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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R |
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管理番号 | 1263301 |
審判番号 | 不服2011-5853 |
総通号数 | 155 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-03-16 |
確定日 | 2012-09-13 |
事件の表示 | 特願2006-524946号「ガス発生装置およびそれに使用するガス発生剤パケット」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月10日国際公開、WO2005/021328、平成19年 3月 1日国内公表、特表2007-504036号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年8月30日(優先権主張外国庁受理、平成15年8月28日、アメリカ合衆国、平成16年8月27日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成22年11月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年3月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 2.平成23年3月16日付けの手続補正の却下 [補正却下の決定の結論] 平成23年3月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)本件補正後の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 内部燃焼室(24)を画定するハウジング(12)を有するガス発生装置(10); 前記ハウジング(12)に結合されて、前記燃焼室(24)と点火可能に連通する点火装置(18); 前記燃焼室(24)内に配置された、ある量の第1のガス発生剤(23);および 前記燃焼室(24)内で、前記点火装置(18)と前記第1のガス発生剤(23)との中間に配置された、ある量の第2のガス発生剤(40)を含み、前記第1および第2のガス発生剤(23、40)のうちの少なくとも一方は、ガス/水分不浸透性の1つまたは複数の容器(30)に封入されており、 前記点火装置(18)の起動によって、第2のガス発生剤(40)を点火し、第2のガス発生剤(40)の点火により第1のガス発生剤(23)を点火し、前記容器(30)は、燃焼室(24)内において異なった点火タイミングをもたらす複数の位置のいずれかに配置することができ、配置に応じてガス発生剤の点火時期を調節できるように設けられるものである、車両乗員保護システム。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、上記下線部記載のように限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用刊行物 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2001-500451号公報(以下「引用例1」という。)には、エアバッグ膨張器に関し、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「・・・エアバッグまたはエアクッションを膨張する際に使用する膨張器であって、該膨張器は、以下を備える:薄壁ドーナツ形圧力容器部分、および該ドーナツ形圧力容器部分と物理接触および流体連絡しそれを取り囲むシリンダー状圧力容器部分であって、該シリンダー状圧力容器部分は、破裂可能ディスクおよびエアバッグと連絡可能な少なくとも1個の出口ポートを備える;および該圧力容器内に、該破裂可能ディスクを破裂させる圧力レベルまで、保存した膨張ガスを加熱する火工手段。」(第7頁第2?8行) ・「第一量の緩慢燃焼性発生剤230(図1を参照)(例えば、複数の個々のペレット)を、チャンバ210内に配置する。一定量のより細かい迅速燃焼性発生剤232は、起爆剤116に近接したキャップ210内に配置される。この発生剤232は、緩慢燃焼性推進剤230の粉末化した形状、粉砕した形状または小顆粒形状であり得、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、紙または金属箔により形成した薄い閉鎖エンベロープ234内に含まれる。火工カプセル202a、bは、同量または異なる量の発生剤230で満たされ、このエアバッグに対して、所望の燃焼速度が確立でき、従って、所望の膨張率が確立できる。起爆剤116を活性化した後、迅速燃焼性発生剤232は、素早く燃焼して、熱いガスを発生し、これは、ペレット化された緩慢燃焼性発生剤230を着火する。」(第10頁第28行?第11頁第9行) ・図1の記載より、キャップ210の内部には燃焼室が画定されていること及び迅速燃焼性発生剤232は起爆剤116と緩慢燃焼性発生剤230との中間に配置されていることが看取できる。 上記各記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例1には次の発明が記載されているといえる。(以下「引用発明」という。) 「燃焼室を画定するキャップ210を有する火工カプセル202a、b; 前記キャップ210に結合されて、前記燃焼室と点火可能に連通する起爆剤116; 前記燃焼室内に配置された、ペレット化された緩慢燃焼性発生剤230; および 前記燃焼室内で、前記起爆剤116と前記緩慢燃焼性発生剤230との中間に配置された、一定量のより細かい迅速燃焼性発生剤232を含み、迅速燃焼性発生剤232は、ポリエチレン、ポリプロピレン、紙または金属箔により形成した薄い閉鎖エンベロープ234内に含まれており、前記起爆剤116の起動によって、迅速燃焼性発生剤232を点火し、迅速燃焼性発生剤232の点火により緩慢燃焼性発生剤230を点火した、エアバッグまたはエアクッションを膨張する際に使用する膨張器。」 3.対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「エアバッグまたはエアクッションを膨張する際に使用する膨張器」は本願補正発明の「車両乗員保護システム」に相当する。 以下同様に、「燃焼室」は「内部燃焼室(24)」に、「キャップ210」は「ハウジング(12)」に、「火工カプセル202a、b」は「ガス発生装置(10)」に、「起爆剤116」は「点火装置(18)」に、「ペレット化された緩慢燃焼性発生剤230」は「ある量の第1のガス発生剤(23)」に、「一定量のより細かい迅速燃焼性発生剤232」は「ある量の第2のガス発生剤(40)」にそれぞれ相当する。 また、引用発明の「薄い閉鎖エンベロープ234」は「ポリエチレン、ポリプロピレン、紙または金属箔により形成した」ものであるからガス/水分不浸透性であり、本願補正発明の「ガス/水分不浸透性の1つまたは複数の容器(30)」に相当している。 そして、引用発明において「迅速燃焼性発生剤232」は「薄い閉鎖エンベロープ234内に含まれ」るということは、「封入され」ていることを意味しているから、引用発明の「迅速燃焼性発生剤232は、ポリエチレン、ポリプロピレン、紙または金属箔により形成した薄い閉鎖エンベロープ234内に含まれており」は、本願補正発明の「第1および第2のガス発生剤(23、40)のうちの少なくとも一方は、ガス/水分不浸透性の1つまたは複数の容器(30)に封入されており」の要件を満たしている。 そうすると、本願補正発明と引用発明は、 「内部燃焼室を画定するハウジングを有するガス発生装置; 前記ハウジングに結合されて、前記燃焼室と点火可能に連通する点火装置; 前記燃焼室内に配置された、ある量の第1のガス発生剤;および 前記燃焼室内で、前記点火装置と前記第1のガス発生剤との中間に配置された、ある量の第2のガス発生剤を含み、前記第1および第2のガス発生剤のうちの少なくとも一方は、ガス/水分不浸透性の1つまたは複数の容器に封入されており、 前記点火装置の起動によって、第2のガス発生剤を点火し、第2のガス発生剤の点火により第1のガス発生剤を点火した車両乗員保護システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本願補正発明の「容器(30)」は、「燃焼室(24)内において異なった点火タイミングをもたらす複数の位置のいずれかに配置することができ、配置に応じてガス発生剤の点火時期を調節できるように設けられる」のに対して、引用発明の「薄い閉鎖エンベロープ234」では、そのようなことが不明である点。 上記相違点について検討する。 上記相違点に係る、本願補正発明の「容器(30)は、燃焼室(24)内において異なった点火タイミングをもたらす複数の位置のいずれかに配置することができ、配置に応じてガス発生剤の点火時期を調節できるように設けられる」は、本願明細書【0020】には「ガス発生剤23およびガス発生剤40、およびその他の任意のガス発生剤は、設計基準により、チャンバ24内部でのそれらの配置に応じて、連続的または同時に点火してもよいことである。したがって、この容器(複数の場合を含む)は、ガス発生剤の時差点火(staggered ignition)をもたらす・・・」と記載されており、本願補正発明における「点火時期を調節できる」とは「連続的または同時に点火してもよい」、「ガス発生剤の時差点火をもたらす」ことであると解釈できる。 一方、引用発明では、起爆剤116を活性化した後、迅速燃焼性発生剤232は、素早く燃焼して、熱いガスを発生し、これは、ペレット化された緩慢燃焼性発生剤230を着火する。 引用発明の「薄い閉鎖エンベロープ234」は燃焼室内においてその配置位置を固定して使用するものではないし、燃焼室内の複数の位置のいずれかに配置することができることは明らかである。 そして、「起爆剤116」、「薄い閉鎖エンベロープ234」、「緩慢燃焼性発生剤230」の位置関係によって、当然異なった点火タイミングをもたらすことになることは当業者にとって自明な事項である。 そうすると、引用発明において、「薄い閉鎖エンベロープ234」をその配置によって、ペレット化された緩慢燃焼性発生剤230に着火する時期を調節できるように配置することは当業者にとって容易に想到できるものといえる。 そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 4.本願発明 平成23年3月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成22年8月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】 内部燃焼室(24)を画定するハウジング(12)を有するガス発生装置(10); 前記ハウジング(12)に結合されて、前記燃焼室(24)と点火可能に連通する点火装置(18); 前記燃焼室(24)内に配置された、ある量の第1のガス発生剤(23);および 前記燃焼室(24)内で、前記点火装置(18)と前記第1のガス発生剤(23)との中間に配置された、ある量の第2のガス発生剤(40)を含み、前記第1および第2のガス発生剤(23、40)のうちの少なくとも一方は、ガス/水分不浸透性の1つまたは複数の容器(30)に封入されており、 前記点火装置(18)の起動によって、第2のガス発生剤(40)を点火し、第2のガス発生剤(40)の点火により第1のガス発生剤(23)を点火し、前記容器(30)は、燃焼室(24)内において複数の位置のいずれかに配置することができ、配置に応じてガス発生剤の点火時期を調節できるように設けられるものである、車両乗員保護システム。」 5.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 6.対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-22 |
結審通知日 | 2012-03-27 |
審決日 | 2012-04-20 |
出願番号 | 特願2006-524946(P2006-524946) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60R)
P 1 8・ 575- Z (B60R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石原 幸信 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
栗山 卓也 小関 峰夫 |
発明の名称 | ガス発生装置およびそれに使用するガス発生剤パケット |
代理人 | 葛和 清司 |