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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1262116
審判番号 不服2010-1938  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-28 
確定日 2012-08-20 
事件の表示 特願2002-561775「デジタル画像ズーミング方法およびズーム可能画像生成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 8日国際公開、WO02/61682、平成16年 6月24日国内公表、特表2004-518995〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
国際出願: 2002年2月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2001年2月2日(SE)スエーデン国)を国際出願日とする出願 手続補正: 平成20年7月9日
拒絶査定: 平成21年9月29日(送達日:同年10月2日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成22年1月28日
手続補正: 平成22年1月28日
審尋: 平成22年12月9日(発送日:同年12月10日)
審尋回答: 平成23年6月10日
拒絶理由通知: 平成23年9月8日(発送日:同年9月9日)
(以下、「当審拒絶理由」という。)
手続補正: 平成24年1月10日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成24年1月10日


2.本願発明
本願の請求項1ないし29に係る発明は、当審拒絶理由への応答としてなされた本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「記憶装置に接続された表示装置に表示されている表示画像のズーミング方法であって、
前記表示画像は前記記憶装置から前記表示装置へとローディングされて、前記表示画像は少なくとも1つのズーム可能な表示画像事前選択領域を有し、かつ、前記表示画像はズーム可能ではない少なくとも1つの領域を備え、
さらに、前記表示画像は、主要画像から生成されると共に、前記主要画像の低減された解像度及び前記主要画像の外形上小さい大きさを有し、且つ前記主要画像よりも少ないデータを有し、
さらに、前記主要画像は、前記表示画像事前選択領域に対応する主要画像事前選択領域を備えている、
デジタル画像ズーミング方法において、
前記表示画像における前記表示画像事前選択領域の画像を、表示倍率を増加させた一時的な画像として表示することにより、前記表示画像における前記表示画像事前選択領域の画像の連続的にズーミングを行なうズーミングステップ(26)と、
前記ズーミングステップの間に、前記表示画像における解像度よりも高い解像度を有するように前記表示画像事前選択領域の画像を表示するために、詳細画像情報データセットが用いられるようにすべく、前記詳細画像情報データセットを前記記憶装置から前記表示装置へとローディングし、前記詳細画像情報データセットは前記主要画像における前記主要画像事前選択領域から抽出したものである、ローディングステップ(28)と、
前記表示画像における前記表示画像事前選択領域における画像のズームイン(画像拡大)が完了したときに、ローディングされた前記詳細画像情報データセットを用いて、前記表示画像における前記表示画像事前選択領域の表示した画像を前記詳細画像情報データセットに置き換えることによって、前記表示装置上の前記表示画像におけるズームインされた前記表示画像事前選択領域の画像をその解像度を改善して高解像度化するステップ(30)と、 を備えるデジタル画像ズーミング方法。」
(以下、「本願発明」という。)


3. 当審拒絶理由
これに対し、当審拒絶理由における、理由2)の概要は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-88866号公報(発明の名称:高精細画像表示装置及びそのプログラム記憶媒体、出願人:株式会社ピーエフユー、公開日:平成11年3月30日、以下、「引用例1」という。)に記載された発明、及び本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2000-503154号公報(発明の名称:デジタル所有権のアクセスと分配を制御するためのシステム、出願人:エムアールジェイ インコーポレイテッド、公表日:平成12年3月14日、以下、「引用例2」という。)、特開平10-134079号公報(発明の名称:画像データ読み出し方法とその装置およびネットワークシステム、出願人:新日本製鐵株式会社、公開日:平成10年5月22日、以下、「引用例3」という。)に記載されている周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


4.引用例1記載の事項・引用発明
(1)記載事項
引用例1には、次の事項(a)ないし(f)が図面とともに記載されている。

(a)「【0022】
図1は、本発明の原理構成図を示しているが、あわせて本発明の一実施例高精細画像表示装置のクライアント/サーバ・システムの構成図である。1はアーカイブ形式の画像データを格納する補助記憶装置2を接続したサーバ 、5は表示画像を特定しスクロール/ズーム操作の入力装置3と高精細画像を表示する表示装置4とを接続したクライアント、6はサーバ1において圧縮画像の展開を行う際の画像展開部、7は補助記憶装置より画像データブロックを検索する画像管理部、8はクライアント5において圧縮画像の展開を行う際の画像展開部である。
【0023】
9は画像データブロックのキャッシュ及び先読みを行い、分割画像の貼り合わせを行い、画像を特定する選択手段を提供し、表示装置に画像を表示する画像表示部、10はサーバ1とクライアント5を結ぶ通信回線である。
【0024】
サーバ1の側の補助記憶装置2に格納されるアーカイブ形式画像データは、クライアント5側の表示装置4において全体像を1画面にて表示できる程度に縮小されかつ最低解像度をもって用意される最低解像度ファイルから、最高解像度をもって用意される最高解像度ファイルまでの複数段階の画像を持つようにされる。」

(b)「【0026】
最高解像度ファイル11は、例えば10,000ピクセル×10,000ピクセルの画像に 対応し、この場合第1の中間解像度ファイル12は例えば 5,000ピクセル× 5,000ピクセルの画像に対応し、第2の中間解像度ファイル13は例えば 2,500ピクセル× 2,500ピクセルの画像に対応し、最低解像度ファイル14は例えば 1,250ピクセル× 1,250ピクセルの画像に対応している。しかし、必ずしも各ファイルの解像度及び中間解像度の段階の数もこれらに限られるものではない。第1の中間解像度ファイル12は、最高解像度ファイル11に対して、ピクセルを縦方向1/2で横方向1/2に間引いた画像である。
【0027】
1つの例えば仏像についての画像に関して、図2に示す4種類のファイルが用意されており、今仮にクライアント5側から図示の(任意解像度)画像15( 3,000ピクセル× 3,000ピクセル) に対応する画像に対応する表示が要請された際には、当該ファイル15よりも1つ大きい第1の中間解像度ファイル12から、縦方向3/5で横方向3/5に間引いた画像を生成して用いるようにされる。」

(c)「【0028】
図3はファイルを構成するブロックを説明する図である。図中の符号11、12、13、14は図2に対応しており、16-iは最高解像度ファイル11を構成するブロック、17-iは第1の中間解像度ファイル12を構成するブロック、18-iは第2の中間解像度ファイル13を構成するブロック、19-iは最低解像度ファイル14を構成するブロック、20は最高解像度ファイル11に対応する保持情報、21は第1の中間解像度ファイル12に対応する保持情報、22は第2の中間解像度ファイル13に対応する保持情報、23は最低解像度ファイル14に対応する保持情報を表している。」

(d)「【0055】
(ステップS20):サーバ1側では、指定された画像についての基本情報と初期画像とを、図示メモリ(図1に示す補助記憶装置2に対応するメモリ)2から取出して、クライアント5側に送る。
【0056】
(ステップS21):クライアント5側では、サーバ1側からサムネイル画像を取得して、表示装置の画面上のコントロール・ウィンドウに表示する。なお当該サムネイル画像とは、縮小された大きさの画像という意味である。今の場合では、指定された画像が例えば特定の仏像画像であれば当該特定の仏像について正面像や側面像や背面像や上面側や局部像などの夫々のサムネイル画像を、サーバ1側が上記初期表示画像として送信する。勿論、上記特定の仏像画像が指定された場合に、当該特定の仏像と関連のある他の特定の仏像についてのサムネイル画像を送信することもある。
【0057】
(ステップS22):クライアント5側のオペレータが、画像についての表示装置に表示する座標範囲を指定する。例えば仏像の頭部のみを表示するなどの指定が行われる。
【0058】
(ステップS23):ステップS22における指定に対応して、その指定範囲のブロックが、クライアント5側のキャッシュ・メモリ上にキャッシュされていない場合には、当該ブロックを転送してもらうように、サーバ1に要求する。キャッシュ・メモリに既にキャッシュされていれば、ステップS26に進む。」

(e)「【0068】
今、現に、表示枠24に入る領域のブロックが転送されて表示されているとしても、クライアント5側でオペレータがズーム操作やスクロール操作を行っているとすると、クライアント5側では当該操作に伴なって次の必要となるブロックについて、早めにサーバ1に要求を出して取得することが望まれる。このために、先読み処理が行われる。」

(f)「【0117】このような記録を残すことによって、特定のオペレータが行う操作の傾向を知ることができ、上述の先読みを効率よく行わせることが可能となって高速表示をより速く可能とすることができる。更に、現に表示画面36上に表示されている画像35に対して上記ズーム処理やスクロール処理を行うに当たっては、コントロール・ウィンドウ31-1に表示されている表示枠33をマウスなどでポイントした上で行う。即ち、ズーム処理の場合には表示枠33を停止させておいてズームを指示し、スクロール処理の場合には表示枠33を所定の方向に移動させることによってスクロールを行う。当該ズーム処理やスクロール処理が行われつつある間には、表示画面36に現に表示されている画像は、画像の大きさは変わらない形で解像度のみを落としたものとされ、その解像度を落とした画像がズームやスクロールされてゆくようにされる。
【0118】
即ち、表示画面36に通常状態の下で表示されている画像35は、当該表示画面36に表示できる範囲で最も解像度のよいものを用いて表示される。換言すれば最も解像度のよい画像が画像35として表示される。当該画像35は、場合によっては図20に示す如く仏像の一部であるかも知れない。しかし、当該仏像の画像をスクロールして例えば胸の方に画像表示を移行してゆく場合には、画像処理の早さの限界から、あるいは画像処理をより速く行って他の処理に余裕を与えるために、画面36に表示されている画像35について、画像の大きさを変えることなしに解像度のみを落した(即ち、ボケのより多い画像にした)画像を表示するようにする。なお蛇足ながら、コントロール・ウィンドウの画像32は全体像であることからスクロール処理の際にも変化することはない。」

(2)引用発明
・前記記載(a)、(d)、図1、図9、図10より、
(ア)「補助記憶装置2を接続したサーバー1と通信回線で結ばれた、表示装置4を含むクライアント5、に表示されている画像のズーム方法であって、前記画像は前記補助記憶装置2から前記クライアント5へと送られて、前記画像はズーム可能な領域を有」するとの技術事項が読み取れる。

・前記記載(a)、(b)、図1ないし2より、
(イ)「前記画像は最高解像度ファイルの画像を間引いて生成されると共に前記最高解像度ファイルの画像より縮小され、低い解像度を有」するとの技術事項が読み取れる。

・前記記載(c)ないし(f)、図3、図9、図10、図20より、
(ウ)「解像度を落とした画像がズームされるステップと、前記画像よりも高い解像度の画像データブロックを前記サーバー1から前記クライアント5へと転送し、前記画像データブロックは、前記最高解像度ファイルの画像から生成されるステップと、を備えるデジタル画像のズーム方法」との技術事項が読み取れる。

以上の技術事項(ア)、(イ)、(ウ)を総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。

「補助記憶装置2を接続したサーバー1と通信回線で結ばれた、表示装置4を接続したクライアント5に表示されている画像のズーム方法であって、前記画像は前記補助記憶装置2から前記クライアント5へと送られて、前記画像はズーム可能な領域を有し、さらに、前記画像は最高解像度ファイルの画像を間引いて生成されると共に前記最高解像度ファイルの画像より縮小され、低い解像度を有するデジタル画像のズーム方法において、解像度を落とした前記クライアント5に表示されている画像がズームされるステップと、前記クライアント5に表示されている画像よりも高い解像度の、中間解像度ファイルを構成する画像データブロックを前記サーバー1から前記クライアント5へと転送し、前記画像データブロックは、前記最高解像度ファイルの画像から生成されるステップと、を備えるデジタル画像のズーム方法」(以下、「引用発明」という。)


5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

まず、引用発明における「補助記憶装置2」が、本願発明における「記憶装置」に相当し、以下同様に「サーバー1と通信回線で結ばれた、表示装置4を接続したクライアント5」が「表示装置」に、「ズーム方法」が「ズーミング方法」に、「送られて」が「ローディングされて」に、「前記画像はズーム可能な領域を有し」が「前記表示画像は少なくとも1つのズーム可能な表示画像事前選択領域を有し」に、「最高解像度ファイル」が「主要画像」に、「前記画像は最高解像度ファイルの画像を間引いて生成される」が「前記表示画像は、主要画像から生成される」に、「前記最高解像度ファイルの画像より縮小され、低い解像度」が「前記主要画像の低減された解像度及び前記主要画像の外形上小さい大きさ」に、「解像度を落とした画像がズームされるステップ」が「前記表示画像における前記表示画像事前選択領域の画像を、表示倍率を増加させた一時的な画像として表示することにより、前記表示画像における前記表示画像事前選択領域の画像の連続的にズーミングを行なうズーミングステップ」に、「中間解像度ファイルを構成する画像データブロック」が「詳細画像情報データセット」に、「前記画像よりも高い解像度の、中間解像度ファイルを構成する画像データブロックを前記サーバー1から前記クライアント5へと転送し、前記画像データブロックは、前記最高解像度ファイルの画像から生成されるステップ」が「前記表示画像における解像度よりも高い解像度を有するように前記表示画像事前選択領域の画像を表示するために、詳細画像情報データセットが用いられるようにすべく、前記詳細画像情報データセットを前記記憶装置から前記表示装置へとローディングし、前記詳細画像情報データセットは前記主要画像における前記主要画像事前選択領域から抽出したものである、ローディングステップ」に、それぞれ相当することは明らかである。

また、引用発明は、各々座標が設定された多数のブロックからなる、解像度の異なる複数の画像ファイル(図3を参照)を用いてズーム操作を行っていることから、該解像度の異なる複数の画像ファイル間で座標の対応付けがなされていることは明らかであり、したがって上記「高解像度ファイルの画像」が、上記「ズーム可能な領域」に対応する領域を備えていることが分かる。

また、引用発明において、高解像度ファイルの画像より縮小され、低い解像度を有する画像が、高解像度ファイルの画像よりも小さなデータサイズであること、すなわち「少ないデータ」を有することも明らかである。

してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
「記憶装置に接続された表示装置に表示されている表示画像のズーミング方法であって、
前記表示画像は前記記憶装置から前記表示装置へとローディングされて、前記表示画像は少なくとも1つのズーム可能な表示画像事前選択領域を有し
さらに、前記表示画像は、主要画像から生成されると共に、前記主要画像の低減された解像度及び前記主要画像の外形上小さい大きさを有し、且つ前記主要画像よりも少ないデータを有し、
さらに、前記主要画像は、前記表示画像事前選択領域に対応する主要画像事前選択領域を備えている、
デジタル画像ズーミング方法において、
前記表示画像における前記表示画像事前選択領域の画像を、表示倍率を増加させた一時的な画像として表示することにより、前記表示画像における前記表示画像事前選択領域の画像の連続的にズーミングを行なうズーミングステップと、
前記表示画像における解像度よりも高い解像度を有するように前記表示画像事前選択領域の画像を表示するために、詳細画像情報データセットが用いられるようにすべく、前記詳細画像情報データセットを前記記憶装置から前記表示装置へとローディングし、前記詳細画像情報データセットは前記主要画像における前記主要画像事前選択領域から抽出したものである、ローディングステップと、
を備えるデジタル画像ズーミング方法。」

(相違点)
相違点1:「記憶装置に接続された表示装置に表示されている表示画像」が、本願発明では「ズーム可能ではない少なくとも1つの領域を備え」た画像であるのに対し、引用発明ではそのようなズーム可能でない領域を備えた画像であるのか否かが不明である点。

相違点2:本願発明においては、「詳細画像情報データセット」のローディングがズーミングステップの間に行われ、また「画像のズームイン(画像拡大)が完了したときに、ローディングされた前記詳細画像情報データセットを用いて、前記表示画像における前記表示画像事前選択領域の表示した画像を前記詳細画像情報データセットに置き換えることによって、前記表示装置上の前記表示画像におけるズームインされた前記表示画像事前選択領域の画像をその解像度を改善して高解像度化するステップ」と、を備えているのに対し、引用発明ではそのような手順が実施されているか否かが明確ではない点。


6.判断
上記の相違点1について検討する。
引用例2には、画像等のデジタルデータへのアクセスと使用の制御方法に関し、

「アクセスと使用の制御
本発明は計算できるか列挙できる何らかの方法でデータへのアクセスの質と量を制限することが出来る。網羅的ではなく代表的な一セットの例を以下に示す。
アクセス制御の質
(a) ローカル・ディスプレイ(例えばコンピュータのモニタ上のデータ表示)
・・・
アクセス制御の量
・・・
(e)アクセスの解像度・・・
・・・
アクセス制御の細分性
・・・画像の一部を利用可能性、解像度その他において制限するなど。」(第49ページ下から7行目?第50ページ下から7行目)

と記載されており、各種権利の保護や業務上の必要性のために、モニタ上に表示する画像の一部について解像度を制限することは、当業者にとって周知技術に過ぎない。
引用発明もまた、デジタル画像データを送信表示するものであって、同様な制限の必要性も当然に想定される範疇のものであるから、その表示画像の一部において、より高解像度な表示を行うためのズーム操作を不可とする領域を設けることは、引用例2に記載のような周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものといえる。

上記の相違点2について検討する。
引用例3には

「 【0057】
すなわち、画像ズーミング部21は、上述のようにして指定された一部領域の画像データの読み出し・転送が行われている間に、データ記憶部18に記憶されている画像データ(拡大して表示する領域の指定が行われた現在表示中の画像データ)にデジタル信号処理を施すことによって、現在表示されている上記一部領域の画像についてズーム倍率を段階的に変えながら生成した複数段階のズーム画像を順次表示するようにする。
【0058】
これを図3を用いて説明する。図3(a)は画像拡大を行う前の元の画像を示し、矩形の枠線Aは、画像表示部17で画像が表示される表示画面全体あるいは画面中の一部に表示される表示ウィンドウを示している(以下、表示枠Aと記載する)。なお、図3(a)に示されている「あいうえお・・・」の文字は、イメージデータである。
【0059】
上記図3(a)の表示画像上において、拡大して表示する領域を指定すると、指定された領域内の画像がデジタル信号処理されることによって、図3(b)→(c)→(d)のように徐々にズームインされて表示される。なお、図3(d)の画像は、図3(a)の画像そのものを用いたデジタル信号処理により生成されたものであるので、解像度が粗くなっている。
【0060】
その後、図3(d)のようにズーミングが完了した時点で、その図3(d)の画像が、別スレッドでサーバから取り出した図3(e)のような正しい解像度の画像に置き換えて表示される。なお、図3(d)のようにズーミングが完了した時点でサーバからの画像取り出しがまだ完了していない場合は、それが完了するまで解像度が粗い図3(d)の画像が表示され続ける。
【0061】
このようにすれば、クライアント上で拡大表示を指示してからそのズーム画像が正しい解像度で表示されるまでの間に、指定領域の画像が徐々にズーミングされていく様子が表示されるようになる。したがって、ユーザは、画像拡大を指示した後もその対象部分を明確に把握することができるとともに、サーバからの画像取り出し待ち時間の体感速度を速くすることができ、処理の待ち時間によるユーザのストレスを軽減することができる。」

と記載されているように、画像のズーム表示と、高解像度の画像データの読み出し、転送を平行して行い、ズーム完了の時点で転送された高解像度の画像に置き換えて表示することは、画像データの表示手法として周知技術に過ぎない。引用発明もまた、画像データのズーム表示と高解像度の画像データの読み出しとを行う画像表示方法であるから、その際にローディングをズーミングステップの間に行い、またズームインが完了したときにロードした画像を用いて解像度の改善を行うようにすることは、引用例3に記載の周知技術に基いて当業者が容易になし得たものといえる。
また、本願発明が奏する作用効果は、引用発明および引用例2-3に記載の周知技術に基いて当業者が容易に予想しうる程度のものであり、格別の作用効果とは認められない。ここで、審判請求人の平成24年1月10日付け意見書における、

「さらに、前述したように、出願当初の明細書の段落[0009]の3行目から6行目によれば、本願発明の1つの効果は、記憶装置内に占められているメモリの量を減らすことが可能である。つまり、主要画像の重要な部分(即ち主要画像事前選択領域(データ))に対応するデータは、高解像度(即ち、詳細画像情報データセットで記憶する)で記憶されなければならないのに対して、主要画像の他の部分は低解像度(即ち、表示画像で記憶する)で記憶すれば十分である。これは、本願発明の特有な技術的効果である。」

との主張について検討すると、本願の請求項1には、

「・・・前記表示画像は前記記憶装置から前記表示装置へとローディングされて、前記表示画像は少なくとも1つのズーム可能な表示画像事前選択領域を有し、かつ、前記表示画像はズーム可能ではない少なくとも1つの領域を備え、
さらに、前記表示画像は、主要画像から生成されると共に、前記主要画像の低減された解像度及び前記主要画像の外形上小さい大きさを有し、且つ前記主要画像よりも少ないデータを有し、
さらに、前記主要画像は、前記表示画像事前選択領域に対応する主要画像事前選択領域を備えている、
デジタル画像ズーミング方法・・・」

とあり、表示画像がズーム可能ではない領域を備えていることは示されているものの、主要画像の重要ではない部分に対応するデータが低解像度で記憶されており、それによりメモリの量を減らすことができるといったことは特定されていない。すなわち、本願発明が、一様な解像度で記憶されたデータを用いてズーミングを行う方法であって、表示画像からのズーミング処理の段階において領域毎の制限が課せられているような方法、を含むことは明らかであり、(このことは、本願の明細書、段落【0009】における「・・・これはまた、画像の提供者(プロバイダ)に対して、このプロバイダが見たいと欲する画像のこれらの部分をズームインすることを許容することのみの可能性を与えている。このようにしてフォーカスは、例えばこのプロバイダが販売することを欲している画像における他の内容の中から一定の内容で指示され得るものである。」なる記載からも読み取ることができる。)審判請求人の上記主張は請求項に基かないものであって採用できない。

したがって、本願発明は引用発明および引用例2-3に記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明し得たものといえる。


なお仮に、請求項の記載が、低解像度の領域を有するデータを用いることを特定しているとしても、そもそも高低の解像度領域が混在した画像データは周知であり(市街地と郊外とを含む地図データや、特開平11-224259号公報に開示されているようないわゆるマルチ解像度画像など)、引用発明においても表示対象画像としてそのような画像データを選択することに特段の困難性は認められない。


7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は当審拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-16 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-06 
出願番号 特願2002-561775(P2002-561775)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 亮後藤 亮治  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 中塚 直樹
越川 康弘
発明の名称 デジタル画像ズーミング方法およびズーム可能画像生成方法  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 橘谷 英俊  
代理人 川崎 康  
代理人 吉元 弘  
代理人 勝沼 宏仁  
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