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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1263661
審判番号 不服2010-18587  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-18 
確定日 2012-09-18 
事件の表示 特願2007-524632「タッチパネル表示装置および携帯機器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月18日国際公開、WO2007/007682〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成18年7月7日(優先権主張2005年7月8日、日本国)を国際出願日とする出願であって,平成22年6月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成22年8月18日に拒絶査定に対する審判が請求され,同時に手続補正がなされたものである。

2.平成22年8月18日付け手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成22年8月18日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。
「複数の操作項目がm行×n列配列されて表示されるタッチパネルを有する表示部と,前記タッチパネル上に表示された複数の操作項目のうち,前記タッチパネルへのタッチ操作により指定された所望の操作項目に対応するイベントを実行する制御部とを設けたタッチパネル表示装置において,
前記タッチパネル表示装置の傾き方向を検出する傾き検出部をさらに備え,
前記制御部は,前記傾き検出部により検出された傾きの方向に応じて,前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して,1個または複数個の特定の操作項目を拡大表示することを特徴とするタッチパネル表示装置。」
上記補正は,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である,「操作者により指定された所望の操作項目」を,「前記タッチパネルへのタッチ操作により指定された所望の操作項目」と限定し,「前記制御部は、前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して、前記傾き検出部により検出された傾きの方向に応じた特定の操作項目を拡大表示する」を,「前記制御部は,前記傾き検出部により検出された傾きの方向に応じて,前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して,1個または複数個の特定の操作項目を拡大表示する」と限定するものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物「特開平10-240434号公報」(以下「引用刊行物」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として携帯可能な大きさの情報・通信・AV関連などの機器において、その動作制御のためのコマンドを選択的に入力できるようにするためのメニューを提示・選択するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、情報通信機器などが小型化され、携帯可能となってきたために、これらの機器で使いやすいユーザインタフェース技術が開発されてきており、機器自体の状態や動きを検知して、ユーザインタフェースに使用することも考えられはじめている。
【0003】例えば、特開平7-287689号では、機器の傾きを検知し、その傾きまた傾きの変化の組合せによって表示内容および画面構成を変更して表示している。」(第4頁)

イ「【0058】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0059】図1は本発明の第1の実施形態におけるコマンドメニュー選択装置の構成図で、このコマンドメニュー選択装置は、状態情報検出部1と、メニュー提示部2と、メニュー選択部3と、メニュー提示モード判別部4と、メニュータイムアウト部5と、表示部6と、音声出力部7と、機器形状変形部8とを備えている。状態情報検出部1は、機器の傾きや移動、回転などの状態や動きの情報である状態情報を検出する。メニュー提示部2は、状態情報検出部1で検出された前記状態情報に基づいて、必要な場合に前記機器の動作制御コマンド群を示すメニューを提示する。メニュー選択部3は、前記状態情報あるいは他のユーザ入力情報によって、前記メニューから所望のコマンドを選択して前記機器に指示する。メニュー提示モード判別部4は、前記状態情報以外の入力によって、メニューを提示すべき状態であるメニュー提示モードに前記機器を遷移させ、またメニュー提示モードを解除してメニューを提示すべきでない状態に前記機器を遷移させる。メニュータイムアウト部5は、前記メニュー提示手段によってメニューが提示されてから、前記メニュー選択手段でコマンドが選択されるまでの時間を測定し、一定時間以上コマンド選択がなされない場合にはメニュー提示を終了させる。表示部6は、メニュー提示部2のメニュー提示指示に基づいてメニューを画面に表示する。音声出力部7は、メニュー提示部2のメニュー提示指示に基づいてメニュー内容を音声で主力する。機器形状変形部8は、メニュー提示部2のメニュー提示指示に基づいて、メニュー内容に対応した形状に機器の外形、表面状態等を変更し、また振動等の運動を機器に行なわせる。
【0060】次に動作を説明する。初期状態では、メニューを提示可能であって、提示はされていないものとする。
【0061】図35は本実施形態での処理の基本的な順序を示している。まず状態情報検出部1は、このコマンドメニュー選択装置を用いる機器全体の傾きや移動、回転などの状態や動きの情報である状態情報を検出する。ここでは傾きを公知例と同様に光センサを用いて2軸方向に検出し(ただし切欠部を増やしてより詳細な傾きを検出可能とする)、移動および回転の方向と量は、前記機器本体にそれぞれ3軸方向に取りつけた加速度センサおよび角速度センサを用い、必要な積分あるいは微分処理等を行なって検出する(図2)が、例えばビデオのムービーカメラに用いられているような手法で、前記機器本体に取りつけたカメラからの画像を連続的に解析して検出してもよい。
【0062】傾き情報は、精度向上のために詳細に検出したものをしきい値によっていくつかの段階に分けて利用する。ここでは図3のように12段階に分ける。同様に加速度および角速度も各軸方向に(マイナス方向を含めて)いくつかの段階に分けて利用する。ここでは図4のように、各軸5段階とし、それらの積分/微分値として算出される速度/角加速度、さらに積分して算出される移動量/回転量も、各々5段階として利用する。
【0063】なお、加速度/角加速度/速度/角速度/移動量/回転量の算出基準は、ユーザが状態情報検出ボタン(図5)を押している間の一連のものを算出するものとする。前記状態情報検出ボタンが押されると、メニュー提示モード判別部4はメニュー提示モードへ機器を移行させる。その後前記状態情報検出ボタンが離されると、前記状態情報を検出してメニュー提示部2に送り、メニュー提示モードを解除する。
【0064】別の方法として、加速度/角加速度/速度/角速度の各々がすべてあるしきい値以内(0近傍)である状態から、なんらかの動作がなされて再び同様にこれらの値がすべてしきい値以内に戻るまでの一連のものを算出する、すなわち静止に近い状態から静止に近い状態に戻るまでのものを算出するとしてもよい。この場合は特にメニュー提示モードを設ける必要はない。
【0065】検出された前記状態情報は、メニュー提示部2でメニューを提示すべき情報であるかどうか判別される。メニューを提示すべき情報ではないと判別された場合には、ここでは前記状態情報は単に捨てられるが、メニュー提示以外の動作のトリガーとして利用してもかまわない。またメニューの種類は、事実上機器になんらかの動作制御を行なうものであればなんでもよく、非常にたくさんのものを考えることができるが、ここでは簡単のために、データ(ファイル)管理/編集/通信/メニュー提示関連のコマンド群をメニューの対象として想定する。例えばデータ(ファイル)管理コマンド群として、開く/閉じる/読み出し/書き込み/再生/停止/ステップ/削除/複写/移動/速度制御/アクセス管理など、編集コマンド群として、選択/解除/挿入/削除/複写/移動/アンドゥなど、通信コマンド群として、送信/受信/停止/継続/再送/一括/送信先指定/返送指定/回覧指定など、メニュー提示コマンド群として、メニュー提示/メニュー連続提示/メニュー移動/サブメニュー提示/メニュー提示内容設定/活性コマンド移動/活性コマンド停止/選択/解除/確定/反転/アンドゥなどがある。これら、またはその他のコマンドのうちの、ひとつまたはいくつかまたは全部を含むメニューを、前記状態情報のひとつまたはそれ以上と対応づけておき、メニュー提示部2はその対応関係がある場合にメニューを提示すべき情報であると判別する。
【0066】なお、同一のメニューに対して複数の状態情報を対応づけることにまったく問題はないが、同一の状態情報を提示すべき複数のメニューに対応づけるのは、動作内容の同一性に混乱が生じる恐れがあるため、ここでは禁止する。ただし、メニュー群に優先順位をつけることなどをしておいて、同一の状態情報を複数のメニューに対応づけ、動作の際に複数のメニューを一度に提示したり、実際にどのメニューの提示を実施するかをユーザに選択させるやり方をとるなどしたりしてもよい。
【0067】メニュー提示部2は、ユーザによって指定されるメニュー提示出力切り替えモードを持つ。前記メニュー提示出力切り替えモードは、ユーザによるどのような入力で指定されてもよいが、ここではボタン入力またはペン入力によって、表示モード/音声出力モード/機器形状変形モードのうちのどれかひとつを指定されるものとする。なお、メニュー提示の方法としては、他にも温度変化や味覚変化など人間の五感のさまざまなものに訴える方法が考えられるが、設定できるメニューの種類が事実上非常に少なくなったり(例えばユーザに危害を加える事なく十分な温度差を示すための温度段階を多く取ることは難しい)、ユーザに対して装着させる装置が複雑になったりする(例えば味覚の場合に舌上の各種の味蕾を刺激させるなど)ために、本実施例では採用しない。しかし、これらを含めた各種感覚を用いたメニュー提示方法をとっても問題はない。
【0068】前記メニュー提示出力切り替えモードが表示モードになっている場合、メニュー提示部2の出力によって、表示部6が機器の画面へメニューの表示を行なう。なお、この表示モードの場合を例にとってメニュー提示部2の動作を詳細に説明するが、前記メニュー提示出力切り替えモードが音声出力モードや機器形状変形モードであっても、メニュー提示部2は同様の動作またはその一部の動作を行なう。
【0069】この場合、メニューは図6のように、ひとつのコマンドを示す矩形の連なりとして表示される。メニューの表示は、メニューの種類によって、画面にあらかじめ用意されているバー状の図形の近辺に表示(プルダウンメニュー)されてもよく、またポインターの位置、あるいは全般的な画面表示から表示部6が判別する適当な位置へ表示(ポップアップメニュー)してもよい。
【0070】メニュー提示部2は、表示されているメニューの中で、メニュー選択部3によって選択可能な単一のコマンドを表示部6に示す。表示部6は前記選択可能な単一のコマンドを表す領域を、強調/反転/拡大などの方法によって判別できるように表示する(図7)。この場合を、前記選択可能な単一のコマンドが活性出力されていると呼ぶ。活性出力されるコマンドは、メニュー提示部がなんらかの手段で判別して決定してもよく、またユーザの指示などで決定してもよい。
【0071】なお、メニュー図形の形状はこれに限定されるものではない。例えば画面いっぱいに各コマンドを示す多角形や円などが表示されるものでもよく、ひとつひとつのコマンドが画面上で識別できるようになっていればよい。
【0072】メニュー提示部2は、状態情報の種類、方向、動作量(程度)によって異なる種類のメニューを提示する。ここでは、画面に対する傾きによって、図8のように編集メニューを提示する。また図9のように、水平方向の移動量がしきい値を超えているが、ゆっくりとなされている場合(y軸方向の速度が負方向で小のレベル)には通信メニューを、速くなされている場合(y軸方向の速度が負方向で大のレベル)にはメニュー提示メニューを提示する。逆方向(y軸方向の速度が正方向)の場合にはデータ(ファイル)管理メニューを提示する。図36はこの部分の処理の順序の例を示している。
【0073】メニュー提示部2は、状態情報の種類、方向、動作量(程度)などに応じて、メニューを表示する位置あるいは方向を変更する。例えば傾きによってデータ(ファイル)管理メニューを提示する場合、図10(a)の向きの場合には画面上部から下向きに、図10(b)の向きの場合には画面左部から右向きにコマンド群を表すメニューを表示する。そして、メニューの中のコマンド群のうちの活性出力されるコマンドは、ある時間間隔をおいてメニューを表示するのと同じ向きに先頭から隣接するコマンドへと順に変わっていく(図11)。これらは、あたかもメニューや活性コマンドが流体であるかのようにみなすと、画面の上を重力の方向に沿って流れるように表示されるので、直感的にわかりやすいという利点を有する。活性出力コマンドの移動中に傾きの方向を変えると、前記活性コマンドの移動の状況が変わる。例えば、最初図3の「1」の傾きでメニューの提示と活性コマンドの移動が始まった後、傾きがない状態(図3の「0」状態)になると前記活性コマンドの移動が停止し、さらに反対の傾き(図3の「11」状態)になると反対方向(戻る方向)に前記活性コマンドの移動が行なわれる。活性コマンドがメニューの中で最後のコマンドに到達した場合、通常は前記最後のコマンドが活性コマンドとなったままになるが、メニュー提示部2においてユーザによって「連続表示モード」が設定されている場合は、最初のコマンドに戻って活性コマンドの移動を続ける。図37はこの部分の処理の順序の例を示している。
【0074】なお、メニュー表示後の活性コマンドの移動を状態情報によることなく、「活性コマンド移動」コマンドによって時系列的に開始することもできる。この場合、いずれかのコマンドが選択されるか、「活性コマンド停止」コマンドが入力されるまで活性コマンドの移動を続ける。最後のコマンドに達した場合は、前記「連続表示モード」が設定されている場合と同様、最初のコマンドに戻って活性コマンドの移動を続ける。さらに、「メニュー連続提示」コマンドが入力された場合には、複数あるメニュー自体を時系列的に次々と表示する。その場合、あるメニューを表示して、その中のコマンド群に対して活性コマンドを移動し、最後のコマンドに達して次に移るタイミングで当該メニューの表示をやめて次のメニューの表示を始める。図38はこの部分の処理の順序の例を示している。」(第8?10頁)

ウ「【0080】メニュー提示部2によってメニューが提示された場合には、本実施例ではメニュー選択を受け付けるモードに入る。もちろん、メニュー選択以外のなんらかのユーザ入力をも受け付けるようにしてもかまわないが、ここでは簡単のために、ユーザ入力としてはメニュー選択もしくはメニュー提示解除を含む別のメニュー提示コマンド群(これら自身もメニュー提示からメニュー選択によって入力されてもかまわない)だけを受け付けるものとする。メニュー選択部3は、提示されているメニューのひとつまたはそれ以上のコマンド群から、単一のコマンドを選択し、確定する。確定されたコマンドは機器の制御装置に伝達され、制御が実行される。
【0081】コマンドの確定には、さまざまなユーザ入力を用いることができる。メニュー提示出力切り替えモードが表示モードになっている場合を例にとって説明する。ユーザは、メニュー提示部によって提示されているコマンド群の中で、所望のコマンドが活性出力されている場合に、「確定」ボタンを押すことによってメニュー選択を行ない、コマンドを確定することができる。また、機器がタブレット等画面表示部にペンなどのための入力装置を備えている場合には、同様に活性出力されているコマンドの領域をペンや指などで触れることにより、選択/確定を行なうことができる。さらに、音声入力装置を備えている場合には、単純な音声データの入力(しきい値以上のレベルの入力など)や、音声認識結果によって選択を行なうこともできる。その他、キーボードやペン/タブレットの組合せ以外のポインティング装置を用いるなど、活性表示されているコマンドを識別できる入力ができるものなら、何を用いてもよい。」(第10?11頁)

エ「【0123】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、機器自体の状態や動きを利用し、またメニュー選択という一般的かつユーザの意図を反映させやすいインタフェースを用いることで、さまざまな機器に使用でき、機器のほとんどどのような動作制御にも対応し、また、非常に多くの種類の制御にも用いることが可能で、なおかつさまざまな状況で簡単に操作できるユーザインタフェースを実現できるコマンドメニュー選択方法を提供することができる。」(第15頁)

オ 図7には,「選択可能な単一のコマンド(活性出力コマンド)の例」として,選択,解除,挿入,削除,複写,移動,アンドウの各コマンドが記載され,図7(b)には,各コマンドの内,削除コマンドを拡大表示することが記載されている。

これら引用刊行物の記載から,引用刊行物には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「タブレット等画面表示部,状態情報検出部,メニュー提示部を有する機器であって,メニュー提示部により,画面表示部には矩形の連なりとして選択,解除,挿入等のコマンドからなるメニューが表示され,メニューの内の1つのコマンドが活性コマンドとして拡大して表示され,状態情報検出部は機器の傾きを検出し,メニュー提示部は,検出された機器の傾きに応じて活性コマンドを移動させ,指で活性コマンドに触れることによりコマンドの選択/確定を行うことができ,メニュー選択部は、提示されているメニューのひとつまたはそれ以上のコマンド群から単一のコマンドを選択し、確定し,確定されたコマンドは機器の制御装置に伝達され、制御が実行される,機器。」

原査定において周知文献として引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物「特開2002-261918号公報」(以下「周知刊行物1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
カ「【0073】ここで、図6(a)はフォーカスが当てられたアイコン41も、他のアイコン41と同じ大きさで表示する場合を示し、従って、ジョイスティック7の倒し操作(上下,左右倒し操作)によってカーソル42を移動させ、フォーカスを当てるアイコン41を変更しても、これらアイコン41の配列状態や大きさはそのまま保持される。また、図6(b)はフォーカスが当てられたアイコン41を他のアイコン41よりも拡大して表示するようにしたものである。但し、このフォーカスが当てられたアイコン41の大きさは、隣接する他のアイコン41に接する程度までとするようにしてもよいし、図示するように、他のアイコン41を互いに重ならないように寄せ合うことにより、フォーカスが当てられたアイコン41の表示領域をさらに拡大し、そこいっぱいにフォーカスが当てられたアイコン41を表示するようにしてもよい。このようにすることにより、フォーカスが当てられたアイコン41の内容(選択事項)がさらに明確になるとともに、他のアイコン41の内容も知ることができ、カーソル42を移動させてフォーカスを当てるアイコン41を変更することも容易となる。
【0074】なお、フォーカスが当てられているアイコン41以外のアイコン41を縮小してもよい。図6(c)はフォーカスが当てられたアイコン41の周りのアイコン41を縮小した場合を示しているが、フォーカスが当てられたアイコン41以外の全てのアイコン41を縮小するようにしてもよい。これにより、フォーカスが当てられているアイコン41をさらに拡大して表示することができる。」(第8頁)

本願の優先日前に頒布された刊行物「特開平2-153415号公報」(以下「周知刊行物2」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
キ「[実施例]
以下、本発明によるキーボード装置の一実施例を図面により詳細に説明する。
第1図は本発明の一実施例の構成を示す機能ブロツク図、第2図はキー表示部の表示例を示す図、第3図はキー枠設定のためにメモリ内に格納されているキー枠パターンの例を示す図である。第1図?第3図において、1は指センサ部、2はセンサ制御部、3は表示制御部、4はキー表示部、5はタツチパネル、6はキー判別部、7は出力制御部、8はキー枠、9はキートツプ内容である。
第1図に示す本発明の一実施例において、指センサ部1は、光学センサ等を用いて構成されており、表示部4を囲む4辺に設置されている。指センサ部1からの出力信号は、センサ制御部2に入力され、該センサ制御部2は、オペレータの指等の遮蔽物がセンサ部1の光路を遮断した信号に基づいて、指等の遮蔽物の位置を検出する。表示制御部3は、キー表示部4に表示すべきキートツプの内容9とキー枠8とを表示する制御を行っており、センサ部1が何も検出していない状態においては、予め設定されたキートツプの内容9とキー枠8を表示している。この状態において、1つのキーの大きさを示すキー枠8の大きさは、オペレータがキー入力を行うために必要な大きさより小さく、キートツプの内容9も、目視で認識可能な程度の大きさであり、各キー枠9は全て同一の大きさである。
キー表示部4にオペレータの指が接近し、センサ制御部2により検出された指位置が表示制御部3に入力されると、表示制御部3は、指の位置が何れのキー枠に最も近いかを割り出し、オペレータがキー入力するのに必要なキーの大きさを、指位置に最も近いキー枠8において確保できるように制御する。すなわち、表示制御部3は、割り出したキー枠8及びその周辺のキー枠8を予め設定された比率で拡大し、逆に、指位置から離れた位置にあるキー枠8を縮小し、キー表示部4に表示しているキーの数を減少させないように、キー枠8の大きさを変更して表示を行う。指位置から離れたキーは、そのキー枠の大きさ及びキートツプの内容9の大きさが、キー入力を行うのに充分なものではないが、キー入力には無関係なキーであるので、全体のキーボード装置の操作に影響を与えるものではない。
前述のように、表示制御部3は、キー操作を行う指の接近に伴うキー枠8の拡大、縮小を行うための演算ロジツク、または、キー枠設定用のキー枠パターンを記憶しておくROM等の記憶手段を備えるとともに、キートツプ内容9の内容を保持する記憶手段、キー枠8の表示の中心にキートツプの内容9を表示する機能、及び、キー枠8の大きさに応じ、キートツプの内容9の文字の大きさの拡大、縮小を行う機能を備えている。
このような、表示部3の制御により、キー表示部4に表示されているキー枠8及びキートツプの内容9に従って、オペレータは、キー表示部4に指を接触させてキー操作を行う。タツチパネル5は、このオペレータの操作によるキー入力位置を検出し、キー判別部6は、このキー入力位置からオペレータの選択したキーを割り出し、そのキー情報を出力制御部7に出力する。出力制御部7は、入力されたキー情報に従って、そのキートツプの内容9に対応する信号を上位の処理装置に対して出力する。」(第3頁左下欄第2行?第4頁右上欄第6号)

本願の優先日前に頒布された刊行物「特開2000-194469号公報」(以下「周知刊行物3」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
ク「【0011】次に、図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施の形態の動作を説明する。図2(A)、(B)は、本発明の第1の実施の形態における、項目表示制御装置の表示手段に表示された表示項目群の一例である。図2(A)においては表示項目1に注目点があり、この注目点にしたがって、項目表示制御手段103の項目表示形状制御手段105と項目表示位置制御手段107とによって、項目情報保持手段108に保持された表示項目の情報に従い、この表示項目1を最大に表示し、その他の表示項目2、3、4・・・は一定の割合でその大きさを減じていくように、各表示項目の表示形状および表示位置を制御して、表示手段101に表示させる。
【0012】ここで、入力手段102により注目点が表示項目9に移動すると、その移動が注目点検出手段109により検出される。そして、移動した注目点の検出信号にしたがって、項目表示制御手段103は、項目情報保持手段108に保持された表示項目の情報に従い、図2(B)のように、この表示項目9の大きさを最大にして表示し、その他の表示項目8、7、6・・・及び10、11、12・・・は徐々に表示面積を縮小するように、各表示項目の表示形状および表示位置を制御し、表示手段101に表示する。このときの、注目点を移動する入力手段102としては、キーボードのカーソルキーを押下することや、表示手段101に付加されたタッチパネルを直接触れることなどが考えられる。」(第3頁)

(2)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると,
引用発明の「コマンド」,及び「制御装置」は,それぞれ,本願補正発明の「操作項目」,及び「制御部」に相当する。
引用発明の「タブレット」は,本願補正発明の「タッチパネル」に相当し,引用発明の「画面表示部」は,本願補正発明の「表示部」に相当し,引用発明のタブレット等画面表示部,状態情報検出部,メニュー提示部を有する「機器」は,本願補正発明の「タッチパネル表示装置」に相当する。
引用発明の「状態情報検出部」は,機器の傾きを検出しているから,本願補正発明のタッチパネル表示装置の傾き方向を検出する「傾き検出部」に相当する。
引用発明の複数の操作項目(コマンド)は,矩形の連なりとして表示されているから,引用発明において,複数の操作項目が「配列されて表示」されているということができ,引用発明において,単一の操作項目が拡大して表示され,当該拡大された操作項目が,機器の傾きに応じて移動するから,引用発明は,本願補正発明と同様に,傾き検出部により検出された傾きの方向に応じて,前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して,1個の特定の操作項目を拡大表示しているということができる。

したがって,両者は
「複数の操作項目が配列されて表示されるタッチパネルを有する表示部と,前記タッチパネル上に表示された複数の操作項目のうち,前記タッチパネルへのタッチ操作により指定された所望の操作項目に対応するイベントを実行する制御部とを設けたタッチパネル表示装置において,
前記タッチパネル表示装置の傾き方向を検出する傾き検出部をさらに備え,
前記傾き検出部により検出された傾きの方向に応じて,前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して,1個の特定の操作項目を拡大表示することを特徴とするタッチパネル表示装置。」の点で一致し,以下の点で相違している。

相違点1
本願補正発明のタッチパネル表示装置は,操作項目がm行×n列配列されて表示されるタッチパネルを有する表示部を設けているのに対して,引用発明のタッチパネル表示装置は,操作項目が配列されて表示されるタッチパネルを有する表示部を設けているが,操作項目がm行×n列配列されて表示されることについて記載がない点。

相違点2
本願補正発明は,イベントを実行する制御部が,傾き検出部により検出された傾きの方向に応じて,前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して,特定の操作項目を拡大表示するのに対し,引用発明において,傾き検出部により検出された傾きの方向に応じて,前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して,特定の操作項目を拡大表示するのは,イベントを実行する制御部ではない点。

相違点3
本願補正発明は,検出された傾きの方向に応じて,1個または複数個の特定の操作項目を拡大表示するのに対して,引用発明は,検出された傾きの方向に応じて,1個の特定の操作項目を拡大表示する点。

(3)当審の判断
以下,上記相違点について検討する。
相違点1について
一般に,複数の表示すべき項目をどのように配置するかは設計的事項であって,複数の表示項目をm行×n列配列することも,上記,周知刊行物1(記載事項カ,図6(c),複数行,複数列にアイコンを配置し,フォーカスが当てられているアイコンを大きく,他を小さく表示することが記載されている。),周知刊行物2(記載事項キ,第2図,タッチパネルに複数行,複数列にキートップを配置し,指の位置に近づくに従ってキートップを大きく表示することが記載されている。),周知刊行物3(記載事項ク,図3,タッチパネルに複数行,複数列表示項目を配置し,注目点の表示項目を最大面積とし,他の表示項目の面積を徐々に縮小して表示することが記載されている。)に記載されているように周知であるから,引用発明の表示部に配列されて表示される複数の操作項目をm行×n列配列することは当業者が周知技術に基づいて容易になし得ることである。

相違点2について
一般に制御を行う制御部をどのように構成するかは設計的事項であって,引用発明において,傾き検出部により検出された傾きの方向に応じて,前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して,特定の操作項目を拡大表示する制御を,イベントを実行する制御部において行わせることは当業者が適宜になし得ることである。

相違点3について
本願補正発明は,拡大表示する特定操作項目が1個の場合も含んでおり,この点で引用発明と異なるところはないから,相違点3は実質的なものではない。
また,拡大表示する操作項目を複数とすることも上記,周知刊行物2,周知刊行物3に記載されているように周知であるから,引用発明において,検出された傾きの方向に応じて,1個または複数個の特定の操作項目を拡大表示するように構成することは当業者が容易になし得ることである。

そして,本願補正発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。

したがって,本願補正発明(請求項1に係る発明)は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成22年8月18日付け手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成22年4月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「複数の操作項目がm行×n列配列されて表示されるタッチパネルを有する表示部と,前記タッチパネル上に表示された複数の操作項目のうち,操作者により指定された所望の操作項目に対応するイベントを実行する制御部とを設けたタッチパネル表示装置において,
前記タッチパネル表示装置の傾き方向を検出する傾き検出部をさらに備え,
前記制御部は,前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して,前記傾き検出部により検出された傾きの方向に応じた特定の操作項目を拡大表示することを特徴とするタッチパネル表示装置。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は,前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.」で検討した本願補正発明についてなされた,「操作者により指定された所望の操作項目」を,「前記タッチパネルへのタッチ操作により指定された所望の操作項目」と限定し,「前記制御部は、前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して、前記傾き検出部により検出された傾きの方向に応じた特定の操作項目を拡大表示する」を,「前記制御部は,前記傾き検出部により検出された傾きの方向に応じて,前記タッチパネル上に表示されている複数の操作項目の表示比率を制御して,1個または複数個の特定の操作項目を拡大表示する」と限定する補正を解除したものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含みさらに限定を付したものに相当する本願補正発明が,前記「2.(3)」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明(請求項1に係る発明)は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本願はその余の請求項について論及するまでもなく,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-13 
結審通知日 2012-04-16 
審決日 2012-05-08 
出願番号 特願2007-524632(P2007-524632)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 衣川 裕史
山田 正文
発明の名称 タッチパネル表示装置および携帯機器  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  
代理人 下山 治  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  

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