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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F04D
管理番号 1261825
審判番号 不服2011-17654  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-15 
確定日 2012-08-17 
事件の表示 特願2007-503918「柱状空気流の発生装置,発生システム,及び発生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月 6日国際公開,WO2005/091896,平成19年10月25日国内公表,特表2007-529681〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は,2005年2月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年3月15日,米国)を国際出願日とする出願であって,その請求項32に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成23年1月13日付の手続補正書により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項32に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「空気流発生方法において,
細長い形状のハウジングの内部を通過して,第1端部の空気吸込口から,該第1端部から離れた第2端部の空気吹出口へ流れる空気流を発生させるステップと,
前記ハウジングの内部を通過して流れる前記空気流を案内して,層流の軸流として前記空気吹出口から吹出させることにより,前記空気吹出口を通過した後も,横方向の流れの拡散が非常に小さい柱状パターンのままの軸流を発生させるステップと,
を含むことを特徴とする空気流発生方法。」

2.引用文献
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-167097号公報(以下,「引用例」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,環状の流通路に設けられた空気案内ハウジングを有し,流通路の吸い込み側端において完全に空気案内ハウジングの内部に配置されているプロペラと,及び流通路の中で空気案内ハウジングの中に固定して取りつけられていて半径方向へ延び,アーチ状の外端曲線および基部曲線を有する多数の空気案内壁とを備えた軸流通風機に関する。」

・「【0002】
【従来の技術】この種の通風機は多数の実施形態において既に公知である。例えば米国特許USA-4,603,271はこの型の通風機を示しているが,その第7図によればプロペラの両側に翼列が配置されている。それら翼はそれぞれ円弧状の案内壁を形成し,これらはある環状の流通路の中で半径方向に延び,そして,この流通路を通して空気ができるだけ層流状で軸方向へ貫流するようにする役目をしている。このような通風機は空気がロータ軸に対して本質的に同軸的に流通路を貫流するので軸流通風機と呼ばれている。」

・「【0006】各案内壁が放物線状の面に形成されていることによって本発明に従う軸流通風機では公知の円弧状案内壁を有する軸流通風機よりも流入角が小さく,かつ出口角が大きい。このような軸流通風機においては流通路内の乱流が本質的により少ないことが示されている。更に,種々の研究により,これまで通常的であった15ないし20%の空気動力学的効率を約30%まで上昇できることが示された。対応的に,消費電気エネルギーに対する発生空気動力学的エネルギーの比率を高めることができた。」

・「【0008】
【実施例】他の有利な種々の特徴は各従属請求項,以下にあげる説明および添付の図面から明らかであるが,本発明はなんらこれらによって限定されるものでない。図1は軸流通風機を示すが,これは管状の空気案内ハウジング2を有し,これは吸い込み側端4aと圧力側端4bとを有する環状の流通路4を備えている。空気案内ハウジング2の円筒形内面2bと同軸的に電気駆動モータ5が配置されており,これは4つの案内壁9により支持されている。
【0009】これらの案内壁9はそれぞれ内面2bおよび固定子の円筒状外面8aの上の外端曲線9aおよび基部曲線9bに接して形成されている。ハウジング2(注:「ハウジング1」は誤記)の長さLは例えば4.5cmである。流通路4の中での空気流の最適の安定化に関して,ハウジング2の長さLの直径Dに対する比率が1:0.8の割合であるのが最適であることが実証されている。この比率はいずれにしても1:0.5から1:2までの範囲にあるべきである。
【0010】モータ5の固定子8の中に設けられているロータ12はボス6bに形成された多数の翼6aを有するプロペラ6を支持している。図にみられるように,スクリュー6は完全に空気案内ハウジング2の内部に配置されている。各翼6aは好ましくは捩じられておらず,そしてそれぞれその全翼弦長さにわたり等しい迎え角を有しているのがよい。
【0011】プロペラ6を回転させたときに空気は先端4aから矢印3の方向へ吸い込まれて,流通路4を圧力側端4bから出てゆく。従って,空気は空気案内ハウジング2をロータ軸と同軸的に貫流する。より少ない乱流と層流流れとに本質的なものはそれら4枚の空気案内壁9の曲面形状である。」

・図1には,軸流通風機1が細長い管状の空気案内ハウジング2を備え,圧力側端4bが吸い込み側端4aから離れた態様が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「軸流通風機1により空気流を発生する方法において,
プロペラ6により細長い管状の空気案内ハウジング2の内部を貫流して,吸い込み側端4aから,該吸い込み側端4aから離れた圧力側端4bへ流れる空気流を発生させるステップと,
空気案内壁9により前記空気案内ハウジング2の内部を貫流する前記空気流を案内して,できるだけ層流状でロータ軸と同軸的に貫流するようにして前記圧力側端4bから出させる,より少ない乱流と層流流れを発生させるステップと,
を含む軸流通風機1により空気流を発生する方法。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。

まず,後者の「軸流通風機1により空気流を発生する方法」は前者の「空気流発生方法」に相当する。

また,後者の「細長い管状の空気案内ハウジング2」は前者の「細長い形状のハウジング」に,後者の「貫流」は前者の「通過」に,後者の「吸い込み側端4a」は前者の「第1端部の空気吸込口」に,後者の「圧力側端4b」は前者の「第2端部の空気吹出口」に,それぞれ相当するから,結局,後者の「プロペラ6により細長い管状の空気案内ハウジング2の内部を貫流して,吸い込み側端4aから,該吸い込み側端4aから離れた圧力側端4bへ流れる空気流を発生させるステップ」は前者の「細長い形状のハウジングの内部を通過して,第1端部の空気吸込口から,該第1端部から離れた第2端部の空気吹出口へ流れる空気流を発生させるステップ」に相当している。

さらに,後者の「貫流する」態様は前者の「通過して流れる」態様に,後者の「できるだけ層流状でロータ軸と同軸的に貫流するようにして」との態様は前者の「層流の軸流として」との態様に,後者の「圧力側端4bから出させる」態様は前者の「空気吹出口から吹出させる」態様に,後者の「より少ない乱流と層流流れ」は前者の「横方向の流れの拡散が非常に小さい柱状パターンのままの軸流」に,それぞれ相当すると共に,後者の「より少ない乱流と層流流れ」は流通路内で公知のものに比して乱流が少ない(引用例の段落【0006】参照。)ことからして,「横方向の流れの拡散が非常に小さい」流れといえ,その乱流が少ない状態で「圧力側端4bから出させる」ことにより,「圧力側端4bから出さ」れた後,すなわち,「圧力側端4b」を通過した後の軸流においても同様に公知のものに比して「より少ない乱流と層流流れ」の状態となることが明らかであるから,結局,後者の「空気案内壁9により空気案内ハウジング2の内部を貫流する空気流を案内して,できるだけ層流状でロータ軸と同軸的に貫流するようにして前記圧力側端4bから出させる,より少ない乱流と層流流れを発生させるステップ」は前者の「ハウジングの内部を通過して流れる空気流を案内して,層流の軸流として空気吹出口から吹出させることにより,前記空気吹出口を通過した後も,横方向の流れの拡散が非常に小さい柱状パターンのままの軸流を発生させるステップ」に相当している。

したがって,両者は,
「空気流発生方法において,
細長い形状のハウジングの内部を通過して,第1端部の空気吸込口から,該第1端部から離れた第2端部の空気吹出口へ流れる空気流を発生させるステップと,
前記ハウジングの内部を通過して流れる前記空気流を案内して,層流の軸流として前記空気吹出口から吹出させることにより,前記空気吹出口を通過した後も,横方向の流れの拡散が非常に小さい柱状パターンのままの軸流を発生させるステップと,
を含む空気流発生方法。」
である点で一致し,両者の間に構成上の差異は存在しない。

したがって,本願発明は,引用例に記載された発明であるといわざるをえない。

なお,請求人は,平成23年8月15日付の審判請求書(3頁「4.」の項参照)において,本件発明による空気流発生装置は,倉庫建築物,テントそのほか大型の解放された部屋の頂部に装着するものであり,天井から床に向けてほぼ柱状の空気流を吐出形成させるという独特なものであり,引用文献のいずれにも開示もしくは示唆のないものであり,これらにより容易想到のものでもない旨主張しているが,請求項32に係る本願発明は,発明特定事項として,「空気流発生装置」を「大型の解放された部屋の頂部に装着する」配置構成を含まないものであるから,請求人の上記主張は,本願発明の発明特定事項に基づかないものであって採用できない。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-23 
結審通知日 2012-03-26 
審決日 2012-04-09 
出願番号 特願2007-503918(P2007-503918)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 竜一  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 倉橋 紀夫
大河原 裕
発明の名称 柱状空気流の発生装置、発生システム、及び発生方法  
代理人 富田 博行  
代理人 増井 忠弐  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  

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