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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25F
管理番号 1262430
審判番号 不服2010-20402  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-10 
確定日 2012-08-30 
事件の表示 特願2004-536813「手持工作機械、特にアングルグラインダ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 1日国際公開、WO2004/026535、平成17年12月15日国内公表、特表2005-537947〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2003年6月6日(パリ条約による優先権主張2002年9月13日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成22年4月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に特許請求の範囲を補正対象とする手続補正書が提出され、当審から平成23年9月14日付けの拒絶理由通知がなされ、これに対して平成24年3月15日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成24年3月15日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。
「モータと伝動装置とを有する手持工作機械において、モータ及び/又は伝動装置が組立可能な機能モジュールとして構成されており、モータと伝動装置とがカップリングを介して結合されており、カップリングが手持工作機械に設けられたファンと少なくとも部分的に一体に構成されており、前記カップリングが差込みカップリングから構成されており、該差込みカップリングは、モータのアンカ軸と結合された歯付きスリーブと、ファンに一体化された内歯からなることを特徴とする、手持工作機械。」(以下、請求項1に記載の発明を「本願発明1」という。)

第3.引用刊行物
○引用刊行物1
当審で通知した拒絶の理由に引用された特開平8-52669号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「モジュール型駆動装置を含む動力工具及びモジュール型駆動装置の組立て方法」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

ア.【特許請求の範囲】の【請求項1】
「【請求項1】 モジュール型駆動装置を含む動力工具であって、
モーターハウジングと回転駆動シャフトとを含むモジュール型駆動モーターと、
遊星歯車装置を収容する伝動装置ハウジングを含み、該遊星歯車装置が前記駆動シャフトの挿入のための開口を含む駆動歯車を有している、モジュール型伝動装置と、
前記モーターハウジングと伝動装置ハウジングの一方から延びる1つ又は複数の案内部材であって、前記駆動シャフトが前記駆動歯車の前記開口に挿入された時他方のハウジングの1つ又は複数の案内開口に挿入されるような、1つ又は複数の案内部材、
とを具備しているモジュール型駆動装置を含む動力工具。」

イ.【特許請求の範囲】の【請求項6】、【請求項7】
「【請求項6】 前記駆動シャフトが断面キー形状であり前記駆動歯車の前記開口がキー孔形状の断面を有し、前記モーターハウジングと前記伝動装置ハウジングとが一体に組立てられた時前記駆動シャフトを摺動自在に受け入れるようにしている請求項1に記載の動力工具。
【請求項7】 前記駆動シャフトがD字形の構造を有し前記駆動歯車の前記開口がD字形の断面を有し前記モーターハウジングと前記伝動装置ハウジングとの組立て時に前記駆動シャフトを摺動自在に受入れるようにしている請求項1に記載の動力工具。」

ウ.段落【0001】?【0006】
「【発明の属する技術分野】本発明は、モジュール型の駆動装置を含む動力工具と、動力工具その他に用いるモジュール型の駆動装置を組立てる方法とに関する。このモジュール型駆動装置は、動力ドリル及びスクリュードライバーのような動力工具にまたミキサー及び調合機のような台所用品に用いることができる。
【従来の技術】公知の動力工具、例えば手で握る動力ドリルやスクリュードライバーにおいて、遊星歯車減速装置に連結されてモーター駆動シャフトの回転を回転チャックに伝達する電気駆動モーターを用いることが知られている。典型的には、この電気モーターは内蔵ユニットでありモーターの駆動シャフトには遊星歯車減速装置のの部分を形成するピニオン歯車が設けられている。駆動モーターと遊星歯車装置とを組立てるため、取付けプレートがモーターハウジングの端壁にこの取付けプレートの中央開口を通って延びるモーター駆動シャフトとピニオン歯車と共にボルトで固定される。遊星歯車減速装置の他の構成要素、すなわち担持プレートと遊星歯車とが、回転チャックに連結するための回転出力シャフトを支持する歯車ハウジングにおいて組立てられる。取付けプレートが取付けられたモーターハウジングは歯車ハウジングと整列されモーター駆動シャフト上のピニオン歯車が歯車ハウジングの内部の遊星歯車の間に挿入される。取付けプレートは一組のねじにより歯車ハウジングに固定され駆動装置の組立てを完了する。バイヨネット型の締結具を用い歯車ハウジングを取付けプレートに固定することがまた知られている。
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は容易にかつ正確に組立てられる簡単な構造のモジュール型のモーター及び伝動装置を含む動力工具を提供することである。
本発明は特に、モーターと伝動装置がモーターと伝動装置の各ハウジングを相互に対し簡単に摺動し回転することにより相互に組立てることのできる別々の内蔵モジュール型ユニットからなるモジュール型駆動装置を含む動力工具に関するものである。
【課題を解決するための手段】本発明の1つの形態によれば、ここに具体化され記載されるように、モジュール型駆動組立体を含む動力工具は、モーターハウジングと回転駆動シャフトとを含むモジュール型駆動モーターと、駆動シャフトの挿入用の開口を含む駆動歯車を有する遊星歯車装置を収容する伝動装置ハウジングを含むモジュール型伝動装置とを具備している。1つ又は複数の案内部材がこれらハウジングの一方から延出し、駆動シャフトが駆動歯車の開口に挿入されてこれらハウジングを相互に整列させた時に他方のハウジングの1つ又は複数の案内孔に挿入されるようにしている。
モジュール型駆動装置の組立てを容易にするため、駆動シャフトは断面がキー形状とされまた駆動歯車の開口は断面がキー孔形状を有しモーターハウジングと伝動装置が組立てられた時に駆動シャフトを摺動自在に受け入れるようになっている。案内部材は伝動装置ハウジングの端壁に形成された1つ又は複数の案内ピンを具備し、案内孔はモーターハウジングの端壁に形成され案内ピンを摺動自在に受け入れるようにする。モーターハウジングと伝動装置ハウジングとを一体に保持するため、1つ又は複数の圧入リブが案内ピンの各々に形成され案内孔の内側と摩擦係合するようになっている。」

エ.段落【0020】
「遊星歯車装置80はモーター22の駆動シャフト44の挿入のための中央開口86を含む駆動歯車84を有している。駆動シャフト44はモーターハウジング42と伝動装置ハウジング70とが相互に組立てられる時駆動歯車84の開口86に摺動自在に受け入れられる。駆動シャフト44は断面がキー形状でありまた駆動歯車84の開口86はキー孔形状の構造を有しモーター駆動シャフト44の回転を遊星歯車装置80の駆動歯車84に伝達するようになっている。好適な実施態様では、モーター駆動シャフト44はD字形構造を有しまた駆動歯車84の開口86はD字形の断面を有しD字形の駆動シャフト44を挿入できるようにする。D字形駆動シャフト44の先端の面取りした表面45がD字形駆動シャフト44を駆動歯車84のD字形開口に挿入するのを容易にする。」

オ.段落【0030】?【0035】
「図7に示すように、D字形駆動シャフト44は案内ピン92が案内孔94に受け入れられる前に駆動歯車84のD字形開口86に摺動自在に係合される。モーターハウジング42と伝動装置ハウジング70とを軸方向に相互に向って摺動させるこにより、D字形駆動シャフト44はカバー72上の案内ピン90がモーターハウジング42の前壁48に係合するまでD字形開口86の中に部分的に前進することができる。
図8に示すように、D字形駆動シャフト44が駆動歯車84のD字形開口86の中に部分的に挿入されることにより、モーターハウジング42と伝動装置70は相互に対し回転されカバー72上の案内ピン92をモーターハウジング42の前壁48の対応案内孔94と整列させる。次に、モーターハウジング42と伝動装置ハウジング70を軸方向に相互に向って摺動させることにより、案内ピン92が、前方ブッシュ46が伝動装置ハウジング70のカバー72の円形開口78に受け入れられる前に案内孔94に摺動自在に係合される。
次に、図9に示されるように、案内ピン92が案内孔94に摺動自在に係合された後、モーターハウジング42の前方の環状ブッシュ46がカバー72の円形開口76に入る。モーターハウジング42と伝動装置ハウジング70とが相互に向って摺動するにつれて、環状ブッシュ46が開口76の周囲のカバー72上に形成された傾斜案内表面78により円形開口76の中へと案内される。
最後に、図6に示されるように、モーターハウジング42の前壁48が伝動装置ハウジング70のカバー72と係合した時、D字形駆動シャフト44が駆動歯車84のD字形開口86に完全に挿入され案内ピン92を案内孔94に完全に挿入する。さらに、モーターハウジング42の前方の環状ブッシュ46が、案内ピン92が完全に案内孔94に挿入されるにつれて伝動装置ハウジング70のカバー72の円形開口76の中に完全に挿入される。
組立てられたモジュール型駆動装置において、モーター22が、D字形モーター出力シャフト44を遊星歯車装置80の駆動歯車84のD字形開口86に摺動自在に係合し、伝動装置ハウジング70のカバー72上の案内ピン92をモーターハウジング42の前壁48上の案内孔94と係合させ、そしてモーターハウジング42上の前方ブッシュ46を伝動装置カバー72の円形開口78に係合させることにより、伝動装置24に軸方向に摺動自在に連結される。案内ピン92上の圧入リブ96が案内孔94の内側に摩擦係合されモーターハウジング42と伝動装置ハウジング70とを相互に固定する。これに加え、円形開口76の内側の圧入リブ98が環状ブッシュ46と摩擦係合しモーターハウジング42と伝動装置ハウジング70とをさらに一体に保持する。
上記のことから、本発明のモジュール型駆動装置を含む動力工具又は同様の装置がより少ない部品の低価格の工具を提供することが理解されるであろう。この動力工具20はモーター22と伝動装置24がモジュール型ユニットであるので組立てが容易である。モーター22と伝動装置24の組立ては別のねじ又はその他の締結具を要しないで達成される。その代わり、モジュール型モーター22とモジュール型伝動装置24が相互に単に摺動及び回転運動することにより容易に組立てられる。」

以上によれば、引用刊行物1には、
「モジュール型駆動装置を含む、動力ドリル及びスクリュードライバーのような動力工具であって、
モーターハウジングとD字形の駆動シャフトとを含むモジュール型駆動モーターと、
遊星歯車装置を収容する伝動装置ハウジングを含み、
該遊星歯車装置が前記D字形の駆動シャフトの挿入のためのD字形開口を含む駆動歯車を有している、モジュール型伝動装置と、を具備しているモジュール型駆動装置を含む動力工具。」
との発明(以下、「引用刊行物発明1」という。)が開示されていると認められる。

○引用刊行物2
当審で通知した拒絶の理由に引用された実願昭62-33293号(実開昭63-140357号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物2」という。)には、「携帯用ハンドグラインダ」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

カ.実用新案登録請求の範囲
「駆動用の電動機を内蔵したハウジングと、前記電動機の回転力を伝達するスピンドルの先端に研削用の砥石を装着して成る携帯用ハンドグラインダにおいて、前記回転子とスピンドルの連結部に、弾性体のブシュと冷却用のフアンとを一体成形すると共に、その軸心部を前記回転子とスピンドルとを連結する連結部を成すカップリングを配設して成る携帯用ハンドグラインダ。」

キ.考案の詳細な説明
「〔考案の利用分野〕
本考案は、被加工材の面取り、平面研削加工する携帯用ハンドグラインダの外枠及び軸受部の冷却に関するものである。
〔考案の背景〕
従来の携帯用ハンドグラインダの一例を第3図に示す。面収り、研削加工は砥石11の高速回転により行われる。軸心の偏心による振動防止のため、回転子3とスピンドル16はカップリング15により連結されている。
以上の構造では、高速回転により軸受8が発熱し、軸受箱部を通して操作者が把握するインナカバ5、ノーズブラケット9に伝わり、操作性が悪くなる欠点があった。又、発熱により軸受内のグリースを劣化させ、軸受の寿命を低下させていた。
〔考案の目的〕
本考案の目的は、上記した従来技術の問題点を解消し、外枠部の発熱を抑止し、操作性の向上と加えて、軸受の寿命の長い携帯用ハンドグラインダを提供することにある。
〔考案の概要〕
本考案は、回転子とスピンドルの連結部に弾性体を介在させたブシュと冷却用のファンを一体成形したカップリングを設けることにより、ファンにより発生する空気流により、軸受及び外枠部の冷却を強制的に行うよう工夫したものである。
〔考案の実施例〕
本考案の実施例を第1図、第2図に示す。
ハウジング1の内部に内蔵された電動機に、軸受8を介し回転子3の回転軸が突出し、その先端にスピンドル16がファン6を有するカップリング16により連結されている。ノーズブラケット9はインナカバ5を介しネジ7でハウジング1に固定されている。スピンドル16の先端には研削用の砥石11がコレットチャック10に取付けられている。回転子3の回転軸は、カップリング15の内周部に設けられた溝内に嵌合され、反対側にスピンドル16が同様の溝内に取付けられ、動力を伝達している。溝部の外周部には弾性体13を介在させたブシュが取付けられている。電動機により発生する動力は、回転子3を通じカップリング16を回転させ、回転により生じた空気流は、冷却風排出口12に排出される。空気流は常に軸受8、インナカバ5及びノーズブラケット9に冷却風を与え、冷却を行う。以上により、軸受に伝わる熱を軽減させ、更に操作者が把握する外枠部の発熱を軽減させている。
〔考案の効果〕
本考案によれば、回転子とスピンドルの連結部に弾性体のブシュと冷却風用のファンを一体成形したカップリングを設け、そのファンによる空気流の発生による冷却で、軸受内のグリースの劣化が防止され、更に操作者の把握する外枠部の発熱を軽減することができる。」

なお、上記摘記事項キ.の内、「スピンドル16がファン6を有するカップリング16」は、「スピンドル16がファン6を有するカップリング15」の誤記と認められる。

以上によれば、引用刊行物2には、
「駆動用の電動機を内蔵したハウジングと、前記電動機の回転力を伝達するスピンドルの先端に研削用の砥石を装着して成る携帯用ハンドグラインダにおいて、前記回転子とスピンドルの連結部に、弾性体のブシュと冷却用のフアンとを一体成形すると共に、その軸心部に前記回転子とスピンドルとを連結する連結部を成すカップリングを配設して成る携帯用ハンドグラインダ。」
との発明(以下、「引用刊行物発明2」という。)が開示されていると認められる。

第4.対比・判断

本願発明と引用刊行物発明1とを比較すると、後者は、「動力ドリル及びスクリュードライバーのような動力工具」であり、このような動力工具は手持工作機械ということができるから、本願発明に係る「手持工作機械」と基本的に共通しており、「モータと伝動装置とを有する」点においても、両者は共通している。
さらに、後者の「モジュール型駆動モーター」は、前者の「モータが組立可能な機能モジュールとして構成されて」いる点に相当し、後者の、「モジュール型伝動装置」は、前者の「伝動装置が組立可能な機能モジュールとして構成されて」いる点に相当している。
そして、後者の、「モジュール型駆動モーター」が「D字形の駆動シャフト」を含み、「モジュール型伝動装置」の「遊星歯車装置」が「D字形開口を含む駆動歯車」を有し、「D字形の駆動シャフト」を「D字形開口」に挿入して動力を伝達する動力伝達機構は、前者の「モータと伝動装置とがカップリングを介して結合され」、「前記カップリングが差込みカップリングから構成されている」点と共通しているものであるということができる。
してみれば、両者の一致点は以下のとおりである。

<一致点>
「モータと伝動装置とを有する手持工作機械において、モータ及び/又は伝動装置が組立可能な機能モジュールとして構成されており、モータと伝動装置とがカップリングを介して結合されており、前記カップリングが差込みカップリングから構成されている、手持工作機械。」

そして、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明は、「カップリングが手持工作機械に設けられたファンと少なくとも部分的に一体に構成されて」いるものであるのに対して、引用刊行物発明1の動力伝達機構は、そのようなファンを備えたものではない点。

<相違点2>
本願発明は、「差込みカップリングは、モータのアンカ軸と結合された歯付きスリーブと、ファンに一体化された内歯からなる」ものであるのに対して、引用刊行物発明1の動力伝達機構は、D字形開口にD字形の駆動シャフトを挿入するものではあるものの、差し込みカップリングがそのような歯付きスリーブと、ファンに一体化された内歯を備えたものではない点。

<相違点1>について検討する。
引用刊行物発明2は、携帯用ハンドグラインダに関するものであり、このような携帯用ハンドグラインダは手持工作機械ということができるから、本願発明の係る「手持工作機械」と基本的に共通しており、「モータと伝動装置とを有する」点においても、両者は共通している。
そして、引用刊行物発明2の、「回転子とスピンドルの連結部に、弾性体のブシュと冷却用のフアンとを一体成形すると共に、その軸心部に前記回転子とスピンドルとを連結する連結部を成すカップリングを配設」した点に係る「カップリング」は、電動機の回転子と回転力を伝達するスピンドルとを連結するカップリングであるとともに、フアンとを一体成形したものである。
してみれば、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は引用刊行物発明2に示されているということができ、技術分野に関しても、引用刊行物発明1と引用刊行物発明2は共通しているから、これらを組み合わせるにあたっての阻害要因があるとすることもできない。
以上のとおり、相違点1に係る発明特定事項の違いは、引用刊行物発明1に引用刊行物発明2を組み合わせたにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2>について検討する。
カップリングの技術分野においては、一方の軸に取り付けた歯付きスリーブと他方の内歯により動力を伝達するのは周知事項である。これは、例えば、特開昭59-137619号公報に記載の、外周面に定ピッチで凹凸が形成された円弧状突出部6を設けたハブ3と、これに歯合する無端ベルト14、にみられ、同様の軸継ぎ手構造は、実願昭62-91397号(実開昭63-201213号)のマイクロフィルムに記載の、外周の歯5を有する駆動側の主軸1の端部のハブ3と、歯5と歯合する歯6を内周面に有するスリーブ7、あるいは、特開平2-80819号公報に記載の、外歯車を形成した駆動軸1に嵌合したハブ3と、これに噛み合う内歯を設けたスリーブ4、にみられる。
してみれば、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、カップリングの技術分野において周知事項であるということができ、本願発明の属する手持工作機械の技術分野に上記周知のカップリングの技術を採用するにあたっての阻害要因があるとも認められない。
以上のとおり、相違点2に係る発明特定事項の違いは、引用刊行物発明1に周知事項を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

作用ないし効果について
本願発明の作用ないし効果も引用刊行物発明1、引用刊行物発明2、及び、周知事項から当業者が予想できる範囲のものである。

第5.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用刊行物発明1、引用刊行物発明2、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は、その余の請求項に係る発明について見るまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2012-03-29 
結審通知日 2012-04-05 
審決日 2012-04-17 
出願番号 特願2004-536813(P2004-536813)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B25F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金本 誠夫  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 菅澤 洋二
長屋 陽二郎
発明の名称 手持工作機械、特にアングルグラインダ  
代理人 星 公弘  
代理人 二宮 浩康  
代理人 久野 琢也  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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