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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02C
管理番号 1262831
審判番号 不服2011-7071  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-05 
確定日 2012-09-05 
事件の表示 特願2004-366146「構成部品を機械加工する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月 7日出願公開、特開2005-180452〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下、「本願」という。)は、平成16年12月17日(パリ条約による優先権主張2003年12月18日、米国)の出願であって、平成22年3月29日付けで拒絶理由が通知され、平成22年10月5日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年4月5日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に、同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。


第2 平成23年4月5日付け手続補正について
(1)平成23年4月5日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成22年10月5日付けの手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の以下の(a)に示す請求項1ないし10を、(b)に示す請求項1に補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
ダブテール(110)を含むガスタービンロータブレード(64)内にシールワイヤ溝を機械加工するための組立体(200)であって、
ベース部分(202)と、
前記ベース部分に連結された本体部分(204)と、
前記第1のダブテールの一部(236)をほぼ反映する外形(234)を有する上部分(220)と、前記第1のダブテールの反対側(252)をほぼ反映する外形(250)を有する下部分(222)とを含む、前記本体部分へ取り外し可能に連結されたリテーナの第1のセット(206)と、
を備え、
前記上部分(220)及び前記下部分(222)は動作可能で前記ガスタービンロータブレード(64)を位置決めすることを特徴とする、組立体(200)。
【請求項2】
前記下部分(222)を前記本体部分(204)内に固定するように構成されたロック機構(207)を更に備える請求項1に記載の組立体(200)。
【請求項3】
前記上部分(220)が、該上部分を前記本体部分(204)内に固定するように構成されたロック機構(228)を含む請求項1に記載の組立体(200)。
【請求項4】
前記本体部分(204)が、前記上部分(220)をそこに受けるような大きさにされた第1の開口(208)と、前記下部分(222)をそこに受けるような大きさにされた第2の開口(209)とを含む請求項1に記載の組立体(200)。
【請求項5】
前記上部分(220)と前記第1の開口(208)が各々、ほぼ矩形の断面外形(230)を有する請求項4に記載の組立体(200)。
【請求項6】
前記下部分(222)と前記第2の開口(209)が各々、ほぼT形の断面外形(244)を有する請求項4に記載の組立体(200)。
【請求項7】
前記リテーナの第1のセット(206)とは異なる第2のリテーナのセット(300)を更に備え、
前記第2のリテーナのセットが、第1のタービン構成部品(64)とは異なる第2タービン構成部品(338)から延びる第2のダブテールの部分(336)をほぼ反映する外形(334)を有する上部分(320)と、前記第2のダブテールの反対側(352)をほぼ反映する外形(350)を有する下部分(322)とを含むことを特徴とする請求項1に記載の組立体(200)。
【請求項8】
ダブテール(110)を含むガスタービンロータブレード(64)内にシールワイヤ溝を機械加工するための組立体(200)を備えるフライス盤(402)であって、
前記組立体が、
ベース部分(202)と、
前記ベース部分に連結された本体部分(204)と、
前記第1のダブテールの一部(236)をほぼ反映する外形(234)を有する上部分(220)と、前記第1のダブテールの反対側(252)をほぼ反映する外形(250)を有する下部分(222)とを含む、前記本体部分へ取り外し可能に連結されたリテーナの第1のセット(206)と、
前記ダブテールに少なくとも1つのシールワイヤ溝を機械加工するように構成された研削ホイール(404)と、
を含み、
前記上部分(220)及び前記下部分(222)は動作可能で前記ガスタービンロータブレード(64)を位置決めすることを特徴とする、フライス盤(402)。
【請求項9】
前記組立体(200)が更に、
前記下部分(222)を前記本体部分(204)内に固定するように構成された第1のロック機構(207)と、
前記上部分(220)に連結され、前記上部分を前記本体部分(204)内に固定するように構成された第2のロック機構(228)と、
を含む請求項8に記載のフライス盤(402)。
【請求項10】
前記本体部分(204)が、前記上部分(220)をそこに受けるような大きさにされた第1の開口(208)と、前記下部分(222)をそこに受けるような大きさにされた第2の開口(209)を含む請求項8に記載のフライス盤(402)。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
ダブテール(110)を含むガスタービンロータブレード(64)内にシールワイヤ溝を機械加工するための組立体(200)であって、
ベース部分(202)と、
前記ベース部分に連結された本体部分(204)と、
前記第1のダブテールの一部(236)をほぼ反映する外形(234)を有する上部分(220)と、前記第1のダブテールの反対側(252)をほぼ反映する外形(250)を有する下部分(222)とを含む、前記本体部分へ取り外し可能に連結されたリテーナの第1のセット(206)と、
を備え、
前記上部分(220)及び前記下部分(222)は動作可能で前記ガスタービンロータブレード(64)を位置決めすることを特徴とする、組立体(200)。」

(2)本件補正の目的
特許請求の範囲についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし10のうち、請求項2ないし10を削除するものである。
したがって、特許請求の範囲についての本件補正は、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。
(以下、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明を、「本願発明」という。)


第3 刊行物
第3-1 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第4128929号明細書(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、例えば、次のような事項が記載されている。(なお、下線は理解の一助のため当審で付した。また、行数は、各ページ中央に付された指標による。)
(a)「 This invention relates ・・・ worn turbine blades.」(第1欄第6ないし9行)
〈当審仮訳〉
「 この発明は、一般的に消耗したタービン部品を再研磨(再研削)するための方法及び装置に関し、特に消耗したタービンブレードのシュラウドを再研磨するための方法及び装置に関する。」

(b)「 FIGS. 1-4 illustrate ・・・ and FIGS. 12-17.」(第4欄第61行ないし第5欄第33行)
〈当審仮訳〉
「 図1-4は、本発明の方法と研磨(研削)設備により再研磨(再研削)されるのに適したタイプのタービンブレードを図示する。そのブレードは一般的に数字10により示され、凸面の翼表面12及び凹面の翼表面14(図2)を含む。(中略)そのブレードはさらに、図1に示されるように先細にされた据え付け基部を含み、一側に一連のリブ16を有し他側にもう一連のリブ18を有する。(中略)そのブレードの反対側の先端は、特に図2及び7に示されるように、不規則な外形のシュラウドである。そのシュラウドは数字20に示され、端部22、24及び26を含む。本発明によるブレードの再研磨(再研削)は、これら3つの端部22、24及び26の強化に関連し、以下に記載される研磨(研削)設備に連続するこれらの同じ端部への研磨(研削)操作が続く。図2に示されるように、端部22は、ブレードの翼の先端の位置と反対側に配置されているように見える。シュラウド20の残りの直線端部は図7において数字28、30、32、34、36及び38により示される。図1-4には、新しいブレードが描かれているが、一方図7に描かれたブレードは延長された使用期間の間にすり減り、シュラウドの端部は新しい部分よりもかなり小さな寸法になっている。
本発明にしたがって図7-17を参照すると、タービンブレードのすり減ったシュラウドを再研磨(再研削)するための新規な改良された方法が与えられ、その方法によりまずシュラウドのすり減った端部に溶接材料のビードが加えられ、それにより最初の寸法を超えて強化され、その後、それらの端部、すなわち数字22、24及び26により示されるそれらの端部は、図8、図9-11及び図12-17にそれぞれ描かれた、3つに分かれた研磨(研削)設備において一度に研磨(研削)される。」

(c)「 Following the build-up ・・・ blade, is possible.」(第6欄第8ないし34行)
〈当審仮訳〉
「端部22-26の強化に続いて、本発明に従い、ブレード10は特に図8において描かれ数字60により示される研磨(研削)設備上の位置にクランプされる。その設備は、実質的に平らなワーク支持表面又は可動テーブル62及び動力により動く研磨(研削)ホイール64を有しており、表面研磨(研削)機又は研磨(研削)機械に適合する。テーブル62は、研磨(研削)機のホイール64に対して通常の方法で移動する。設備60は、リファレンス面80を有するベース66、アングルブロック68、及び万力72を運ぶ実質的に平らな支持ブロック70を含む。後者は、ブレードベース部分15のリブを受け入れるリブ形状を有する固定顎部74を含む。ブレードベース部分15のリブ18に対してクランプするために、同じくリブ形状の可動顎部76が設けられる。顎部76は、前進らせんねじ77を含む。顎部74、76に隣接して、ブロック78の形で止め具又は止め肩部が配置され、ベース15のための位置決め装置を構成する。端部22がホイール64と噛み合うように、設備60上の位置にクランプされたブレード10とともに、ベース66は(テーブル62とともに)移動できる。この結果、端部22から溶接ビード54が注意深く制御された量だけ除去され、端部は新しいブレードとほぼ同じ寸法にまで効果的に復活する。」

(d)「 In accoomplishing proper ・・・said fixed relationship.」(第6欄第35ないし57行)
〈当審仮訳〉
「 再研磨(再研削)されるべきブレード10とホイール64の間の適切な位置を達成するために、望ましいシュラウド寸法を有する新しいブレード10が、研磨(研削)ホイール64がブレードの端部22とかろうじて噛み合うように研磨(研削)ホイール64に対して調節されたテーブル62及び設備60上の場所に最初にマウント又はクランプされることが分かる。その後、その新しいブレードが取り除かれ、再研磨(再研削)されるべきブレードが設備内に置かれ、それに続いて研磨(研削)が行われる。くさびブロック68のテーパーは、新しいブレードの端部22がテーブル62と平行になるように実験的に決定される。したがって、本発明により、新しいブレード10のシュラウドの端部22と設備60のベース66の底の平らな面との間の固定された関係が設定され、シュラウドの端部が溶接により強化された消耗したブレードが設備60内に配置され、その後、設備60がホイールを越えて引かれるときにホイール64と噛み合って、その寸法が実質的に新しいブレードの寸法と同じになるようなところまで端部22が研磨(研削)される。このように、リファレンス表面80と端部22との間には、前記固定された関係が設定される。」

上記(a)ないし(d)及び図面から分かること。

(ア)上記(a)ないし(c)及び図面から、刊行物1には、マウンティングベース部分15を含むタービンブレード10を機械加工するための設備60が記載されていることが分かる。

(イ)上記(a)ないし(d)、(ア)及び図面から、刊行物1に記載された設備60において、万力72に連結された顎部74はタービンブレード10のマウンティングベース部分15の一部であるリブ16を受け入れるリブ形状を有し、反対側の顎部76はタービンブレード10のマウンティングベース部分15の反対側のリブ18を受け入れるリブ形状を有し、顎部74と顎部76はタービンブレード10をクランプするセットをなしていることが分かる。

(ウ)上記(a)ないし(d)、(ア)及び(イ)並びに図面から、刊行物1に記載された設備60は、ベース66と、前記ベースに連結されたサポートブロック70及び万力72と、前記マウンティングベース部分15の一部16を受け入れるリブ形状を有する顎部74と、前記リブ16、18の反対側18を受け入れるリブ形状を有する顎部76とを含む、前記サポートブロック70及び万力72へ連結された顎部74、76のセットを備え、前記顎部74及び前記顎部76は動作可能で前記タービンブレード10を位置決めする設備60であることが分かる。

上記(a)ないし(d)及び(ア)ないし(ウ)並びに図面から、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されているといえる。

「マウンティングベース部分15を含むタービンブレード10に機械加工するための設備60であって、
ベース66と、
前記ベース66に連結されたサポートブロック70及び万力72と、
前記マウンティングベース部分15の一部であるリブ16を受け入れるリブ形状を有する顎部74と、前記マウンティングベース部分15の反対側のリブ18を受け入れるリブ形状を有する顎部76とを含む、前記サポートブロック70及び万力72へ連結された顎部74、76のセットと、
を備え、
前記顎部74及び前記顎部76は動作可能で前記タービンブレード10を位置決めする、設備60。」


第3-2 刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-184572号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、例えば、次のような事項が記載されている。(なお、下線は理解の一助のため当審で付した。)

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般的にガスタービンエンジンに用いられる翼形部品の修理に関し、より具体的には、そうした部品における翼形のねじれを修正する方法及び装置に関する。」(段落【0001】)

(b)「【0009】図面では同一の参照番号が各図全体を通して同じ構成要素を表わしているが、その図面を参照すると、図1は、一例としてのみ図1に示すタービンのロータブレード12のような、翼形部品におけるねじれを修正するためのシステム10を示す。図2により詳細に示すブレード12は、縦軸14を有する第1段の低圧タービンブレードである。ブレード12は、一体に形成されたシャンク16と翼形部18とをそれぞれ含む。シャンク16は、ブレード12を従来の周知の方法でロータディスク(図示せず)に固定的に取り付けるために、ダブテール形状を備えて設けられる。翼形部18は、シャンク16から半径方向外向きに延び、高温ガス流内に至る。翼形部18は、前縁24及び後縁25で接合された凹状の圧力側20と凸状の負圧側22とを有する。翼形部18の先端に、先端シュラウド26が形成される。ブレード12がガスタービンエンジンに取り付けられると、先端シュラウド26は、隣接するブレードの先端シュラウドと接触し、全ての先端シュラウドが、全体として、ガスタービンエンジンを通過する高温ガス流に対して半径方向の外側境界を定めるようになる。ブレード12は、最適の性能をもたらすために、縦軸14を中心に所望のねじれ角にねじられている。ブレード12は、システム10によってねじれが修正され得る翼形部品の一例としてのみここに示される。本発明は、低圧タービンブレードに限定されるものではない。後に明らかになるように、高圧タービンブレードと、圧縮機ブレードと、ステータ羽根とを含む他の型の翼形部品におけるねじれを修正するように、システム10を構成することもできる。」(段落【0009】)

(c)「【0011】下部固定具組立体44が、フレーム38内の水平板34上に取り付けられる。後に詳細に説明するように、下部固定具組立体44は、ブレードシャンク16を締め付けるための手段を含み、ブレード12をねじるための回転力も提供する。システム10は、垂直板36に固定的に取り付けられた、垂直方向に延びる一対のレール48を介して垂直板36に摺動可能に据え付けられたキャリジ46を更に含む。このキャリジ46は、下部固定具組立体44の真上の上部固定具組立体50と、ブレード12のねじれ角を測定するためのゲージ52とを支持する。キャリジ46は、下部固定具組立体44との間をレール48に沿って直線移動することができる。下部固定具組立体44内のブレード12を取り外すため、及び/又は装入するための間隙を設けるために、キャリジ46を高い位置(図1に示す)に移動させることができる。キャリジ46は、上部固定具組立体50がブレード12のシュラウド26に係合する低い位置に移動させることもできる。上部固定具組立体50はシュラウド26を保持し、一方、下部固定具組立体44は、シャンク16に回転力を加えてブレード12をねじる。ゲージ52が、ブレードの翼形18に接触するようにキャリジ46上に位置決めされ、ブレードのねじれ角を測定する。一定のねじれ角を測定するため、ねじれの修正を受ける各部品を、同じ配向でシステム10に装入しなければならない。一つの好ましい実施形態においては、ゲージ52が凸状側22に接触するように、翼形の凸状側22を外側に向けてブレード12を装入する。代わりに、凹状側を外側に向けてブレードを装入するようにシステム10を構成することも可能である。」(段落【0011】)

(d)「【0014】図3に移ると、下部固定具組立体44が、基板60と、第1支持ブロック62と、第2支持ブロック64とを含む。第1支持ブロック62は、基板60の1つの縁に沿って延びるように、該基板にしっかりと固定される。第2支持ブロック64は、第1支持ブロック62から間隔をおいた位置で基板60にしっかりと固定され、該第1支持ブロックと平行に配向される。2つの案内ロッド66が、第1支持ブロック62の側部から第2支持ブロック64に向かって延びる。スライド式ブロック68が、案内ロッド66に摺動可能に取り付けられる。空気圧シリンダ装置70が、第1支持ブロック62に取り付けられ、スライド式ブロック68に係合するように配置される。従って、空気圧シリンダ装置70は、駆動時に、スライド式ブロック68を第2支持ブロック64に向けて押し出す。スライド式ブロック68を第2支持ブロック64から引き戻すように、空気圧シリンダ装置70を制御することもできる。スライド式ブロック68は、第1顎部72を支持し、第2支持ブロック64は、第1顎部72と並置した第2顎部74を支持する。第1顎部72及び第2顎部74は、ブレードシャンク16の対応する側部に係合するように構成される。従って、空気圧シリンダ装置70が、スライド式ブロック68を第2支持ブロック64に向けて押し出すと、2つの顎部72及び74が協働してブレードシャンク16を堅く締め付けるように働く。顎部72及び顎部74が交換可能であることに注意されたい。すなわち、高圧タービンブレード、圧縮機ブレード、及びステータ羽根のような、ブレード12以外の部品を締め付けるためには、異なる組の顎部をスライド式ブロック68と第2支持ブロック64に取り付けることができる。」(段落【0014】)

(e)「【0024】次に操作者は、「締め付け」ボタン130を選択し、下部固定具組立体44の第1及び第2顎部72、74が離れるように移動させる、すなわちこれらを開く。「締め付け」ボタン130がトグルスイッチのように機能し、「締め付け」ボタン130が選択されるたびに空気圧シリンダ装置70が駆動されて第1顎部72及び第2顎部74を開閉させることになる。第1顎部72及び第2顎部74が開いた状態で、第1顎部72と第2顎部74の間にダブテール部を配置させて、校正用ブレードを取り付ける。校正用ブレードは、その凸状側が外側を向くように配向される。操作者は、「締め付け」ボタン130を選択して、顎部72、74を閉じ、ブレードを下部固定具組立体44内に締め付け、校正用ブレードが適切に設置されていることを確認する。次に、「プローブ校正」ボタン132が選択されて、システムの校正を開始する。キャリジ46は、まず上に移動し、次に下に移動し、上部固定具組立体50を校正用ブレードに係合させる。下部固定具組立体44は、ホーム位置から所定の量だけ回転する。次に感知プローブ120が延びて校正用ブレードに接触し、この位置を感知し、かつ校正する。いったん校正作動が終了すると、キャリジ46は自動的に引き戻される。操作者は、「締め付け」ボタン130を選択して第1及び第2顎部72、74を開き、校正用ブレードを取り外す。システム10は、これで選択された型の部品にねじれ修正の作動を行える状態になる。システム10が起動されるたびに全システムのリセット及び校正が行われる。更に、この工程は、異なる型の部品のねじれ修正のためにシステム10を用いる際に繰り返される。
【0025】ねじれ修正の作動を行うために、校正用ブレードが取り付けられたのとほぼ同じように、修理されるべきブレードが、システム10に取り付けられる。第1及び第2顎部72、74が開いた状態で、操作者は、ブレードのシャンク16を第1顎部72と第2顎部74との間の位置に滑り込ませる。ブレード12は、凸状側22が外側に面するように配向される。次に操作者は、「締め付け」ボタン130を選択する。空気圧シリンダ装置70が、顎部72、74を閉じさせ、ブレード12を下部固定具組立体44内に締め付ける。この時点で、操作者は、ブレード12が適切に設置され、固定されていることを保証しなければならない。」(段落【0024】及び【0025】)

上記(a)ないし(e)及び図面から分かること。

(ア)上記(a)ないし(e)及び図面から、刊行物2には、ダブテールを含むガスタービンのロータブレード12を修理するために前記ロータブレード12を位置決めする装置が記載されていることが分かる。

(イ)上記(a)ないし(e)、(ア)及び図面から、刊行物2に記載された装置は、ダブテールの一部をほぼ反映する外形を有する第1顎部72と、前記ダブテールの反対側をほぼ反映する外形を有する第2顎部74とを含んでおり、前記顎部72及び顎部74は、交換可能であることから、前記第1支持ブロック62、第2支持ブロック64、案内ロッド66及びスライド式ブロック68へ取り外し可能に連結されていることが分かる。また、第1顎部72及び第2顎部74が顎部のセット72、74をなしていることが分かる。

(ウ)上記(a)ないし(e)、(ア)及び(イ)並びに図面から、刊行物2には、ダブテールを含むガスタービンのロータブレード12を修理するための装置であって、基板60と、前記基板60に連結された第1支持ブロック62、第2支持ブロック64、案内ロッド66及びスライド式ブロック68と、前記ダブテールの一部をほぼ反映する外形を有する第1顎部72と、前記ダブテールの反対側をほぼ反映する外形を有する第2顎部74とを含む、前記第1支持ブロック62、第2支持ブロック64、案内ロッド66及びスライド式ブロック68へ取り外し可能に連結された顎部のセット72、74と、を備え、前記第1顎部72及び第2顎部74は動作可能で前記ロータブレード12を位置決めする、装置が記載されていることが分かる。

上記(a)ないし(e)及び(ア)ないし(ウ)並びに図面から、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されているといえる。

「ダブテールを含むガスタービンのロータブレード12を修理するための装置であって、
基板60と、
前記基板60に連結された第1支持ブロック62、第2支持ブロック64、案内ロッド66及びスライド式ブロック68と、
前記ダブテールの一部をほぼ反映する外形を有する第1顎部72と、前記ダブテールの反対側をほぼ反映する外形を有する第2顎部74とを含む、前記第1支持ブロック62、第2支持ブロック64、案内ロッド66及びスライド式ブロック68へ取り外し可能に連結された顎部のセット72、74と、
を備え、
前記第1顎部72及び第2顎部74は動作可能で前記ロータブレード12を位置決めする、装置。」


第4 本願発明と刊行物1に記載された発明との対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比するに、刊行物1に記載された発明における「マウンティングベース部分15」は、形状、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「ダブテール(110)」に相当し、以下同様に、「タービンブレード10」は「ガスタービンロータブレード(64)」に、「設備60」は「組立体(200)」に、「ベース66」は「ベース部分(202)」に、「サポートブロック70及び万力72」は「本体部分(204)」に、「マウンティングベース部分15の一部であるリブ16を受け入れるリブ形状」は「第1のダブテールの一部(236)をほぼ反映する外形(234)」に、「マウンティングベース部分15の反対側のリブ18を受け入れるリブ形状」は「第1のダブテールの反対側(252)をほぼ反映する外形(250)」に、「顎部74、76のセット」は「リテーナのセット」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1に記載された発明における「タービンブレード10に機械加工する」は、「ガスタービンロータブレードに機械加工する」限りにおいて、本願発明における「ガスタービンロータブレード(64)内にシールワイヤ溝を機械加工する」に相当する。
また、刊行物1に記載された発明における「顎部74」及び「顎部76」は、ダブテールの一部及び反対側をほぼ反映する外形を有し、動作可能でタービンブレードを位置決めする「部分A」及び「部分B」である限りにおいて、本願発明における「上部分」及び「下部分」に相当する。
また、刊行物1に記載された発明における「サポートブロック70及び万力72へ連結された顎部74、76のセット」は「本体部分へ連結されたリテーナの第1のセット」である限りにおいて、本願発明における「本体部分へ取り外し可能に連結されたリテーナの第1のセット」に、それぞれ相当する。
してみると、本願発明と刊行物1に記載された発明は、
「ダブテールを含むガスタービンロータブレードに機械加工するための組立体であって、
ベース部分と、
前記ベース部分に連結された本体部分と、
前記第1のダブテールの一部をほぼ反映する外形を有する部分Aと、前記第1のダブテールの反対側をほぼ反映する外形を有する部分Bとを含む、前記本体部分へ取り外し可能に連結されたリテーナの第1のセットと、
を備え、
前記部分及び前記部分は動作可能で前記ガスタービンロータブレードを位置決めする、組立体。」
である点で一致し、次の(a)ないし(c)の点で相違する。

<相違点>
(a)「ガスタービンロータブレードに機械加工する」に関して、本願発明においては、「ガスタービンロータブレード内にシールワイヤ溝を機械加工する」であるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、「タービンブレードに機械加工する」ではあるが、「シールワイヤ溝を」機械加工するものではない点(以下、「相違点1」という。)。

(b)「部分A」及び「部分B」に関して、本願発明においては、「上部分」及び「下部分」を有するのに対し、刊行物1に記載された発明においては、「顎部74」及び「顎部76」を有するものの、「上部分」及び「下部分」ではなく、略水平方向に向かい合って配置されている点(以下、「相違点2」という。)。

(c)「本体部分へ連結されたリテーナの第1のセット」に関して、本願発明においては、「取り外し可能に」連結されているのに対し、刊行物1に記載された発明においては、「取り外し可能に」連結されたものかどうか明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。


第5 相違点についての検討・判断
(a)相違点1について
ガスタービンの技術分野において、「ガスタービンロータブレード内にシールワイヤ溝を機械加工する」ことは、本願優先日前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、原査定の拒絶理由通知において引用された特開平9-303107号公報の段落【0005】ないし【0008】、【0028】及び【0029】並びに図面、特開2002-250202号公報の【特許請求の範囲】、段落【0006】及び図面等の記載を参照。)にすぎない。
また、刊行物1に記載された発明と、本願発明の実施例は、ともに、研磨(研削)ホイール(grinding wheel)を使用して、タービンブレードの表面に機械加工を行うものである。
してみると、刊行物1に記載された発明をタービンブレードの機械加工に適用するにあたり、その対象として、周知技術1である「ガスタービンロータブレード内にシールワイヤ溝を機械加工する」ことを選択することにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(b)相違点2について
刊行物1に記載された発明において、「顎部74」及び「顎部76」を、被加工物であるブレードの上下に配置する程度のことは、当業者が適宜設定する設計的事項に過ぎない。
してみれば、刊行物1に記載された発明において、「顎部74」及び「顎部76」を上下に配置することにより、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(c)相違点3について
本願発明と刊行物2に記載された発明とを対比するに、刊行物2に記載された発明における「ダブテール」は、形状、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「ダブテール(110)」及び「第1のダブテール」に相当し、以下同様に、「(ガスタービンの)ロータブレード12」は「ガスタービンロータブレード(64)」に、「基板60」は「ベース部分(202)」に、「第1支持ブロック62、第2支持ブロック64、案内ロッド66及びスライド式ブロック68」は「本体部分(204)」に、「ダブテールの一部」は「第1のダブテールの一部(236)」に、「ダブテールの反対側」は「第1のダブテールの反対側(252)」に、「顎部のセット72、74」は「リテーナの第1のセット」に、それぞれ相当する。
また、刊行物2に記載された発明における「修理する」は、「加工する」である限りにおいて、本願発明における「シールワイヤ溝を機械加工する」に相当する。
また、刊行物2に記載された発明における「第1顎部72」及び「第2顎部74」は、ガスタービンロータブレードを位置決めする「第1の部分」及び「第2の部分」である限りにおいて、本願発明における「上部分」及び「下部分」に相当する。
そうすると、刊行物2に記載された発明は、本願発明の用語を用いて、
「ダブテールを含むガスタービンロータブレードに加工するための装置であって、
ベース部分と、
前記ベース部分に連結された本体部分と、
前記第1のダブテールの一部をほぼ反映する外形を有する第1の部分と、前記第1のダブテールの反対側をほぼ反映する外形を有する第2の部分とを含む、前記本体部分へ取り外し可能に連結されたリテーナの第1のセットと、
を備え、
前記第1の部分及び第2の部分は動作可能で前記ガスタービンロータブレードを位置決めする、装置。」
と言い換えることができる。
そして、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明は、タービンブレードの加工という共通の技術分野において、タービンブレードを両側から挟んで位置決めを行ってタービンブレードに加工を行うという共通の課題を解決するものである。
してみると、刊行物1に記載された発明において、刊行物2に記載された発明(特に、「第1の部分」と「第2の部分」とを「本体部分へ取り外し可能に連結する」点。)を適用することにより、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明を全体としてみても、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術から想定される以上の格別の作用効果を奏するものとは認められない。

したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-27 
結審通知日 2012-04-03 
審決日 2012-04-16 
出願番号 特願2004-366146(P2004-366146)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石黒 雄一  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 川口 真一
金澤 俊郎
発明の名称 構成部品を機械加工する方法及び装置  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  
代理人 黒川 俊久  

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