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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1263615 |
審判番号 | 不服2009-7211 |
総通号数 | 155 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-04-03 |
確定日 | 2012-09-18 |
事件の表示 | 平成10年特許願第504244号「肥満の処置に有用な抗痙攣剤のスルファメート誘導体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月 8日国際公開、WO98/00130、平成12年10月31日国内公表、特表2000-514425〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1997年6月23日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 1996年6月28日,米国)を国際出願日とするものであって、平成16年6月10日付けで審査請求時に手続補正がなされ、次いで拒絶理由が通知されたが、これに応答することがなく、平成20年12月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年4月3日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものであり、その後、当審による拒絶理由が通知され、それに応答して平成24年1月12日付けで手続補正書と意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願請求項1,2に係る発明は、平成24年1月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定された次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 式I: 【化1】 [式中、 XはCH_(2)又は酸素であり; R1は水素又はアルキルであり;そして R_(2)、R_(3)、R_(4)及びR_(5)は独立して、水素又は低級アルキルであり、そして、 Xが酸素である場合は、R_(2)及びR_(3)並びに/あるいはR_(4)及びR_(5)が一緒になって、以下の式(II): 【化2】 (ここで、R_(6)及びR_(7)は同一か又は異なり、そして水素、低級アルキルであるか、又はアルキルであって、一緒になって、シクロペンチル又はシクロヘキシル環を形成している)のメチレンジオキシ基であってもよい] の化合物を有効成分として含んでなり、かつ、化合物が一日用量で50ないし200mgの量となるように使用されることを特徴とする肥満の処置用製剤。 【請求項2】 式Iの化合物がトピラメートである、請求項1記載の製剤。」 そうすると、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」ともいう。)は、請求項1における式Iの化合物をトピラメートに置き換えた次のとおりのものと認められる。 「トピラメートである化合物を有効成分として含んでなり、かつ、化合物が一日用量で50ないし200mgの量となるように使用されることを特徴とする肥満の処置用製剤。」(本願発明) 3.引用例 当審の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である「Neurology,1994年,Vol.44, No.4, SUPPL.2,A204-A205」(以下、「引用例」という。)には、次のように記載されている。なお、英文であるため訳文で摘示し、下線は当審で付した。 「309P 治療しにくいテンカンに対しトピラメートが投与されている患者における体重減少 17?42才の11名の患者は、コントロールされていないテンカンに対する研究中の抗痙攣性の薬であるトピラメートを4?8ケ月間受けている。発作のタイプは、部分的に、二次的に発生したものを含み、間代性筋痙攣である。トピラメートは、400?1600mg/day(平均800)で投与された。その患者は、付加的な抗テンカンの医薬1?3種を投与されていた。 10名の患者に体重減少が見られ、1名の患者は体重増加した。10名の患者は、当初、理想的な体重を5?69%(平均23%)超えていた。これら10名の中で7名は、理想的な体重に止まっていて、2名は、下回っていて(5%,8%)、1名は体重が増加した。その1名は、最初に理想的な体重を8%下回っていた。他に医学的な病気の状態の人はいなかった。体重減少のメカニズムに関連する可能性のある臨床上の報告は、減少した意欲(6)、吐き気(2)、及びバックグラウンドのAED_(R)における変化(3)である。 結論 トピラメートの補助的な治療は、頻繁に体重減少に繋がり、体重超過の患者において特にそうである。その原因は、複数の要素に絡んでいる。トピラメートからの利益と同様に毒性は発現し、その患者は、後者に対してチェックされるべきである。」(309Pの項を参照) 4.対比、判断 引用例には、上記「3.」での摘示事項からみて、特に「トピラメートが投与されている患者における体重減少」との表題で始められていることからも明らかな如く、トピラメートの投与に伴い体重超過の患者の体重が減少すると認識されているものと解するのが相当と認められることから、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているものと言える。 「トピラメートを成分とする、体重超過の患者の体重が減少する製剤。」(引用例発明) そこで、本願発明と引用例発明を対比する。 (a)引用例発明の「トピラメートを成分とする」は、本願発明の「トピラメートである化合物を有効成分として含んでなり」に相当する。 (b)引用例発明の「体重超過の患者の体重が減少する製剤」は、体重超過の患者は肥満の患者であると言え、その体重が減少することが肥満の処置に用いられているとも解されることから、本願発明の「肥満の処置用製剤」に相当する。 してみると、両発明は、 「トピラメートである化合物を有効成分として含んでなる肥満の処置用製剤。」 で一致し、次の相違点で相違する。 <相違点> 化合物の使用量について、本願発明では、「化合物が一日用量で50ないし200mgの量となるように使用される」(なお、「化合物」は「トピラメート」を指す。)と特定されているのに対し、引用例発明では、そのように特定されていない点 そこで、この相違点について検討する。 引用例には、トピラメートを400mg/day未満の投与量で用いることの明示はなく、「トピラメートは、400?1600mg/day(平均800)で投与され」ることが記載されているが、この量は、テンカンの治療のための量であると認められものであり、この程度の投与量であれば、体重超過の患者の体重が減少するとされているのである。 そうすると、トピラメートを体重減少のための薬剤として使用する場合に(即ち、肥満の処置剤とするに際し)、テンカンの患者に使用されている量を再検討するのは当然のことであり、体重減少に必要な最低限の量を明らかにするため、当該投与量を400mg/day未満の量で試みて確認することは当業者であれば格別の創意を要する事項とは認められない。なお、薬剤は副作用を伴うことも多く(引用例でも言及されている)、必要最低限の量で足りれば副作用が少なくなる(または副作用がない)ことも多いことから、必要最低限の量を明らかにすることも周知の課題と言える。 一方、本願明細書の記載を検討しても、本願発明で特定する「一日用量で50ないし200mg」で使用することで格別予想外の作用効果を奏することは、記載も示唆もされていない。ところで、本願明細書には、「トピラメートは10mg/Kg経口の低投与量で、けっ歯類及び犬において、体重増加率の有意な減少、又は体重減量をもたらした。」との記載はあるが、例えば50Kg(ヒトの一般的な体重として仮定)を想定した場合には500mgに対応するものであって、「一日用量で50ないし200mg」の量が格別予想外のものであることを説明するものではない。 してみると、単に、「化合物が一日用量で50ないし200mgの量となるように使用される」と特定することに格別の創意工夫が必要であったとは認められない。 ところで、審判請求人は、平成24年1月12日付け意見書において、(i)「患者の10人に体重減が、1人に体重増が見られている。全患者が少なくとも1種、多くて3種の他の薬剤を摂取しているから、刊行物1(当審注:引用例)からは、トピラメートの高用量が10人の患者の体重減の原因であったのか否か、あるいは、トピラメートと併用された他の薬剤の1種以上に原因があるのか否か、あるいは、これらの薬剤の併用効果であるのか否か、不明確である。」ことや、(ii)「本願発明によれば、効果的な体重減は、てんかんを治療するのに用いられるトピラメートの正常な用量(1日当り400?1600mg)より遥かに低い用量で達成できることが確認されている。」ことを主張している。 しかし、(i)の点については、引用例の著者は、他の要因が影響している可能性があるか否かにかかわらず、トピラメートが体重減少を招いたと判断していることは明らかであるから、請求人の(i)の主張は採用できるものではない。そして、使用量に関する(ii)の点については、上記検討のとおりであって、また、本願明細書には、「一日用量で50ないし200mg」との数値限定に格別の臨界的な意義があることは何等明らかにされていないし、けっ歯類及び犬に用いた場合のデータですら、本願発明で特定する使用量を超えて用いられているものであって、何等裏付けのある根拠は示されていないから、請求人の(ii)の主張も採用できない。 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび したがって、本願請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それ故、請求項1について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-04-04 |
結審通知日 | 2012-04-10 |
審決日 | 2012-04-24 |
出願番号 | 特願平10-504244 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大宅 郁治 |
特許庁審判長 |
川上 美秀 |
特許庁審判官 |
内藤 伸一 荒木 英則 |
発明の名称 | 肥満の処置に有用な抗痙攣剤のスルファメート誘導体 |
代理人 | 特許業務法人小田島特許事務所 |