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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B24C
管理番号 1261826
審判番号 不服2011-18479  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-26 
確定日 2012-08-17 
事件の表示 特願2005- 44007「サンドブラスト加工法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月31日出願公開、特開2006-224281〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成17年2月21日の特許出願であって、平成22年12月21日付けで拒絶の理由が通知され、平成23年3月1日に手続補正がなされ、同年5月24日付けで拒絶査定がされ、同年8月26日に本件審判の請求とともに手続補正がなされ、当審において平成24年4月17日付けで拒絶理由が通知され、同年5月31日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年5月31日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。

「パターニングしたレジストがマスクとして積層された基板に研磨微粒子を吹き付けて基板表面を選択的に切削除去することで幅が10μm以下の溝が周期的に一定深さで形成されてなる回折光学素子を形成するサンドブラスト加工法において、前記研磨微粒子に粒径(個数平均粒径)が100nm以下の微粒子からなるナノ粒子を用い、前記基板と前記研磨微粒子を吹きつけるノズルを相対的に一方向に送りながら該送り方向と直交する方向に往復スキャンさせ、前記研磨微粒子を吹き付ける方向を、前記基板に対して垂直な方向から傾け、基板の面に対して断面斜めの溝を形成することを特徴とするサンドブラスト加工法。」

3.刊行物記載の発明
(1)刊行物1
これに対し、本願出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開2004-145255号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0004?0006
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図33に従来の偏光光学素子の一例を示す。この偏光光学素子は、透明基板101上に矩形凹凸形状102aを持つ複屈折(光学的異方性)を示す媒体102が配置され、その上に光学的に等方性を示す媒体103が充填され、その上を透明基板101’で覆われている偏光性回折格子107の例であり、・・・。
・・・。
【0005】
このような偏光性回折格子107を光ヘッド装置の分岐素子として用いれば、光源から光記録媒体へ向かう往路を全透過する偏光方向に設定して効率良く光記録媒体に集光させ、光路中に1/4波長板を配置しておき、光記録媒体からの反射光を往路の偏光方向とは直交して戻るようにさせて再び偏光性回折格子107に入射させると、復路光は全回折され光検出器に効率良く受光されるようにでき、往路、復路とも高効率の光ヘッド装置が実現できる。
【0006】
ところで上記のような偏光性回折格子(または偏光性ホログラム)を光源部に近づけて光源および光検出器まわりを小さくしようとすると、偏光性回折格子のピッチを小さくして復路光の分岐角を大きくする必要がある。
・・・。曲線202は格子ピッチが1.6μmのときの入射角 対 (+1次)回折効率特性を示している。・・・。」

イ.段落0042?0043
「【0042】
[実施例1-6]
次に請求項10,11に係る発明の実施例を説明する。
図6、図7は実施例1-1?1-5で説明した構成の偏光性回折格子の作製方法の説明図である。まず、透明性の基板1上に複屈折媒質2を形成する。形成法は複屈折媒質2の膜を基板1に貼り付ける、あるいは複屈折媒質2をスピンコートなどで塗布する、あるいは真空蒸着、スパッタリングなどの物理製膜法で形成する(図6(a))。次に複屈折媒質2の上にフォトレジスト層4をスピンコートなどにより形成する(図6(b))。次にフォトレジスト層4に格子パターンを露光して現像を行なうと、複屈折媒質2上に回折格子のパターン4’が形成される(図6(c))。この上にアルミニウム(Al),クロム(Cr)などの金属層5を真空蒸着、スパッタリング法などにより形成する(図6(d))。次にフォトレジストパターン4’をアセトン等の有機溶剤による溶出、あるいは酸素プラズマ中での分解による除去により、フォトレジストパターンとその上の金属層を取り除く(図6(e))。図6(e)ではフォトレジストパターン部以外は金属層の格子パターン5’が複屈折媒質2上に残っているところを示す。残った金属格子パターン5’が以後のドライエッチングのマスクとなる。
【0043】
次に図7(a)に示すように、図6(e)のように複屈折媒質2上に金属格子パターン5’を形成したものをイオンビームエッチング、反応性イオン(ビーム)エッチングあるいはプラズマエッチングなどのドライエッチング装置(図示せず)に入れて金属パターン5’をマスクとしてエッチングする。このとき基板1はイオン(ビーム)、プラズマ等(図7(a)では符号6で図示)を形成するエッチング装置の対向電極17に対して傾けて設置してエッチングすることが大きな特徴である。すなわち、基板1をエッチング装置の対向電極17に対して傾けて設置することにより、エッチングは対向電極面に垂直方向に進行することになる。その結果、エッチング直後の状態は図7(b)のようになり、酸によって金属マスク5’を除去した後は、図7(c)のように基板1に対して斜めに傾斜した凹凸形状の矩形格子2aが複屈折媒質2に形成される。」

ウ.図7
矩形格子2aの溝が、周期的に一定深さで形成されることが看取できる。

これらを、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理する。
刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「金属格子パターン5’がマスクとして積層された、基板1上の複屈折媒質2にイオンビームを照射して基板1上の複屈折媒質2表面を選択的に除去することで格子ピッチが1.6μmの溝が周期的に一定深さで形成されてなる偏光性回折格子を形成する加工法において、前記イオンビームを照射する方向を、前記基板に対して垂直な方向から傾け、基板1上の複屈折媒質2の面に対して斜めに傾斜した溝を形成する加工法。」

(2)刊行物2
同じく特表2003-507198号公報(以下「刊行物2」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0001?0002
「【0001】
本発明は、脆性材料のプレート又は層に凹所又は開孔のパターンを形成するため、プレート又は層の表面に研磨性粉末粒子を衝突させる領域を画定するマスクをプレート又は層に設け、ノズルから研磨性粉末粒子のジェットをプレート又は層の表面上に指向させる方法に関するものである。・・・。
【0002】
上述の段落に記載の方法は、本件出願人による先願のヨーロッパ特許出願第660360号に記載されている。粉末吹き付け方法によれば、粒子がサブストレート、特に、ガラスに高速で衝突する。衝突後に、サブストレートに局部的な損傷を与え、このことは表面から小さい破片を除去することが必要となる。この処理は何回も反復して行い、従って、侵食プロセスと見なすことができる。従って、厚さ0.7mmのガラスプレートには金属マスクを設ける。金属マスクはプレートに接着剤層によって接着し、粉末吹き付けプロセス中に局部的に剥がれるのを防止する。ノズルを設けたスプレーユニットをプレートの表面上に指向させるとともに、研磨性粉末粒子たシリコンカーバイド又は酸化アルミニウムのジェットをノズルから圧力又はベンチュリ原理に基づいて噴射させ、プレート又は層の表面上に衝突させ、凹所又は開孔を形成する。・・・。」

イ.段落0026
「【0026】
図3は本発明による粉末吹き付け実験の光学的顕微鏡検査で得られた1?3番目の3個の画像を線図的に示す。使用した脆性材料はガラスとし、表面に厚さ約100μm、開孔間の幅が360μmの吹き付け耐性マスクを設けた。この表面に平均寸法23μmのAl_(2)O_(3)粉末粒子を、100m/秒の平均速度で粉末吹き付け処理を行なった。・・・。」

これらを、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ整理する。
刊行物2には、次の事項(以下「刊行物2事項」という。)が記載されていると認められる。

「脆性材料のプレート又は層に凹所のパターンを形成するため、プレート又は層の表面に研磨性粉末粒子を衝突させる領域を画定するマスクをプレート又は層に設け、ノズルから平均寸法23μmのAl2O3粉末である研磨性粉末粒子のジェットをプレート又は層の表面上に吹き付ける方法。」

4.対比・判断
刊行物1発明の「金属格子パターン5’」は、上記3.(1)イ.【0042】のとおり、回折格子のパターン4’を利用して形成され、ドライエッチングのマスクになることから、本願発明の「パターニングしたレジスト」に相当する。
刊行物1発明の「偏光性回折格子」は本願発明の「回折光学素子」に相当し、同様に「斜めに傾斜した溝」は「断面斜めの溝」に、相当する。
刊行物1発明の「複屈折媒質2」は「基板1上」にあるから、「複屈折媒質2」を含めて本願発明の「基板」と解することができる。
刊行物1発明の「イオンビームを照射」して表面を「除去」する「加工法」と、本願発明の「研磨微粒子を吹き付け」て表面を「切削除去」する「サンドブラスト加工法」とは、「物質をぶつけ」て表面を「除去」する「加工法」である限りにおいて一致する。
刊行物1発明の「格子ピッチが1.6μm」とは、溝の幅と溝以外の凸部の幅の合計が1.6μmであるから、溝の幅は当然に「1.6μm未満」となり、本願発明の「幅が10μm以下」の溝に含まれる。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「パターニングしたレジストがマスクとして積層された基板に物質をぶつけて基板表面を選択的に除去することで幅が10μm以下の溝が周期的に一定深さで形成されてなる回折光学素子を形成する加工法において、前記物質をぶつける方向を、前記基板に対して垂直な方向から傾け、基板の面に対して断面斜めの溝を形成する加工法。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:加工法について、本願発明は「粒径(個数平均粒径)が100nm以下の微粒子からなるナノ粒子」である「研磨微粒子を吹き付け」て表面を「切削除去」する「サンドブラスト加工法」であるが、刊行物1発明は「イオンビームを照射」して表面を「除去」する「加工法」である点。
相違点2:本願発明では「基板と前記研磨微粒子を吹きつけるノズルを相対的に一方向に送りながら該送り方向と直交する方向に往復スキャン」させるが、刊行物1発明では明らかでない点。

相違点1について検討する。
刊行物2事項は、上記のとおり、「凹所のパターン」すなわち「溝」を形成するため、「研磨性粉末粒子のジェット」を表面上に「吹き付ける」もの、すなわち「サンドブラスト加工」である。
刊行物1発明の「イオンビームを照射」して表面を「除去」するとは、イオン粒子を表面にぶつけて機械的に物質を除去することである。すなわち、刊行物2事項の「研磨性粉末粒子」を表面上に吹き付けて表面を除去することと、「物質をぶつけ」て表面を「除去」する点で、共通する加工法である。
イオンビームによる除去と、サンドブラスト加工とは、目的、用途に応じて適宜選択されていることから、刊行物1発明の「イオンビームを照射」して表面を「除去」することを、刊行物2事項を踏まえ「研磨微粒子を吹き付け」て表面を「切削除去」するものとすることは、必要に応じてなしうる事項にすぎない。
刊行物2事項を適用するにあたり、微細加工を行うことも考えられるところ、微細加工のためには、粒子が細かいものである必要がある。
「研磨性粉末粒子」として、「粒径(個数平均粒径)が100nm以下の微粒子からなるナノ粒子」は、拒絶理由で周知例として引用した特開平6-71566号公報の段落0027、同じく特開平5-285839号公報の段落0043にみられるごとく周知である。
よって、刊行物2事項を適用するにあたり、微細加工を行うため、周知の「粒径(個数平均粒径)が100nm以下の微粒子からなるナノ粒子」とした上で、刊行物1発明に適用することに困難性は認められない。

請求人は、意見書において、「刊行物1記載の方法は、イオンビームを基板に対して垂直な方向から傾けて照射することで基板の面に対して断面斜めの溝を形成する方法であり、一方、刊行物2等に記載の方法は、微粒子を吹き付けてサンドブラストにより溝加工する方法であり、相互に異なる原理」である旨、主張する。
しかし、両者はともに、「物質をぶつけて表面を除去する加工法」であって、加工原理は共通すると解されるから、請求人の主張は根拠がない。

相違点2について検討する。
加工対象と研磨粒子を吹きつけるノズルを相対的に一方向に送りながら該送り方向と直交する方向に往復スキャンさせる点は、拒絶理由で周知例として引用した特開平11-138441号公報の要約、同じく特開平10-172424号公報の段落0012、特開平9-50764号公報の段落0008?0009にみられるごとく周知である。
刊行物1発明においても、適切な部位に溝加工を行う必要があるから、そのためにかかる周知技術を適用し、相違点2に係るものとすることに、困難性は認められない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-19 
結審通知日 2012-06-20 
審決日 2012-07-03 
出願番号 特願2005-44007(P2005-44007)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B24C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 段 吉享田中 成彦  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 長屋 陽二郎
藤井 眞吾
発明の名称 サンドブラスト加工法  
代理人 米澤 明  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 韮澤 弘  
代理人 菅井 英雄  
代理人 青木 健二  
代理人 内田 亘彦  
代理人 阿部 龍吉  

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