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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1262421 |
審判番号 | 不服2010-2273 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-02-02 |
確定日 | 2012-08-30 |
事件の表示 | 特願2004-116086「文字入力装置のモード切替キー」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月25日出願公開、特開2004-334857〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成16年4月9日(パリ条約による優先権主張2003年5月9日、米国)の出願であって、平成21年9月30日付けで拒絶査定がなされたが、これに対して、平成22年2月2日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに手続補正がなされた。平成23年3月22日付けで審尋がなされたが、これに対して同年7月25日に回答書が提出され、平成23年11月1日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して平成24年3月5日に意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたものである。 そして、本願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年3月5日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項4に記載された以下のとおりのものと認められる。 「 【請求項4】 複数の文字入力キーと複数のモード切替キーとを含む文字入力装置を使用して文字を入力する方法であって、前記文字入力装置は、ゲームコンソールに結合されており、 前記方法は、 デフォルトモードを提供するステップと、 各モード切替キーについて基本モードと一時モードとを提供するステップと、 前記モード切替キーを当該モード切替キーの基本モードまたは一時モード以外のモードにおいて1回アクティブ化することによって一時モード値を割り当てるステップであって、前記モード切替キーが続けてさらに1回アクティブ化されると、基本モード値が割り当てられるとともに、前記割り当てられた一時モード値は「なし」になる、ステップと、 前記モード切替キーを当該モード切替キーの基本モードまたは一時モード以外のモードにおいて連続して2回アクティブ化することによって基本モード値を割り当てるステップであって、前記一時モード値は「なし」である、ステップと、 前記モード切替キーを当該モード切替キーの基本モードにおいて1回アクティブ化することによってデフォルトモード値を割り当てるステップと、 アクティブ化した特定の文字キーと、現行モードとに基づいて、アクティブ化した前記特定の文字キーに関連づけられた所定の文字に対応する信号を供給するステップと を備えることを特徴とする方法。」 2.引用例 (1)引用例1 平成23年11月1日付け拒絶理由通知書の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平2-235127号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下(ア)ないし(エ)の事項が記載されている。 (ア)「複数のキーを有し、前記キーが押下されると、前記複数のキー各々に対応した信号を情報処理装置に入力するキーボードと、前記複数のキーの中の基準キーが押下される毎にその他のキーが押下されると、前記押下されたその他のキーに対応した信号を所定信号に変換する第1変換手段と、その他のキーが押下されたのみで、押下されたキーに対応した信号を前記所定信号に変換する第2変換手段と、前記基準キーが複数回又は一定時間連続して押下された時に、第1変換手段から第2変換手段を有効にする切換手段を有する構成とする。」(1頁右下欄4?14行) (イ)「従って、本発明は、コントロール・キーやシフト・キーの様に、複数のキーを同時に押す必要性があるキーボードに於いて、入力を簡単にする事を目的とする。」(2頁右上欄14?17行) (ウ)「そこで、本実施例では、コントロール・キーをタッチしただけでコントロール・キーを押したままの状態を作る。以下、その仕様を簡単に説明する。 モード1 コントロール・キーを軽くタッチした場合は、他のキーを入力すると自動的に、前記コントロール・キーを押した状態が解除される。 モード2 コントロール・キーを2回押した場合(又は、一定時間連続しておした場合)は、コントロール・キーを離してもコントロール・キーが押されたままの状態になる。もう一度コントロール・キーを入力するか、ブランク・キーを入力すれば、前記コントロール・キーを押した状態は、解除される。 以下、図面を参照して実施例を詳細に説明する。 キーボード21のコントロール・キーを打鍵することによって、所定のコードがキーボード・インターフェース22に送られる。次いで、前記キー・コードはデコーダ23に送られる。 デコーダ23はキー・コードを読み込む(第1図フローチャートl)。前記キー・コードがコントロール・インデックス・コードかどうかを判断する(2)。 前記コードが、コントロール・インデックス・コードで無ければ、対応する文字を出力する(7)。 前記コードがコントロール・インデックス・コードならば、次に入力されるキー・コードを待つ(3)。 さて、その後入力されたコードがコントロール・インデックス・コードで無く、その他のキー・コードなら、コントロール・キーと前記コードのキーを押した時の予め決められたコントロール・コードに変換されたキー・コードを出力する(8)。 前記(4)で、入力されたコードが、再びコントロール・インデックス・コードであれば、連続してコントロール・インデックス・コードが入力されている事になる。そこで、第1図フローチャート5へ行く。 次に入力されたキー・コードを読み込み、再びコントロール・インデックス・コードが入力される迄、前記キー・コードをコントロール・コードに変換して出力する(9)。 新たに、コントロール・インデックス・コード若しくはブランクが入力された場合(6)は、処理1に行き、新たにキー・コードが入力されたら、上記同様の処理を行なう。」(3頁左上欄3行ないし左下欄10行) (エ)「コントロール・キーを例に説明したが、これに限るものでは無く、シフト・キーでも良い、又その他のキーでも一向に構わない。」(3頁左下欄16ないし18行) 上記摘記事項(ア)によれば、引用例1記載のキーボードは複数のキーを有し、上記摘記事項(ウ)に「前記コードが、コントロール・インデックス・コードで無ければ、対応する文字を出力する(7)。」と記載されていることからみて、これら複数のキーは文字を入力するためのものといえる。そして上記摘記事項(イ)及び(エ)によれば、シフト・キーを備えていることは明らかである。したがって、引用例1記載のものは「複数の文字入力のキーとシフト・キーとを含むキーボードを使用して文字を入力する方法」ということができる。 上記摘記事項(エ)によれば、コントロール・キーに替えてシフト・キーでもかまわないとされ、そしてシフト・キーは、これを押すことによって入力する文字種が変更されることが技術常識であるから、これを上記摘記事項(ウ)のコントロール・キーに当てはめれば、引用例1記載のものは、まず、シフト・キーが解除された状態を有しているから、引用例1記載のものは「シフト・キーが解除された状態を提供するステップ」を有しているといえる。そして、その状態でシフト・キーを1回押した状態のモード1と、2回押した状態であるモード2を有しているから「シフト・キーについてモード2とモード1とを提供するステップ」を有するといえる。ここで、モード1は他のキーを入力すると自動的にシフト・キーが解除されるモードであり、モード2はシフト・キーを離してもシフト・キーが押されたままの状態になるモードである。 また、モード2が設定されるとき、モード1は解除されると考えるのが自然である。 さらに、上記摘記事項(ウ)によれば、モード2においてもう一度シフトキーを入力すればシフト・キーを押した状態が解除される。 そして、現在のモードの状態に基づいて、入力されたキーに応じた所定の文字が入力され、これに対応した信号が供給されるということができる。 したがって、引用例1の上記摘記事項(ア)?(エ)には次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「複数の文字入力のキーとシフト・キーとを含むキーボードを使用して文字を入力する方法であって、 前記方法は、 前記シフト・キーが解除された状態を提供するステップと、 前記シフト・キーについてモード2とモード1とを提供するステップと、 前記シフト・キーを、シフト・キーが解除された状態において、1回押すことによってモード1に設定するステップであって、前記シフト・キーが続けてもう1回押されると、モード2に設定されるとともに、モード1は解除されるステップと、 前記シフト・キーを、シフト・キーが解除された状態において、2回押すことによってモード2に設定されるステップであって、モード1は解除されるステップと、 前記シフト・キーをモード2においてもう1度押すことによって、シフト・キーを押された状態が解除された状態になるステップと、 入力された文字入力のキーと、現在のモードの状態に基づいて、入力された文字入力のキーに応じた所定の文字が入力され、これに対応した信号が供給されるステップと を備えることを特徴とする方法。」 (2)引用例2 平成23年11月1日付け拒絶理由通知書の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平6-102979号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下(オ)の事項が記載されている。 (オ)「【0019】カナモードキー6を押下するとランプが点灯し、カナモードになる。このとき主キー2はアルファベットA1またはA2によるローマ字に対応するカナを入力する。カナモードのランプが点灯しているときに、カナモードキー6を押下すると、ランプが消えてカナモードは無効となり、アルファベットの入力モードとなる。 【0020】記号モードキー7を押下するとランプが点灯し、記号モードになる。このとき主キー2は記号S1またはS2を入力する。記号モードのランプが点灯しているときに、記号モードキー7を押下すると、ランプが消えて記号モードは無効となる。 【0021】数字モードキー8を押下するとランプが点灯し、数字モードになる。このとき主キー2は数字N1またはN2を入力する。数字モードのランプが点灯しているときに、数字モードキー8を押下すると、ランプが消えて数字モードは無効となる。 【0022】なお、記号モードのとき数字モードキー8を押下するの数字モードになり、記号モードはオフになる。同様に数字モードのとき記号モードキー7を押下すると記号モードになり、数字モードはオフになる。」(3欄34行ないし4欄4行) 上記摘記事項(オ)によれば、引用例2には以下の技術的事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「文字入力をするキーボードにおいて、複数のモードキー(カナモードキー、記号モードキー、数字モードキー)を有し、それによって複数の文字種が選択される。そして、あるモードに設定されているときに異なるモードのモードキーを押下すると、それに対応したモードに切り替わり、もとのモードはオフになる。」 3.対比 本願発明を引用例1発明と比較する。 (a)引用例1発明の「複数の文字入力のキー」が、本願発明の「複数の文字入力キー」に相当する。 (b)後述するようにキーが複数か否かという点で差異はあるものの、引用例1発明の「シフト・キー」が、本願発明の「モード切替キー」に相当し、また、引用例1発明の「キーボード」「前記シフト・キーが解除された状態」が、本願発明の「文字入力装置」「デフォルトモード」にそれぞれ相当する。 (c)後述するように、引用例1発明の「シフト・キー」と本願発明の「モード切替キー」は複数か否かという差異はあるものの、引用例1発明においてシフト・キーを1回押した状態が「モード1」であり、2回押した状態が「モード2」であることから、引用例1発明の「モード1」「モード2」が、それぞれ本願発明の「一時モード」「基本モード」に相当する。 (d)引用例1発明において、キーを押して入力することが、本願発明における「アクティブ化」に相当する。また、引用例1発明において「モード1は解除される」とは、本願発明における「一時モード値は「なし」になる」ことに相当する。 (e)引用例1発明の 「前記シフト・キーを、シフト・キーが解除された状態において、1回押すことによってモード1に設定されるステップであって、前記シフト・キーが続けてもう1回押されると、モード2に設定されるとともに、モード1は解除されるステップと、 前記シフト・キーを、シフト・キーが解除された状態において、2回押すことによってモード2に設定されるステップであって、モード1は解除されるステップ」と、 本願発明の 「前記モード切替キーを当該モード切替キーの基本モードまたは一時モード以外のモードにおいて1回アクティブ化することによって一時モード値を割り当てるステップであって、前記モード切替キーが続けてさらに1回アクティブ化されると、基本モード値が割り当てられるとともに、前記割り当てられた一時モード値は「なし」になる、ステップと、 前記モード切替キーを当該モード切替キーの基本モードまたは一時モード以外のモードにおいて連続して2回アクティブ化することによって基本モード値を割り当てるステップであって、前記一時モード値は「なし」である、ステップ」 とは、本願発明においてはモード切替キーが複数あるため、あるモード切替キーを1回もしくは2回押す前に、別のモード切替キーによって別のモードになっている場合を含んでいる点で、引用例1発明とは相違するものの、 「前記モード切替キーを1回アクティブ化することによって一時モード値を割り当てるステップであって、前記モード切替キーが続けてさらに1回アクティブ化されると、基本モード値が割り当てられるとともに、前記割り当てられた一時モード値は「なし」になる、ステップと、 前記モード切替キーを連続して2回アクティブ化することによって基本モード値を割り当てるステップであって、前記一時モード値は「なし」である、ステップ」 である点では両者は共通する。 (f)引用例1発明の 「前記シフト・キーをモード2においてもう1度押すことによって、シフト・キーを押された状態が解除された状態になるステップと、 入力された文字入力のキーと、現在のモードの状態に基づいて、入力された文字入力のキーに応じた所定の文字が入力され、これに対応した信号が供給されるステップ」が、 本願発明の 「前記モード切替キーを当該モード切替キーの基本モードにおいて1回アクティブ化することによってデフォルトモード値を割り当てるステップと、 アクティブ化した特定の文字キーと、現行モードとに基づいて、アクティブ化した前記特定の文字キーに関連づけられた所定の文字に対応する信号を供給するステップ」に相当する。 したがって、本願発明と引用例1発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。 [一致点] 複数の文字入力キーとモード切替キーとを含む文字入力装置を使用して文字を入力する方法であって、 前記方法は、 デフォルトモードを提供するステップと、 モード切替キーについて基本モードと一時モードとを提供するステップと、 前記モード切替キーを1回アクティブ化することによって一時モード値を割り当てるステップであって、前記モード切替キーが続けてさらに1回アクティブ化されると、基本モード値が割り当てられるとともに、前記割り当てられた一時モード値は「なし」になる、ステップと、 前記モード切替キーを連続して2回アクティブ化することによって基本モード値を割り当てるステップであって、前記一時モード値は「なし」である、ステップと、 前記モード切替キーを当該モード切替キーの基本モードにおいて1回アクティブ化することによってデフォルトモード値を割り当てるステップと、 アクティブ化した特定の文字キーと、現行モードとに基づいて、アクティブ化した前記特定の文字キーに関連づけられた所定の文字に対応する信号を供給するステップと を備えることを特徴とする方法。 [相違点1] 本願発明は、複数のモード切替キーを有するのに対して、引用例1発明は複数ではない点。 [相違点2] 本願発明では「前記文字入力装置は、ゲームコンソールに結合されて」いるのに対して、引用例1発明はそのようなものではない点。 [相違点3] 本願発明では、モード切替キーを1回または2回アクティブ化する動作を「当該モード切替キーの基本モードまたは一時モード以外のモードにおいて」行っており、本願発明においてはモード切替キーが複数あるため、モード切替キーを1回もしくは2回アクティブ化する前に、別のモード切替キーによって別のモードになっている場合も含んでいる点で、引用例1発明と相違する。 4.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 上記「2.(2)」の引用例2記載事項として「文字入力をするキーボードにおいて、複数のモードキー(カナモードキー、記号モードキー、数字モードキー)を有し、それによって複数の文字種が選択される。」と記載されているように、多くの文字種を入力するため、キーボードにおいて文字種を変更する複数のキーを設ける技術は公知の技術である。そしてキーの数が限られたキーボードにおいて複数の文字種を入力したいという要請は一般的な課題にすぎないから、引用例2記載事項を引用例1発明に適用して、モード切替キーを複数設ける構成とし、様々なモードを選択できるような構成にすることは、必要に応じて当業者が容易に想到し得た程度の事項にすぎないものである。 [相違点2]について ゲームシステムにおいて、文字を入力するためにキーボードをゲームコンソールに結合する構成は周知の技術にすぎないものである(必要であれば、特開2002-149321号公報、特開平11-119883号公報参照。) そうしてみると、引用例1発明に記載されたキーボードにおいても、ゲームコンソールに接続する構成を採用し、文字の入力に使用することは、当業者が必要に応じて適宜設計できた程度の事項にすぎないものである。 [相違点3]について 上記「[相違点1]について」で述べたように、引用例2記載事項を引用例1発明に適用して、モード切替キーを複数設ける構成とすることは格別な事項とはいえない。 そして、このように複数のモード切替キーを有する構成にした場合に、引用例2記載事項に「あるモードに設定されているときに異なるモードのモードキーを押下すると、それに対応したモードに切り替わり、もとのモードはオフになる。」と記載されていることを勘案すれば、別のモード切替キーによって別のモードが設定されている場合であっても、新たに入力するモード切替キーの押下によって、新たなモードを設定し、もとのモードは解除されるように構成することは、当業者が容易に想到できたものにすぎない。したがって相違点3とした本願発明の構成は、引用例1発明及び引用例2記載事項から当業者が容易に想到できたものである。 そして、本願発明の効果も、引用例1発明、引用例2記載事項、及び周知の技術事項から予測できる程度のものにすぎない。 5.むすび 上記「4.」で述べたとおり、本願請求項4に係る発明は、引用例1発明、引用例2記載事項、及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-29 |
結審通知日 | 2012-04-03 |
審決日 | 2012-04-16 |
出願番号 | 特願2004-116086(P2004-116086) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩橋 龍太郎 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 木方 庸輔 |
発明の名称 | 文字入力装置のモード切替キー |
復代理人 | 濱中 淳宏 |
代理人 | 阿部 和夫 |
代理人 | 谷 義一 |