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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B |
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管理番号 | 1262673 |
審判番号 | 不服2011-14457 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-07-05 |
確定日 | 2012-09-06 |
事件の表示 | 特願2007-82524「水硬性組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月9日出願公開、特開2008-239403〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成19年3月27日の出願であって、平成23年1月12日付けで拒絶理由が通知され、同年3月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月7日付けで拒絶査定されたので、同年7月5日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1?4に係る発明は、平成23年3月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりのものである。 「低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム15?30質量部、及び、平均粒径が5?10μmのフライアッシュ5?15質量部を含むことを特徴とする水硬性組成物。」 3 刊行物に記載された発明 3-1 引用例1について (1)引用例1の記載事項 本願出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開平4-2642号公報(以下「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。 (ア)「セメントと非晶質シリカ微粉末とを有する水密性コンクリート用セメント組成物において、適量の減水剤と、石炭燃焼時に排出されたフライアッシュを、破砕することなく、そのまま20μm以下の粒径で分級し、この分級で得られた細粒分とを添加したことを特徴とする水密性コンクリート用セメント組成物。」(特許請求の範囲の請求項(1)) (イ)「コンクリートの水密性を高めるために、セメント等のコンクリート材料として、シリカフューム等の非晶質シリカ微粉末を添加することが行なわれている。」(第1頁右下欄7?10行) (ウ)「フライアッシュは、石炭燃焼時に排出されたフライアッシュを、破砕することなく、そのまま20μmの粒径で分級し、この分級で得られた細粒分である(以下、分級フライアッシュという)。この分級フライアッシュの粒子のほとんどは、小さな球形をなしており、そのブレーン値は5500cm^(2)/gで、平均粒径はおよそ7.5μmである。」(第3頁左上欄2?8行) (エ)「フライアッシュは、アルカリ条件下で、セメントのカルシウムシリケート分と中和することによって、トバモライトゲルが生成され、コンクリートの水密性を向上させるとともに、強度を増進する。・・・。そして、分級フライアッシュを用いない場合と比べて、高価なシリカフューム3の使用量をおよそ数分の1程度に低減することができ、混練作業の作業性が良好となる。」(第4頁右下欄6?20行) (2)引用例1に記載された発明 記載事項(ア)より、引用例1には、セメント、非晶質シリカ微粉末及び20μm以下の粒径で分級したフライアッシュからなるセメント組成物が記載されている。そして、同(イ)によれば、非晶質シリカ微粉末としてはシリカフュームが代表的なものであり、また、同(ウ)によれば、20μmの粒径で分級したフライアッシュの平均粒径は、およそ7.5μmである。」 したがって、引用例1には、次の発明(以下「引用例1発明」という)が記載されている。 「セメント、シリカフューム及び平均粒径が7.5μmのフライアッシュからなるセメント組成物。」 3-2 引用例2について (1)引用例2の記載事項 同じく、特開2006-104026号公報(以下「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。 (カ)「セメント、中空微小球を主体とする耐久性向上材、シリカフューム、20μ以下に分級したフライアッシュ、及び減水剤を含有してなり、セメント100部に対して、該耐久性向上材が固形分換算で0.01?5部、シリカフュームが3?35部、該フライアッシュが5?35部で、・・・あることを特徴とするセメント組成物。」(特許請求の範囲の請求項3) (キ)「本発明で使用するセメントとしては、低熱、普通、早強、及び超早強等の各種ポルトランドセメント、これらのポルトランドセメントに、高炉スラグやフライアッシュなどを混合した各種混合セメント、・・・などが使用可能である。」【0014】 (ク)「シリカフュームの使用量は、セメント100部に対して、3?35部であり、5?20部が好ましい。3部未満では耐久性低減効果が少ない場合があり、35部を超えるとプラステイックひび割れの発生や強度改善効果が得られない場合がある。」【0018】 (ケ)「本発明で使用するフライアシュとは、・・・、粒径100μ以下の中空粒子を含む球形粒子から、20μ以下に分級することによって得られるもので、・・・ある。フライアシュは、流動性の改善、単位水量の減少、長期強度の増進、及び水和熱の減少効果がある。・・・。 フライアシュの使用量は、セメント100部に対して、5?35部であり、5?20部が好ましい。5部未満では流動性の改善や単位水量の減少減効果が少ない場合があり、35部を超えると強度改善効果得られない場合がある。」【0019】 (2)引用例2に記載された発明 記載事項(カ)によれば、引用例2には、セメント、シリカフューム、20μ以下に分級したフライアッシュを含有し、セメント100部に対して、シリカフュームが3?35部、該フライアッシュが5?35部であるセメント組成物が記載されている。 そして、同(キ)によれば、セメントとしては、低熱をはじめとする各種ポルトランドセメントが使用できるので、結局、引用例2には次の発明(以下「引用例2発明」という)が記載されている。 「低熱ポルトランドセメント、シリカフューム、20μ以下に分級したフライアッシュを含有し、低熱ポルトランドセメント100部に対して、シリカフュームが3?35部、該フライアッシュが5?35部であるセメント組成物。」 4 対比・判断 (1)一致点と相違点 本願発明と引用例2発明とを対比する。 引用例2発明におけるセメント組成物は、本願発明における水硬性組成物に相当する。 また、引用例2発明における部は質量基準であるので、低熱ポルトランドセメント100重量部に対するシリカフュームとフライアッシュの含有量が、本願発明では、それぞれ15?30質量部、5?15質量部であるのに対し、引用例1発明では、3?35重量部、5?35重量部となる。このため、シリカフュームとフライアッシュの含有量が、それぞれ15?30質量部と5?15質量部の範囲で、本願発明と引用例2発明は一致する。 したがって、本願発明と引用例1発明との一致点と相違点は、次のとおりとなる。 ア 一致点 「低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム15?30質量部、及び、フライアッシュ5?15質量部を含むことを特徴とする水硬性組成物。」 イ 相違点 フライアッシュの粒径が、本願発明では平均粒径が5?10μmであるのに対し、引用例2発明では20μm以下に分級したものである点。 (2)判断 引用例1発明におけるセメント組成物においてフライアッシュを用いる理由は、上記記載事項(エ)にあるように、強度の増進や混練作業の作業性の改善にあり、これは、引用例2発明において流動性や長期強度の改善を目的とする点と共通する(上記記載事項(ケ))。 このため、引用例2発明に接した当業者が、引用例1発明では平均粒径7.5μmのフライアッシュを使用していることを参考に、引用例2発明で使用するフライアッシュの平均粒径の数値範囲を、7.5μmを包含する5?10μmと設定してみようとすることは、容易になしうることである。また、その効果も格別のものとすることはできない。 なお、請求人は、引用文献2には低熱ポルトランドセメントを含む組成物について、本願発明で規定するシリカフューム及びフライアッシュの配合量の数値範囲をすべて満たすものは記載されていない旨を主張するが、引用文献2に記載された発明を実施例の記載に限定して解釈するものであり、採用することができない。引用文献に記載された発明は、明細書及び図面の記載から実質的に認定されるべきだからである。 5 結論 以上のとおりであるので、本願の請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-07-04 |
結審通知日 | 2012-07-11 |
審決日 | 2012-07-25 |
出願番号 | 特願2007-82524(P2007-82524) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 近野 光知 |
特許庁審判長 |
真々田 忠博 |
特許庁審判官 |
斉藤 信人 田中 則充 |
発明の名称 | 水硬性組成物 |
代理人 | 衡田 直行 |