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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) E01F
管理番号 1261387
判定請求番号 判定2012-600011  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-09-28 
種別 判定 
判定請求日 2012-04-13 
確定日 2012-08-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第3409299号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面(写真1?8、図1?4)及びその説明書に示す「コーナークッション」は、特許第3409299号の請求項1?4に係る特許発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号物件説明書に示すコーナークッションは、特許第3409299号の請求項1?4に係る特許発明(以下「本件特許発明1」等という。)の技術的範囲に属しないとの判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
本件特許第3409299号の請求項1?4に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された以下のとおりのものである。

なお、請求項1は、理解を容易にするため、当審が構成要件に分節した。

「【請求項1】
A.互いに若干の間隔をおいて長手方向に列設された複数の短尺クッション材と、
B.これら複数の短尺クッション材の表面側を被覆する長尺表面側シート部とこれら複数の短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する長尺裏面側シート部とからなる帯状被覆部材と、
C.前記長尺表面側シート部の外面に設けられ、明度差をもつ色彩が交互に反復してなる斜め方向縞模様と、
D.前記長尺裏面側シート部の外面に設けられた粘着材層とを有してなり、全体として帯状をなすとともに危険箇所のコーナー部に装着されるコーナークッションであって、
E.前記長尺裏面側シート部同士の間から、前記複数の短尺クッション材が露出していることを特徴とする
F.コーナークッション。
【請求項2】 前記長尺表面側シート部と長尺裏面側シート部は、その長手方向において複数の独立空間を形成するように、複数箇所で幅方向に固着され、前記短尺クッション材はそれら複数の独立空間内に設けられており、前記複数の固着部分で折り曲げ可能かつ切断可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のコーナークッション。
【請求項3】 前記短尺クッション材が独立気泡型スポンジからなることを特徴とする請求項1または2に記載のコーナークッション。
【請求項4】 前記短尺クッション材が、前記長尺裏面側シート部に接着され、前記長尺表面側シート部には接着されていないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコーナークッション。
(以下、本件特許の請求項に係る発明を、その項番号により「本件特許発明1」等という。)

第3 イ号物件
イ号物件の構成は、
判定請求書、判定請求書に添付されたイ号図面説明書、イ号図面(写真1?8、図1?4)に基づき、請求人が請求書に記載したもの及び被請求人の主張を参酌して、次のとおりのものと特定する。
【イ号物件】
(a)互いに若干の間隔をおいて長手方向に列設された複数の短尺クッション材(4)と、
(b)これら複数の短尺クッション材(4)の表面側を被覆する長尺表面側シート部(2)とこれら複数の短尺クッション材(4)の裏面側の全体を被覆する長尺裏面側シート部(3)とからなる帯状被覆部材(20)と、
(c)前記長尺表面側シート部(2)の外面に設けられ、明度差をもつ色彩が交互に反復してなる斜め方向縞模様(5)と、
(d)前記長尺裏面側シート部(3)の外面に設けられた粘着材層(6)とを有してなり、全体として帯状をなすとともに危険箇所のコーナー部に装着されるコーナークッション(1)であって、
(e)前記長尺裏面側シート部(3)は、前記短尺クッション材(4)の裏面全体をを裏側から覆っていることを特徴とする
(f)コーナークッション(1)。

なお、被請求人は、判定請求答弁書「7.答弁の前提」で、イ号物件に関して、「判定請求に係る『イ号物件』と、判定被請求人が、判定請求人の輸入・販売している商品として入手した『ロ号物件』とは同一とはとても言えない。・・・対象物は『ロ号物件』を対象とされるべきである。」と主張しているが、本件判定請求の趣旨は、イ号物件説明書に示すコーナークッションについて判定を求めるものであるので、「イ号物件」を対象として判定する。


第4 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、判定請求書において、概略次の理由によりイ号物件は、本件特許発明1?4の技術的範囲に属しない旨主張している。

(1)Bとbの一部の点
本件特許発明が「短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する長尺裏面側シート部」としているのに対し、イ号物件は「短尺クッション材の裏面側の全体を被覆する長尺裏面側シート部」としているので、長尺裏面側シート部は、幅方向に関して一対の部材(左右それぞれに区分されたシート部)により構成されるのか、幅方向に関して単一部材(1枚のシート部)により構成されるのかで、両者は相違する。

(2)Eとeの点
本件特許発明が「長尺裏面側シート部同士の間から、前記複数の短尺クッション材が露出している」としているのに対し、イ号物件は「長尺裏面側シート部は、前記短尺クッション材の裏面全体を、裏側から覆っている」としているので、短尺クッション材を露出させるように長尺裏面側シート部に形成されたスリットの有無により、両者は相違する。
本件特許発明とイ号物件とは、Eとeの点、すなわち、裏面側シート部に備えられたスリットの有無において明確に相違し、本件特許発明は、スリットによって短尺クッション材を露出させている構成を特徴とするのに対し、イ号物件は、短尺クッション材を露出させるスリットは有さないから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件を満たさない。従って、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。

2.被請求人の主張
被請求人は、判定事件答弁書において、判定請求人の現在輸入・販売している商品は、特許第3409299号に係る特許発明の技術的範囲に属するとの判定を求め、その理由を次のように主張している。
(1)アラオ株式会社(判定披請求人)が、判定請求人が販売している商品を平成24年5月2日付(商品名:「Lライン」、製造ロット番号:20120425)で入手したところ、ロ号物件説明書に示す「コーナークッション(以下、「ロ号物件」という。)であった。
判定請求に係る「イ号物件」と、判定被請求人が、判定請求人の輸入・販売している商品として入手した「ロ号物件」とは同一とはとても言えない。
この「ロ号物件」と、判定請求に係る「イ号物件」は、その構成が明らかに相違しており、判定請求人が現在輸入・販売している「コーナークッション」について判定請求を求めるのであれば、対象物は「ロ号物件」を対象とされるべきである。

(2)ロ号物件は、本件特許発明(請求項1)の構成要件A?Fを充足するものであり、本件特許発明の技術的範囲に属する。


第5 本件特許発明1について
1.対比・判断
本件特許発明1とイ号物件とを対比する。
(1)イ号物件の構成a、c、d及びfは、本件特許発明1の構成要件A、C、D及びFを充足しており、この点について請求人も争っていない。
なお、請求人は、判定請求書6.[5]の「一致点」において、「Eとeの点」を一致点としてしているが、同じく「相違点」には、「Eとeの点・・・において明確に相違」と異なる主張が行なわれており矛盾するので、「一致点」における「Eとeの点」は、「Fとfの点」の誤記と認められる。
また、被請求人は、判定請求答弁書で「対象物は『ロ号物件』を対象とされるべきである。」と主張して、イ号物件の構成に対する反論を行っていないが、「特許第3409299号に係る特許発明の技術的範囲に属するとの判定を求め」るとの主張の趣旨を考慮すると「充足しており」とすることに争いはないと認める。

(2)イ号物件の構成bと、本件特許発明1の構成要件Bを対比する。
(2-1)本件特許明細書には、構成要件Bの「複数の短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する長尺裏面側シート部」に関して次のように記載されている。
「長尺裏面側シート部が短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆している構造であるから、コーナークッションの裏面側はその幅方向中央部が長手方向に開放された状態となる。このため、夏場にコーナークッション内の温度が上昇し、これに応じて内部の空気が膨張しても、膨張した空気はコーナークッション裏面側の開放部分から放出される。」(段落【0030】)
(2-2)他方、イ号物件の構成bの「複数の短尺クッション材(4)の裏面側の全体を被覆する長尺裏面側シート部(3)」は、複数の短尺クッション材の裏面側の「幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する」ものではなく、上記作用効果を生ずるものでもないから、「複数の短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部を・・・被覆する長尺裏面側シート部」とはいえるものの、本件特許発明1の構成要件Bの「・・・幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する」長尺裏面側シート部には相当しない。
したがって、イ号物件の構成bは、本件特許発明1の構成要件Bを充足していない。

(3)イ号物件の構成eと、本件特許発明1の構成要件Eを対比する。
(3-1)本件特許明細書には、構成要件Eの「長尺裏面側シート部同士の間から、前記複数の短尺クッション材が露出している」ことに関して次のように記載されている。
「請求項1の発明は、・・・長尺裏面側シート部同士の間から、前記複数の短尺クッション材が露出していることを特徴とするコーナークッションであるから、以下の効果を奏する。すなわち、コーナークッションの裏面側はその幅方向中央部が長手方向に開放された状態となる。このため、夏場にコーナークッション内の温度が上昇し、これに応じて内部の空気が膨張しても、膨張した空気はコーナークッション裏面側の開放部分から放出される。・・・
短尺クッション材は裏面側において幅方向中央部分を帯状に露出した状態となるから、この帯状露出部分をコーナー部に合わせることにより、コーナー部には長尺裏面側シート部と粘着材層が位置しない。従って、コーナー部には短尺クッション材が密着し、長尺裏面側シート部や粘着材層には皺やたるみが生じない。」(段落【0030】)
(3-2)他方、イ号物件の構成eの「短尺クッション材(4)の裏面全体をを裏側から覆っている」長尺裏面側シート部(3)は、「長尺裏面側シート部同士」の間から、「複数の短尺クッション材が露出している」ものではなく、上記作用効果を生ずるものでもないから、「複数の短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部を・・・被覆する長尺裏面側シート部とはいえるものの、本件特許発明1の構成要件Eの「・・・幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する」長尺裏面側シート部には相当しない。
したがって、イ号物件の構成eは、本件特許発明1の構成要件Eを充足していない。

(4)以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件B、Eを充足していないから、本件特許発明1の技術的範囲に属しない。


第6 本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4についても、イ号物件が構成要件B、Eを充足しないことに変わりないので、上記「第5」と同様に、イ号物件は、本件特許発明2?4の技術的範囲に属しない。

第7 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明1?4の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2012-08-14 
出願番号 特願平10-273930
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (E01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中槙 利明  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 中川 真一
横井 巨人
登録日 2003-03-20 
登録番号 特許第3409299号(P3409299)
発明の名称 コーナークッション  
代理人 川崎 実夫  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 向江 正幸  
代理人 福島 三雄  
代理人 高崎 真行  
代理人 川角 栄二  
代理人 塩田 哲也  

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