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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04B
管理番号 1262447
審判番号 不服2011-9184  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-28 
確定日 2012-08-30 
事件の表示 特願2005- 11113「ドレン排出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月 3日出願公開,特開2006-200397〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成17年1月19日の出願であって,平成23年1月21日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月28日に拒絶査定不服審判が請求され,当審において平成24年1月18日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,同年3月23日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年3月23日付け手続補正により補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「駆動源によって駆動される圧縮機で生成された圧縮空気を貯留する円筒形の空気タンクの内部に溜まったドレンを排出するドレン排出装置において,前記空気タンクの上部に形成した雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部を備えた管継手と,一端側が前記管継手に連結されて他端側が前記空気タンクの底部へ向かって延びる略真直状で所定の剛性が維持されたドレンパイプと,前記ドレンパイプの延設方向に沿って摺動可能に前記ドレンパイプの前記他端側に装着されて前記ドレンパイプの他端側よりも突出するよう設けられている先端パイプと,を備え,前記ドレンパイプは,前記管継手を前記空気タンクに取り付けた状態で前記他端側が前記空気タンクの底部に至らない長さに設けられて,前記先端パイプは,前記管継手を前記空気タンクに螺合させる際に先端部が前記空気タンクの底部に当接し,前記管継手の前記螺合動作に伴って前記ドレンパイプの延設方向に沿って摺動し,前記螺合動作が完了すると前記先端部が前記空気タンクの底部に接触したときに,前記先端パイプのドレン排出管路が前記空気タンクの円筒形状の内側底面によって塞がれないように,前記先端パイプは,前記ドレンパイプの前記他端側と挿嵌可能な略真直状の環状部材として設けられ,前記環状部材の端面は前記環状部材の軸心延在方向に対して傾斜して形成されていることを特徴とするドレン排出装置。」

2.引用例
(2-1)引用例1
当審の拒絶の理由に引用された特開2003-254243号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【0002】
【従来の技術】一般に,圧縮機は,空気等の気体を圧縮する圧縮部を備え,該圧縮部で圧縮された気体は貯留タンクに供給され,該貯留タンク内に貯えられる。また,昨今では,様々な作業現場で空圧機器が用いられ,例えば建設現場では,作業性を向上するために空圧式の釘打ち機等が用いられている。このため,貯留タンク,圧縮部,駆動モータ等を一体的に組付けることにより,容易に運搬できるようにしたタンク一体型の圧縮機が製造されている。このタンク一体型の圧縮機は,例えば特開平10-246185号公報,特開平11-218080号公報等によって知られている。
【0003】ここで,貯留タンクは,底部が下側となるように水平方向に配置され,その上部には内周側に雌ねじが刻設された円環状のねじ座が溶接によって固着されている。また,ねじ座には管継手が螺合して取付けられ,この管継手の下側には,当該管継手から貯留タンクの底部近傍まで延びる金属管を溶接して取付けている。
【0004】そして,管継手の上側にドレンコックを取付けることにより,該ドレンコックを開いたときには,貯留タンク内に貯えられた圧縮空気の圧力を利用し,該タンクの底部側に溜まったドレンを金属管,管継手,ドレンコックを介して外部に排出する。
【0005】また,圧縮機には,2個の貯留タンクを対をなすように配設したものがあり,この2個の貯留タンクのうち圧縮部に接続される一方の貯留タンクには溶接されたねじ座に金属管が取付けられた管継手を設け,他方の貯留タンクには溶接されたねじ座に金属管が取付けられた管継手と単体の管継手を設ける。そして,一方の貯留タンクで金属管が取付けられた管継手と他方の貯留タンクで単体の管継手とを連通管を用いて接続し,他方の貯留タンクで金属管が取付けられた管継手にはドレンコックを取付ける構成としている。
【0006】これにより,圧縮部から一方の貯留タンクに供給された圧縮気体は,金属管,連通管を通って他方の貯留タンクにも供給される。また,ドレンを排出する場合には,他方の貯留タンクに設けられたドレンコックを開くことにより,一方の貯留タンク内のドレンを,金属管,連通管を介し圧縮空気と一緒に他方の貯留タンクに流入させ,この他方の貯留タンクに設けられた金属管,ドレンコックを介して外部に排出する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで,上述した従来技術による圧縮機は,貯留タンクの上部にねじ座を取付け,このねじ座に管継手を螺合して取付ける。また,管継手には当該管継手から貯留タンクの底部近傍まで延びる金属管が取付けるようにしている。
【0008】ここで,貯留タンクの上部に固着したねじ座に形成された雌ねじ,管継手に形成された雄ねじは,それぞれ管用テーパねじとして形成されている。そして,ねじ座の雌ねじに管継手の雄ねじを螺着する場合には,該雄ねじにシールテープを巻付けた状態でねじ込むようにしている。
【0009】従って,管継手に溶接される金属管の長さ寸法を,該管継手の下部から貯留タンクの底部までの距離に合せて正確に形成しても,ねじ座に管継手をねじ込むときの力加減,シールテープの巻数,ねじの加工公差等によりねじ座に対する管継手のねじ込み深さが変わってしまう。このため,金属管は,管継手を最も深くねじ込んだ場合でも,その先端が貯留タンクの底部に接触しないように長さ寸法を短めに設定しなくてはならない。この結果,金属管の先端が貯留タンクの底部から離間してしまい,該貯留タンク内のドレンを全量排出することができないという問題がある。」

・図1,2,4,5等には,貯留タンク2,4が円筒形の空気タンクである態様が示されている。そして,これらの図に示されたものは,引用例1の段落【0026】?【0058】に記載された発明の実施例ではあるが,引用例1の段落【0002】に従来技術文献として例示された特開平10-246185号公報に,円筒状の貯留タンクが記載されているように,タンク一体型の圧縮機における貯留タンクを円筒形に構成することは慣用手段であること,また,引用例1全体の記載をみても,その従来技術の貯留タンクが,実施例のものと異なる形状であると解すべき根拠は見当たらないことから,引用例1の段落【0002】?【0009】に記載された従来技術においても,同様に円筒形の貯留タンクを備えているものと認められる。

・段落【0003】の「貯留タンクは,・・・上部には内周側に雌ねじが刻設された円環状のねじ座が溶接によって固着されている。また,ねじ座には管継手が螺合して取付けられ」との記載から,管継手が,ねじ座の雌ねじに螺合する雄ねじ部を備えていることは,明らかである。

・段落【0007】の「管継手には当該管継手から貯留タンクの底部近傍まで延びる金属管が取付けるようにしている。」との記載,及び段落【0009】の「管継手に溶接される金属管の長さ寸法を,該管継手の下部から貯留タンクの底部までの距離に合せて正確に形成しても,ねじ座に管継手をねじ込むときの力加減,シールテープの巻数,ねじの加工公差等によりねじ座に対する管継手のねじ込み深さが変わってしまう。このため,金属管は,管継手を最も深くねじ込んだ場合でも,その先端が貯留タンクの底部に接触しないように長さ寸法を短めに設定しなくてはならない。」等の記載からみて,金属管は略真直状であると解するのが自然である。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「駆動モータによって駆動される圧縮機で圧縮された圧縮空気を貯える円筒形の貯留タンクの内部に溜まったドレンを排出するドレン排出装置において,前記貯留タンクの上部に内周側に雌ねじが刻設された円環状のねじ座が固着され,前記ねじ座に螺合可能な雄ねじ部を備えた管継手と,一端側が前記管継手に溶接して取付けられて他端側が前記貯留タンクの底部近傍まで延びる略真直状の金属管と,を備え,前記金属管は,前記管継手を前記貯留タンクに取り付けた状態で前記他端側が前記貯留タンクの底部に接触しない長さに設けられているドレン排出装置。」

(2-2)引用例2
同じく,当審における拒絶の理由に引用された特開2000-18113号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【0005】
【発明の実施の形態】図1は本発明の燃料ポンプ装置の実施の形態第1を示す。燃料タンク11の上部壁12に装着穴15が形成され,燃料ポンプ本体17,吸入管38及び燃料フィルタ30が装着穴15を通して燃料タンク11内に挿入され,燃料ポンプ本体17の上端のフランジ部18が上部壁12の上面に当接されている。不図示のボルト, ナットによりフランジ部18が上部壁12に固定され,こうして燃料ポンプ本体17等が燃料タンク11内に装着されている。フランジ部18の上部に端子台51が連結され,端子台51から給電線14が延びている。燃料ポンプ本体17は,下端面に開口された吸込口19から燃料を吸い込み,燃料タンク11の上方に突出した吐出管20から吐出する作用をなすものである。
【0006】吸入管38は固定側吸入管22と可動側吸入管27から構成され,固定側吸入管22の上端のフランジ部23の上面が燃料ポンプ本体17の下端面の吸込口19の部分に当接され,吸込口19と固定側吸入管22の内部通路とは連通状態にされている。不図示のボルトが固定側吸入管22のフランジ部23の不図示の挿通孔に挿通され,ボルトがフランジ部23の不図示のボルト孔に螺合されて,固定側吸入管22が燃料ポンプ本体17に固定され,フランジ部23の上面と燃料ポンプ本体17の下端面との間は密封状態にされている。可動側吸入管27の上端にフランジ部28が形成され,固定側吸入管22の外周面と可動側吸入管27の内周面とが摺動自在かつ液密状態に嵌合されている。
【0007】固定側吸入管22の外周部で,固定側吸入管22のフランジ部23の下面と可動側吸入管27のフランジ部28の上面との間にスプリング25が装着され,スプリング25の弾発力によって可動側吸入管27が下方へ付勢されている。なお,スプリング25を燃料ポンプ本体17の下面と可動側吸入管27の上面との間に装着してもよいことは当然である。燃料フィルタ30のケース31には出口開口32が形成され,出口開口32に可動側吸入管27の下端が嵌合され固定されている。燃料フィルタ30はスプリング25により下方へ付勢され,ケース31の下面が燃料タンク11の底部壁13の上面に当接している。燃料フィルタ30のケース31内にはフィルタエレメント33が配設され,フィルタエレメント33によってケース31内が入口側室35と出口側室34とに区分されている。入口側室35は不図示の入口開口を介してケース31の外部と連通され,出口側室34は出口開口32に連通されている。なお,可動側吸入管27の上方部の外周面を固定側吸入管22の下方部の内周面に摺動自在に嵌合させることができ,そのときはフランジ28を省略し可動側吸入管27の外周で固定側吸入管の下端面と燃料フィルタ30の上端面との間にスプリングを装着することとなる。
【0008】燃料ポンプ本体17を作動させると,燃料タンク11内の燃料37が,燃料フィルタ30,可動側吸入管27,固定側吸入管22,吸込口19を通って燃料ポンプ本体17に吸い込まれ,吐出管20を通って内燃機関に向けて吐出される。固定側吸入管22と可動側吸入管27とを摺動可能状態に嵌合して吸入管38が構成されているので,吸入管38の長さは可変であり,従って燃料ポンプ本体17をタンク深さの異なる燃料タンク11にそのまま取り付けることができ,汎用性がある。また,燃料タンク11が変形したり収縮して燃料ポンプ本体17の下端面と底部壁13の上面との間の距離が変更したとき,可動側吸入管27が固定側吸入管22に対して摺動し,吸入管38が折損することがなく,また燃料ポンプ本体17に力が加わって損傷させたりすることがない。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例2には,以下の技術が開示されていると認められる。
「燃料の固定側吸入管22の延設方向に沿って摺動可能に前記固定側吸入管22の他端側に装着されて前記固定側吸入管22の他端側よりも突出するよう設けられている可動側吸入管27を備え,前記可動側吸入管27は,前記固定側吸入管22が連結された燃料ポンプ本体17を燃料タンク11に装着させる際に,フィルタを固定した先端部が前記燃料タンク11の底部壁13に当接し,前記燃料ポンプ本体17の装着動作に伴って前記固定側吸入管22の延設方向に沿って摺動し,前記装着動作が完了すると前記先端部が前記燃料タンク11の底部壁13に接触したときに,前記可動側吸入管27は,前記固定側吸入管22の前記他端側と摺動可能状態に嵌合する略真直状の環状部材として設けることにより,燃料ポンプ本体17をタンク深さの異なるタンクにそのまま取り付けることができ,汎用性を有するようにする技術。」

(2-3)引用例3
同じく,当審における拒絶の理由に引用された特開平11-236877号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【0011】図1において,10は空気圧縮装置であり,エアー取入口(図示せず)より空気を取り入れ,モータ12の回転をベルト装置14を介して空気圧縮機11に伝え,空気圧縮機11によって作り出された圧縮空気を吐出配管15を経由してエアータンク13に貯蔵し,空気供給配管イ16の一端から,貯蔵された圧縮空気とエアータンク13内で結露することで発生した水が底に溜まったドレンD1とを共に吸い込み,同じ空気供給配管イ16を経由して除湿器30に供給するような構成となっている。
【0012】この場合,空気供給配管イ16は,エアータンク13上部の貫通口13aで内部より突出しており,エアータンク13の貫通口13a周辺からエアータンク13内の圧縮空気が洩れないように密閉された状態で貫通し,エアータンク13底部側の一端は,エアータンク13内のドレンD1を吸引しやすいようにエアータンク13底部近くで開口している。
【0013】また,空気供給配管イ16の途中には,エアータンク13側から手動弁イ18と逆止弁20が,記載の順序で配設されている。 但し,順序は,逆の場合も考えられる。
【0014】更に,この空気供給配管イ16は,図2に見られるように,エアータンク13内部の底に接近している側の一端を,水平に対して5度ないし60度カットすることによって,空気供給配管イ16をエアータンク13に装着する際,外部からエアータンク13内部を見る事が出来なくても,空気供給配管イ16をエアータンク13底部に突き当てた状態で装着することで,空気供給配管イ16とエアータンク13底部の間に確実に隙間を確保出来るようになっている。
【0015】尚,この空気供給配管イ16とエアータンク13の貫通口13aとの間の密閉方法としては,エアータンク13と空気供給配管イ16間を溶接しても,その間にパッキンやOリング・・・等のシール材を配設してもかまわない。 また,ネジによって止める方法も考えられる。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例3には,以下の技術が開示されていると認められる。
「空気供給配管16とエアータンク13底部の間に確実に隙間を確保するために,空気供給配管16のエアータンク13底部に突き当てた側の一端を,軸心延在方向に対して傾斜して形成する技術。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると,その機能・作用からみて,後者における「駆動モータ」は前者の「駆動源」に相当し,以下同様に,「圧縮された」態様は「生成された」態様に,「貯える」態様は「貯留する」態様に,「貯留タンク」は「空気タンク」に,「ねじ座に螺合可能な雄ねじ部」は「雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部」に,「貯留タンクの上部に内周側に雌ねじが刻設された円環状のねじ座が固着され,ねじ座に螺合可能な雄ねじ部を備えた管継手」は「空気タンクの上部に形成した雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部を備えた管継手」に,「溶接して取付けられ」た態様は「連結され」た態様に,「貯留タンクの底部近傍まで延びる」態様は「空気タンクの底部へ向かって延びる」態様に,「金属管」は「ドレンパイプ」に,「貯留タンクの底部に接触しない長さ」は「空気タンクの底部に至らない長さ」に,それぞれ相当している。
したがって,両者は,
「駆動源によって駆動される圧縮機で生成された圧縮空気を貯留する円筒形の空気タンクの内部に溜まったドレンを排出するドレン排出装置において,前記空気タンクの上部に形成した雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部を備えた管継手と,一端側が前記管継手に連結されて他端側が前記空気タンクの底部へ向かって延びる略真直状のドレンパイプと,を備え,前記ドレンパイプは,前記管継手を前記空気タンクに取り付けた状態で前記他端側が前記空気タンクの底部に至らない長さに設けられているドレン排出装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
ドレンパイプに関し,本願発明では,「所定の剛性が維持され」ているのに対し,引用発明では,そのような特定はなされていない点。

[相違点2]
本願発明は,「ドレンパイプの延設方向に沿って摺動可能に前記ドレンパイプの他端側に装着されて前記ドレンパイプの他端側よりも突出するよう設けられている先端パイプ」を備えているのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

[相違点3]
本願発明は,「先端パイプは,管継手を空気タンクに螺合させる際に先端部が前記空気タンクの底部に当接し,前記管継手の前記螺合動作に伴ってドレンパイプの延設方向に沿って摺動し,前記螺合動作が完了すると前記先端部が前記空気タンクの底部に接触したときに,前記先端パイプのドレン排出管路が前記空気タンクの円筒形状の内側底面によって塞がれないように,前記先端パイプは,前記ドレンパイプの他端側と挿嵌可能な略真直状の環状部材として設けられ,前記環状部材の端面は前記環状部材の軸心延在方向に対して傾斜して形成されている」のに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

3.判断
上記各相違点につき以下に検討する。
・相違点1について
引用発明における金属管も,所定の剛性を維持しているといえるのは技術常識であるから,相違点1は実質的な相違点ではない。

・相違点2,3について
例えば,引用例2にも開示されているように,液体(「燃料」が相当)の移送用パイプ(「固定側吸入管22」が相当)の延設方向に沿って摺動可能に前記移送用パイプの他端側に装着されて前記移送用パイプの他端側よりも突出するよう設けられている先端パイプ(「可動側吸入管27」が相当)を備え,前記先端パイプは,前記移送用パイプが連結された連結体(「燃料ポンプ本体17」が相当)をタンク(「燃料タンク11」が相当)に装着させる際に,先端部(「フィルタを固定した先端部」が相当)が前記タンクの底部(「底部壁13」が相当)に当接し,前記連結体の装着動作に伴って前記移送用パイプの延設方向に沿って摺動し,前記装着動作が完了すると前記先端部が前記タンクの底部に接触したときに,前記先端パイプは,前記移送用パイプの前記他端側と挿嵌可能な(「摺動可能状態に嵌合する」態様が相当)略真直状の環状部材として設けることにより,タンク内の液体を確実に排出する(「燃料ポンプ本体17をタンク深さの異なるタンクにそのまま取り付けることができ,汎用性を有する」態様が相当)ようにすることは,液体移送装置の分野における周知技術であるといえる。

また,例えば,引用例3にも開示されているように,ドレン排出管路がタンクの底面によって塞がれることを防止する(「空気供給配管16とエアータンク13底部の間に確実に隙間を確保する」態様が相当)ために,移送用パイプ(「空気供給配管16」が相当)の端面(「エアータンク13底部に突き当てた側の一端」が相当)を,軸心延在方向に対して傾斜して形成することは,液体移送装置の分野における常套手段である。

引用発明において,タンク内の液体を確実に排出することは当然に要求されるべき課題である(引用例1の段落【0009】の記載参照)から,かかる課題の下に上記周知技術を適用することで,ドレンパイプの延設方向に沿って摺動可能に前記ドレンパイプの他端側に装着されて前記ドレンパイプの他端側よりも突出するよう設けられている先端パイプを備え,前記先端パイプは,管継手を空気タンクに螺合させる際に前記先端部が前記空気タンクの底部に当接し,前記管継手の螺合動作に伴って前記ドレンパイプの延設方向に沿って摺動し,前記螺合動作が完了すると前記先端部が前記空気タンクの底部に接触したときに,前記先端パイプは,前記ドレンパイプの前記他端側と挿嵌可能な略真直状の環状部材として設けるようにすることは,当業者にとって容易である。
その際,タンクの底部に接触する先端部を,上記常套手段に倣い,先端パイプのドレン排出管路が空気タンクの円筒形状の内側底面によって塞がれないように,環状部材の端面は前記環状部材の軸心延在方向に対して傾斜して形成することは,当業者が当然に考慮すべき設計的事項にすぎない。

そうすると,上記相違点2,3は,格別のものとはいえない。

そして,本願発明の全体構成により奏される効果は,引用発明,上記周知技術及び上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願発明は引用発明,上記周知技術及び上記常套手段に基いて当業者が容易になし得たものである。

なお,請求人は,平成24年3月23日付け意見書において,「刊行物3のように,底部が平坦な空気タンクでは,本願発明のように円筒状の空気タンクに比べて,底面に溜まる量ははるかに多量である。たとえ,先端パイプがその底部に点接触状態で当接するとしても,ドレンを排出するとき,先端パイプの端面は傾斜しているため,端面の開口上部がドレンの表面から出ると,そこから空気が入り込んでしまい,ドレンの吸い上げ効率は急激に低下してしまうから,一部は排出されずに残留してしまう。
本願発明の場合も同様であるが,空気タンクは円筒状であるから,残留ドレンの形状は薄い蒲鉾形になるが,これに対し,刊行物3のものは,残留ドレンの形状は直方体になる。したがって,円筒形の空気タンクの方がはるかにドレンの残留量は小さい。」,「上記した本願発明の特徴的事項のうち,『傾斜させた先端パイプの先端部を,円筒形の空気タンクの底部に,点接触で当接させた』という構成は,引用発明にもなく,周知技術でも,常套手段でもない。」旨を主張する。
しかし,まず,引用例3(刊行物3)の空気タンク(エアータンク13)の底部が平坦であることは,引用例3には記載されておらず,むしろ,空気圧縮装置における空気タンクは円筒形に構成することが慣用手段であることを勘案すれば,円筒形と解するのが自然である。また,仮に,引用例3の空気タンクの底部が平坦であるとしても,引用例3に示されるような上記常套手段,すなわち,「ドレン排出管路がタンクの底面によって塞がれることを防止するために,移送用パイプの先端部を,軸心延在方向に対して傾斜して形成する」ことを,引用発明に採用することを妨げる理由は全くない。
そして,円筒形の空気タンクを備えた引用発明に,上記周知技術とともに上記常套手段を採用することにより,「傾斜させた先端パイプの先端部を,円筒形の空気タンクの底部に,点接触で当接させた」構成が得られることは明らかであって,それにより奏される作用効果も予測し得る範囲内のものであることは,上記のとおりである。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,上記周知技術及び上記常套手段に基いて当業者が容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-26 
結審通知日 2012-07-03 
審決日 2012-07-17 
出願番号 特願2005-11113(P2005-11113)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 竜一井上 茂夫  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 田村 嘉章
槙原 進
発明の名称 ドレン排出装置  
代理人 瀬川 幹夫  

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