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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1263797
審判番号 不服2012-5351  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-21 
確定日 2012-09-27 
事件の表示 特願2006-305336「ハンドラのティーチング方法及びハンドラ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月29日出願公開、特開2008-124198〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成18年11月10日の出願であって、同22年11月15日付拒絶理由通知に対して同23年1月24日に意見書と手続補正書が提出され、同23年6月15日付拒絶理由通知に対して同23年7月29日に意見書と手続補正書が提出されたが、同23年12月13日付で拒絶査定がなされたものである。これに対し、平成24年3月21日に本件審判が請求されるとともに明細書と特許請求の範囲を対象とする手続補正書が提出され、当審による同24年5月8日付審尋に対して同24年6月29日に回答書が提出されている。

2.平成24年3月21日付手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年3月21日付手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
2.1 本件補正の内容
本件補正による補正の内容は、補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
2.1.1 補正事項1
特許請求の範囲を以下のとおり補正する。
a.<補正前>
「【請求項1】
弾性部材の弾性力によって最上端位置に位置するように上方に付勢された作動体を備えた押圧手段と、
前記作動体の下端部に連結され、半導体チップを把持する把持部材と、
前記押圧手段を上下動させる移動手段と、
前記押圧手段にエアーを供給し、前記弾性部材にて弾性支持された作動体を、予め定めた最上端位置と最下端位置との間で、該押圧手段に対して上下動させる作動体駆動手段と、
前記把持部材と前記押圧手段との相対位置を非接触に検出する相対位置検出手段と
を備え、前記把持部材に把持した半導体チップをチップ配置位置に配置、又は、チップ配置位置に配置された半導体チップを該把持部材にて把持するハンドラのティーチング方法において、
前記作動体を前記最上端位置と最下端位置との間の中間位置に前記弾性部材の弾性力に抗して配置した後に、
前記押圧手段を、チップ配置位置に予め配置された半導体チップに向かって下動させ、前記把持部材が前記半導体チップに接触して、前記押圧手段と該把持部材の相対位置が変化したことを前記相対位置検出手段が検出した時の該押圧手段の位置を、該把持部材が該半導体チップとの接触する高さ位置とすることを特徴とするハンドラのティーチング方法。
【請求項2】
弾性部材の弾性力によって最上端位置に位置するように上方に付勢された作動体を備えた押圧手段と、
前記作動体の下端部に連結され半導体チップを把持する把持部材と、
前記押圧手段を上下動させる移動手段と、
前記押圧手段に備えた作動体を上下動させる作動体駆動手段と、
前記押圧手段にエアーを供給し、前記弾性部材にて弾性支持された作動体を、予め定めた最上端位置と最下端位置との間で、該押圧手段に対して上下動させる作動体駆動手段と、
前記把持部材と前記押圧手段との相対位置を非接触に検出する相対位置検出手段と、
前記押圧手段の上下移動位置を検出する上下移動位置検出手段と、
前記上下移動位置検出手段からの検出信号に基づいて、前記押圧手段の移動位置を演算する上下移動位置演算手段と
を備えたハンドラにおいて、
前記作動体駆動手段を駆動制御して、前記作動体を前記弾性部材の弾性力に抗して前記最上端位置と最下端位置との間の中間位置に配置させる作動体移動制御手段と、
前記作動体が前記最上端位置と最下端位置との間の中間位置に配置された状態で、前記移動手段を駆動制御して、前記押圧手段をチップ配置位置に予め配置された半導体チップに向かって下動させる押圧手段移動制御手段と、
前記把持部材が前記半導体チップに向かって下動している時、前記相対位置検出手段が、相対位置が変わったことを検出した時、前記上下移動位置演算手段が演算した移動位置を、該把持部材が該半導体チップとの接触する高さ位置として記憶手段に登録する登録手段と
を設けたことを特徴とするハンドラ。」
b.<補正後>
「【請求項1】
弾性部材の弾性力によって最上端位置に位置するように上方に付勢された作動体を備えた押圧手段と、
前記作動体の下端部に連結され、一つの半導体チップを把持する複数の把持部材と、
前記押圧手段を上下動させる移動手段と、
前記押圧手段にエアーを供給し、前記弾性部材にて弾性支持された作動体を、予め定めた最上端位置と最下端位置との間で、該押圧手段に対して上下動させる作動体駆動手段と、
前記把持部材と前記押圧手段との相対位置を非接触に検出する相対位置検出手段と
を備え、複数の前記把持部材に把持した半導体チップをチップ配置位置に配置、又は、チップ配置位置に配置された半導体チップを複数の該把持部材にて把持するハンドラのティーチング方法において、
前記作動体を前記最上端位置と最下端位置との間の中間位置に前記弾性部材の弾性力に抗して配置した後に、
前記押圧手段を、チップ配置位置に予め配置された半導体チップに向かって下動させ、前記把持部材が前記半導体チップに接触して、前記押圧手段と該把持部材の相対位置が変化したことを前記相対位置検出手段が検出した時の該押圧手段の位置を、該把持部材が該半導体チップとの接触する高さ位置とすることを特徴とするハンドラのティーチング方法。
【請求項2】
弾性部材の弾性力によって最上端位置に位置するように上方に付勢された作動体を備えた押圧手段と、
前記作動体の下端部に連結され、一つの半導体チップを把持する複数の把持部材と、
前記押圧手段を上下動させる移動手段と、
前記押圧手段に備えた作動体を上下動させる作動体駆動手段と、
前記押圧手段にエアーを供給し、前記弾性部材にて弾性支持された作動体を、予め定めた最上端位置と最下端位置との間で、該押圧手段に対して上下動させる作動体駆動手段と、
前記把持部材と前記押圧手段との相対位置を非接触に検出する相対位置検出手段と、
前記押圧手段の上下移動位置を検出する上下移動位置検出手段と、
前記上下移動位置検出手段からの検出信号に基づいて、前記押圧手段の移動位置を演算する上下移動位置演算手段と
を備えたハンドラにおいて、
前記作動体駆動手段を駆動制御して、前記作動体を前記弾性部材の弾性力に抗して前記最上端位置と最下端位置との間の中間位置に配置させる作動体移動制御手段と、
前記作動体が前記最上端位置と最下端位置との間の中間位置に配置された状態で、前記移動手段を駆動制御して、前記押圧手段をチップ配置位置に予め配置された半導体チップに向かって下動させる押圧手段移動制御手段と、
前記把持部材が前記半導体チップに向かって下動している時、前記相対位置検出手段が、相対位置が変わったことを検出した時、前記上下移動位置演算手段が演算した移動位置を、該把持部材が該半導体チップとの接触する高さ位置として記憶手段に登録する登録手段と
を設けたことを特徴とするハンドラ。」

2.1.2 補正事項2
明細書の段落14を以下のとおり補正する。
a.<補正前>
「(前略)半導体チップを把持する把持部材と、(中略)前記把持部材に把持した半導体チップをチップ配置位置に配置、又は、チップ配置位置に配置された半導体チップを該把持部材にて把持するハンドラのティーチング方法において、(後略)」
b.<補正後>
「(前略)一つの半導体チップを把持する複数の把持部材と、(中略)複数の前記把持部材に把持した半導体チップをチップ配置位置に配置、又は、チップ配置位置に配置された半導体チップを複数の該把持部材にて把持するハンドラのティーチング方法において、(後略)」

2.1.3 補正事項3
明細書の段落21を以下のとおり補正する。
a.<補正前>
「(前略)前記作動体の下端部に連結され半導体チップを把持する把持部材と、(後略)」
b.<補正後>
「(前略)前記作動体の下端部に連結され、一つの半導体チップを把持する複数の把持部材と、(後略)」

2.2 補正の適法性についての判断
上記補正事項はいずれも、「半導体チップを把持する把持部材」を「一つの半導体チップを把持する複数の把持部材」へと補正することを含む。
しかしながら、願書に最初に添付した明細書において、複数の把持部材について言及している段落36には、「コンプライアンスユニットCUは、複数個(図2では2個)の押圧装置30を備えている。押圧装置30は、半導体チップとしてのICチップT(図3参照)を把持(吸着保持)して、テスタヘッド12に設けた検査用ソケット50(図3参照)に押圧するものであって、取付板29の下面に固設されている。本実施形態では、2個の押圧装置30を備えたことによって、一度に2個のICチップTを保持搬送する。」と記載されている。このことより、各把持部材がそれぞれ1つの半導体チップを把持することは理解されるが、複数の把持部材が1つの半導体チップを把持し、「把持部材から半導体チップに作用する荷重を分散させることができる」(審判請求書第3ページ第6?9行参照。)ものと理解することはできない。そして、段落36以外に、複数の把持部材について触れた記載を見出すことはできない。
したがって、「半導体チップを把持する把持部材」を「一つの半導体チップを把持する複数の把持部材」へと補正することは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内でするものではなく、新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するため、本件補正は却下すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

3.本件発明
2.に記載のとおり、平成24年3月21日付の手続補正は却下されたから、本願の請求項1及び2に係る発明は、同23年7月29日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、2.1.1a.の【請求項1】に記載したとおりである。

4.刊行物に記載された発明
本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶理由に引用された次の刊行物には、以下の事項が記載されている。
刊行物: 特開2001-203498号公報
a.(発明の詳細な説明、段落1)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子部品を吸着した吸着ヘッドを昇降手段により下降させて上記電子部品を基板等の実装対象に対し搭載する際に、その押し付け圧力を検出しながら上記昇降手段を作動制御することにより、実装対象に対する押し付け圧力を制御するために用いられる表面実装装置に関する。」
b.(同、段落6,7)
「【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、上下方向に移動自在に支持されて電子部品を吸着する吸着ヘッドと、この吸着ヘッドを昇降させる昇降手段と、この昇降手段の作動により上記吸着ヘッドを下降させて上記電子部品を実装対象に対し装着する際の押し付け圧力を検出するロードセルと、このロードセルから出力される圧力検出値に基づいて上記昇降手段を作動制御することにより上記押し付け圧力が目標圧力になるように圧力制御を行う圧力制御手段とを備えた表面実装装置において、上記昇降手段により昇降作動される昇降手段側部材と、上記吸着ヘッドに結合された吸着ヘッド側部材と、この吸着ヘッド側部材及び昇降手段側部材の両者間に上下方向に介装されて弾性復元力を吸着ヘッド側部材に上向きに作用させる弾性部材と、上記昇降手段側部材に設けられ上記弾性部材の弾性復元力に対抗するように吸着ヘッド側部材を下向きに押圧可能とされたエアシリンダと、このエアシリンダに対するエア圧供給を制御することにより上記弾性部材の弾性復元力を変更調節するエア圧制御手段とを備える。そして、上記ロードセルは上記弾性部材の弾性復元力を受けるように配置され、上記エア圧制御手段は、上記圧力制御手段による圧力制御に際し、上記弾性部材の初期弾性復元力が上記目標圧力以上となるように上記エアシリンダへのエア圧供給を制御するよう構成されているものである。
【0007】この発明の場合、エア圧制御手段によるエア圧供給制御に応じた力が吸着ヘッド側部材に下向きに作用する一方、昇降手段側部材に対する吸着ヘッド側部材の相対移動に応じた弾性部材の弾性復元力が吸着ヘッド側部材に上向きに作用することにより、吸着ヘッド側部材が昇降手段側部材に対し下向きに所定量相対移動した位置で平衡状態となり、この状態での弾性部材の弾性復元力がロードセルに対し初期設定圧力として作用する。そして、この状態から昇降手段が下降作動されると、昇降手段側部材から上記エアシリンダ及び吸着ヘッド側部材を介して加わる下降作動力により、電子部品を吸着した吸着ヘッドが下降して、その電子部品が基板等の実装対象に当接し、さらに吸着ヘッドが下降されて押し付けられると、その反力を受けて上記吸着ヘッド側部材が昇降手段側部材に対し上向きに相対移動する結果、上記弾性部材の弾性復元力が徐々に減少し、ロードセルに作用する圧力が上記初期設定圧力から徐々に減少することになる。従って、この初期設定圧力からの変化分、すなわち、上記減少分圧力を検出することにより押し付け圧力が得られ、この押し付け圧力が所定のものになるように圧力制御手段により昇降手段の下降作動を制御することにより、実装対象に対する電子部品搭載時の押し付け圧力を所定のものに制御することが可能になる。」
c.(同、段落20?26)
「【0020】図2はヘッドユニット5の構成を示す側面図であり、一部を断面で示している。また、図3は図2の正面図であり、一方の吸着ヘッド20が最下降位置に移動し、他方の吸着ヘッド20が最上昇位置に移動している状態を示している。
【0021】両図において、ヘッドユニット5には部品を吸着するための吸着ヘッド20が装備されており、本実施形態では2本の吸着ヘッド20,20がX軸方向に並べて配設されている。また、ヘッドユニット5には吸着ヘッド20をZ軸方向(上下方向)に昇降させる昇降駆動機構と、上記吸着ヘッド20を支持してZ軸と平行なR軸(図2参照)の回りに回転させる回転駆動機構とが搭載されている。
【0022】上記昇降駆動機構は、各吸着ヘッド20を個別に昇降させるようになっている。具体的には、ヘッドユニット5には上下方向に延びるガイド部21及びボールねじ軸22が固定されており、このボールねじ軸22に螺合されたナット部23を有する側面視コ字状の昇降手段側部材としてのフレーム24が上記ガイド部21に沿って昇降自在に取り付けられている。
【0023】上記ボールねじ軸22は、芯ずれや角度ずれを吸収するためのフレキシブルジョイント25を介して昇降手段としてのZ軸サーボモータ26の回転軸26aと接続されている。そして、上記Z軸サーボモータ26を正回転または逆回転させると、上記ボールねじ軸22がZ軸回りに定位置で回転し、このボールねじ軸22と螺合しているナット部23が昇降する結果、上記フレーム24がZ軸方向に昇降作動されるようになっている。
【0024】また、上記フレーム24には、上部に伝達部材としてのエアシリンダ27が下向きに取り付けられ、中間部に上下方向に延びるリニアガイド部28が固定され、下端部にロードセル29がその圧力検出面を上向きにして設置されている。さらに、上記リニアガイド部28の上下各側にはストッパ28a,28bが形成されている。
【0025】そして、上記吸着ヘッド20には吸着ヘッド側部材としてのブロックユニット31が連結されており、上記吸着ヘッド20はこのブロックユニット31を介して上記フレーム24から昇降作動力の伝達を受ける一方、上記ブロックユニット31により押し付け圧力の制御動作が行われるようになっている。このブロックユニット31の詳細については後述する。
【0026】また、上記吸着ヘッド20には、部品を吸着するための吸着ノズル20aが着脱可能に取り付けられるようになっており、この吸着ノズル20aは吸着させる部品Pに応じて、あるいは、吸着ヘッド20の下降の際の速度制御もしくは押し付け圧力制御の種類等に応じてクッション用ばねを内蔵したものと非内蔵のものとのいずれかに交換し得るようになっている。」
d.(同、段落32?37)
「【0032】上記ノズルシャフト46はブロックユニット31に対し、上下一対の軸受け部材32,32によりR軸回りに回転可能でかつ上下方向への相対移動が阻止された状態に(すなわち、吸着ヘッド20と一体に昇降するように)保持されている。上記ブロックユニット31の内部には収容室33が形成され、この収容室33内にプッシュロッド34が上下方向に進退自在に収容されている。このプッシュロッド34の上側にはコイルスプリング等により構成された圧縮スプリング35(弾性部材)が内装され、上記プッシュロッド34はその下端面が上記ロードセル29の上面である圧力検出面に相対向した状態に配設されている。そして、上記プッシュロッド34は上記圧縮スプリング35からの弾性復元力の変化に応じて上記ロードセル29に向けて進退するようになっている。なお、図2中36は上記圧縮スプリング35が配設された収容室33の部分の空気抜き用孔である。
【0033】さらに、上記ブロックユニット31は、上記フレーム24のリニアガイド部28に嵌合され、このリニアガイド部28により上記フレーム24に対し上下方向に相対移動可能となっている。そして、上記ブロックユニット31の上面には上記エアシリンダ27のピストンロッド27aの先端が当接されており、上記ブロックユニット31はこのピストンロッド27aを介して上記フレーム24側から下降作動力の伝達を受ける一方、そのエアシリンダ27の進退作動、つまり、後述の前進側作動室27b及び後退側作動室27cへのエアのエア圧制御によりフレーム24に対する上下方向の相対位置を変更し得るようになっている。
【0034】そして、上記エアシリンダ27の前進側作動室27b(図5参照)及び後退側作動室27cは、それぞれ図示省略の調圧バルブ及び電磁開閉弁を介して空気源と接続され、後述のコントローラ60によりエア圧制御が行われるようになっている。
【0035】上記の構成の表面実装装置による押し付け圧力制御は図4に示すコントローラ60により行われる。このコントローラ60はエアシリンダ27に対するエア圧供給を制御するエア圧制御手段61及びロードセル29からの検出値に基づいてZ軸サーボモータ26を作動制御する圧力制御手段62を機能的に含むものであり、CPUやメモリー等を備え所定の制御プログラムに基づいて後述の制御を行うようになっている。
【0036】上記エア圧制御手段61は、上記Z軸サーボモータ26の作動量の検出等により吸着ヘッド20の高さ位置を検出する位置検出手段63からの信号に基づき、吸着ヘッド20の高さ位置が基板Tの直前位置から装着位置までの装着動作状態であるかそれ以外の非装着動作状態であるかを判別し、上記非装着動作状態にあるときにはブロックユニット31をロック状態にする一方、上記装置動作状態にあるときには上記ロック状態を解除し非装着動作状態から装着状態への変換に際し所定の初期設定圧力をロードセル29に加えるようになっている。
【0037】また、上記圧力制御手段62は上記非装着動作状態から装置動作状態へ移行したときにZ軸サーボモータ26の下降速度を所定の低速度に変更する一方、ロードセル29からの検出値を後述の初期設定圧力から減じた値を基板Tに対する検出押し付け圧力とし、この検出押し付け圧力が目標圧力に到達するまで上記Z軸サーボモータ26の下降作動を上記低速度で継続させるようになっている。そして、上記検出押し付け圧力が目標値圧力に到達すれば、上記切換弁の制御系に切換指令信号を出力して上記Z軸サーボモータ26を逆転させて上昇作動させるようになっている。」
e.(同、段落40?45)
「【0040】このようなブロックユニットのロック状態が保持されつつ、ヘッドユニット5のX軸方向及びY軸方向の移動が行われて部品供給部4において吸着した部品Pが基板の上方位置まで搬送されると共に、R軸サーボモータ40が作動されて上記部品Pが基板に対応した回転位置に変換される(図5中のステップS1,S2)。さらに、上記ロック状態のままZ軸サーボモータ26が作動されて吸着ヘッド20及び部品Pが基板Tに向けて下降する(ステップS3)。この下降の際には、上記Z軸サーボモータ26の作動制御により通常下降速度として予め設定された第1設定速度で下降させる。
【0041】そして、上記吸着ヘッドが上記直前位置に到達して非装着動作状態から装着動作状態になることが検出されたら、上記ロック状態を解除して非ロック状態に変換すると同時にロードセル29に対し初期圧力を付与して圧力制御手段による制御が開始される(ステップS4,S5)。
【0042】すなわち、上記Z軸サーボモータ26の下降速度を上記第1設定速度よりもかなり遅い第2設定速度に変更しつつ(ステップS6)、目標圧力に応じた初期設定圧力の付与を行う。この目標圧力(目標押し付け圧力)としては、基板Tに対し装着する部品Pの種類等に応じて高低にわたり複数段の値が設定されており、以下では、その目標圧力として高圧力値(ブロックユニット31側の自重値に基づく押し付け圧力よりも高い圧力値)と、低圧力値(ブロックユニット31側の自重値に基づく押し付け圧力以下の圧力値)との2段階のものが設定された場合について説明する。
【0043】高圧力値の目標圧力を設定する場合には、上記後退側作動室27cに対し設定エア圧A2(但しA1>A2)を供給する。これにより、ピストンロッド27aは前進側作動室27b内の設定エア圧A1に抗して所定量だけ上動し、ブロックユニット31は下側ストッパ28bから上記所定量だけ上方に離れて非ロック状態に変換され、この状態(図6に示す状態)で停止する。この状態では、圧縮スプリング35の弾性復元力及び上記設定エア圧A2と、設定エア圧A1及びブロックユニット31側の自重とが平衡した状態となる一方、上記圧縮スプリング35の弾性復元力に対応した初期圧力(例えば5kgfの圧力)がプッシュロッド34を介してロードセル29に載荷された状態となる。
【0044】そして、吸着ヘッド20を上記第2設定速度で基板Tに向けて下降させていくと部品Pが基板Tに接地する。なおもZ軸サーボモータ26の下降作動を続けてフレーム24を下降させていくと、吸着ヘッド20が基板T側からの反力を受けその反力の増大に伴いブロックユニット31が設定エア圧A1に抗してピストンロッド27aを押し上げる結果、吸着ヘッド20及びブロックユニット31はフレーム24に対し徐々に上向きに相対移動することになる。なお、この際、前進側作動室27bの側では上記反力を受けて狭くなる分だけ調圧バルブからエアがリリーフされて上記の設定エア圧A1が維持される。
【0045】そして、上記のブロックユニット31が上向きに相対移動するに従い圧縮スプリング35が徐々に延び、その結果、ロードセル29に加えられている圧力が徐々に減少する。この圧力減少分が上記反力を表すことになる。従って、この低減分の圧力を求めることにより、上記反力、すなわち、基板Tに対する押し付け圧力を検出することができる。」
f.(図6)
ブロックユニット31が、フレーム24に対し、最上端位置と最下端位置との間の中間位置にあること、圧縮スプリング35がブロックユニット31を上方に付勢すること、吸着ヘッド20がブロックユニット31の下端部に連結されていること、が理解される。

上記には、部品実装装置が電子部品を基板に装着する際の動作について記載されているが、電子部品が電子部品配置位置に配置された部品供給部から吸着ヘッドが電子部品を取り出す際にも、装着する際と同様に、ロードセルに加えられる圧力の変化によって、吸着ヘッドが電子部品を吸着したことを検知していることは、当業者であれば理解し得るものである。また、ロードセルは、吸着ヘッドとブロックユニットのフレームに対する相対移動を、圧縮スプリングによる圧力の変化として検出していることも明白である。
そこで、技術常識を勘案しつつ、上記の記載事項を本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物には次の発明が記載されているということができる。
「圧縮スプリングの弾性力によって上方に付勢されたブロックユニットを備えたフレームと、
前記ブロックユニットの下端部に連結され、電子部品を吸着する吸着ヘッドと、
前記フレームを上下動させる昇降駆動機構と、
前記フレームにエアを供給し、前記圧縮スプリングにて弾性支持されたブロックユニットを、予め定めた最上端位置と最下端位置との間で、該フレームに対して上下動させるエアシリンダと、
前記吸着ヘッドとフレームとの相対位置を検知するロードセルと、
を備え、前記吸着ヘッドに吸着した電子部品を電子部品配置位置に配置、または、電子部品配置位置に配置された電子部品を該吸着ヘッドにて吸着する表面実装装置の作動方法であって、
前記ブロックユニットを前記最上端位置と最下端位置との間の中間位置に前記圧縮スプリングの弾性力に抗して配置した後に、
前記フレームを、電子部品配置位置に予め配置された電子部品に向かって下動させ、前記吸着ヘッドが前記電子部品に接触して、前記フレームと前記吸着ヘッドの相対位置が変化したことを前記ロードセルが検出した時の該フレームの位置を、該吸着ヘッドが該電子部品と接触する高さ位置とする、表面実装装置の作動方法。」(以下、「刊行物記載の発明」という。)

5.対比
本件発明と刊行物記載の発明とを対比すると、以下のとおりである。
後者の「圧縮スプリング」、「ブロックユニット」、「フレーム」、「昇降駆動機構」、「エアシリンダ」、「エア」は、前者の「弾性部材」、「作動体」、「押圧手段」、「移動手段」、「作動体駆動手段」、「エアー」にそれぞれ相当することは明らかである。
また、後者の「電子部品」は、前者の「半導体チップ」と電子部品である限りにおいて共通し、後者において電子部品を「吸着」することは、本件発明と同様に「半導体チップ」も含む電子部品を「把持」することにほかならない(本願明細書段落36参照。)から、後者の「吸着ヘッド」は前者の「把持部材」に相当する。
後者の「ロードセル」は、把持部材と押圧手段との相対位置を検出する手段である限りにおいて、前者の「相対位置検出手段」と共通する。
後者の「表面実装装置」は、半導体チップを含む電子部品を把持して所定位置から取り出し、また、所定位置に配置する取扱い装置であるから、前者の「ハンドラ」に相当し、前者の「作動方法」はハンドラの作動方法である限りにおいて前者の「ティーチング方法」と共通する。
したがって、本件発明と刊行物記載の発明との間には、以下の一致点及び相違点が認められる。
<一致点>
「弾性部材の弾性力によって上方に付勢された作動体を備えた押圧手段と、
前記作動体の下端部に連結され、電子部品を把持する把持部材と、
前記押圧手段を上下動させる移動手段と、
前記押圧手段にエアーを供給し、前記弾性部材にて弾性支持された作動体を、予め定めた最上端位置と最下端位置との間で、該押圧手段に対して上下動させる作動体駆動手段と、
前記把持部材と押圧手段との相対位置を検出する手段と、
を備え、前記把持部材に把持した電子部品を電子部品配置位置に配置、または、電子部品配置位置に配置された電子部品を該把持部材にて把持するハンドラの作動方法において、
前記作動体を前記最上端位置と最下端位置との間の中間位置に前記弾性部材の弾性力に抗して配置した後に、
前記押圧手段を、電子部品配置位置に予め配置された電子部品に向かって下動させ、前記把持部材が前記電子部品に接触して、前記押圧手段と該把持部材の相対位置が変化したことを前記相対位置を検出する手段が検出した時の該押圧手段の位置を、該把持部材が該電子部品と接触する高さ位置とする、ハンドラの作動方法。」である点。
<相違点1>
弾性手段は、前者では作動部材を最上端位置に位置するように付勢するのに対し、後者では作動部材を最上端位置に位置させられるか、不明である点。
<相違点2>
把持部材が把持する電子部品が、前者では半導体チップであるのに対し、後者では特定されていない点。
<相違点3>
把持部材と押圧手段との相対位置を検出する手段が、前者ではこれらの相対位置を非接触に検出するものであるのに対し、後者ではロードセルである点。
<相違点4>
ハンドラの作動方法が、前者ではティーチング方法であるのに対し、後者ではこのようなものではない点。

6.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。

6.1 <相違点1>について
本件発明においても、刊行物記載の発明と同様に、取扱い装置の作動時において、作動体は作動体駆動手段によって下方に付勢され、最上端位置と最下端位置との間の中間位置にもたらされた状態で下降する。そうしてみると、作動時以前は作動体が中間位置よりも上方にあれば十分であり、作動体が最上端位置にあることに技術的な意義はないから、弾性手段が作動部材を最上端位置に位置するように付勢することは、設計上の選択にすぎない。

6.2 <相違点2>について
把持部材の把持対象物を半導体チップと特定することには格別の技術的意義は認められず、<相違点2>に係る発明特定事項は単なる用途の限定にすぎない。

6.3 <相違点3>について
電子部品のハンドラにおいて、把持部材と押圧手段に相当する2つの部材の間の相対移動を非接触にて検出することは、例えば特開2002-9124号公報(発明の詳細な説明段落25,28,38、図2参照。図2は把持部材に相当するシャフト21の最下端位置を示している。)、特開平10-150093号公報(発明の詳細な説明段落23,24、図1参照。)、特開2006-196618号公報(発明の詳細な説明段落24,25、図1参照。)に示されるように本願の出願前において既に周知である。したがって、刊行物記載の発明において、ロードセルに代えて、把持部材と押圧手段との相対位置を非接触で検出する手段を採用することは、当業者が容易に想到し得る。

6.4 <相違点4>について
ティーチングによって機械の動作を制御することは本願出願前に既に周知の技術であるから、刊行物記載の発明において、ハンドラが電子部品と接触した高さ位置を毎回検出する代わりに、最初の1回だけ高さ位置を検出してこれを記憶し、以後は記憶した高さ位置に基づいて電子部品を把持する、すなわちティーチングによってハンドラの動作を制御するように変更することは、当業者が容易に想到し得る。
したがって、本件発明においてハンドラの作動方法をティーチング方法とすることに困難性はない。

6.5 まとめ
本件発明の作用効果には、刊行物記載の発明及び従来周知の技術に基づいて普通に予測される範囲を超えるような格別のものを認めることもできない。
したがって、本件発明は刊行物記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は平成24年6月29日付回答書において特許請求の範囲の補正案を提示しているので、補正に法的根拠はないが、これについても一応触れておく。
該補正案により限定しようとする非接触式の相対位置検出装置と同様の検出装置は、6.3に周知技術の1例として挙げた特開2006-196618号公報にも記載されているため、該補正案を採用しても進歩性を認めることはできない。

7.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は刊行物記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
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審理終結日 2012-07-25 
結審通知日 2012-07-31 
審決日 2012-08-13 
出願番号 特願2006-305336(P2006-305336)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 沼生 泰伸金丸 治之  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 刈間 宏信
千葉 成就
発明の名称 ハンドラのティーチング方法及びハンドラ  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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