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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1263666
審判番号 不服2010-24271  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-28 
確定日 2012-09-19 
事件の表示 特願2008-130340「撮像装置、表示制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月11日出願公開、特開2008-211843〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年12月18日に出願した特願2002-366083号の一部を平成20年5月19日に新たな特許出願としたものであって、平成22年4月6日付けの拒絶理由に対して同年6月24日付けで手続補正がなされ、同年7月13日付けで拒絶査定された。
本件は、上記拒絶査定を不服とする平成22年10月28日の審判請求であり、同日付けで手続補正がなされた。

2.平成22年10月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
(1)結論
平成22年10月28日付けの手続補正を却下する。
(2)理由
ア 特許請求の範囲の減縮についての検討
本件補正で補正された特許請求の範囲(請求項の数6)は次のとおりである。なお、下線部は補正箇所を示す。
「 【請求項1】
逐次撮像して画像データを出力する撮像手段と、
この撮像手段から出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示手段と、
前記スルー画像に対してトリミングを除く画像調整の調整量が夫々異なる処理を施し、前記処理の内容が異なる複数のスルー画像を同時に表示するよう前記表示手段を制御する表示制御手段と
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記複数のスルー画像から任意のスルー画像の選択を検出することにより記録すべき画像データに対して施す画像調整の調整量を設定する設定手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記設定手段により設定された画像調整の調整量で前記画像データを記録する記録手段を更に備えることを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記調整量とは、ホワイトバランス値の調整量であることを特徴とする請求項1乃至3記載の撮像装置。
【請求項5】
逐次撮像して画像データを出力する撮像ステップと、
この撮像ステップにて出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示ステップと、
前記スルー画像に対してトリミングを除く画像調整の調整量が夫々異なる処理を施し、
前記処理の内容が異なる複数のスルー画像を同時に表示するよう前記表示ステップを制御する表示制御ステップと
を含むことを特徴とする表示制御方法。
【請求項6】
逐次撮像して画像データを出力する撮像部と、この撮像手段から出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示部とを備えたコンピュータを、
前記スルー画像に対してトリミングを除く画像調整の調整量が夫々異なる処理を施し、
前記処理の内容が異なる複数のスルー画像を同時に表示するよう前記表示部を制御する表示制御手段
として機能させることを特徴とするプログラム。」

これに対して、本件補正前の特許請求の範囲(請求項の数6)は次のとおりである。
「 【請求項1】
逐次撮像して画像データを出力する撮像手段と、
この撮像手段から出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示手段と、
前記スルー画像に対して夫々内容が異なる処理を施し、前記処理の内容が異なる複数のスルー画像を同時に表示するよう前記表示手段を制御する表示制御手段と
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記複数のスルー画像から任意のスルー画像の選択を検出することにより記録すべき画像データに対して施す処理を設定する設定手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記設定手段により設定された処理で前記画像データを記録する記録手段を更に備えることを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記処理とは、ホワイトバランスを変更する処理であることを特徴とする請求項1乃至3記載の撮像装置。
【請求項5】
逐次撮像して画像データを出力する撮像ステップと、
この撮像ステップにて出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示ステップと、
前記スルー画像に対して夫々内容が異なる処理を施し、前記処理の内容が異なる複数のスルー画像を同時に表示するよう前記表示ステップを制御する表示制御ステップと
を含むことを特徴とする表示制御方法。
【請求項6】
逐次撮像して画像データを出力する撮像部と、この撮像手段から出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示部とを備えたコンピュータを、
前記スルー画像に対して夫々内容が異なる処理を施し、前記処理の内容が異なる複数のスルー画像を同時に表示するよう前記表示部を制御する表示制御手段
として機能させることを特徴とするプログラム。」

そこで、本件補正を検討する。
請求項1について、本件補正前の特定事項「夫々内容が異なる処理」における「異なる処理」が、本件補正では「トリミングを除く画像調整の調整量が夫々異なる処理」と、下線に示されるように、限定的に減縮され、さらに、「夫々内容が異なる処理」における「内容」が、下線に示されるように、トリミングを除く画像調整の調整量と限定的に減縮されている。なお、請求項2ないし4は、請求項1を引用するものであるから、上記と同様に、限定的に減縮されている。
また、請求項5,6についても上記と同様に、限定的に減縮されている。

以上のとおり、本件補正は、特許請求の範囲を減縮するもであるから、上記補正がなされた請求項1に係る発明が独立特許要件(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定)を満たすか否かについて以下に検討する。

イ 独立特許要件についての検討
(ア)補正後発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る各発明は、平成22年6月24日付け、平成22年10月28日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、請求項1ないし6にそれぞれ記載されるところ、その請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、次のとおりである。
「逐次撮像して画像データを出力する撮像手段と、
この撮像手段から出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示手段と、
前記スルー画像に対してトリミングを除く画像調整の調整量が夫々異なる処理を施し、前記処理の内容が異なる複数のスルー画像を同時に表示するよう前記表示手段を制御する表示制御手段と
を備えることを特徴とする撮像装置。」

(イ)刊行物発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-142148号公報(以下「刊行物」という。)には、次に示すa.ないしh.が記載されている。
a.「本発明は、モニター画像を表示する表示部を備えた電子カメラに関し、特に、この表示部に異なる画像処理条件に基づく画像処理を施した複数のモニター画像をマルチ画像として同時に表示し、この中から選択された1つのモニター画像に施された画像処理の画像処理条件を撮影時の撮影条件として設定する電子カメラに関する。
光学レンズなどを用いて結像される被写体像をCCD(Charge Coupled Device )などの撮像素子で電気信号に変換し、記録媒体などに撮像画像として記録する電子カメラが広く普及している。
一般的に、このような電子カメラでは、被写体の画角や撮影した画像などを確認できるように、背面に小型の液晶ディスプレイ等の表示部を備えて、これに撮影した画像やモニター画像などを表示するように構成されたものが多い。尚、モニター画像を表示するとは、撮像素子に結像される被写体像を連続的に表示部に表示する、いわゆるスルー画表示のことを言う。」(【0001】ないし【0003】段落)

b.「しかしながら、この電子カメラでは、撮影者により設定された画像処理条件に基づく画像処理が施されたモニター画像を表示するとき、1画像分のモニター画像しか表示部に表示することができないという問題を有していた。
そのため、撮影者が、異なる画像処理条件に基づく画像処理が施された複数のモニター画像を確認した上で、1つの画像処理条件を撮影条件として設定しようとする場合には、異なる画像処理条件に基づく画像処理が施された複数のモニター画像を1画像毎に表示部に表示させて確認しなければならなかった。」(【0006】、【0007】段落)

c.「従って、表示部に表示されている所定の画像処理条件に基づくモニター画像と他の画像処理条件に基づくモニター画像との比較は、撮影者の頭の中で行わなければならず、たいへん不便であった。特に、画像処理条件を変更したときのモニター画像の視覚的差異がわずかである場合には、その差異を判断することは難しく、結果として、確認のために何度も同じ画像処理条件に基づくモニター画像を表示させなければならず、撮影者の負担は大きかった。
本発明の課題は、上記実情に鑑み、表示部に異なる画像処理条件に基づく画像処理を施した複数のモニター画像をマルチ画像として同時に表示することにより、撮影者による撮影条件の設定を容易にする電子カメラの撮影条件設定技術を提供することである。」(【0009】、【0010】段落)

d.「CCD2は、撮影光学系1により結像される被写体像を光電変換して画像を示す電気信号を出力する二次元撮像素子である。撮像回路3は、CCD2から出力される電気信号のリセット雑音などを除去するCDS(Correlated Double Sampling:相関二重サンプリング回路)と、このCDSの出力信号の信号レベルを調節するAGC(Automatic Gain Control:オートゲインコントロールアンプ)と、このAGC出力信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器などを含んで構成され、このデジタル信号をバスライン4へ出力する。
また、撮影用画像処理部5、モニター用画像処理部6、マルチ画面作成処理部7、LCDドライバー(同図 LCD Driver )8、サブCPU9、SSFDC(Solid State Floppy Disk Card)10、JPEG(Joint Photographic Expert Group )処理部11、SDRAM(Synchronous DRAM)12、フラッシュメモリ13、メインCPU14は、何れもバスライン4に接続されおり、このバスライン4を介して相互にデータの授受が行われる。
SDRAM12は、撮像回路3から出力される画像データ(デジタル信号)や、モニター用画像処理部6から出力される画像処理が施されたモニター用画像データなどを一時的に記憶するメモリである。また、JPEG処理部11による画像データの圧縮・伸張処理における処理中の画像データの一時記憶用として、また、メインCPU14による制御処理の実行のためのワークエリアとしても使用される。
撮影用画像処理部5は、SDRAM12に格納される画像データを再生表示若しくは記録するときに、この画像データに対し、撮影条件を自動設定する、いわゆる”標準モード”に基づく画像処理を施すか、若しくは、撮影者により設定された画像処理条件(撮影条件)に基づく画像処理を施す。また、SSFDC10に記録されている画像データを再生表示するときに、画像の明暗・彩度・色合いなどを補正する、γ補正処理・色処理などを施す。また、画像データのリサイズ処理なども行う。
モニター用画像処理部6は、LCDディスプレイ(同図 LCD Display)15にモニター用画像を表示するために、SDRAM12に格納される画像データに対し、撮影条件を自動設定する”標準モード”に基づく画像処理を施すか、若しくは、撮影者により設定された画像処理条件(撮影条件)、例えば、シャープネス、ISO感度(ゲイン)、色温度(ホワイトバランス(WB))、γ補正(ガンマ)、モノクロ、セピア、露出補正、圧縮率などに基づく画像処理を施し、モニター用画像データを作成する。尚、同図では、シャープネス、ゲイン、WB、ガンマのみを示し、その他については省略して示している。また、画像データのリサイズ処理なども行う。
マルチ画面作成処理部7は、モニター用画像処理部6により作成された複数のモニター用画像データを、同時にLCDディスプレイ(同図 LCD Display)15上に表示するため、すなわち、複数のモニター用画像データをマルチ画面(マルチ画像)として表示するために、マルチ画面用画像データを作成する。」(【0020】ないし【0025】段落)

e.「図2は、カメラプログラムを実行することによりメインCPU14により行われる制御処理の処理内容を示すフローチャートであり、特に本発明に関係する、撮影条件設定処理の一例を詳細に示したものである。また、図3(a),(b),(c) は、LCDディスプレイ15に表示されるメニューの表示例を示す図、図4(a),(b),(c) 及び図5は、LCDディスプレイ15に表示される、異なる画像処理条件に基づく画像処理が施された複数のモニター画像(マルチ画面)の表示例を示す図である。
図2において、同図に示すフローは、電子カメラのパワーボタンがオンされた後に、モードボタンによりメニューモードが選択されたときに開始される処理を示している。尚、本実施形態に示すメニューモードとは、撮影者により任意に撮影条件に対応する画像処理条件を設定することができる動作モードである。
まず、メニューモードが選択されると(ステップ(以下単にSと言う)201)、LCDディスプレイ15上にメニューを表示する(S202)。このメニューでは、画像処理条件の設定項目として、シャープネス、特殊効果、露出補正、色温度、ISO感度、γ補正、圧縮率などが選択可能に表示され、所定の設定項目が選択されると、その設定項目に対応する複数のパラメータが選択可能に表示される。」(【0030】ないし【0032】段落)

f.「また、図3(c) は、色温度が選択されたときに表示されるパラメータの一例を示している。同図(c) に示すように、設定項目”色温度”が選択されると、そのパラメータである、”オート”、”蛍光灯”、”晴天”、”電球”、マルチA”、”マルチB”が表示される。これにより、撮影者はこの中から所定のパラメータを任意に選択できるようになる。尚、”マルチA”は、設定項目”色温度”に属するパラメータである”オート”、”蛍光灯”、”晴天”、”電球”毎に画像処理が施された4つのモニター画像を、LCDディスプレイ15にマルチ画面として表示させるパラメータである。また、”マルチB”は、”オート”の画像処理を施したモニター画像と、”蛍光灯”、”晴天”、”電球”の中の何れか1つの画像処理を施したモニター画像とを、LCDディスプレイ15にマルチ画面として表示させるパラメータである。従って、”マルチB”では、例えば、”オート”と”蛍光灯”、”オート”と”晴天”、又は”オート”と”電球”の何れかに基づくモニター画像が表示され、これらは選択可能に構成されている。尚、デフォルト設定では、“マルチB”を選択すると“オート”と“蛍光灯”が選択されるように設定されている。尚、太線で囲まれたパラメータ(ここでは、マルチA)は、現在のカーソル位置を示している。」(【0035】段落)

g.「図2に戻り、続いて、このメニューから、撮影者により画像処理条件として所定のパラメータが選択されると(S203)、選択された画像処理条件がマルチモードであるか否かを判断する(S204)。ここでマルチモードであるか否かを判断するとは、前述の”シャープネス”の”マルチ”や、”色温度”の”マルチA”及び”マルチB”などのように、複数の異なる画像処理が施されたモニター画像を表示させるパラメータが選択されたか否かを判断するものである。
選択された撮影条件がマルチモードであると判断したときは(S204がY)、すなわち、パラメータとして”マルチ”が選択されたときは、CCD2に結像される被写体像を取り込み(S205)、撮像回路3にて撮像処理を行い(S206)、撮像回路3から出力される画像データをSDRAM12に一時記憶する(S207)。尚、S205に示した”撮影”とは、CCD2に結像される被写体像を取り込む処理を示している。
続いて、LCDディスプレイ15上に、”マルチ”に基づく画像処理が施された複数のモニター画像をマルチ画面(マルチ画像)として表示するために、SDRAM12に格納されている画像データを、そのマルチ画面に表示する1つのモニター画像の画像データサイズにリサイズ処理する(S208)。この処理は、モニター用画像処理部6により行われ、例えば、1600×1200ピクセルの画像データが100×80ピクセルにリサイズされる。尚、リサイズ処理によりリサイズされる画像データサイズは、前述した“マルチA”、“マルチB”の選択に応じて設定される。
続いて、このリサイズ処理された画像データから、”マルチ”に基づく画像処理が施された複数のモニター用画像データを作成するため、まず、”マルチ”で指定されるパラメータの中の所定の1つのパラメータに基づく画像処理を施したモニター用画像データを作成し(S209)、これをSDRAM12に記憶する(S210)。尚、このS209及びS210の処理は、モニター用画像処理部6により行われる処理である。
続いて、”マルチ”で指定されるパラメータの中で、まだ画像処理を行っていない残りのパラメータが有るか否かを判断し(S211)、有ると判断したときには(S211がN)S209の処理に戻り、残りのパラメータが無くなるまでS209及びS210の処理を繰り返す。尚、S211の処理において、所定数とは、”マルチ”で指定されるパラメータ数を示している。例えば、撮影者が選択したマルチモードが、設定項目”色温度”における”マルチA”であった場合、所定数は、”オート”、”電球”、”蛍光灯”、及び”晴天”により4になる。従って、この4つパラメータに基づく画像処理を施したモニター用画像データの作成及びSDRAM12への格納が全て終了すると、S211の分岐処理はNとなり、後続のマルチ画面作成処理(S212)に移行する。
このように、”マルチ”に基づく画像処理が施されたモニター用画像データを全てSDRAM12へ格納すると(S211がY)、LCDディスプレイ15に、SDRAM12に格納された複数のモニター用画像データをマルチ画面として表示するために、マルチ画面用画像データを作成する(S212)。尚、この処理は、マルチ画面作成処理部7により行われる。
続いて、作成したマルチ画面用画像データをLCDディスプレイ15に表示して、各パラメータに基づく画像処理が施された複数のモニター画像をマルチ画面として表示する(S213)。これにより、撮影者は、異なる画像処理条件(パラメータ)に対応する画像処理が施された複数のモニター画像を同時に見比べることが可能になり、その視覚的差異がわずかであっても、その差異を判断することが可能になる。また、マルチ画面に標準モードの画像が含まれるときには、電子カメラにて自動的に設定される画像処理条件に基づくモニター画像との差異も同時に判断することが可能になる。
図4(a),(b),(c) 及び図5は、このときLCDディスプレイ15に表示されるマルチ画面の一例を示している。図4(a) は、設定項目”色温度”において”マルチA”が選択されたときに表示されるマルチ画面である。同図(a) に示すように、左下側にパラメータ”オート”のときのモニター画像、左上側にパラメータ”蛍光灯”のときのモニター画像、右上側にパラメータ”晴天”のときのモニター画像、及び右下側にパラメータ”電球”のときのモニター画像が表示される。これにより、撮影者は、”色温度”において異なる画像処理条件に基づく画像処理が施された複数のモニター画像を同時に見比べることが可能になる。」(【0037】ないし【0044】段落)

h.「また、図5は、設定項目”露出補正”において”マルチ”が選択されたときに表示されるマルチ画面である。同図(c)(注:同図(c)は同図の誤記)に示すように、左下側にパラメータ”-1EV”のときのモニター画像、左上側にパラメータ”+1EV”のときのモニター画像、右上側に”0”のときのモニター画像が表示される。これにより、撮影者は、”露出補正”において異なる画像処理条件に基づく画像処理が施された複数のモニター画像を同時に見比べることが可能になる。
尚、マルチ画面において、このマルチ画面を構成するモニター画像の数、配置、及び大きさ等は、図4(a),(b),(c) 及び図5に示したものに限られるものではなく、その他の数、配置、大きさなどであっても良い。図2に戻り、続いて、このようにLCDディスプレイ15上に表示されているマルチ画面の中から、撮影者による選択ボタン及び確定ボタンの操作により、所定のモニター画像が選択・確定されたか否かを判断する(S214)。ここで、撮影者が所定のモニター画像を1つ選択・確定したと判断したときには(S214がY)、撮影者が選択・確定したモニター画像に施された画像処理の画像処理条件(パラメータ)を、撮影時の撮影条件として設定し(S215)、不図示ではあるが、動作モードの選択処理へ戻る。そして、例えば、“撮影モード”が選択され(S216)、そこでレリース操作が行われると、実際に撮影が行われ、S215の処理で設定されたパラメータに基づく画像処理を施した画像データがSSFDC10に記録される。
一方、S214の分岐処理において、何も選択・確定されていないと判断したときには(S214がN)、S202の処理に戻り、撮影者により再びパラメータの設定変更が行われるまで、先に選択されたマルチモードによる、マルチ画面の表示を継続的に行う。」(【0047】ないし【0049】段落)

刊行物の上記記載a.ないしd.によれば、刊行物には、CCD2から出力される被写体像の電気信号を、撮像回路3にてデジタル信号に変換し、モニター用画像処理部6にて画像処理を施して、LCDディスプレイ15に被写体像を連続的にスルー画像として表示する電子カメラが記載されている。

また、刊行物の上記記載e.ないしh.によれば、刊行物には、
電子カメラにおいて、撮影者により任意に撮影条件に対応する画像処理条件を設定することができる動作モードであるメニューモードが選択されると、メニューが表示され、
メニュー表示で、設定項目”色温度”に属するパラメータである”オート”、”蛍光灯”、”晴天”、”電球”毎に画像処理が施された4つのモニター画像を、LCDディスプレイ15にマルチ画面として表示させるパラメータである“マルチA”が選択されると、
CCD2に結像される被写体像を取り込み(S205)、撮像回路3にて撮像処理を行い(S206)、撮像回路3から出力される画像データをSDRAM12に一時記憶し、
その後、SDRAM12に格納されている画像データは、マルチ画面に表示する1つのモニター画像の画像データサイズにリサイズ処理され、
続いて、このリサイズ処理された画像データから、設定項目”色温度”における、”オート”、”電球”、”蛍光灯”、及び”晴天”の4つのパラメータに基づく画像処理を施したモニター用画像データが作成され、マルチ画面作成処理部7で、これら4つのパラメータに基づく画像処理を施したモニター用画像データからマルチ画面用画像データが作成され、
続いて、作成したマルチ画面用画像データをLCDディスプレイ15に表示して、各パラメータに基づく画像処理が施された複数のモニター画像をマルチ画面として表示することが記載されている。

したがって、刊行物には、次のとおりの発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。
「CCD2から出力される被写体像の電気信号を、撮像回路3にてデジタル信号に変換し、モニター用画像処理部6にて画像処理を施して、LCDディスプレイ15に被写体像を連続的にスルー画像として表示する電子カメラであって、
撮影者により任意に撮影条件に対応する画像処理条件を設定することができる動作モードであるメニューモードが選択されると、メニューが表示され、
メニュー表示で、設定項目”色温度”に属するパラメータである”オート”、”蛍光灯”、”晴天”、”電球”毎に画像処理が施された4つのモニター画像を、LCDディスプレイ15にマルチ画面として表示させるパラメータである“マルチA”が選択されると、
CCD2に結像される被写体像を取り込み(S205)、撮像回路3にて撮像処理を行い(S206)、撮像回路3から出力される画像データをSDRAM12に一時記憶し、
その後、SDRAM12に格納されている画像データは、マルチ画面に表示する1つのモニター画像の画像データサイズにリサイズ処理され、
続いて、このリサイズ処理された画像データから、設定項目”色温度”における、”オート”、”電球”、”蛍光灯”、及び”晴天”の4つのパラメータに基づく画像処理を施したモニター用画像データが作成され、マルチ画面作成処理部7で、これら4つのパラメータに基づく画像処理を施したモニター用画像データからマルチ画面用画像データが作成され、続いて、作成したマルチ画面用画像データをLCDディスプレイ15に表示して、各パラメータに基づく画像処理が施された複数のモニター画像をマルチ画面として表示する電子カメラ。」

(ウ)補正後発明と刊行物発明との対比
a.刊行物発明は、CCD2から出力される被写体像の電気信号を、撮像回路3にてデジタル信号に変換し、モニター用画像処理部6にて画像処理を施して、LCDディスプレイ15に被写体像を連続的にスルー画像として表示する電子カメラに関するものであることから、補正後発明と同様、「撮像装置」に関するものといえる。

b.また、刊行物発明の「LCDディスプレイ15」は、CCD2から出力される被写体像を連続的にスルー画像として表示するのであるから、補正後発明の「撮像手段から出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示手段」に相当し、また、上記「CCD2」は、LCDディスプレイ15に連続的にスルー画像として表示する被写体像を出力するのであるから、補正後発明における「逐次撮像して画像データを出力する撮像手段」に相当する。

c.補正後発明の撮像装置は、「スルー画像に対してトリミングを除く画像調整の調整量が夫々異なる処理を施し、前記処理の内容が異なる複数のスルー画像を同時に表示するよう前記表示手段を制御する表示制御手段」を備えているところ、刊行物発明の電子カメラも、上記のとおり、パラメータである“マルチA”が選択されると、CCD2に結像される被写体像を取り込み、リサイズ処理し、このリサイズ処理された画像データから、設定項目”色温度”における、”オート”、”電球”、”蛍光灯”、及び”晴天”の4つのパラメータに基づく画像処理を施したモニター用画像データが作成され、これら4つのパラメータに基づく画像処理を施したモニター用画像データからマルチ画面用画像データが作成され、LCDディスプレイ15に前記各パラメータに基づく画像処理が施された複数のモニター画像をマルチ画面として表示するものであり、上記の設定項目”色温度”における、”オート”、”電球”、”蛍光灯”、及び”晴天”の4つのパラメータに基づく画像処理は、トリミングを除く画像調整の調整量が夫々異なる処理といえることから、補正後発明と刊行物発明とは、いずれも、「撮像手段からの画像に対してトリミングを除く画像調整の調整量が夫々異なる処理を施し、前記処理の内容が異なる複数の画像を同時に表示するよう前記表示手段を制御する表示制御手段」を備えたものといえる。
もっとも、補正後発明では、撮像手段からの画像が、「スルー画像」であり、処理の内容が異なり、同時に表示する複数の画像が「スルー画像」であるのに対し、刊行物発明では、撮像手段からの画像、処理の内容が異なり、同時に表示する複数の画像について「スルー画像」とはしていない点で相違する。

したがって、補正後発明と刊行物発明との一致点、相違点は次のとおりであると認められる。
〈一致点〉
両者は、
「逐次撮像して画像データを出力する撮像手段と、
この撮像手段から出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示手段と、
撮像手段からの画像に対してトリミングを除く画像調整の調整量が夫々異なる処理を施し、前記処理の内容が異なる複数の画像を同時に表示するよう前記表示手段を制御する表示制御手段と
を備えることを特徴とする撮像装置。」である点で一致する。

〈相違点〉
補正後発明と刊行物発明とは、次の点で相違する。
撮像手段からの画像、及び、処理の内容が異なり、同時に表示する複数の画像が、補正後発明では、「スルー画像」であるのに対して、刊行物発明では、「スルー画像」とはしていない点。

(エ)判断
そこで、以下、上記相違点について判断する。
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-152558号公報(以下「刊行物2」という。)の第【0030】ないし【0034】段落には、次のとおりの記載がある(下線は合議体が付した。)。
「以下、図3のフローチャートを参照して、第1の実施の形態に係るカメラのメインシーケンスを詳細に説明する。
ユーザーが、ズームスイッチ2bを操作することによって構図候補モニタモードに設定すると、光学ファインダの対物の光束を一部遮蔽して、その部分に電子画像を表示する(ステップS1,S2)。
つまり、CCD等による電子撮像素子26で電子画像を取り込み(ステップS3)、現状のズーム状態や縦横状態を判定して(ステップS4)、それらの状態とは異なるズーム状態や、縦横構図状態の画像をカラーLCD5に加工表示する(ステップS5)。この後、レリーズ操作をレリーズスイッチ2aの判定により検出し(ステップS6)、撮影シーケンスに入るが、レリーズスイッチ2aがオンされる前は、ステップS1?S6を所定のシーケンスで繰り返す。 画像加工表示時には、その画像で撮影するにはどうすればよいかを一緒に表示する。即ち、現状ワイドより画面ならば、テレ時は符号112のようになる、という事を示唆するために、サブ図面の上に「T」と表示し、現状横構図なら、そのサブ画面の下あたりに「縦」と表示すると共に、サブ画面には、縦構図時の画面を表示する。また、ユーザーの設定によっては現状を含め3つの画面を並べて比較できるようにしてもよい(図2(a),(b)参照)。 以上説明したように、第1の実施の形態によれば、ズーミングや縦横構図の差をユーザーに判りやすくモニタ可能としたので、ユーザーは最適の構図を瞬時に判断し、迅速な撮影の補助とする事ができる。」

刊行物2の上記記載によると、刊行物2には、カメラにおいて、ユーザーに最適の構図を判断させるために、CCDで取り込んだ電子画像を、現状のズーム状態や縦横状態とは異なるズーム状態や、縦横構図状態のサブ画像として加工し、構図の異なる複数のサブ画像を並べて繰り返して表示(スルー画像表示)すること、すなわち、カメラにおいて、ユーザーに最適の撮影の条件を判断させるために、スルー画像に対して異なる画像の加工を施し、画像の加工の内容が異なる複数のスルー画像を同時にモニター表示することが記載されているといえる。

一方、刊行物発明は、上記イ(イ)c.に記載されるように、撮影者による撮影条件の設定を容易にする電子カメラの撮影条件設定技術を提供することを、発明が解決しようとする課題とし、電子カメラの表示部に異なる画像処理条件に基づく画像処理を施した複数のモニター画像をマルチ画像として同時に表示するものであるところ、このような撮影条件の設定に際して、撮影条件の設定をしている間には、一般に、撮影対象となる被写体や背景等は変化、移動等するものであることから、モニター画像を確認しながら的確な撮影条件を設定するには、モニター画像としてスルー画像を表示することが望ましいことは当業者に明らかなことである。

そうすると、上記刊行物2に記載された、カメラにおいて、ユーザーに最適の撮影の条件を判断させるために、スルー画像に対して異なる画像の加工を施し、画像の加工の内容が異なる複数のスルー画像を同時にモニター表示する技術事項を、電子カメラの表示部に複数の異なるモニター画像をマルチ画像として同時に表示することにより、撮影者による撮影条件の設定を容易にする撮像装置として変わりがなく、また、モニター画像としてスルー画像を表示することが望ましいことが明らかである刊行物発明に適用し、撮像手段からの画像をスルー画像とし、また、処理の内容が異なり、同時に表示する複数の画像をスルー画像とすることは当業者が容易に想到し得たものであるといえる。

以上判断したとおり、補正後発明における上記相違点は、当業者が容易に想到し得たといえるものであり、また、補正後発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って、当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとはいえない。
したがって、補正後発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(オ)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成22年10月28日付けの手続補正は上記2.(2)に示す理由で却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る各発明は、平成22年6月24日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、請求項1ないし6にそれぞれ記載されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「逐次撮像して画像データを出力する撮像手段と、
この撮像手段から出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示手段と、
前記スルー画像に対して夫々内容が異なる処理を施し、前記処理の内容が異なる複数のスルー画像を同時に表示するよう前記表示手段を制御する表示制御手段と
を備えることを特徴とする撮像装置。」

4.刊行物発明
刊行物発明については、上記2.(2)イ(イ)で認定したとおりである。

5.本願発明と刊行物発明との対比
本願発明と刊行物発明との対比については、上記2.(2)イ(ウ)での判断と同様であるが、本願発明と刊行物発明との一致点、相違点は次のとおりであると認められる。
〈一致点〉
両者は、
「逐次撮像して画像データを出力する撮像手段と、
この撮像手段から出力される画像データを被写体のスルー画像として逐次表示する表示手段と、
前記撮像手段からの画像に対して夫々内容が異なる処理を施し、前記処理の内容が異なる複数の画像を同時に表示するよう前記表示手段を制御する表示制御手段と
を備えることを特徴とする撮像装置。」である点で一致する。
〈相違点〉
本願発明と刊行物発明とは、次の点で相違する。
撮像手段からの画像、及び、処理の内容が異なり、同時に表示する複数の画像が、本願発明では、「スルー画像」であるのに対して、刊行物発明では、「スルー画像」とはしていない点。

6.相違点の判断
上記相違点については、上記2.(2)イ(エ)で判断したとおりであり、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項に係る発明について特に検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-01 
結審通知日 2012-06-26 
審決日 2012-07-09 
出願番号 特願2008-130340(P2008-130340)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 明  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 松尾 淳一
千葉 輝久
発明の名称 撮像装置、表示制御方法及びプログラム  

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