29日に提出された手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「熱可塑性樹脂フィルム基材層とヒートシール性樹脂層よりなるインモールド成形用ラベルであって,前記ヒートシール性樹脂層表面の中心線平均粗さが0.5?5μmであって,ラベルの透気度が10?20,000秒であり,かつラベルを貫通する貫通孔(ただしスリット状貫通孔は除く)が穿孔されていることを特徴とするインモールド成形用ラベル。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,要するに,本願発明は,引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。(なお,原査定の拒絶の理由は,上述のほか,本願の請求項2?13に係る発明は上記規定により特許を受けることができないという理由も含む。)

3 引用発明1
引用発明1は上記第2_5(1)において認定のとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,本願補正発明との比較において,「前記透気度を前記中心線平均粗さで除した値が20?4,000秒/μmであり,前記ヒートシール性樹脂層の表面にエンボス加工が施されており」との限定が付加されていないものである。(上記第2_1及び同2参照)
そうすると,本願発明の特定事項をすべて含みさらに上記限定が付加されたものに相当する本願補正発明が,上述のとおり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである以上,本願発明も,同様の理由により,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるといえる。

5 むすび
以上のとおり,原査定の拒絶の理由は妥当なものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-05 
結審通知日 2012-06-12 
審決日 2012-06-25 
出願番号 特願2000-181257(P2000-181257)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B29C)
P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 保倉 行雄田口 昌浩  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 富永 久子
須藤 康洋
発明の名称 インモールド成形用ラベルおよび該ラベル付き樹脂成形品  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
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