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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1263877
審判番号 不服2012-480  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-11 
確定日 2012-09-28 
事件の表示 特願2007- 78545号「電子部品装着方法及び電子部品装着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月9日出願公開、特開2008-243890号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成19年3月26日の出願であって、平成23年10月5日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月11日)、これに対し、平成24年1月11日に拒絶査定不服審判が請求されると共にその審判の請求と同時に手続補正がされたものである。
そして、その請求項1及び2に係る発明は、平成24年1月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
供給リールに巻回収納された収納テープに収納された電子部品を供給する複数の部品供給ユニットをカート台上に搭載した複数の部品供給装置を電子部品装着装置に脱着可能に接続できるようにし、前記部品供給ユニットより電子部品を取出してプリント基板上に装着する電子部品装着方法において、
前記部品供給装置を電子部品装着装置に接続する前に、コンピュータを使用して記憶装置に格納されたこれから生産するプリント基板を選択して対応する部品段取りデータを読み込み、
作業者が前記部品供給ユニットの段取り替えの際の前記カート台上の搭載すべき位置に搭載すべき部品供給ユニットを搭載したか否かのチェックをする所定の前記部品供給装置を選択し、
前記コンピュータは、選択された部品供給装置のカート台上に搭載された複数の各部品供給ユニットのメモリにアクセスしてフィーダ情報を取得し、
取得したフィーダ情報に基づいて前記コンピュータはサーバーにアクセスして部品IDを取得し、
このフィーダ情報から取得した各部品IDと前記段取りデータの各部品IDとを前記コンピュータが比較し、
この比較結果をモニタに表示する
ことを特徴とする電子部品装着方法。」

第2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2005-216965号公報(以下「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0020】
図1は、本発明にかかる部品配置管理方法の対象となる実装機を含む実装ラインの全体説明図である。この図に示すように、実装ライン90は、ラインにプリント基板を供給するローダー91、基板上にクリームはんだを塗布するはんだ印刷機92、基板上に接着剤等を塗布するディスペンサ93、基板上に電子部品を実装する複数台の実装機10…、実装機10外から電子部品を供給する外部供給装置94、クリームはんだを溶融させるリフロー炉95、生産された基板をラインから搬出するアンローダ96等を備えている。
【0021】
この実装ライン90には、電子部品実装データ(基板データ)を作成し、ライン全体を統括的に制御する総括コントローラ60が設けられており、この総括コントローラ60およびライン90を構成する各装置92,93,10…は、電子部品実装データや作業の進行情報等の各種情報を互いに伝達できるようにハブ97を介してケーブルで接続されている。後述するように、この総括コントローラ60は、このライン90において順次基板(製品)を生産していく際の段取り作業を支援する段取り作業支援装置として機能する。
【0022】
図2は、実装機の一例を示す平面図である。この図に示すように、実装機10は、基台11上に配置されてプリント基板Pを搬送するコンベア20と、このコンベア20の両側に配置された部品供給部30と、基台11の上方に設けられた電子部品実装用のヘッドユニット40とを備えている。
【0023】
部品供給部30は、電子部品を順次供給するための多数のフィーダが配設されている。この実施形態では、多数のテープフィーダ31…が並列に配置されている。また、この実施形態では、テープフィーダ31…はフィーダ交換台車(フィーダ装着体、以下単に台車と呼ぶ)32に設けられた複数のフィーダセット位置34…に装着され、この台車32がコンベア20の両側の上流側と下流側とに設けられた台車取付部(フィーダ装着体取付部)37に装着されることで、各テープフィーダ31は実装機10に装着されるようになっている(図1参照)。また、コンベア20の両側の上流側と下流側の台車32…の台車取付部37,37の間には、部品の吸着状態を視認する部品認識カメラ33,33が設けられている。なお、部品供給部30は、必要に応じてバルクフィーダ、トレイフィーダ等も装着することができるようになっている。」

(2)「【0027】
各テープフィーダ31には、図3に示すような部品集合体としてのリール36が着脱可能に装着されるようになっている。このリール36には、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の部品を所定間隔毎に格納したテープ361が巻着されており、リール36がテープフィーダ31にセットされた状態で、テープ361がリール36からテープフィーダ31の先端側へ間欠的に繰り出され、テープ361に格納した部品をヘッドユニット40にてピックアップできるようになっている。
【0028】
このリール(部品集合体)36の外表面には、格納している部品の種類または格納している部品を含めた各リール(部品集合体)の種類を識別可能な部品IDが記録された記録媒体362と、当該リール36に格納された部品の初期入り数を示す初期入り数情報が記録された記録媒体363とが、たとえば部品メーカ等によって予め取り付けられている。この実施形態では、これらの記録媒体362,363は、部品IDおよび初期入り数情報を示すバーコードを印刷したテープから構成されている。なお、部品IDは、いわゆるメーカ形式名を示すものであり、この実装ライン90において部品配置を管理する管理プログラムが各部品集合体(リール)36…を管理するために用いている部品名(部品管理番号)とは必ずしも一致しない。
【0029】
また、各テープフィーダ31の外表面には、図4に示すように、この実装ライン90において、各テープフィーダ31…を個別に識別可能なフィーダIDが記録された記録媒体311が取り付けられ、実装機10の部品供給部30には、図5および図6に示すように、各フィーダセット位置34…の上方に、各フィーダセット位置34を識別可能なセット位置IDが記録された記録媒体341…が取り付けられ、台車32…には、図5に示すように、各台車32を識別可能な台車IDが記録された記憶媒体321が取り付けられ、実装機10の台車取付部37…の側方には、図6に示すように、各台車取付部37を識別可能な台車取付部IDが記録された記録媒体371が取り付けられている。この実施形態では、これら各記録媒体311,341,321,371も、それぞれフィーダID、セット位置ID、台車IDおよび台車取付部IDを示すバーコードを印刷したテープから構成されている。」

(3)「【0030】
この実装機10には、CPU、メモリ、ハードディスク装置等の外部記憶部、キーボードやマウス等の入力部、CRTや液晶表示装置等の画像表示装置58(図6参照)、総括コントローラ60等とのインタフェース部、等を備えたコンピュータ等からなる制御ユニットが備えられている。この制御ユニットは、所定の基板データ(生産プログラム)にしたがって、各サーボモータおよび部品認識カメラ等を制御し、多数の電子部品をプリント基板Pに実装する実装動作を制御するようになっている。
【0031】
図7は、段取り作業支援装置として機能する総括コントローラ60の構成を示す機能ブロック図である。
【0032】
総括コントローラ60は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、ハードディスク装置等の外部記憶部、キーボードやマウス等の入力部、CRTや液晶表示装置等の画像表示部、実装機10等とのインタフェース部、さらに入力部の一部としてバーコードを読み取るバーコードリーダ68等を備えたパーソナルコンピュータ等から構成され、管理データ記憶部61、目標部品配置設定手段62、使用台車計画設定手段63、フィーダ片付け先設定手段64、フィーダ配置作業内容報知手段65、フィーダ配置確認手段66、および台車取付部報知手段67等としての機能、さらに後述するこれらの下位機能がこのコンピュータ上に構成されている。」

(4)「【0034】
管理データ記憶部61は、段取り作業支援装置としての種々の管理データを記憶するものである。この管理データ記憶部61は、図8に示すように、生産計画記憶手段611、目標部品配置記憶手段612、使用台車計画記憶手段613、台車状況記憶手段614、部品ID記憶手段615、およびフィーダ状態記憶手段616を機能的に含んでいる。
【0035】
生産計画記憶手段611は、この実装ライン90における生産計画として、生産順序と製品名(基板名)と生産数量とを記憶するものである。図11は、生産計画記憶手段61に記憶された生産計画の一例である。
【0036】
目標部品配置記憶手段612は、各製品(プリント基板)を生産するための、実装機10の部品供給部30における部品集合体36の目標部品配置を記憶するものである。この部品目標配置は、各製品(プリント基板)の生産のための段取り作業を開始する前に、生産計画記憶手段611に記憶された生産計画に基づいて、後述する目標部品配置設定手段62により、実装効率向上を図る最適化手法等を用いて予め設定されている。
【0037】
図12は、目標部品配置記憶手段612に記憶された部品配置目標(当審注:「目標部品配置」の誤記。以下同じ。)の一例である。この図に示すように、部品目標配置は、実装機10の各台車取付部37に装着されるフィーダ交換台車上の各セット位置(フィーダセット位置)#1,#2,…ごとに、装着すべき部品集合体36を示す部品名が割り当てられている。」

(5)「【0078】
フィーダ配置確認手段66は、段取り作業において、各台車32…にフィーダ31…を装着するフィーダ配置作業が行われたときや、各製品の生産直前に段取りされた台車32…が実装機10に装着されたとき等において、各台車におけるフィーダセット位置あるいは実装機10側から見た各フィーダセット位置に、目標フィーダ配置が実現されているかどうかを確認するものである。
【0079】
また、このフィーダ配置確認手段66は、各台車32…にフィーダ31…を装着するフィーダ配置作業時に、必要な部品(部品集合体)がセットされたフィーダ31がなく、新たな部品集合体36をフィーダ31にセットした場合等には、これらフィーダ31と部品集合体36との関連付けも行う。具体的には、新たな部品集合体36をフィーダ31にセットする際に、この部品集合体36に付された部品ID(メーカ形式名)、初期入り数情報を示す記録媒体(バーコード)362,363と、フィーダ31に付されたフィーダIDを示す記録媒体(バーコード)311を、たとえばバーコードリーダ38で読み取り、これらを関連付けてフィーダ状態記憶手段616に記憶させる。こうして部品IDとフィーダIDとを関連付けておくことで、フィーダ配置を確認するときには、フィーダIDのみを読み取ればセットされている部品(部品集合体)の部品IDを知ることができるようになる。なお、初期入り数情報は、フィーダ(部品集合体)における部品残数の管理に適宜用いられる。
【0080】
実際のフィーダ配置の確認作業時には、オペレータが、バーコードリーダ68等を用いて、台車32のフィーダセット位置34…に装着された各フィーダ31…のフィーダIDを順次読み取っていき、読み取られたフィーダIDに取り付けられている部品が目標部品配置記憶手段612に記憶された目標部品配置に一致しているか否かが、フィーダ配置確認手段66によって判断される。
【0081】
具体的には、読み取られたフィーダIDに対応づけられている部品ID(メーカ形式名)が、フィーダ状態記憶手段616から読み出され、さらにこの部品IDに対応づけられている部品名(当該実装ライン90における名称)が部品ID記憶手段615の対応表から読み出され、この部品名によって特定される部品が前記目標部品配置に一致しているか否かが判断される。」

(6)「【0087】
次に、実装機における段取り作業支援方法の手順について説明する。
【0088】
図20は、段取り作業支援方法全体の流れを示すフローチャートである。
【0089】
この図に示すように、この段取り作業支援方法では、まず、与えられた生産計画(図11)に基づいて、目標部品配置設定手段62により、この生産計画にある各製品を生産する際に、各実装機10…の台車取付部37に装着される台車32…に求められる目標部品配置(図12)が段取り目標として作成され(S10)、この段取り目標に基づいて、使用台車計画設定手段63により、各製品の生産時に使用する使用台車計画が作成される(S20)。」

(7)「【0119】
図20に戻って、ある使用台車(段取り対象台車)についてのフィーダ配置作業が完了すれば(S60)、このフィーダ配置作業によって行われたフィーダ配置の確認が行われる(S80)。
【0120】
図24は、フィーダ配置の確認作業の手順を示すフローチャートである。
【0121】
この図に示すように、フィーダ配置の確認は、まず、確認の対象とされた台車(使用台車)を特定するべく台車IDが読み取られ(S81)、この台車IDに基づき、段取り対象製品の生産においてこの台車(使用台車)が取り付けられる予定の台車取付部が使用台車計画記憶手段613の使用台車計画(図13)から読み出され、さらにこの台車取付部に求められる部品配置目標が部品配置目標記憶手段612(図12)から読み出される(S82)。なお、ここで読み出された部品配置目標では、各フィーダセット位置に取り付けるべき部品が、この段取り作業支援方法でおいて用いられている部品名によって表現されている。
【0122】
つぎに、この使用台車上の各フィーダIDが順次読み取られ(S83)、読み取られたフィーダIDに基づいて、フィーダ状態記憶手段616からこのフィーダにセットされている部品(部品集合体)の部品IDが抽出される(S84)。この部品IDとは、いわゆる部品メーカ等によって付されたメーカ形式名である。
【0123】
こうして部品IDが判明すれば、この部品IDが部品記憶手段615の対応表に既に記憶されているか否かが判断され(S85)、記憶されていれば(S85でYES)、対応表においてこの部品IDに対応づけられている部品名が、当該使用台車の目標部品配置における部品名と一致しているかが照合される(S86)。この結果、両者が一致していればこの部品(フィーダ)の配置は正しいと判断して(S86でYES)、OKの旨が表示され、一致していなければ配置が誤りであると判断して(S86でNO)NGの旨が表示される(S88)。NGである旨を確認したオペレータは、適宜修正を行う(S89)。
【0124】
(省略)
【0125】
(省略)
【0126】
(省略 )
【0127】
以上のフィーダ配置の確認処理が検討中の台車に取り付けられているすべてのフィーダについて順次行われ(S93でYES、S94)、すべてのフィーダについて完了すれば(S93でNO)終了する。
【0128】
図20に戻って、以上の各台車へのフィーダの装着作業(S60)と、フィーダ配置の確認(S80)は、すべての使用台車について順次行われ(S100でNO)、すべての使用台車について完了すれば、使用台車へのフィーダ配置作業の事前段取りが完了する(S100)。
【0129】
つぎに、生産直前の段取り作業として、フィーダ配置作業が完了した使用台車を実装機に装着する作業(S120)について説明する。」

(8)「【0139】
図20に戻って、こうしてフィーダ配置の再確認が終了すれば(S140)、適宜、段取りの完了した次製品の生産が行われ(S160)、生産計画に基づいて次製品があれば(S180でYES)、上述した台車段取りを適宜繰り返し、すべての製品の生産が終了すれば(S180でNO)、生産を終了する。」

(9)「【0141】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は以下のように構成してもよい。
【0142】
(1)上記実施形態では、各実装機10…とは別体の総括コントローラ60に、段取り作業支援方法のための各処理機能を持たせるようにしたが、これら各処理機能を実装機10のたとえば制御ユニット等に持たせることにより、実装機10自身が段取り作業支援装置として機能するようにしてもよい。この場合、段取り対象製品の生産時に使用する使用台車(使用フィーダ装着体)として設定した台車(フィーダ装着体)、この使用台車におけるフィーダ配置作業内容、この使用台車を装着する台車取付部(フィーダ装着体取付部)等の各種段取り作業支援のための情報のオペレータへの報知は、実装機10が備えるディスプレイ等の画像表示装置58(図6参照)や、スピーカ等の音声出力装置等を報知手段として画面表示や音声出力によって行うことができる。また、片付け作業における各フィーダの移動先の報知も、このような実装機10が備える画像表示装置58等を報知手段として行うことができる。
【0143】
(2)上記実施形態では、フィーダや部品あるいは台車を識別するフィーダIDや部品IDあるいは台車IDをシール等の記録媒体に印刷されたバーコードをバーコードリーダ68で読み取ることによって取得するようにしたが、無線通信可能な微小な電子回路からなる記録媒体(無線タグ)等に記憶されたフィーダIDや部品IDあるいは台車ID等の情報を所定のアンテナ等を有する読み取り手段によって読み取るようにしてもよい。」

(10)図5には、フィーダ交換台車32の上面にテープフィーダ31を搭載することが示されている。また、図7には、総括コントローラ60に管理データ記憶部61が設けられることが示され、図8には、管理データ記憶部61のなかに目標部品配置記憶手段612、部品ID記憶手段615、フィーダ状態記憶手段616が設けられることが示され、図12には、目標部品配置記憶手段612に記憶された部品配置目標の一例として、製品名「PRD A」に対して、実装機M1の前左側のフィーダセット位置1ないし20に部品名「PARTS A」ないし「PART X」が各々対応することが示され、図15には、部品ID記憶手段に記憶された対応表として、部品名「PARTS A」に部品ID(メーカ形式名)「ABC」が対応することが示され、図16には、フィーダ状態記憶手段に記憶されたフィーダ状態として、フィーダID「FDR 010」に部品ID「ABC」が対応することが示されている。さらにまた、図20には、段取り作業支援方法全体の流れが示され、図24には、フィーダ配置の確認作業の手順が示されている。

(11)図20の段取り作業支援方法全体の流れをみると、「実装機への台車の装着」(S120)の前に台車段取りとしての「フィーダ配置チェック」(S80)が実行されており、当該「フィーダ配置チェック」では「この台車取付部に求められる部品配置目標が部品配置目標記憶手段612(図12)から読み出される(S82)」(段落【0121】)のであるから、刊行物には、フィーダ交換台車32を実装機10に接続する前に、目標部品配置記憶手段612に格納されたこれから生産するプリント基板Pを選択して対応する目標部品配置を読み込むことが記載されているといえる。

(12)図24のフィーダ配置の確認作業の手順では、「確認の対象とされた台車(使用台車)を特定するべく台車IDが読み取られ(S81)」(段落【0121】)た後、「当該使用台車の目標部品配置における部品名と一致しているかが照合される(S86)。この結果、両者が一致していれば部品(フィーダ)の配置は正しいと判断して(S86でYES)、OKの旨が表示され、一致していなければ配置が誤りであると判断して(S86でNO)NGの旨が表示される(S88)。NGである旨を確認したオペレータは、適宜修正を行う(S89)」のであるが、確認の対象とされた台車の台車IDを読み取るためには、オペレータが「台車IDおよび台車取付部IDを示すバーコード」(段落【0029】)を「バーコードを読み取るバーコードリーダ68」(段落【0032】)で読み取ることが必要となるから、これらを纏めると、刊行物には、オペレータがテープフィーダ31の配置の確認作業にあたって上面のテープフィーダ31の配置が正しいか否かの判断をするフィーダ交換台車32を選択することが記載されているといえる。

(13)図24のフィーダ配置の確認作業の手順では、「確認の対象とされた台車(使用台車)を特定するべく台車IDが読み取られ(S81)」(段落【0121】)た後、「使用台車上の各フィーダIDが順次読み取られ(S83)」(段落【0122】)るのであるから、これらからみて、刊行物には、選択されたフィーダ交換台車32の上面に搭載された複数の各テープフィーダ31のフィーダIDを取得することが記載されているといえる。

(14)図24のフィーダ配置の確認作業の手順では、「確認の対象とされた台車(使用台車)を特定するべく台車IDが読み取られ(S81)、この台車IDに基づき、・・・部品配置目標が部品配置目標記憶手段612(図12)から読み出される(S82)。なお、ここで読み出された部品配置目標では、各フィーダセット位置に取り付けるべき部品が、この段取り作業支援方法でおいて用いられている部品名によって表現され」(段落【0121】)、その後、「使用台車上の各フィーダIDが順次読み取られ(S83)、読み取られたフィーダIDに基づいて、フィーダ状態記憶手段616からこのフィーダにセットされている部品(部品集合体)の部品IDが抽出される(S84)。この部品IDとは、いわゆる部品メーカ等によって付されたメーカ形式名である。こうして部品IDが判明すれば、この部品IDが部品記憶手段615の対応表に既に記憶されているか否かが判断され(S85)、記憶されていれば(S85でYES)、対応表においてこの部品IDに対応づけられている部品名が、当該使用台車の目標部品配置における部品名と一致しているかが照合される(S86)。この結果、両者が一致していればこの部品(フィーダ)の配置は正しいと判断して(S86でYES)、OKの旨が表示され、一致していなければ配置が誤りであると判断して(S86でNO)NGの旨が表示される(S88)。」(段落【0122】及び段落【0123】)のであるから、これらからみて、刊行物には、取得したフィーダIDに基づいて部品名を取得し、このフィーダIDから取得した各部品名と目標部品配置の各部品名とを照合し、この結果を画面に表示することが記載されているといえる。

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「刊行物に記載された発明」という。)が記載されている。

「リール36に巻着されたテープ361に収納された電子部品を供給する複数のテープフィーダ31を上面に搭載した複数のフィーダ交換台車32を実装機10に脱着可能に接続できるようにし、前記テープフィーダ31より電子部品を取出してプリント基板P上に装着する電子部品実装方法において、
前記フィーダ交換台車32を実装機10に接続する前に、目標部品配置記憶手段612に格納されたこれから生産するプリント基板Pを選択して対応する目標部品配置を読み込み、
オペレータが前記テープフィーダ31の配置の確認作業にあたって前記上面のテープフィーダ31の配置が正しいか否かの判断をする前記フィーダ交換台車32を選択し、
選択されたフィーダ交換台車32の上面に搭載された複数の各テープフィーダ31のフィーダIDを取得し、
取得したフィーダIDに基づいて部品名を取得し、
このフィーダIDから取得した各部品名と前記目標部品配置の各部品名とを照合し、
この結果を画面に表示する、
電子部品実装方法。」

第3 対比
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、後者の「リール36」は前者の「供給リール」に相当し、以下同様に、「テープ361」は「収納テープ」に、「巻着された」は「巻回収納された」に、「テープフィーダ31」は「部品供給ユニット」に、「フィーダ交換台車32」は「部品供給装置」に、「上面」は「カート台上」に、「実装機10」は「電子部品装着装置」に、「電子部品実装方法」は「電子部品装着方法」に、「目標部品配置記憶手段612」は「記憶装置」に、「目標部品配置」は「部品段取りデータ」に、「オペレータ」は「作業者」に、「テープフィーダ31の配置の確認作業」は「部品供給ユニットの段取り替え」に、「テープフィーダ31の配置が正しいか否かの判断」は「搭載すべき位置に搭載すべき部品供給ユニットを搭載したか否かのチェック」に相当するから、「オペレータが前記テープフィーダ31の配置の確認作業にあたって前記上面のテープフィーダ31の配置が正しいか否かの判断をする前記フィーダ交換台車32を選択し」は「作業者が前記部品供給ユニットの段取り替えの際の前記カート台上の搭載すべき位置に搭載すべき部品供給ユニットを搭載したか否かのチェックをする所定の前記部品供給装置を選択し」に相当し、「フィーダID」は「フィーダ情報」に、「部品名」は「部品ID」に、「照合し」は「比較し」に、「この結果」は「この比較結果」に、「画面に表示する」は「モニタに表示する」にそれぞれ相当する。

また、後者の「前記フィーダ交換台車32を実装機10に接続する前に、目標部品配置記憶手段612に格納されたこれから生産するプリント基板Pを選択して対応する目標部品配置を読み込み」と前者の「前記部品供給装置を電子部品装着装置に接続する前に、コンピュータを使用して記憶装置に格納されたこれから生産するプリント基板を選択して対応する部品段取りデータを読み込み」とは「前記部品供給装置を電子部品装着装置に接続する前に、記憶装置に格納されたこれから生産するプリント基板を選択して対応する部品段取りデータを読み込み」という限りで共通し、後者の「選択されたフィーダ交換台車32の上面に搭載された複数の各テープフィーダ31のフィーダIDを取得し」と前者の「前記コンピュータは、選択された部品供給装置のカート台上に搭載された複数の各部品供給ユニットのメモリにアクセスしてフィーダ情報を取得し」とは「選択された部品供給装置のカート台上に搭載された複数の各部品供給ユニットのフィーダ情報を取得し」という限りで共通し、後者の「取得したフィーダIDに基づいて部品名を取得し、このフィーダIDから取得した各部品名と前記目標部品配置の各部品名とを照合し、この結果を画面に表示する」と前者の「取得したフィーダ情報に基づいて前記コンピュータはサーバーにアクセスして部品IDを取得し、このフィーダ情報から取得した各部品IDと前記段取りデータの各部品IDとを前記コンピュータが比較し、この比較結果をモニタに表示する」とは「取得したフィーダ情報に基づいて部品IDを取得し、このフィーダ情報から取得した各部品IDと前記段取りデータの各部品IDとを比較し、この比較結果をモニタに表示する」という限りで共通する。

したがって、両者は、
「供給リールに巻回収納された収納テープに収納された電子部品を供給する複数の部品供給ユニットをカート台上に搭載した複数の部品供給装置を電子部品装着装置に脱着可能に接続できるようにし、前記部品供給ユニットより電子部品を取出してプリント基板上に装着する電子部品装着方法において、
前記部品供給装置を電子部品装着装置に接続する前に、記憶装置に格納されたこれから生産するプリント基板を選択して対応する部品段取りデータを読み込み、
作業者が前記部品供給ユニットの段取り替えの際の前記カート台上の搭載すべき位置に搭載すべき部品供給ユニットを搭載したか否かのチェックをする所定の前記部品供給装置を選択し、
選択された部品供給装置のカート台上に搭載された複数の各部品供給ユニットのフィーダ情報を取得し、
取得したフィーダ情報に基づいて部品IDを取得し、
このフィーダ情報から取得した各部品IDと前記段取りデータの各部品IDとを比較し、
この比較結果をモニタに表示する
電子部品装着方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明は、「コンピュータを使用して」部品段取りデータを読み込み、「前記コンピュータは」部品供給ユニットの「メモリにアクセスして」フィーダ情報を取得し、「前記コンピュータはサーバーにアクセスして」部品IDを取得し、「前記コンピュータが」各部品IDを比較するのに対し、
刊行物に記載された発明は、かかる構成を備えない点。

第4 当審の判断
そこで、相違点について検討する。
刊行物には、「実装ライン90には、電子部品実装データ(基板データ)を作成し、ライン全体を統括的に制御する総括コントローラ60が設けられており、・・・この総括コントローラ60は、このライン90において順次基板(製品)を生産していく際の段取り作業を支援する段取り作業支援装置として機能する」(段落【0021】)こと、「総括コントローラ60は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、ハードディスク装置等の外部記憶部、キーボードやマウス等の入力部、CRTや液晶表示装置等の画像表示部、実装機10等とのインタフェース部、さらに入力部の一部としてバーコードを読み取るバーコードリーダ68等を備えたパーソナルコンピュータ等から構成され」(段落【0032】)ることが記載されており、この記載からみて、刊行物に記載された発明は、総括コントローラ60において行われるものである。

一方、刊行物には、「実装機10には、CPU、メモリ、ハードディスク装置等の外部記憶部、キーボードやマウス等の入力部、CRTや液晶表示装置等の画像表示装置58(図6参照)、総括コントローラ60等とのインタフェース部、等を備えたコンピュータ等からなる制御ユニットが備えられている」(段落【0030】)こと、「総括コントローラ60およびライン90を構成する各装置92,93,10…は、電子部品実装データや作業の進行情報等の各種情報を互いに伝達できるようにハブ97を介してケーブルで接続されている」(段落【0021】)ことが記載され、この記載及び図1からみて、総括コントローラ60には、複数の実装機10のコンピュータが接続されるといえる。
そして、刊行物には、「上記実施形態では、各実装機10…とは別体の総括コントローラ60に、段取り作業支援方法のための各処理機能を持たせるようにしたが、これら各処理機能を実装機10のたとえば制御ユニット等に持たせることにより、実装機10自身が段取り作業支援装置として機能するようにしてもよい。この場合、・・・使用台車におけるフィーダ配置作業内容・・・等の各種段取り作業支援のための情報のオペレータへの報知は、実装機10が備えるディスプレイ等の画像表示装置58(図6参照)や、スピーカ等の音声出力装置等を報知手段として画面表示や音声出力によって行うことができる」(段落【0142】)との記載があり、この記載によれば、総括コントローラ60で行う各処理機能を実装機10のコンピュータに持たせることが示唆されている。

ところで、総括コントローラ60が保持する各種の設定手段や記憶手段のなかには、例えば、生産計画記憶手段611のように、複数の実装機10で共通するものや、反対に、例えば、目標部品配置記憶手段612のフィーダセット位置と部品名との対応関係のように、各実装機10ごとに固有のものが存在する。

そうすると、前述した「総括コントローラ60で行う各処理機能を実装機10のコンピュータに持たせる」ために、総括コントローラ60が保持する各種の設定手段や記憶手段の特性に応じて、総括コントローラ60と実装機10のコンピュータとに分配し、或いは、総括コントローラ60に複数の実装機10のコンピュータが接続されることを利用して相互に共有することは、当業者が容易に着想し得たことである。

また、本願の出願前に、コンピュータがフィーダのメモリにアクセスしてフィーダ情報を取得することは、周知技術(例えば、特開2005-347351号公報の「記録媒体312は、実装機に取り付けられたテープフィーダ31から実装機が自動的にフィーダIDを読み取ることが可能なICタグから構成されており」(段落【0035】)との記載及び「実装機10の制御ユニット60は、・・・各テープフィーダ31…に設けられている情報記録部(ICタグ)312…から各フィーダ取付部32…の情報読取部(アンテナ)351によってフィーダIDを読み出すことによって得られる」(段落【0068】)の記載、特開2005-327998号公報の「図2において・・・リール部品をセットしたカセットフィーダーのRFIDタグを読み取り、上位コンピューターから得られる実装に必要な電子部品情報または実装プログラムの情報に照会しながら電子部品実装装置にセットしていく」(段落【0010】)との記載、特開平11-317595号公報の「記憶部14は、フィーダの識別子(identification)、(各フィーダは時には異なる部品を収容しているので)部品情報、フィーダの部品残存数の情報を保持している」(段落【0026】)、「表面実装機30は、回路基板への搭載に必要な部材だけでなく、フィーダバンク32とコンピュータ(制御手段)34を備えている。フィーダバンク32には、1個以上のフィーダ10を装着できる位置が設けられている。フィーダバンクには又、1個以上の端子が有り、各端子36は1個のフィーダ10に対応している。フィーダの端子部16が実装機30の端子36に接触すると、表面実装機は、フィーダが対応するフィーダスロットに装着されたことを識別する。端子36は又、表面実装機とフィーダ10の端子部16の間の情報の通路となる」(段落【0028】)、及び「フィーダ10がフィーダバンク32に装着される(端子部16が端子36に接触する)と、フィーダ(又はフィーダの一部)の記憶部14からの情報がコンピュータ34に送られる」(段落【0030】)との記載参照。)である。

さらに、刊行物には、「上記実施形態では、フィーダや部品あるいは台車を識別するフィーダIDや部品IDあるいは台車IDをシール等の記録媒体に印刷されたバーコードをバーコードリーダ68で読み取ることによって取得するようにしたが、無線通信可能な微小な電子回路からなる記録媒体(無線タグ)等に記憶されたフィーダIDや部品IDあるいは台車ID等の情報を所定のアンテナ等を有する読み取り手段によって読み取るようにしてもよい」(段落【0143】)との示唆もある。

そうしてみると、刊行物に記載された発明において、前述した着想のもと前記周知技術を適用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、本願発明の効果は、刊行物に記載された発明及び前記周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-18 
結審通知日 2012-07-26 
審決日 2012-08-14 
出願番号 特願2007-78545(P2007-78545)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥村 一正長清 吉範  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 冨岡 和人
所村 陽一
発明の名称 電子部品装着方法及び電子部品装着装置  
代理人 相澤 清隆  

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