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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G09G 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G09G |
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管理番号 | 1264012 |
審判番号 | 不服2010-23253 |
総通号数 | 155 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-15 |
確定日 | 2012-10-04 |
事件の表示 | 特願2006-180919「液晶表示装置及びその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月15日出願公開、特開2007- 65625〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許出願: 平成18年6月30日 (パリ条約による優先権主張2005年8月26日、韓国) 拒絶理由通知: 平成21年11月27日(発送日:同年12月2日) 手続補正: 平成22年4月22日 拒絶査定: 平成22年6月14日(送達日:同年6月16日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成22年10月15日 手続補正: 平成22年10月15日 審尋: 平成23年6月29日(発送日:同年7月4日) 審尋に対する回答書: 平成23年11月4日 2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年10月15日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり、請求項1は以下のように補正された。 (本件補正前) 「 【請求項1】 相互に交差する複数のゲート配線及びデータ配線と、 前記ゲート配線及びデータ配線に連結されて、共通電圧と第1ストレージ電圧が印加される第1画素と、 前記ゲート配線及びデータ配線に連結されて、前記共通電圧と第2ストレージ電圧が印加される第2画素とを含み、 前記第1画素、第2画素は、前記ゲート配線を基準に相互に反対側に位置し、前記データ配線を基準に相互に反対側に位置して前記データ配線を共有し、 前記第1画素、第2画素の各々は、前記ゲート配線及びデータ配線に連結される薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタに連結されて共通電圧の印加を受ける液晶キャパシタと、前記薄膜トランジスタに連結されて第1ストレージ電圧または第2ストレージ電圧の印加を受けるストレージキャパシタとを含み、 前記共通電圧、第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧は、相互に異なる直流電圧であることを特徴とする液晶表示装置。」 (本件補正後) 「 【請求項1】 相互に交差する複数のゲート配線及びデータ配線と、 前記ゲート配線及びデータ配線に連結されて、データ電圧が印加された後共通電圧と第1ストレージ電圧が印加される第1画素と、 前記ゲート配線及びデータ配線に連結されて、データ電圧が印加された後前記共通電圧と第2ストレージ電圧が印加される第2画素とを含み、 前記第1画素、第2画素は、前記ゲート配線を基準に相互に反対側に位置し、前記データ配線を基準に相互に反対側に位置して前記データ配線を共有し、 前記第1画素、第2画素の各々は、前記ゲート配線及びデータ配線に連結される薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタに連結されて共通電圧の印加を受ける液晶キャパシタと、前記薄膜トランジスタに連結されて第1ストレージ電圧または第2ストレージ電圧の印加を受けるストレージキャパシタとを含み、 前記共通電圧、第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧は、相互に異なる直流電圧であることを特徴とする液晶表示装置。」(下線は補正箇所) 本件補正の内容は、上記のとおり下線部分を付加するものであり、これによって、共通電圧と第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧が印加されるタイミングがそれぞれ「データ電圧が印加された後」であるという技術的事項が新たに加えられている。 (2)判断 新たに加えられた上記技術事項について検討すると、共通電圧と第1ストレージ電圧、第2ストレージ電圧のいずれについても、どのようなタイミングで印加されるかについて、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には記載がなく、また自明でもない。 この点に関連するものとして、当初明細書等には、 「 【請求項6】 多数のゲート配線にゲート電圧を順に印加する段階と、 多数のデータ配線にデータ電圧を印加する段階と、 第1画素、第2画素各々に直流電圧である第1ストレージ電圧、第2ストレージ電圧を印加して、前記第1画素、第2画素に共通電圧を印加する段階とを含み、前記第1画素、第2画素は、前記多数のゲート配線のいずれかの1つと前記多数のデータ配線のいずれかの1つに連結されることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。」 「 【0013】 また、本発明は、多数のゲート配線にゲート電圧を順に印加する段階と、多数のデータ配線にデータ電圧を印加する段階と、第1画素、第2画素各々に直流電圧である第1ストレージ電圧、第2ストレージ電圧を印加して、前記第1画素、第2画素に共通電圧を印加する段階とを含み、前記第1画素、第2画素は、前記多数のゲート配線のいずれかの1つと前記多数のデータ配線のいずれかの1つに連結される液晶表示装置の駆動方法を提供する。」 との記載がある。これらの記載において、各段階が時間順に記載されているものであると仮定すれば、「多数のデータ配線にデータ電圧を印加する段階」の後に、「第1画素、第2画素各々に直流電圧である第1ストレージ電圧、第2ストレージ電圧を印加して、前記第1画素、第2画素に共通電圧を印加する段階」があることから、データ電圧が印加された段階の後に、共通電圧と第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧が印加される段階が来るものと解釈できる余地はある。 しかしながら、本願の図3に開示されている構成であれば、少なくとも共通電圧(Vcom)が印加されていなければ、データ電圧による液晶キャパシタ(Clc)への充電量が不定となってしまうから、技術常識から見て、本願において共通電圧(Vcom)は、データ電圧の印加が終了するまでには印加される必要があることが明らかであり、上記各段階の記載が時間順を表すものではないことがわかる。 したがって、上記記載は共通電圧と第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧のそれぞれの印加が、データ電圧の印加後であることの根拠とはならず、してみると、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 よって、本件補正は、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定の規定に適合していないから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成22年4月22日付け手続補正(以下、「補正1」という。)によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。 「相互に交差する複数のゲート配線及びデータ配線と、 前記ゲート配線及びデータ配線に連結されて、共通電圧と第1ストレージ電圧が印加される第1画素と、 前記ゲート配線及びデータ配線に連結されて、前記共通電圧と第2ストレージ電圧が印加される第2画素とを含み、 前記第1画素、第2画素は、前記ゲート配線を基準に相互に反対側に位置し、前記データ配線を基準に相互に反対側に位置して前記データ配線を共有し、 前記第1画素、第2画素の各々は、前記ゲート配線及びデータ配線に連結される薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタに連結されて共通電圧の印加を受ける液晶キャパシタと、前記薄膜トランジスタに連結されて第1ストレージ電圧または第2ストレージ電圧の印加を受けるストレージキャパシタとを含み、 前記共通電圧、第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧は、相互に異なる直流電圧であることを特徴とする液晶表示装置。」(以下、「本願発明」という。) 4.原査定の拒絶理由 原査定の拒絶の理由は、平成21年11月27日付け拒絶理由通知書に記載の原審拒絶理由(理由1)のとおりであり、要するに、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。 5.当審の判断 本願明細書の発明の詳細な説明において、 「 【0027】 第1ストレージ電圧Vst1または第2ストレージ電圧Vst2は、対応する画素に貯蔵されるデータ電圧の量を決定する。共通電圧Vcomと第1ストレージ電圧Vst1、第2ストレージ電圧Vst2は、直流電圧である。」 と記載されているように、発明の詳細な説明には、第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧が直流電圧として供給されることが明記されており、図4にも時間により変化しない一定値の第1ストレージ電圧(Vst1)及び第2ストレージ電圧(Vst2)が開示されている。一方、第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧が、特定のタイミングで変動もしくはオンオフされるような制御が行われることを示す記載は、発明の詳細な説明中に、それを推測させるようなものを含めて何ら認められない。したがって、本願発明は、その液晶表示装置の動作期間にわたって一定値の第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧が供給されるものと解さざるを得ない。 しかしながら、本願発明においてそのような第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧が供給された場合、液晶キャパシタへの貯蔵電圧値は、第1ストレージ電圧及び第2ストレージ電圧の値にかかわらず、共通電圧とデータ電圧により決定されることが明らかであり、第1画素と第2画素とは同一の電圧を貯蔵することとなる。したがって、2つの画素が相互に異なる電圧を貯蔵することで、同一なデータ電圧の印加を受ける2つの画素に対して、液晶分子の回転角の差が発生し、液晶表示装置の視野角が向上するという、発明の詳細な説明中に記載されている効果は生じ得ないこととなる。 上記のとおり、本願発明の目的である、いかにして視野角を向上し得るのかについて、発明の詳細な説明には、その裏付けをなす具体的技術手段が開示されておらず、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 6.請求人の主張について 審判請求人は、上記の審尋に対する回答書において、概略、以下のように主張しているので、検討する。 (1)主張の概要 「しかし、平成22年11月25日付けで提出した請求の理由で述べたように、本願の液晶表示装置の駆動方法は、第1画素s-PXL1及び第2画素s-PXL2間の液晶分子の回転角の差を起こすために、データ電圧が第1画素s-PXL1及び第2画素s-PXL2に供給された後、(共通電圧Vcomに対して異なる直流電圧である)第1及び第2ストレージ電圧Vst1及びVst2が第1画素s-PXL1及び第2画素s-PXL2のストレージキャパシタCst1及びCst2にそれぞれ供給されることで、第1画素s-PXL1及び第2画素s-PXL2の画素電極の電圧は互いに異なるように変化します。 そして、本願明細書の段落の[0027]は下記のように記載されています。「第1ストレージ電圧Vst1または第2ストレージ電圧Vst2は、対応する画素に貯蔵されるデータ電圧の量を決定する。共通電圧Vcomと第1ストレージ電圧Vst1、第2ストレージ電圧Vst2は、直流電圧である。」 よって、これらの記載(特に、下線部)によれば当該関係は明確であると思われます。」 (2)検討 上記引用された本願明細書の段落の【0027】には、単に「第1ストレージ電圧Vst1または第2ストレージ電圧Vst2」が「対応する画素に貯蔵されるデータ電圧の量を決定する。」と記載されているにとどまり、そのための具体的な構成や原理、すなわち解決手段については一切開示していないものであり、上記記載から「データ電圧が・・・供給された後、・・・第1及び第2ストレージ電圧Vst1及びVst2が・・・それぞれ供給される」といった具体的な構成を読み取ることは、課題のみの記載からその解決手段を導くことに等しいものであって、当業者といえども不可能である。 したがって、審判請求人の主張は採用できない。 7.むすび 以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-10 |
結審通知日 | 2012-05-14 |
審決日 | 2012-05-25 |
出願番号 | 特願2006-180919(P2006-180919) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(G09G)
P 1 8・ 561- Z (G09G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 堀部 修平、福村 拓 |
特許庁審判長 |
飯野 茂 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 ▲高▼木 真顕 |
発明の名称 | 液晶表示装置及びその駆動方法 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 加藤 伸晃 |