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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1262449
審判番号 不服2011-11509  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-01 
確定日 2012-08-30 
事件の表示 特願2004- 46273「X線コンピュータ断層撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 2日出願公開、特開2005-230426〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年2月23日の出願であって、平成22年6月25日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年9月3日付けで手続補正がなされ、平成23年2月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成22年9月3日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「【請求項1】X線管の連続回転と寝台移動とを併用するヘリカルスキャンのもとでX線により被検体を走査してデータを収集する架台部と、
前記収集したデータから抽出した複数の心拍にわたる複数のデータセグメントに基づいて画像データを再構成する再構成部と、
前記ヘリカルスキャンにおいて前記X線管が連続回転をしている期間中に、前記被検体の心拍数の変動に従って前記X線管の回転速度を変化させるために前記架台部を制御する制御部とを具備し、
前記制御部は、前記X線管が1回転する間に前記寝台が移動する距離を略一定に維持するために前記回転速度とともに前記寝台の移動速度を変化させることを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。」(以下、「本願発明」という。)

第3 引用刊行物記載の発明 (下線は当審で付与した。)
(1)本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2003-319934号公報(以下「刊行物1」という。)には、「X線コンピュータ断層撮影装置」について、図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア) 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、メインスキャン前のプレスキャンで撮影部位への造影剤流入を図る機能を備えたX線コンピュータ断層撮影装置に関する。」

(1-イ) 「【0017】図1に、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の主要部の構成を示している。ガントリ5は、X線管とX線検出器とを収容する。X線管はX線検出器とともにリング形状を有する回転フレームに搭載される。X線管はX線検出器に対して撮影空間を挟んで対向する。寝台7に載置された被検体は、ガントリ5の撮影空間内に配置される。寝台7はその長手方向に関して移動する。一般的に、被検体の体軸は寝台の長手軸及びX線管の回転軸に対して略平行である。X線管の回転軸と平行な向きはスライス方向と称される。X線管は、X線を発生するために、高電圧発生部から管電圧を印加され、フィラメント電流を供給される。被検体を透過したX線はX線検出器の各X線検出素子に電荷を発生させる。この電荷は電流信号として引き出される。この電流信号はデータ収集部(DAS)で電圧信号に変換され、増幅され、ディジタル信号に変換される。ディジタル信号は、スリップリング及び前処理部を介して投影データとして、心電図データと共に、記憶装置に記憶される。画像再構成部は、360°分の投影データに基づいて画像データを再構成する。画像再構成部は、心電同期再構成機能を備える。心電同期再構成機能において、心電図データに基づいて、各心拍周期の投影データセットから、特定の心拍時相を中心とした部分期間内のデータ(セグメント)が切り取られる。複数の心拍周期から切り取られた複数のセグメントが繋ぎ合わされる。それにより画像再構成に必要な360°分の投影データが揃えられる。揃えられた360°分の投影データに基づいて、特定の心拍時相に対応する画像データが再構成される。再構成された画像データは、表示制御部10を経由してディスプレイ8に表示される。【0018】生体現象測定装置4は、被検体の生体現象を測定する。生体現象には、心拍(心臓の動き)、呼吸等が含まれる。ここでは生体現象を「心拍」として説明する。心電計4は、被検体に装着した電極を介して心臓の電気現象を検出し、その電気現象の時間変化を表わす心電図データを出力する。心電計4には、生体現象監視部2が接続される。生体現象監視部2は、心電図データに基づいて、1分あたりの心拍数、つまりハートレートを計算する。また、生体現象監視部2は、計算したハートレートに基づいて、特定時点、具体的にはメインスキャン条件を初期的に設定したときに参照したハートレートを測定した時点でのハートレートに対する現時点のハートレートの変動が所定値を超過しているか否かを判定する。生体現象監視部2は、ハートレートの変動が所定値を超過しているときには、メインスキャン条件の再設定を促す信号を、ハートレートを表わす信号と共にスキャン条件選択部1に出力する。つまり、生体現象監視部2は、被検体のハートレートに基づいて、メインスキャン条件の再設定の必要性の有無を判定する。なお、ハートレートの変動とは、造影剤注入前の段階でメインスキャン条件を初期的に設定する際に参照したハートレートに対する現在のハートレートの差又は変化率として計算される。
【0019】スキャン条件選択部1は、生体現象監視部2から、スキャン条件の再設定を促す信号を受信したとき、その信号と共に受信したハートレートに対して、最適又はその近似的なスキャン条件を決定する。実際には、スキャン条件選択部1は、データ保存部6が有する半導体メモリ、磁気ディスク又は光磁気ディスク等の記憶媒体に予め書き込まれているテーブルから、ハートレートに対応するスキャン条件を選択する。
【0020】テーブルは、例えば図2に示すように、ハートレート(HR)に関して複数の区分が設定され、この複数の区分に対して複数のヘリカルピッチ(HP)とスキャンスピードとが対応付けられている。図2では、ハートレート(HR)に関する区分の分け方が、ヘリカルピッチとスキャンスピードとで相違するようにテーブルが組まれているが、同じ区分に分けるようにしてもよい。ヘリカルピッチとは、ヘリカルスキャンにおいて用いられるスキャン条件であり、X線管が1回転する間に移動する寝台5の移動距離(mm)として定義され得る。スキャンスピードとは、X線管が1回転するのに要する時間(sec)として定義され得る。」

(1-ウ) 「【0023】図1に戻る。スキャン条件選択部1で選択されたメインスキャン条件のデータは、スキャン制御部3に供給される。スキャン制御部3は、供給されたスキャン条件に従って、X線管の回転速度を制御し、寝台7の移動速度を制御する。例えば、スキャン制御部3は、回転フレームが所定時間内で、設定されたスキャンスピードに達し、そのスピードを維持するようにガントリ5の回転フレーム駆動部を制御し、X線管のフィラメントが管電流条件に応じた温度に所定時間で達するように高電圧発生部を制御してフィラメントのヒートアップを開始し、X線絞り装置を制御してスライス厚条件に応じた開度に調整し、ヘリカルピッチに応じた速度に所定時間で達するように寝台駆動部を制御して寝台移動を開始する。」

上記(1-ア)?(1-イ)の記載と図1?12を参照すると、上記引用刊行物1には、
「X線管とX線検出器とを収容するガントリ5と、
各心拍周期の投影データセットから、特定の心拍時相を中心とした部分期間内のデータ(セグメント)が切り取られて揃えられた360°分の投影データに基づいて、特定の心拍時相に対応する画像データが再構成される画像再構成部と、
被検体のハートレートに基づいて、メインスキャンの開始前にメインスキャン条件の再設定の必要性の有無を判定する生体現象監視部2と、
生体現象監視部2から、スキャン条件の再設定を促す信号を受信したとき、ハートレートに対して、最適又はその近似的なスキャン条件を決定するスキャン条件選択部1と、
スキャン条件に従って、X線管の回転速度を制御し、寝台7の移動速度を制御するスキャン制御部3と、
を備えたX線コンピュータ断層撮影装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(2)本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開10-328175号公報(以下「刊行物2」という。)には、「X線CT装置」について、図面とともに次の事項が記載されている。
(2-ア) 「【0041】以上、心拍周期が一定であることを前提に実施例を説明してきたが、心拍周期はスキャン中に変動する可能性があり、このような場合には変動の性質によって対応が可能である。例えば突発的な変動のについては測定データを処理する際に、データから排除する処理を行う。周期的な不整脈等変動の場合には、測定前の心電パルスの観察によって予測し、避けることができる。また、スキャン速度制御部に、心拍周期の変化に追従してスキャナー回転周期を変化させる機能を持たせることも可能である。」

(3)本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開6-133960号公報(以下「刊行物3」という。)には、「X線CT装置」について、図面とともに次の事項が記載されている。
(3-ア) 「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、螺旋状スキャンが可能なX線CT装置の改良に関するものである。
・・・
【0004】ところで、このような螺旋状スキャンが可能なX線CT装置においては、スキャナ回転速度とテーブル移動速度の関係は一定に調整されるが、従来装置ではこれらは各々独立して制御するものであった。」

第4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア その構造・機能からみて、引用発明の「ガントリ5」、「画像再構成部」が、それぞれ本願発明の「架台部」、「再構成部」に相当することは明らかである。

イ 引用発明の「スキャン制御部3」は「スキャン条件に従って、X線管の回転速度を制御し、寝台7の移動速度を制御する」のであるから、本願発明の「制御部」に相当する。

ウ 引用発明の「X線コンピュータ断層撮影装置」は上記(1-ウ)に「【0023】・・・ヘリカルピッチに応じた速度に所定時間で達するように寝台駆動部を制御して寝台移動を開始する。」と記載されており、本願発明のヘリカルスキャンをする「X線コンピュータ断層撮影装置」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「X線管の連続回転と寝台移動とを併用するヘリカルスキャンのもとでX線により被検体を走査してデータを収集する架台部と、
前記収集したデータから抽出した複数の心拍にわたる複数のデータセグメントに基づいて画像データを再構成する再構成部と、
前記ヘリカルスキャンにおいて前記X線管が連続回転をしている期間中に、前記被検体の心拍数の変動に従って前記X線管の回転速度を変化させるために前記架台部を制御する制御部とを具備し、
前記制御部は、前記X線管が1回転する間に前記寝台が移動する距離を略一定に維持するために前記回転速度とともに前記寝台の移動速度を変化させるX線コンピュータ断層撮影装置。」である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点1)
被検体の心拍数の変動に従って前記X線管の回転速度を変化させる時期について、本願発明では「X線管が連続回転をしている期間中」であるのに対して、引用発明では、メインスキャンの開始前である点。

(相違点2)
被検体の心拍数の変動に従って前記X線管の回転速度を変化させるための架台部の制御について、本願発明では「X線管が1回転する間に前記寝台が移動する距離を略一定に維持するために前記回転速度とともに前記寝台の移動速度を変化させる」のに対して、引用発明では、X線管の回転速度と寝台の移動速度の関係が特定されていない点。

(1)相違点1についての検討
刊行物2の記載事項である上記(2-ア)に「スキャン速度制御部に、心拍周期の変化に追従してスキャナー回転周期を変化させる機能を持たせる」と記載されており、「X線管が連続回転をしている期間中に、前記被検体の心拍数の変動に従って前記X線管の回転速度を変化させる」ことが記載されている。
そして、刊行物2に記載の上記技術的事項は、引用発明と同様にX線コンピュータ断層撮影装置のX線管の回転制御に関するものである。
してみると、引用発明に刊行物2の記載事項を採用し、相違点1における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものといえる。

(2)相違点2についての検討
刊行物3の記載事項である上記(3-ア)に「螺旋状スキャンが可能なX線CT装置においては、スキャナ回転速度とテーブル移動速度の関係は一定に調整される」と記載されているように、「X線管が1回転する間に前記寝台が移動する距離を略一定に維持するために前記回転速度とともに前記寝台の移動速度を変化させる」ことは周知の技術事項である。
してみると、引用発明に周知の技術事項を適用して、相違点2における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものといえる。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物2の記載事項および周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2の記載事項および周知の技術事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2の記載事項および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-21 
結審通知日 2012-06-26 
審決日 2012-07-18 
出願番号 特願2004-46273(P2004-46273)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 明央  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
後藤 時男
発明の名称 X線コンピュータ断層撮影装置  
代理人 村松 貞男  
代理人 中村 誠  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 哲  
代理人 村松 貞男  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  

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